弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被告人に対し、「当審未決勾留日数中一二〇日を、被告人が
言渡された懲役刑に算入する。」とした部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 東京高等検察庁検事長松本武裕の上告趣意について。
 所論は、原判決が被告人に対し、原審の未決勾留日数中一二〇日を、被告人が言
渡された懲役刑に算入する旨判決したのが、論旨引用の各判例に違反するというの
である。しかし、原判決は、所論の点についてなんらの判断をも示していないもの
であるから、所論は前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。
 所論にかんがみ、職権により調査するに、記録によると、被告人は、本件につい
て、起訴前である昭和三八年六月二四日に勾留状の執行を受け、じ来第一審および
原審を通じて勾留を継続されているものであるが、これよりさき、被告人は昭和三
四年七月六日に東京地方裁判所八王子支部において、傷害致死罪により懲役五年(
未決勾留二四〇日算入)に処せられ、同判決は同月二一日に確定し、即日右刑の執
行を受け、その後昭和三七年一二月二〇日に仮出獄を許されたが、仮出獄を取消さ
れたため、さらに本件被告事件について勾留中の昭和三八年一二月三日から右仮出
獄取消による残刑の執行を受けることとなり、その刑期は、昭和三九年一二月二〇
日に満了すべき筋合であるところ、被告人は、本件第一審判決に対し昭和三八年一
二月二六日に控訴を申立て、原審はこれに対し、昭和三九年七月九日に、控訴を棄
却するとともに原審における未決勾留日数中一二〇日を被告人が言渡された懲役刑
に算入する旨判決したものであることが認められる。
 そうすると、原判決が算入した一二〇日の未決勾留は、前記確定刑の執行と重複
することが明らかである。そして、このように、刑の執行と重複する未決勾留の日
数を本刑に算入することは、不当に被告人に利益を与えることとなり違法であると
いわなければならない(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷
判決、刑集一一巻一四号三三七七頁参照)。それゆえ、原判決中前記未決勾留日数
を算入した部分は、刑訴法四一一条一号により破棄を免れない。
 そこで、同四一三条但書により、原判決中、被告人に対し、「当審未決勾留日数
中一二〇日を、被告人が言渡された懲役刑に算入する。」とした部分を破棄し、そ
の余の部分に対する上告は、上告趣意としてなんらの主張がなく、したがつてその
理由がないことに帰するから、同四一四条、三九六条により、主文二項のとおり上
告を棄却し、訴訟費用は同一八一条一項但書により負担させないこととする。
 よつて、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。検察官 玉沢光三郎公
判出席
  昭和四〇年三月二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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