弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人は控訴人に対し金九十七万四千九百八十円及び之に対する昭和
二十七年二月十三日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
     本判決は控訴人において金二十万円の担保を供するときは仮にこれを執
行することができる。
         事    実
 控訴代理人は、主文第一乃至第三項と同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、被控
訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上り主張及び証拠の提出、援用、認否は、控訴代理人におい
て、甲第五、六号証を提出し、当審証人A、B、Cの各証言及び当審における控訴
本人訊問の結果を援用し、被控訴代理人において、当審における被控訴会社代表者
本人訊問の結果を援用し、甲第五、六号証の各成立を認めた外、原判決当該摘示と
同一であるから、これを引用する。(但し原判決書三枚目表十行に「第二号」とあ
るは「第二、三号」の誤記と認めその旨訂正する。)
         理    由
 被控訴会社が控訴人主張の日その主張の為替手形三通に引受をなしたことは当事
者間に争がない。
 ところで被控訴人は、右各手形は控訴人が被控訴会社の増資新株を引受け、被控
訴会社に対する売掛代金債権を該株金払込債務に振替えることの代償として、被控
訴会社において控訴人に金融を得しめるため引受をなしたいわゆる融通手形であつ
て、被控訴会社には該手形金を支払う義務はない旨抗争するので按ずるに、なるほ
ど控訴人が被控訴人主張の日その主張のように、被控訴会社の増資新株二万四千八
百株を引受け被控訴会社に対し有する繊維製品売掛代金の内金百二十四万円の債権
を該株金払込債務に振替える旨の意思表示をなしたことは、控訴人もこれを認めて
争わないところであるけれども、なお進んで本件手形が控訴人に金融を得しめるた
めの単なる融通手形に過ぎないとの被控訴人の抗弁事実については、これに添う原
審証人D(第一、二回)、E、Fの各証言及び原審(第一、二回)並に当審におけ
る被控訴会社代表者本人訊問の結果は後記各証拠と対比して措信し難く、被控訴人
援用の乙第一号証の一、二、第二、三号証その他本件にあらわれたすべての証拠に
よつても未だ該事実を確認するに足りない。むしろ各成立に争のない甲第一乃至第
六号証(第四号証は一、二)、右乙第一号証の一、二、第二号証に、原審証人G、
原審並に当審証人A、B、当審証人Cの各証言及び原審(第一、二回)並に当審に
おける控訴本人訊問の結果、前顕証人D、E、Fの各証言の一部及び被控訴会社代
表者本人訊問の結果の一部並に本件弁論の全趣旨を綜合すれば、被控訴会社は繊維
製品の販売等を営むものであるが、昭和二十六年四月頃から商品の価格が暴落した
ため、多額の欠損を生じ経営困難に陥つたので、負債の整理と資本の増加とにより
経営の健全化を図るべく、その具体的方策として、取引先に対する債務の半額を現
金で支払い残り半額については各債権者に対し該金額に相当する増資新株を引受け
これを株金払込債務に振替えることの承認を得ることとする会社更生案を樹立し、
同年八月初頃事情を明示して右更生案につき各債権者の承認を得べく鋭意努めた結
果、大部分の債権者はこれを了承するに至つたが、当時大口債権者の一人として総
額金二百四十八万円余に達する商品売掛代金債権を有していた控訴人は、被控訴会
社の右提案を容認しその代金債権の半額に相当する被控訴会社の増資新株を引受け
るときは、多額の資本を固着せしめることとなり自己の営業に支障を来す虞があつ
たので、被控訴会社の該提案に応じかねる旨をもつてこれを拒絶したところ、同会
社の代理人たる取締役Dは、同月十二日重ねて控訴人に対し、被控訴会社が更生す
るためには控訴人において他の債権者に同調し前記提案を容認してもらう外に途は
なく、若しそれができなければ被控訴会社は取引銀行から融資を受ける見込が立た
ず従つて債務半額に対する現金支払にも支障を生ずるに至るべき事情にあることを
告げて、極力その承認を得ることに努め種々折衝を重ねた結果、双方間において
(一)控訴人は被控訴会社において融資を得るため取引銀行に提示する方便とし
て、表面上被控訴会社の増資新株二万四千八百株に対する株式申込証(甲第五号
証)、株式引受証(乙第二号証)及び右増資新株引受によつて金百二十四方円を出
資し、先に被控訴会社が売掛代金債務支払のため引受をなしたれ替手形金債権をも
つて該出資金にあてる旨の契約書(乙第一号証の一、二)に捺印すること(二)但
し当事者はこれによつて何等拘束を受けることなく従つて被控訴会社は、表面上右
新株払込債務に振替えられた控訴人の売掛代金債権金百二十四万円については別途
これを支払うこととし、その支払確保のため手形を交付すること等の了解が成立し
たので、これが実行として即日控訴人の代理人たる訴外Aは、右Dの提示した前記
各書類に捺印すると共に、これと引換に同人から被控訴会社の引受のある金額九十
七万四千九百八十円(前掲金百二十四万円の売掛代金債権の内金に当る。)の為替
手形一通を受領したところ、その後Dは同月十七日に至り、被控訴会社の支払の都
合があるとして右為替手形一通を改めて各満期を異にする本件為替手形三通に書替
えて、これを控訴人の代理人たる訴外B、Aに交付したものであることを窺知する
に十分である。
 してみれば、本件売掛代金債権を前記増資新株の引受株式の株金払込債務へ振替
える旨の意思表示は、控訴人と被控訴会社との通謀による虚偽表示と認めるべきで
あるから、本来無効であつて、当事者を拘束するもの<要旨>ではないと解すべきで
ある。そして、仮に被控訴人主張の如く、たとえ、控訴人において、商法の規定上
非真意表示乃至通謀虚偽表示たることを理由として、前記増資新株の引受の
無効であることを主張し得ないとしても、株式の引受と売掛代金債権を該引受株式
の株金払込債務に振替えるということとは観念上はもともと別個のものであつて両
者が不可分の一体をなすものではないのは勿論、本件の場合に前者の無効を主張し
得ない場合には後者についてもこれを無効としない旨の当事者の意思であつたとも
到底認め難いので、後者の意思表示は依然無効たることに変りはないものというべ
く従つて控訴人の前記売掛代金百二十四万円の債権はこれがために消滅するもので
はないから、被控訴会社はその内金九十七万四千九百八十円の支払のため引受けた
本件為替手形金の支払義務があるものといわなければならない。
 (其の他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 野田三夫 判事 中村平四郎 判事 天野清治)

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