弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人荒谷昇の上告理由第一点について。
 論旨は、本件十の部の農地の賃貸借の合意解約は、何ら不法、不当でないにも拘
らず、これを不法、不当とした原判決は、昭和二二年法律二四〇号農地調整法の一
部を改正する法律附則(以下単に、農地調整法昭和二二年附則という。)三条一項、
二項の解釈を誤り違法であると主張するのである。しかし、原審は、昭和二二年三
月上告人が訴外Dに対し従来賃貸していた本件十の部の農地並に八の部の農地の返
還を申込んだところ、Dが之に応じなかつたので、E委員会に対し右二個所の農地
の賃貸借解約の許可申請書を提出したこと、昭和二二年三月三一日同委員会に於て
右解約の可否について審議を為したところ解約を否とするのが委員全員一致の意見
であつたこと、しかしながら上告人とDとは本家分家の関係であるので同委員会が
争議の円満解決という立場から両者間の斡旋を為し、その結果上告人は右八の部の
農地をDに売渡し、その代りとしてDは本件十の部の農地の賃貸借の解約に応じ之
を上告人に返還する旨の協定が両者間に成立し、同委員会に於ては、両者間の争議
を円満に解決するという見地より石川県知事に対し右の事情から本件十の部の農地
の賃貸借の合意解約の許可を可とする旨の意見を具申してその許可申請書を進達し
た結果、昭和二二年九月二三日前記石川県知事の許可が為されたこと、ところがそ
の後上告人がDに対し八の部の農地の売渡手続を為さざるのみか、その耕作さえ認
めず返還を要求して前記協定を破棄するに至つた、そこでDが本件十の部の農地に
つき農地調整法昭和二二年附則三条一項の協議を求めるため同委員会にその承認を
申請し、昭和二三年九月二日同委員会がその承認をなすに至つたことを認定してい
るのであつて、原審がその挙示する証拠によつて右事実を認定したことは、当審に
おいても是認できる。しからば、上告人、D間の本件十の部の農地の合意解約は、
上告人が八の部の農地をDに売渡すことにつき異議のないことを前提としてなされ
たものであり、若し上告人が八の部の農地をDに売渡すことに異議があるならば、
Dは前記解約に同意しなかつた筈であつたことが認められる。従つて、原審の認定
したごとく、上告人が、Dに対し八の部の農地の売渡手続をなさざるのみか、その
耕作さえ認めず、これが返還を要求するに至つた事実の存する以上、前記解約は不
当な解約というべく、それは適法であると否とに拘らず結局において、すくなくと
も農地調整法昭和二二年附則三条二項二号にいわゆる正当な解約とは認めることが
できない。従つて、E委員会が、右附則三条一項、二項により、昭和二〇年一一月
二三日現在において本件十の部の農地の賃借人であり、その後右にのべたごとき不
当な解約によりその賃借人でなくなつたDに対し、昭和二三年九月二日賃借権回復
の協議請求の承認を与えたことは正当であつて、原判決には所論の違法はない。(
なお、上告人は原審が本件賃貸借の合意解約は上告人主張の通り無条件であること
を認定したというが、原判決は、右合意解約が無条件であると判示したのではなく、
右合意解約につき知事のなした許可は、上告人主張のごとき条件を附したものでは
ないと判示したにすぎないのである。)
 同第二点について。
 論旨は、被上告人が、上告人の訴願に対し賃借権設定の裁決をしたことは違法で
あつて、これを是認した原判決には、農地調整法昭和二二年附則三条七項の解釈を
誤つた違法があるというのである。しかし、同条五項によれば、同条三項の市町村
農地委員会の裁定に対し不服ある者は、賃貸人たると賃借人たることを問わず、都
道府県農地委員会に訴願することができ、都道府県農地委員会は、右訴願に対し裁
決をする職務権限を有するものであり、そして同条七項には、「又は前項の規定に
より賃借権を設定すベき旨の裁決があつたとき」云々とあるから、都道府県農地委
員会は、この点において市町村農地委員会に対し上級行政庁たるの地位を有するも
のであつて、同委員会は、右訴願に対し、これを却下し又は市町村農地委員会の裁
定を取消す裁決の外、賃借人からの訴願の有無に拘らず必要により賃借権設定の裁
決をなしうるものと解するを相当とする。それ故、被上告人が、本件E委員会の裁
定に対する上告人の訴願に対し、右裁定に必要な補正を加えて賃借権設定の裁決を
したことは違法ではなく、所論は採るを得ない。
 同第三点について。
 E委員会の本件裁定に手続上の瑕疵のあることは、原審もこれを認めているが、
被上告人に、本件につき適法に賃借権設定の裁決をなす権限のあることは上告理由
第二点に対する上記説示に述べたとおりであり、被上告人は、E委員会の本件裁定
に対する上告人よりの訴願に対し、適法に上告人とDとの間に十の部の農地の賃借
権を設定すべき旨の裁決をなし、これに対し、上告人は本訴を提起したのであるか
ら、E委員会の本件裁定の前記瑕疵は、右被上告人の裁決の効力を妨げるものでは
なく、原判決を非難する理由にはならない。それ故、所論は採るを得ない。
 同第四点について。
 論旨は、農地調整法昭和二二年附則三条が憲法二九条に違反するというのである。
しかし右法条が、昭和二〇年一一月二三日現在における農地の賃借人で、同日以後
昭和二二年法律二四〇号による農地調整法九条三項の改正規定施行の日前に、賃貸
借の解除、解約(合意解約を含む)又は更新の拒絶に因つて当該農地の賃借人でな
くなつたものにつき、同条所定の要件の下に賃借権の回復を認めているのは、右解
除、解約又は更新の拒絶は、時として農地調整法の目的に背馳して、農地を耕作者
から不法又は不当に取上げ、耕作者の地位を不安ならしめたことがあるので、その
ような場合には、賃借権回復の方法によつてこれを是正しうる方法を講じ、耕作者
の地位の安定をはかろうとしたものであり、しかも同条二項には、市町村農地委員
会が賃借権の回復に関する協議請求の承認をなし得ない場合を列挙し、右承認が農
地調整法の目的を達成するため必要と認められる限度で行われるよう規定を置いて
いるのであるから、これらを総合すれば、農地調整法昭和二二年附則三条は、不法
又は不当な農地の取上げを是正して農地調整法の目的たる耕作者の地位の安定を図
るという公共の福祉の為に、必要已むを得ない規定というべきである。従つて、右
附則三条の適用により、地主の財産権が侵害されるに至ることがあつても、これを
もつて、同条が憲法二九条に違反するものということはできない。それ故、所論は
採るを得ない。
 同第五点について。
 論旨は農地調整法昭和二二年附則三条が民法六〇一条と両立しないから無効であ
るというが、農地調整法その他農地調整に関する法律の規定は、民法に対しては特
別法たるものであり、特別法が一般法に優先することは当然であつて、特別法たる
農地調整法昭和二二年附則三条の規定が、一般法たる民法六〇一条と両立しないか
らといつて、無効となる理由はない。それ故、所論は採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり判決する。
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛