弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     本件を仙台高等裁判所に差戻す。
         理    由
 仙台高等検察庁検事長代理検事宮崎三郎の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記
載の通りである。
 按ずるに、本件は昭和二二年政令第一六五号連合国占領軍その将兵又は連合国占
領軍に附属し若くは附随する者の財産の収受及び所持の禁止に関する件第一条違反
として不法収受の事実につき起訴したものであることは記録上明らかである。そし
て右不法収受の公訴事実中には、不法所持の事実を包含するものであるから、不法
収受事実について起訴された以上は、不法収受の事実について犯罪の証明が無いと
しても、不法所持の事実について証明があれば右政令第一六五号第一条を適用し、
所持罪として有罪を言渡さなければならないことは所論の通りである。記録に徴す
るに、被告人は少くとも昭和二二年一二月中旬頃、軍服一組、その後同月末日迄に
四回に一回四五点宛計約二〇点翌昭和二三年一月初旬同一〇日頃及び同月一四、五
日頃の三回に一回五、六点宛計一五、六点を買受けた事実を認めていることは明ら
かであるから、其日時頃右物品を不法に所持していた事実は容易に推認し得るもの
である、従つて右物品について不法収受について犯罪の証明がないとしても、直ち
に無罪の言渡しを為すべきものではなく、所持罪が成立するや否やについて審理を
とげなければならない。そして所持罪は不法所持という現実の事実によつて、成立
するものであり、且つ所持の開始が数回にわたる場合でも必ずしも所持開始の回数
と同数の所持罪が成立するものではなく、所持が一個なりや否やは社会の通念によ
つて決すべきものである(昭和二三年(れ)第九六五号同二四年五月一八日最高裁
判所大法廷判決参照)。原判決は公訴にかかる物品について不法収受罪の併合罪と
しての証明がない点にのみ着眼し、不法所持の点については僅かに被告人が昭和二
三年一月二八日頃警察の取調当時コツトンのズボン下二枚と羅紗外套一着を所特し
ていた点についてのみ説示したばかりで、其余の物品についての不法所持に関して
は何等の説示をしないことは未だ審理をつくさざるものであるばかりでなく、昭和
二二年政令第一六五号第一条の解釈を誤りたる違法ありといわなければならないか
ら、論旨は理由がある。
 よつて旧刑事訴訟法第四四七条同第四四八条の二により主文の通り判決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 竹原精太郎関与
  昭和二四年一二月六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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