弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人橘川光子の上告趣意第一点について。
 記録を査閲するに、所論のAについては第一審公判廷において弁護人から証人と
して尋問の請求があつて、同裁判所は右申請を許容しその第二回公判において同人
を証人として尋問し、もつて被告人に対して反対尋問の機会を与えていることが認
められる。しからば原審において右Aにつき、弁護人から証人尋問の請求があつた
のに対し、原審はこれを採用せず、もつて原審は同人を尋問する機会を被告人に与
えずに、検事の同人に対する聴取書を証拠として採用しても、原判決が刑訴応急措
置法第一二条第一項に違反するものとはいえないのである(同旨昭和二四年(れ)
第一三五八号同年八月二日第三小法廷判決参照)。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし、記録を閲するに、原審公判廷において、被告人は判示の日時A方居宅の
同女の寝室に同女の許諾を受けずに立ち入つた旨の供述をしていることは明らかで
ある(記録一二六丁以下、尚原審第三回公判廷において更新された第一回公判廷の
供述記録九四丁九七丁参照)。しからば論旨は被告人の原審公判廷における供述を
殊更ら曲解し、且つ原審の認定しなかつた事実に基いて原判決を攻撃するものであ
つて、採用の限りでない。
 よつて、刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条により主文のとおり判決する。
 右は上告趣意第一点に対する裁判官粟山茂の少数意見を除き、その余は全裁判官
の一致した意見である。
 検察官 岡本梅次郎関与
 裁判官粟山茂の第一点に対する少数意見は次のとおりである。
 憲法第三七条第二項の刑事被告人の権利は、第三者の供述録取書を被告人と右第
三者とを対質もさせることもなく即ち被告人に審問の機会を与えることなくして、
単に被告人に読聞けただけで断罪した専制政治の裁判に対する保障であることは言
うまでもない。この憲法上の保障がある以上は、被告人又はその弁護人の面前でさ
れる証人の供述でなければ証拠能力が認められないものであるが、例外として、さ
きに被告人に審問の機会を与えたことがある第三者の供述録取書はその第三者が国
外に去つたり、死亡したり又は瀕死の状体にある等のため新らたに被告人に審問の
機会を与えることができない事由を疏明しうる場合か又はその第三者を喚問できる
けれども被告人側が反対審問の権利を抛棄してその請求をしない場合には証拠能力
が認められるのである。このことは普通法の規則であり、我が憲法が英米法と同様
に第三七条第二項との保障がある以上訴訟法上の解釈は判例によつて確定せらるべ
きものである。
 右と同一の趣旨はさきに昭和二三年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判決
において、私は少数意見として掲げておいたのである。不幸にして我下級裁判所は
憲法第三七条第二項の人権の保障を無視して、刑訴応急措置法第一二条第一項を皮
相な文理解釈をして来たのであるが、右は最高裁判所大法廷の多数意見の是認する
ところとなつたのである。一口で言えば憲法第三七条第二項にあるにもかかわらず
我裁判所は「アフイデヴイツト」(宣誓口供書)と「デイポジシヨン」(相手方に
審問の機会を与えた第三者の供述録取書である)とを混同して第三者の「アフイデ
ヴイツト」にも被告人の「アフイデヴイツト」と同様に証拠能力があるものと誤解
し、証拠能力がない第三者の「アフイデヴイツト」を証拠調をして、その機会に被
告人から審問の請求がなければ、審問の機会を与えたものとして証拠にとれるとす
るに至つたのである。刑訴応急措置法第一二条第二項が刑訴第三四三条は之を適用
しないとしたのは、憲法第三八条の保障があるため、場合によつては被告人に対す
る司法警察官や検察官の聴取書でも証拠能力が認められると同時に、憲法第三七条
第二項の保障のために証人その他の第三者が此等の官憲にして供述録取書即ち「ア
フイデヴイツト」は証拠能力が認められないからである。それにもかかわらず旧刑
訴第三四三条を適用しないとの規定を曲解して憲法第三七条第二項の保障を無視す
るに至つたのである。
 本件について見るに、所論Aについては第一審公判廷において弁護人から証人と
して審問の請求があり、同裁判所は右申請を許してその第二回公判において同人を
証人として審問したのである。然るに原審においては右Aにつき弁護人から証人と
して審問の請求があつたにもかかわらず之を却下して検事の同人に対する聴取書を
証拠として採用して断罪の有力な資料としたのである。旧刑訴の下では第二審は第
一審の続審ではなく覆審である。記録上Aが証人として出頭しえない例外的な理由
がないにもかかわらず、さきに被告人に審問の機会を与えた第一審第二回公判にお
ける右Aの証言の記録を証拠として採用しないばかりでなく、何等審問の機会を与
えたことのない検事の同人に対する聴取書即ち同人の「アフイデヴイツト」を証拠
として断罪の資料に供するに至つては明に憲法第三七条第二項に違反するものであ
つて、原判決は破毀を免れないものである。昭和二四年一二月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    粟   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛