弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
一 原判決中、原判決別紙物件目録(二)4ないし9、11ないし14、(三)1
ないし3記載の各不動産についての更正登記手続請求に関する部分を次のとおり変
更する。
第一審判決中右請求に関する部分を次のとおり変更する。
1 上告人A1は、被上告人に対し、原判決別紙物件目録(二)4ないし9記載の
各不動産について、被上告人の持分を四分の一とし、真正な登記名義の回復を原因
とする所有権一部移転登記手続をせよ。
2 上告人A1は、被上告人に対し、原判決別紙物件目録(二)11ないし14記
載の各不動産について、岐阜地方法務局揖斐川出張所平成五年八月五日受付第六五
九六号をもってされた所有権保存登記を、被上告人の持分を四分の一、上告人A1
の持分を四分の三とする所有権保存登記に更正登記手続をせよ。
3 上告人A2は、被上告人に対し、原判決別紙物件目録(三)1ないし3記載の
各不動産について、被上告人の持分を四分の一とし、真正な登記名義の回復を原因
とする所有権一部移転登記手続をせよ。
二 上告人A3の上告並びに同A1及び同A2のその余の上告をいずれも棄却する。
三 第一項の部分に関する訴訟の総費用は、これを五分し、その一を上告人A1及
び同A2の、その余を被上告人の各負担とし、前項の部分に関する上告費用は上告
人らの負担とする。
         理    由
 一 上告代理人佐久間信司の上告理由について
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三一二条
一項又は二項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、理由の不備をいうが、
その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに右各項
に規定する事由に該当しない。
 二 職権により、原判決別紙物件目録(二)4ないし9、11ないし14、(三)
1ないし3記載の各不動産に関する更正登記手続請求について判断する。
 1 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 (一) 原判決別紙物件目録(二)4及び5記載の各不動産(以下「本件不動産
(1)」という。)、同物件目録(二)6ないし9記載の各不動産(以下「本件不
動産(2)」という。)、同物件目録(二)11ないし14記載の各不動産(以下
「本件不動産(3)」という。)及び同物件目録(三)1ないし3記載の各不動産
(以下「本件不動産(4)」という。)は、もとD(以下「D」という。)が所有
していた。
 (二) Dは、昭和二七年一月二四日に死亡した。Dの相続人は、妻E(昭和五
二年九月一一日死亡)、二男F(以下「F」という。)、長女G、三男被上告人及
び二女Hであった。Fは、平成五年三月四日に死亡し、上告人らがその相続人であ
る。
 (三) 本件不動産(1)については、平成五年八月五日受付により、「昭和二
七年一月二四日F相続、平成五年三月四日相続」を原因として、Dから上告人A1
に対する所有権移転登記がされている(以下「本件登記(1)」という。)。本件
不動産 (2)については、平成五年八月五日受付により、「昭和一九年二月二四
日D家督相続、昭和二七年一月二四日F相続、平成五年三月四日相続」を原因とし
て、Dの先代Iから上告人A1に対する所有権移転登記がされている(以下「本件
登記(2)」という。)。本件不動産(3)については、平成五年八月五日受付に
より、上告人A1のため所有権保存登記がされている(以下「本件登記(3)」と
いう。)。本件不動産(4)については、平成五年八月五日受付により、「昭和二
七年一月二四日F相続、平成五年三月四日相続」を原因として、Dから上告人A2
に対する所有権移転登記がされている(以下「本件登記(4)」という。)。
 2 本件において、被上告人は、上告人A1に対し、本件不動産(1)(2)に
ついては、本件登記(1)(2)を、昭和二七年一月二四日相続を原因とするFの
持分を四分の三、被上告人の持分を四分の一とする所有権移転登記及び平成五年三
月四日相続を原因とするFから上告人A1への持分全部移転登記に、本件不動産(
3)については、本件登記(3)を、Fの持分を四分の三、被上告人の持分を四分
の一とする所有権保存登記及び平成五年三月四日相続を原因とするFから上告人A
1への持分全部移転登記に、それぞれ改めるとの更正登記手続をするよう求め、上
告人A2に対し、本件不動産(4)について、本件登記(4)を、昭和二七年一月
二四日相続を原因とするFの持分を四分の三、被上告人の持分を四分の一とする所
有権移転登記及び平成五年三月四日相続を原因とするFから上告人A2への持分全
部移転登記に改めるとの更正登記手続をするよう求めた。
 これに対し、上告人らは、本件不動産(1)ないし(4)につきFの単独所有と
する旨の遺産分割協議が成立し、又は取得時効が完成した旨主張したが、原審は、
右主張はいずれも認められないとして、右各不動産についての前記更正登記手続請
求を認容した。
 3 しかしながら、更正登記は、錯誤又は遺漏のため登記と実体関係の間に原始
的な不一致がある場合に、その不一致を解消させるべく既存登記の内容の一部を訂
正補充する目的をもってされる登記であり、更正の前後を通じて登記としての同一
性がある場合に限り認められるものであるところ、【要旨】前記事実関係の下にお
いては、本件不動産(1)ないし(4)については、本件登記(1)ないし(4)
と被上告人が求める更正登記手続による更正後の登記との間に同一性がなく、右更
正登記手続をすることはできないと解すべきである。けだし、本件登記(1)ない
し(3)の登記名義人は上告人A1であり、本件登記(4)の登記名義人は上告人
A2であるのに対し、被上告人が求める更正登記手続は、これにより一旦登記名義
人をいずれもF及び被上告人とするものである上、一個の登記を二個の登記に更正
するものであって、登記名義人及び登記の個数の点において登記としての同一性を
欠くからである。
 4 ところで、記録によれば、本件において、被上告人は、登記簿上は上告人A
1又は同A2の単独所有に係るものとして権利関係が表示されている本件不動産(
1)ないし(4)につき、被上告人の現在の持分四分の一が表示されるよう是正を
求めているものにほかならないのであって、その請求が意図するところは、本件不
動産(1)(2)(4)については、被上告人の持分を四分の一とし、真正な登記
名義の回復を原因とする所有権一部移転登記手続を求めており、本件不動産(3)
については、本件登記(3)を上告人A1の持分を四分の三、被上告人の持分を四
分の一とする所有権保存登記に更正登記手続をすることを求めていると解すること
ができ、被上告人の請求は、右の趣旨のものとして認容すべきである。
 三 したがって、原判決中、本件不動産(1)ないし(4)についての更正登記
手続請求に関する部分は、主文第一項に記載のとおり変更することとし、上告人A
3の上告並びに同A1及び同A2のその余の上告を棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋
一友 裁判官 大出峻郎)

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