弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実
控訴人は「原判決を取消す。(主位的請求として)被控訴人が昭和四一年二月二八
日付でした控訴人の昭和三九年分所得税についての更正処分及び過少申告加算税賦
課決定(昭和四一年六月二五日付異議決定により一部減額された後のもの)を取消
す。(予備的請求として)右各処分が無効であることを確認する。訴訟費用は第
一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判
決を求めた。
当事者双方の主張立証の関係は、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用
する。
○ 理由
当裁判所も原審と同様控訴人の主位的請求に係る訴えは不適法として却下を免れな
いものと判断する。その次第は、原判決理由一、二の説示(原判決二〇枚目表二行
目から同裏七行目まで)と同一であるから、これを引用する。
次に本件課税処分の無効確認を求める予備的請求について判断する。
(一) 当裁判所は、本件第一、第二物件が赤城衣料の丸紅飯田に対する債務の代
物弁済として譲渡されたとの点に関する控訴人の自白の撤回は許されないものと判
断するが、その次第は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決二〇枚目裏末行の
(一)から二五枚目裏末行までの説示と同一であるから、これを引用する。
(1) 二一枚目裏三行目「第二七号証」の次に「(後記採用しない部分を除
く。)」を加え、同行から四行目にかけての「(後記採用しない部分を除く。)」
及び同六行目から七行目にかけての「(同号証の一は後記採用しない部分を除
く。)」ならびに同末行の「(後記採用しない部分を除く。)、」を夫々削除す
る。
(2) 二二枚目表八行目「根抵当権を設定し」から九行目「登記をした。」まで
を「根抵当権を設定するとともに、同日付右被担保債権に関し第一、第二物件をも
つてする代物弁済の予約をし、翌三七年二月一六日右根抵当権設定登記及び代物弁
済予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記をした。」と改める。
(3) 二三枚目表九行目「右債権確保の手段として」を「右債権の満足を得る方
法として」と改める。
(4) 同裏一行目「赤城衣料が」から二行目「されていた。」までを「赤城衣料
ないし控訴人が丸紅飯田による本件各物件の処分に先立つて債務額を支払えば、控
訴人が再び所有名義を取得することができることとされていた。
(但しその期限については、明確な合意が成立したことはもとより、大方の見通し
について相互諒解が存在したというような形跡も窺われない。)」と改める。
(5) 二四枚目表六行目「自己に」から七行目「支払方を要求し、」までを「控
訴人に善処を求め納税通知書や督促状を差し廻わし、」と改める。
(6) 同裏六行目「各土地」を「各物件」に改め、七行目「取扱いをする一方
で、」の次に「その処分の権限は約定と同時に自己が取得したものと考えてお
り、」を加える。
(7) 二五枚目裏八行目「甲第二八号証」から九行目「証人A」までを「甲第二
七号証の証言の記載、証人B」と改める。
(8) 同末行の次に以下の判断を付加する。
「以上の事実関係からすると、控訴人は、本件各物件について一旦丸紅飯田に所有
権移転登記手続をするものの、当面赤城衣料の債務は双方の帳簿に残され、適当な
時期に丸紅飯田に債務相当額を支払えばこれら物件の所有名義を再び取得すること
ができるとされていたばかりでなく、特に第二物件についてはさしあたりその使用
収益をも認められていたことが肯定できるから、その地位は譲渡担保権の設定者に
類似した点のあることは否定できない。
しかしながら反面、赤城衣料は当時すでに多額の負債を抱え支払不能となつて実質
的に倒産し、大口の仕入先である丸紅飯田の応援によつて辛うじて企業活動を継続
し得る状態にあつたものであるから、そのような赤城衣料に対する債権者として債
権の回収手段を真剣に講ずべき立場にあつた丸紅飯田として、期限も定めず、不動
産取得税や固定資産税など公課の負担も多い単なる所有名義を預かるだけの譲渡担
保権の設定を受けるに甘んじ、専ら赤城衣料の更正を主眼に行動したものとは、た
やすく考えがたい。そればかりでなく、第三、第四物件に較べ格段に価格の高かつ
た第一、第二物件(そのことは弁論の全趣旨によつて肯定できる)については、丸
紅飯田は根抵当権のほかすでに所有移転請求権保全仮登記による担保権の設定を受
けていたのであるから、重ねてそのような不徹底な権利の設定を受ける実益に乏し
かつたものといわざるを得ない。
これらの諸点を考え合わせると、本件二回にわたる所有権移転登記は、その原因と
されている代物弁済契約の日付にかゝわりなく、実際には赤城衣料が支払不能の状
態に陥つて丸紅飯田に善後措置を相談した結果、昭和三九年八月一二日頃、当時赤
城衣料が丸紅飯田に負担していた債務総額の代物弁済として、鎌倉市役所や松屋横
浜店に対する赤城衣料の納品代金債権などと合わせ、控訴人所有の本件各物件全部
の所有権を一旦丸紅飯田に移転し、これにより一方では丸紅飯田に本件各物件の処
分によつて実質的に債権の回収をはかることができる権能を与えるとともに、赤城
衣料には引続き原材料の供給を保障し、その取引の過程において、代物弁済によつ
て一旦消滅した旧債務に相当する金額を早急に支払うことにより控訴人がこれらの
物件を再び取得する可能性をも残すこととし、そのため丸紅飯田としてはできるだ
け右再取得の可能性を失わせないよう、物件の処分の時期や赤城衣料の営業の維持
に関して好意的に配慮すべきこと、が合意され、そのような合意に基づいて登記手
続が行われたものと解するのが相当である。
丸紅飯田が、本件各物件の所有名義を取得しながらこれを固定資産勘定に計上せ
ず、却つて売掛金債権を残存させる会計処理を行い、また不動産取得税を控訴人に
負担するよう求めたことも、本件各物件は本来社用の固定資産として使用するため
取得されたのではなく、できるだけ速かに換価した上で売掛金に充当さるべき現金
代用物として一時的経過的に取得されたにすぎないことからすれば、換価実現まで
の過渡的な処理として格別異とするに足らず、前叙認定の妨げとはならない。
以上の次第であるから、債権の存続を理由とする控訴人の主張は、すべて採用する
ことができない。
そうすると、第一、第二物件が代物弁済に供されその所有権移転登記がなされたと
の点に関する控訴人の自白は真実に反するものとは認めがたく、従つてその撤回は
許されないものというべきである。」
(二) 第三、第四物件が第一、第二物件とともに同様代物弁済に供されたものと
認むべきことは、以上の説示によつておのずから明らかである。
(三) そうしてみると、本件各物件は、控訴人が一定の金額を支払つて再びこれ
を取得する可能性が残されていたとはいえ、法律上は、丸紅飯田に対する赤城衣料
の債務の消滅という代償を得て一旦は丸紅飯田の所有に帰属せしめられたものであ
るから、こゝに所得税法三三条にいう「資産の譲渡」があつたといわざるを得な
い。
(四) 尤も被控訴人が本件課税処分(異議決定により減額された限度の)におい
て認定した譲渡所得の金額は一〇四七万〇五七六円であるのに、被控訴人が本件訴
訟において主張するそれは八一二万六二四七円であるから、少くともその限りにお
いては、同処分における譲渡所得の金額の認定は過大であるとのそしりを免れるこ
とができない。そして、右のように被控訴人が課税処分において認定した譲渡所得
の金額の一部について訴訟上その主張を維持し得ない事態に陥つたのは、一審の審
理中控訴人の指摘によつて物件の取得価格の認定に一部誤りのあることが判明した
ためであることが本件訴訟の経過から明らかであるが、その誤りが何人の目にもほ
ぼ明らかといえるほどに重大明白で本件課税処分を全体として無効ならしめるもの
と認めるに足りる証拠はない。
(五) 却つて当裁判所は、被控訴人が訴訟上主張した八一二万六二四七円の限度
では譲渡所得の金額の認定は相当であり、また控訴人には本件課税年度中に認定の
差額を埋めるに足りる不動産所得が別にあつたと認めるものであつて、その次第
は、原判決二八枚目表九行目「被告の判断も」から一〇行目「できない。」までを
「被控訴人の判断は合理的であつて、これを誤りとする根拠はない。」と改め、三
〇枚目裏終りから二行目「右にみたとおり」から三一枚目表一行目「いうことはで
きないが、」を削除するほか、原判決の二七枚目裏末行の(四)から三三枚目表末
行までの説示と同一であるから、これを引用する。
そうすると、本件課税処分には控訴人主張のような無効事由があるということはで
きない。
よつて控訴人の主位的請求に係る訴えを却下し、予備的請求を棄却した原判決は相
当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴
訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 杉田洋一 蓑田速夫 加藤一隆)

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