弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
当裁判所が昭和四一年五月九日申請人と被申請人外二名間の昭和四一年(ヨ)第四
八号仮処分申請事件についてした仮処分決定のうち、被申請人に関する部分は、こ
れを認可する。
訴訟費用は、被申請人の負担とする。
       事   実
第一 当事者双方の求めた判決
一 申請人の求めた判決
主文第一項同旨。
二 被申請人の求めた判決
主文第一項記載の仮処分決定のうち被申請人に関する部分は、これを取り消す。
本件仮処分申請のうち被申請人に関する部分は、これを却下する。
第二 申請人の申請の理由
一 申請人は、即席タンメンを含む食品の製造、販売を業とする株式会社である
が、昭和三九年八月一日から「長崎タンメン」なる商標を付して販売する目的で即
席タンメンおよび即席タンメンスープ(以下特に区別して用いた場合を除き、両者
をあわせて、単に「即席タンメン」という。)の製造を始め、同月一三日頃から、
右製造にかかる即席タンメンスープを別紙第二図面表示の包装と同一の包装(した
がつて「長崎タンメン」なる商標が記載されている。)に収納し、これと右製造に
かかる即席タンメンとを別紙第一図面表示の包装と同一の包装(したがつて「長崎
タンメン」なる商標が記載されている。)に収納して販売を開始した。そして、そ
の販路は、当初京浜、関東地方にとどまつていたが、翌昭和四〇年三月頃からは、
阪神、名古屋地方、北海道、新潟地方に及び、同年五月現在においては、その一ヶ
月間の販売数量は、一、五〇〇万食に達した。
二 申請人は、右即席タンメンの製造に着手した昭和三九年八月一日以降、前記商
標、包装をもつて販売される右即席タンメンの宣伝を、主としてテレビ放送によつ
て開始し、順次その宣伝区域を拡大し、右宣伝の効果と前記販売実績とあいまつ
て、昭和四〇年四月頃以降は「長崎タンメン」なる商標および前記各包装は、いず
れも申請人の製造、販売する即席タンメンを表示するものとして、一般消費者に広
く認識されるに至つた。
三 ところで、申請外Aは、昭和四〇年五月頃から、「富洋食品」との名称をもつ
て、「長崎タンメン」または「ゴールド長崎タンメン」との商標を付し、別紙第一
図面および第二図面表示の包装と類似した包装を用いて、即席タンメンの販売、拡
布を開始し、申請人が製造販売する前記即席タンメンとの間に混同を生ぜしめたの
で、申請人は昭和四〇年六月前橋地方裁判所に対し右富洋食品ことAを相手方とし
て、「長崎タンメン」の商標および同人が使用していた右包装の使用禁止を求める
仮処分を申請し、同月二五日同趣旨の仮処分決定を得、これを執行した。
四 しかるに、前記Aが代表者である被申請人は、昭和四〇年八月頃前記富洋食品
ことAの事業を引継ぎ、「ゴールド長崎タンメン」との商標を表示した主文第一項
記載の仮処分決定添付第一の一、二および第二図面表示の包装と同一の包装を用い
て、即席タンメンの販売、拡布を継続した。
五 被申請人が使用している右「ゴールド長崎タンメン」という商標は、申請人の
使用している前記「長崎タンメン」という商標に、単に「ゴールド」の形容詞を付
したものに過ぎず、申請人の商標と類似し、被申請人の販売拡布する即席タンメン
と、申請人の製造販売する即席タンメンと混同を生ぜしめるおそれがある。もつと
も、被申請人が即席タンメン(スープを除く)を収納するため使用している前記仮
処分決定添付第一の一、二図面表示の包装と同一の包装には、「有限会社富洋食
品」という表示がされているが、このような表示がされている場合でも、「長崎タ
ンメン」と類似した「ゴールド長崎タンメン」という商標が使用されている以上、
一般需要者をして混同を生ぜしめるおそれがある。
六 そして、被申請人の右不正競争防止法第一条第一号に該当する行為により、申
請人はその製造販売にかかる即席タンメンの販路を妨害され、信用を失い、売上が
減少し、営業上の利益を害せられるおそれがある。
七 よつて、申請人は、被申請人に対し、即席タンメンの製造、販売、拡布につき
「ゴールド長崎タンメン」との商標を使用する行為の差止めを請求する権利がある
が、本案判決をまつにおいては被申請人はその間前記行為を継続し、その結果申請
人は営業上回復困難な損害をこうむるおそれがある。よつて申請人は昭和四一年五
月四日前橋地方裁判所に対し、被申請人が即席タンメンの製造、販売、拡布につき
「ゴールド長崎タンメン」の商標を使用することを禁じ、かつ、その使用する前記
仮処分決定添付第一の一、二および第二図面表示の包装と同一の包装を使用し、ま
たはこれを使用した商品を販売、拡布することを禁じ、右包装を使用した商品に対
する被申請人の占有を解いて執行吏にその保管を命じ、但し執行吏は被申請人の申
出があるときは、その包装を開披し、内容物たる即席タンメンおよび同スープを被
申請人に返還すべき旨の仮処分の申請をしたところ、同裁判所は同月九日同趣旨の
仮処分決定(但し、被申請人の申出あるときは、右包装の「ゴールド長崎タンメ
ン」の文字の塗抹を許し、内容物とも被申請人に返還すべき旨の主文を追加。)を
した。右仮処分決定は相当であるから、これを認可する旨の判決を求める。
第三 被申請人の答弁および主張
一 申請の理由に対する答弁
(一) 申請の理由一の事実のうち、申請人が即席タンメンを含む食品の製造、販
売を業とする株式会社であること、申請人が「長崎タンメン」との商標を付した別
紙第一および第二図面表示の包装と同一の包装を用いて即席タンメンを製造、販売
していることは認めるが、その余の事実は知らない。
(二) 同二の事実のうち、申請人がテレビ放送によつて、右即席タンメンの宣伝
をしたことは認めるが、その内容、宣伝区域は知らない。「長崎タンメン」との商
標および申請人主張の包装が、申請人の製造販売する即席タンメンを表示するもの
として一般消費者に広く認識されるに至つた事実は、否認する。
(三) 同三の事実のうち、申請外Aが昭和四〇年五月頃から「富洋食品」との名
称をもつて、「長崎タンメン」または「ゴールド長崎タンメン」との商標を付した
包装を用いて即席タンメンの販売、拡布を開始したこと、申請人がその主張の頃富
洋食品ことAを相手方としてその主張のごとき仮処分の申請をし、その主張の日に
同趣旨の仮処分決定を得て、その執行をしたことは認める。
その余の事実は否認する。
(四) 同四の事実は認める。
(五) 同五および六の事実は否認する。
(六) 同七の事実のうち、申請人がその主張の日にその主張のごとき仮処分の申
請をし、その主張の日にその主張のごとき仮処分決定を得たことを認め、その余の
事実は否認する。
二 被申請人の主張
(一) 富洋食品ことAの事業を引継いだ被申請人は、同じくAが代表者である申
請外有限会社富越商事と提携して、昭和四〇年九月初め頃より、「ゴールド長崎タ
ンメン」との商標を用い、即席タンメンの販売を始め、本件仮処分の執行を受ける
までの間に一日三万食から二〇万食に及び売上げを示し、その販売区域はほぼ国内
全般の地域に及んだ。そしてこの間、被申請人および申請外有限会社富越商事は、
右即席タンメンの宣伝に努め、総計約四、七二〇万円に及ぶ宣伝費を投じ、テレ
ビ、新聞等によつて広告をし、小売店に店頭広告を掲げ、モデルによる実演即売を
し、また景品付販売をし、なかんづく最終小売段階における宣伝に重点をおいた。
このような宣伝と販売実績の結果、遅くとも、本件仮処分申請がなされる以前の昭
和四〇年一二月末頃においては、「ゴールド長崎タンメン」の商標は、被申請人の
販売にかかる即席タンメンを表示する商標として、本邦の全般にわたつて、広く一
般消費者に周知されるに至つたものである。したがつて、被申請人が、「ゴールド
長崎タンメン」の商標を自己の販売する即席タンメンの商標として使用しても、こ
れにより申請人が「長崎タンメン」なる商標を用い製造販売している即席タンメン
との間に誤認、混同を生ぜしめるおそれは全くない。故に申請人は、被申請人が即
席タンメンの販売、拡布にあたつて「ゴールド長崎タンメン」の商標を使用するこ
とを差止める請求権はない。
(二) また、不正競争防止法第一条において差止の対象とされているのは、自ら
の販売努力または宣伝によらずに、他人の宣伝による他人の商品の信用に只乗りす
る行為である。しかるに、前記のように被申請人らは、自ら自己の商品の販売のた
めに努力し、多大の費用を投じてその宣伝をしたのであつて、被申請人は申請人の
商標のもつ声価に只乗りしたものではない。したがつて、被申請人が「ゴールド長
崎タンメン」の商標を用いて即席タンメンを販売する行為は、同条所定の不正競争
行為にあたらないのであつて、申請人はその差止めを請求する権利はない。
(三) 元来「タンメン」なる名称は商品の普通名称であり、「長崎タンメン」な
る商標は、右普通名称に「長崎」という地名を付したに過ぎないものである。そし
て、長崎は我国で最も古くから中国と交易があつたため長崎における中華料理は、
本場に近い味として有名である。即席タンメンも中華料理の一種であるから、「長
崎」はその産地表示に過ぎず、結局、「長崎タンメン」なる商標は即席タンメンを
あらわす普通名称であるといわなければならない。
 また、申請人は、昭和四〇年五月頃申請外新大和食糧株式会社との間において、
同申請外会社が即席タンメンの製造、販売、拡布をするにつき、「長崎タンメン」
の商標を用いることを認める内容の販売協定を締結し、また、申請外東海食品株式
会社との間においても昭和四一年七月頃同旨の協定を締結しており、そのほか、本
件仮処分申請当時においては、被申請人の「ゴールド長崎タンメン」以外に、「ニ
ユー長崎タンメン」、「ケーシーの長崎タンメン」等十数種に及ぶ「長崎タンメ
ン」の商標が、即席タンメンの商標として使用され、これらの商標の付された即席
タンメンが広く市場に出廻つていた。これらの事実からすれば、即席タンメンに関
する「長崎タンメン」なる商標は、本件仮処分の申請がなされた当時には、すでに
取引上即席タンメンをあらわすために慣用せられる表示に過ぎないものとなつてい
たことが明らかである。
 したがつて、被申請人が右「長崎タンメン」の上に「ゴールド」を付して構成し
た「ゴールド長崎タンメン」という商標を用いて即席タンメンを製造、販売、拡布
する行為については、不正競争防止法第二条第一項により、同法第一条の適用が排
除され、申請人はその差止めを請求する権利を有しない。
(四) 以上(一)ないし(三)のいずれの理由によつても、申請人は、前記被申
請人の行為の差止めを請求する権利を有しないから、本件仮処分申請のうち被申請
人に関する部分は、その被保全権利を欠くものといわなければならず、本件仮処分
決定のうち被申請人に関する部分は失当であるから、これを取消し、本件仮処分申
請のうち右部分の申請を却下する旨の判決を求める。
第四 疏明関係(省略)
       理   由
一 申請人が即席タンメンを含む食品の製造、販売を業とする株式会社であるこ
と、申請人が「長崎タンメン」との商標を付した別紙第一および第二図面表示の包
装と同一の包装を用いて即席タンメンを製造、販売していること、申請人がテレビ
放送によつて右即席タンメンの宣伝をしたこと、申請外Aが昭和四〇年五月頃から
「富洋食品」との名称をもつて、「長崎タンメン」または「ゴールド長崎タンメ
ン」との商標を付した包装を用いて即席タンメンの販売拡布を開始したこと、申請
人が昭和四〇年六月前橋地方裁判所に対し、右富洋食品ことAを相手方として、
「長崎タンメン」の商標および同人が使用していた包装の使用禁止を求める仮処分
を申請し、同裁判所は同月二五日同趣旨の仮処分決定をし、申請人はその執行をし
たこと、しかるに、前記Aが代表者である被申請人は、昭和四〇年八月頃前記富洋
食品ことAの事業を引継ぎ、「ゴールド長崎タンメン」との商標を表示した主文第
一項記載の仮処分決定添付第一の一、二および第二図面表示の包装と同一の包装を
用いて、即席タンメンの販売、拡布を継続したこと、申請人が昭和四一年五月四日
前橋地方裁判所に対し、被申請人を相手方として、被申請人が即席タンメンの製
造、販売、拡布につき「ゴールド長崎タンメン」の商標を使用することを禁じ、か
つ、その使用する前記包装を使用し、またはこれを使用した商品を販売、拡布する
ことを禁じ、右包装を使用した商品に対する被申請人の占有を解いて執行吏にその
保管を命じ、但し執行吏は被申請人の申出があるときは、その包装を開披し、内容
物たる即席タンメンおよび同スープを被申請人に返還すべき旨の仮処分の申請をし
たところ、同裁判所は同月九日同趣旨の仮処分決定(但し、被申請人の申出あると
きは、右包装の「ゴールド長崎タンメン」の文字の塗抹を許し、内容物とも被申請
人に返還すべき旨の主文を追加。)をしたことは、いずれも当事者間に争いがな
い。
二 よつてまず、申請人が何日頃から「長崎タンメン」という商標を使用して即席
タンメンの製造、販売を開始したか、また右商標が申請人の製造、販売する即席タ
ンメンを示すものとして広く認識せられるに至つたか等の点について判断する。
 各成立に争いがない疏甲第八号証の一ないし六、同第九号証の一、二、同第一二
号証の一、二、その表示する包装と同一の包装が申請人の製造、販売する即席タン
メンに用いられていることに争いのない同第二五号証の一、二によると、申請人は
昭和三八年頃あらたに即席タンメンの製造、販売をする計画をたて、これに用いる
商標を考えた結果、長崎のもつ異国情緒から「長崎タンメン」という商標を採用す
ることにし、調査の結果この商標をほかで使つている事例を発見しなかつたので、
いよいよ昭和三九年八月一日に即席タンメンの製造を開始し、同月一三日頃から右
商標を印刷した即席タンメンの包装(別紙第一図面表示の包装と同一の包装)およ
び即席タンメンスープの包装(別紙第二図面表示の包装と同一の包装)にそれぞれ
その製造にかかる即席タンメンおよび同スープを収納してその販売を始め、現在に
至つていること、右即席タンメンの売上は、販売開始以来順次増加し、翌昭和四〇
年四月頃には、月間二、〇〇〇万食に近づき、その売上金額は約四億円に達し、引
続きこの程度の売上を維持していること、その販売区域は、関東、京浜、名古屋、
阪神方面に主要販路をもつほか、ほぼ、全国各地に及んでいること、申請人は右販
売開始と同時に主としてテレビ放送を通じ「長崎タンメン」の商標および前記包装
をもつて申請人の製造、販売する即席タンメンの宣伝を行い、昭和四〇年四月頃以
降は宣伝費として毎月平均二、〇〇〇万円を投じ、ほぼ日本全国のネツトワークを
網羅して宣伝した事実が疏明される。
 右事実によると、遅くとも昭和四〇年四月当時において「長崎タンメン」の商標
および別紙第一および第二図面に表示する包装は、申請人の製造、販売する即席タ
ンメンを表示する商標、包装として、関東、京浜、名古屋、阪神方面を中心として
ほぼ全国一円に及んで一般消費者に広く認識されるに至つたものというべきであ
る。
三 次に、被申請人が、昭和四〇年八月頃から「ゴールド長崎タンメン」なる商標
を用いて即席タンメンを販売、拡布している行為が申請人の製造販売する即席タン
メンと混同を生ぜしめるものであるかどうかの点について、判断する。
 「ゴールド長崎タンメン」なる商標は、「長崎タンメン」との商標と「長崎タン
メン」の部分を共通にし、これに「ゴールド」の文字を冠したに過ぎないものであ
ることは、その構成自体によつて明らかである。ところで、本来「ゴールド」とい
う語は英語であつて、「金」という意味をあらわす名詞または「金の」「金製の」
「金色の」等の意味をあらわす形容詞として用いられるのであるが、比喩的に「品
質の優れた」「美しい」等の意味をあらわす形容詞としても用いられることは、当
裁判所に顕著な事実である。したがつて、「ゴールド」の部分は「ゴールド長崎タ
ンメン」なる商標の要部ではなく、右商標は、「長崎タンメン」なる商標に類似し
ているといわなければならない。そして、「長崎タンメン」が申請人の製造販売す
る即席タンメンであることを認識している消費者が、「ゴールド長崎タンメン」な
る商標を付した即席タンメンに接したときは、後者は前者の改良品または姉妹品で
あつて、同一の製造販売者によつて製造、販売されたものと考えるのが自然であ
り、このような混同を生ぜしめるおそれが大きいといわなければならない。
 もつとも、極めて注意深い消費者であれば、包装のすみずみまで仔細に点検し、
その記載により、「長崎タンメン」の発売元は申請人であり、「ゴールド長崎タン
メン」の発売元は被申請人であつて、申請人ではないことを発見するかも知れな
い。しかし、即席タンメンは、限定された需要者のための特殊なし好品ではなく、
広く一般消費者を対象とする大衆食品であり、日常多量に消費され、その価格も低
廉であつて、消費者はその購入に当つて慎重に注意して選別するものではないこと
は、当裁判所に顕著な事実である。したがつて、消費者としては、その包装に示さ
れた商標によつて容易に印象づけられ、これを基準として選別して購入し、発売元
の相違に気づかないおそれが大きいといわなければならない。よつて被申請人がそ
の使用する主文第一項記載の仮処分添付別紙第一の一、二図面表示の包装と同一の
包装に発売元として被申請人名を印刷してあるからといつて、混同を生ぜしめるお
それがないということはできない。
 被申請人は、その主張のごとき宣伝と販売実績の結果、昭和四〇年一二月末頃に
は「ゴールド長崎タンメン」の商標は被申請人の販売にかかる即席タンメンを表示
する商標として本邦の全般にわたつて広く一般消費者に周知されるに至つた旨主張
するが、前記の事実、ことに被申請人が「ゴールド長崎タンメン」の商標の印刷さ
れた前記包装を用いて即席タンメンの販売拡布を開始したのは、申請人が「長崎タ
ンメン」の商標を用いて即席タンメンの製造販売を開始した約一年後である昭和四
〇年八月であり、その当時にはすでに「長崎タンメン」の商標は、申請人の製造、
販売にかかる即席タンメンを表示する商標として、広く一般消費者に認識されるに
至つていた事実ならびに「ゴールド長崎タンメン」なる商標は「長崎タンメン」な
る商標に類似する事実からすれば、右被申請人主張事実は、本件全疏明をもつてし
ても、いまだ疏明するに足らない。
 したがつて、他に特段の事情のあることを認め難い本件では、申請人は、被申請
人の前示行為により営業上の利益を害されるおそれがあるものというべきである。
四 被申請人は、不正競争防止法第一条において差止めの対象とされているのは、
自らの販売努力または宣伝によらずに他人の宣伝による他人の商品の信用に只乗り
する行為であるが、被申請人は自己の販売する即席タンメンの販売、宣伝のために
自ら多額の費用を投じたのであるから、差止めを受ける理由がない旨主張する。
 しかし、同条第一号の規定は、他人の広く認識された商標と同一もしくは類似の
商標を使用し、又はこれを使用した商品を販売、拡布して他人の商品と混同を生ぜ
しめる行為を差止めの対象としていることが明らかであつて、かかる行為をする者
が類似商標を付した自己の商品の販売、拡布のために、自ら多額の費用を投じたか
らといつて、同号の規定に該当しないものとなるわけではないから、被申請人の右
主張は採用し難い。
五 更に、被申請人は、「長崎タンメン」との商標は、産地表示の「長崎」と、普
通名称の「タンメン」とを結合したものに過ぎず、それ自体普通名称であるから、
これを使用する行為は差止めの対象とならない旨主張する。
 もとより「長崎」が地理的名称であつて、中国に比較的近い位置にあり、古くよ
り開港場を有していたことは明らかであるが、同地方が即席タンメンの産地もしく
はその販売地として著名であるとの事実を疏明するに足る資料はない。したがつ
て、「長崎」が即席タンメンの産地表示であるということはできないのであるか
ら、これと「タンメン」とを結合した「長崎タンメン」が即席タンメンをあらわす
普通名称であるという被申請人の主張は採用し難い。
六 また、被申請人は、「長崎タンメン」との商標は、即席タンメンをあらわすた
めに取引上慣用せられる表示となつていたので、これを使用する行為は差止めの対
象とならない旨主張する。
 弁論の全趣旨により成立を認める疏乙第二号証の二ないし七、証人Bの証言およ
び被申請人代表者尋問の結果によると、申請人は、昭和四〇年六月頃申請外新大和
食糧株式会社に対し、「長崎タンメン」の商標の使用を許し、また、申請人主張の
ごとき「長崎タンメン」との商標ないしこれを要部とする商標を用いたメーカーの
即席タンメンが数種市場において販売されている事実が疏明される。しかし右事実
から、直に「長崎タンメン」との商標が取引上即席タンメンをあらわすものとして
慣用せられる表示となるに至つているものということはできず、他に右被申請人主
張事実を疏明するに足る資料はない。
七 そうすると、申請人は、被申請人に対し、被申請人が「ゴールド長崎タンメ
ン」の商標を使用する行為およびこの商標を使用した即席タンメンを製造、販売、
拡布する行為の差止めを請求する権利があるものというべきである。
 そして各成立に争いがない疏甲第一二号証の一ないし三、第一四、一五号証の各
一ないし三、第一六号証、その表示する包装と同一の包装が申請人の製造、販売す
る即席タンメンの包装として使用されていることに争いのない同第二五号証の一、
二、証人B、同Cの各証言ならびに被申請人代表者尋問の結果によれば、申請人
は、被申請人が「長崎タンメン」の商標を用い、主文第一項記載の仮処分決定添付
の別紙第一の一、二および第二図面表示の包装と同一の包装を使用して即席タンメ
ンの販売をすることの差止めを、本案判決の確定までまつとすれば、右被申請人の
行為により販路を妨害され売上の減少をきたすのみならず、申請人の製造販売する
即席タンメンに対する信用を害され、営業上回復困難な損失を蒙るおそれがあるこ
とが疏明せられる。したがつて申請人は本件仮処分を申請する必要性を有するもの
というべきである。
八 以上の事実によれば、当裁判所が昭和四一年(ヨ)第四八号商標使用禁止等仮
処分申請事件について、同年五月九日にした仮処分決定のうち、被申請人に関する
部分は、相当であるから、これを認可することとし、訴訟費用の負担につき民事訴
訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
<88461-001>
<88461-002>

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