弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告B株式会社を罰金三万円に、被告人Aを懲役六月及び罰金三万円に
処する。
     但し、被告人Aの懲役刑については本裁判確定の日から三年間その執行
を猶予し、又同被告人において右罰金を完納しないときは金二百円を一日に換算し
た期間同被告人を労役場に留置する。
         理    由
 弁護人天羽智房の上告趣意第一点及び第二点について。
 本件において原判決は被告人Aの行為に対する適用法令として臨時物資需給調整
法一条四条繊維製品配給消費統制規則一〇条刑法五五条昭和二二年法律第一二四号
刑法の一部を改正する法律附則四項を、被告会社に対してはなお同法六条を掲げて
いるのであるが、右規則一〇条のいわゆる指定繊維製品というのは同規則二条によ
り商工大臣の指定によるものであつて、昭和一七年一月二〇日商工省告示第四九号
によつて指定されているのである。即ち前示規則一〇条は右告示によつてその内容
が具備しているのであるから、臨時物資需給調整法の罰則を適用するには右規則一
〇条の外に右告示四九号を掲げなければならないのである。しかるに原判決は前示
のように適用法令として右告示を掲げていないのであるから、原判決を破棄すべき
法令の違反があるものというべく、論旨はこの点において理由がある。
 同第三点について。
 しかし原判決は所論毛織物ハーフコート、同子供服は指定繊維製品たる「毛織物」
と認定したのであつて、その事実は原判決挙示の証拠により十分認定できるのであ
るから、所論は結局事実誤認の主張であつて上告適法の理由にならない。
 同第四点について。
 しかし原審における所論の供述は犯罪の動機事情を述べたものと認められるので
あつて、特定の除外事由があつたとの主張とは認められないし、また緊急避難の主
張とも認められない。従つて原判決には所論のような違法ありということはできな
いから論旨は理由がない。
 同第五点について。
 しかし本件物件中絹ベビーケーブにつき告示の廃止によつて統制が撤廃されても
それが判決後の刑の廃止に該らないことは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同
二五年一〇月一一日大法廷判決の趣旨から明らかであるから論旨は理由がない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四七条四四八条により原判決を破棄し本件につき
自判することとする。
 原判決の確定した事実に法律を適用すると被告人Aの行為は臨時物資需給調整法
一条四条(刑法六条により罰金等臨時措置法はこれを適用しない)繊維製品配給消
費統制規則二条九条一〇条昭和一七年一月二〇日商工省告示四九号、昭和二二年九
月一〇日商工省令二五号衣料品配給規則附則二項、刑法五五条昭和二二年法律第一
二四号刑法の一部を改正する法律附則四項に該当するから臨時物資需給調整法四条
二項を適用して所定の懲役刑及び罰金刑を併科すべきものと認めその刑期金額の範
囲内で同被告人を懲役六月及び罰金三万円に処し、被告B株式会社に対しては同被
告会社の従業者たる被告人Aが同被告会社の業務に関し本件犯罪を犯したものであ
るから同法六条及び前示各法条を適用し所定罰金額の範囲内で同被告会社を罰金三
万円に処し、なお被告人Aについては刑法二五条によつて本裁判確定の日から三年
間右懲役刑の執行を猶予し、又その罰金を完納しないときは同法一八条により金二
百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置すべきものであるから主文のと
おり判決する。
 この判決は上告論旨第一点及び第二点について裁判官栗山茂の反対意見がある外
全裁判官一致の意見である。
 裁判官栗山茂の反対意見は次の通り
 卑見によれば原判決を破棄せず本件上告を棄却すべきものである。元来繊維製品
配給消費統制規則二条にいう「商工大巨ノ指定」という行為は同大臣が一定の繊維
製品に同規則にいう「指定繊維製品」という資格を附与する行政処分であつて、右
の処分があれば、その資格を附与された、繊維製品の製造又は売渡等を業とする者
に対し同規則所定の法律上の効果が発動されることになるのであるが、指定自体は
指定繊維製品という資格を附与するだけの効果を有する処分に過ぎないので別に法
規を定める効果を有するものではないかち、臨時物資需給調整法及び繊維製品配給
消費統制規則所掲の関係条規と一体をなす刑罰法令それ自体ではないのである。従
て判決の事実摘示中に指定があつた事実をかかげれば足りるので(ことに右指定は
告示の方法によるから公知の事実として裁判所に顕著なものである。)一々罰則と
共に右指定(本件においては商工省告示第四九号)をかかげる必要はないのである。
(最高裁判所判例集四巻一〇号一七六頁以下参照)このことは例えば公職に関する
就職禁止、退職等に関する勅令(昭和二二年一月四日第一号)の覚書該当者(指定
によつて該当者の身分が設定されるのである)が政治上の活動をした場合、又公務
員として任用された者が収賄した場合に夫々行為当時覚書該当者であつた事実又は
公務員たる身分を有していた事実を確定して判決の事実摘示中にかかげればよいの
と同様といえるのである。ところで、本件原判決にはその事実摘示中「指定繊維製
品なる女子開襟シメツ等の布綿製品並莫大小製品」と判示しているのである。そし
て右布綿製品等が昭和一七年一月二〇日商工省告示第四九号によつて指定されたこ
とは裁判所に顕著な事実といえるから、必しも右告示をかかげなくとも右の判示方
法で欠くるところがないと言えるのである。されば弁護人天羽智房の上告趣意第一
点同第二点は理由なきものである。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年七月二〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛