弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人小脇芳一の上告趣意第一点について。
 所論は、原判決は、強姦罪の暴行の程度並びに姦淫の承諾を得たとの錯誤の有無
につき判断を遺脱し、従つて、刑法強姦罪の法律上の解釈を誤り適用した違法があ
るというのであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、被告人並びに
弁護人は、原控訴審で暴行の程度につき所論のような主張をした形跡がないばかり
でなく、かゝる主張は、強姦罪の一構成要件の否認であつて、刑訴三三五条二項の
主張に当らないから、仮りに、かゝる主張があつたとしても、本件のように証拠に
基き適法に強姦の事実を認定した以上かゝる主張に対し特に判断を示さなければな
らぬものではない。また、所論承諾のなかつたこと又は承諾を得たと信じたことの
なかつたことについては、原判決はその判断を示している。従つて、所論判断遺脱
の主張並びにこれを前提とする法令解釈の誤りありとの主張は、刑訴四一一条の職
権発動事由としても採用し難い。
 同第二点について。
 刑法一七七条は、「暴行又ハ脅迫ヲ以テ十三歳以上ノ婦女ヲ姦淫シタル者ハ強姦
ノ罪ト為シ二年以上ノ有期懲役ニ処ス十三歳ニ満タサル婦女ヲ姦淫シタル者亦同シ」
と規定し、強姦罪の成立には刑法上その客体を婦女のみに限つていること並びに憲
法一四条一項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社
会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
と規定していることは、所論のとおりである。しかし、右憲法一四条一項の規定が、
国民を政治的、経済的又は社会的関係において原則として平等に取り扱うべきこと
を規定したのは、基本的権利義務に関し国民の地位を主体の立場から観念したもの
で、国民がその関係する各個の法律関係においてそれぞれの対象の差に従い異る取
扱を受けることまで禁ずる趣旨を包含するものでないこと、並びに、国民の各人に
は経済的、社会的その他種々な事実的差異が現存するのであるから、一般法規の制
定又はその適用においてその事実的差異から生ずる不均等があることは免れ難いと
ころであり、従つて、その不均等が一般社会観念上合理的な根拠のある場合には平
等の原則に違反するものといえないことは、夙に当法廷の判例とするところである。
(前者につき判例集四巻一〇号二〇四〇頁後者につき同巻六号九六一頁参照)。
 そして、刑法が前記規定を設けたのは、男女両性の体質、構造、機能などの生理
的、肉体的等の事実的差異に基き且つ実際上強姦が男性により行われることを普通
とする事態に鑑み、社会的、道徳的見地から被害者たる「婦女」を特に保護せんが
ためであつて、これがため「婦女」に対し法律上の特権を与え又は犯罪主体を男性
に限定し男性たるの故を以て刑法上男性を不利益に待遇せんとしたものでないこと
はいうまでもないところであり、しかも、かゝる事実的差異に基く婦女のみの不均
等な保護が一般社会的、道徳的観念上合理的なものであることも多言を要しないと
ころである。されば、刑法一七七条の規定は、憲法一四条に反するものとはいえな
い。それ故、本論旨も採用できない。
 よつて、刑訴四〇八条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官栗山茂の前記第二点に対する少数意見を除き裁判官全員一致
の意見によるものである。
 裁判官栗山茂の少数意見は次のとおりである。
 刑法一七七条は憲法一四条に違反するという所論違憲の主張は、原審で主張され
ず、従つて原判決の判断を経ていないことは、原判文自体で明白であるから、所論
は刑訴四〇五条一号にいう高等裁判所がした第二審判決に対し、憲法の解釈に誤が
あることを理由とする上告の申立にあたらないこと明である。よつて上告趣意は不
適法として棄却さるべきものである。その理由については、さきに昭和二六年(あ)
第四六二九号同二八年三月一八日言渡大法廷判決において述べたところに変りがな
いから、ここに引用する。
  昭和二八年六月二四日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛