弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人石狩支庁長が昭和二十四年二月九日控訴
人に対して為した不動産取得税賦課処分を取消す、訴訟費用は第一、二審とも被控
訴人の負担とする。との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双者の事実上の陳述は控訴代理人において
 (一) 別紙目録記載の不動産は相続開始前二年以内に被相続人が相続人に贈与
した財産で相続税法第四条第一号により相続財産とみなされ、控訴人は同法第一条
第一項第三号により相続税を納付したものであるから、地方税法第十三条第二十号
により地方税である不動産取得税を課せられることはない。(二)民法上相続と贈
与とは構成要件がちがい、相続であると同時に贈与であることは絶対にありえな
い。然るに一個の取得行為につき相続税法においてはこれを相続とみなして相続税
を課し、地方税法においてはこれを贈与なりとして不動産取得税を課するが如きは
矛盾した観念を容認し、相容れることのできぬ両税を併課するもので不法行為であ
り、明かに財産権の侵害であつて憲法第二十九条に違反すると述べた外は原判決の
事実摘示と同一であるからこれを引用する。
 (立証省略)
         理    由
 控訴人の父亡Aが別紙目録記載の不動産を所有しておつたこと、右不動産につい
て昭和二十三年六月十日附で右Aの三男である控訴人に対し売買を原因とする所有
権移転登記がなされたこと、同年八月三十日右Aの死亡により相続が開始したこ
と、被控訴人が控訴人に対し売買に因り右不動産の所有権を取得したものとして不
動産取得税十七万四千円を課しその徴税令書が昭和二十四年二月九日控訴人に交付
されたこと、控訴人がこの不動産取得税の賦課を違法として同年三月六日被控訴人
に異議の申立をなしたこと、被控訴人が同年同月十九日右申立を認めない旨の決定
をなしたことは当事者間に争がなく、又右不動産について売買を原因とする所有権
移転登記がなされたのは便宜に基くもので実際には右Aより控訴人に対し贈与され
たものであることは原審証人Bの証言により明かである。
 控訴代理人は右不動産は相続開始前二年以内に被相続人が相続人に贈与した財産
で相続税法第四条第一項第一号により相続財産とみなされ、控訴人は同法第一条第
一項項第三号により相続税を納付したものであるから、地方税法第十三条第二十号
により地方税である不動産取得税を課せられることはないと主張するから、この点
を考えてみるに前段認定の如く右不動産は相続開始前二年以内に被相続人の贈与し
た財産であるから相続税法第四条第一項第一号により相続財産とみなされることは
控訴人主張の通りであるが、控訴人が相続税法第一条第一項第三号により相続税を
納付したことも控訴人の自認するところであるから、控訴人は相続開始前二年以内
に被相続人から贈与を受けた者として相続税を納付したものであつて、同法第一条
第一項第一号の相続人としてこれを納付したものではない。換言すれば控訴人の相
続税納付義務はあくまで贈与を原因とするものであつて相続を原因とするものでは
ない。同法第四条第一項第一号は同法第一条第一項第三号の贈与を受けた者に相続
税を課する必要上相続開始前二年以内に被相続人が贈与した財産を相続財産とみな
したもので、同法は泱してかかる場合の受贈者を相続人とみなしたり、贈与を相続
とみなしてはいないのである。
 而して地方税法第十三条第二十号において地方税たる不動産取得税を課すること
ができないと規定しているのは「相続に因る土地家屋又は物件の取得」すなわち相
続を原因とする不動産取得であつて本件の如く贈与を原因とする不動産取得を含ま
ないことは疑問の余地がない。
 <要旨>果して然らば控訴人が昭和二十三年六月十日亡Aから贈与に因り右不動産
を取得したという事実を原因として一方において相続税法第一条第一項第三
号により国税たる相続税を課せられ、他方において地方税たる不動産取得税を課せ
られてもその間に何等の矛盾もなく、又固より違法はない。(尤も被控訴人に対し
売買に因り所有権を取得したものとして本件不動産取得税を課したことは当事者間
に争ないところであるが、それは不動産登記簿の記載に従つてかく取扱つたもので
あることは原審証人Cの証言により明かであつて、しかも地方税法は不動産取得税
の賦課につき贈与に因ると売買に因るとによつて差異を設けていないから、この点
は本件課税処分の効力に影響を及ぼさない。)
 控訴代理人は民法上相続と贈与とは構成要件がちがい、相続であると同時に贈与
であることは絶対にありえない。然るに一個の取得行為につき相続税法においては
これを相続とみなして相続税を課し、地方税法においてはこれを贈与なりとして不
動産取得税を課するが如きは、矛盾した観念を容認し、相容れることのできぬ両税
を併課するもので不法行為であり、明かに財産権の侵害であつて憲法第二十九条に
違反すると主張するが、前段認定の如く控訴人の相続税納付義務は贈与を原因とす
るものであつて同じく贈与を原因とする不動産取得税賦課処分との間に何等の矛盾
なく、両税を併課するも不法行為となるいわれはなく固より憲法第二十九条に違反
するものではない。この点に関する控訴代理人の主張は相続税法第四条第一項第一
号が相続開始前二年以内に被相続人が贈与した財産を相続財産とみなしていること
から、同法第一条第一項第三号の者が相続人とみなされ、同法においては贈与が相
続とみなされているかの如く速断し、この誤解を前提として構成された議論であつ
て到底これを採るに由ないものといわなければならない。
 以上説明する如く被控訴人の本件不動産取得税賦課処分は適法であり、その違法
を前提とする控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄
却することとし、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文
の通り判泱する。
 (裁判長裁判官 浅野英明 裁判官 藤田和夫 裁判官 臼居直道)
 (別紙目録省略)

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