弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人須藤耕二の上告受理申立て理由について
1本件は,被上告人らが,X(以下「X」という。)の経理事務を担当して11
いた上告人による横領等があったと主張して,上告人に対して不法行為に基づく損
害賠償等を請求する本訴を提起したが,被上告人らの請求をいずれも棄却する第1
審判決を受けたため,これを不服として控訴をしたところ,上告人が,原審におい
て,被上告人らによる本訴の提起が不法行為に当たるとして,損害賠償を請求する
反訴を提起した事案である。
被上告人らは,本訴の請求原因事実として,上告人による約70件の横領行為等
(以下「本件横領行為等」という。)を主張し,Xは約2721万円,X(以下12
「X」という。)は約693万円,X(以下「X」という。)は約126万233
円,X(以下「X」という。)は約403万円の損害賠償をそれぞれ請求した。44
被上告人らが主張する本件横領行為等の行為態様は,上告人が,①Xの業務に1
係る支払に充てるなどの名目で小切手(2件については約束手形)を無断で作成
し,又は偽造して,これを現金化した上,同小切手金等を領得したというもの,②
被上告人らの預貯金を無断で払い戻したり,解約したりして,払戻し等に係る金
員を領得したというものであった。
2原審は,Xの経理処理態勢等について,Xにおける小切手等の振出しは,11
上告人が所要事項を記入した小切手用紙にXがXの銀行届出印を押捺して行われ21
ていたこと,Xは同印章を外出時に妻などに預けるほか常に携帯していたこと,2
Xは,Xの振り出す小切手等の控えを入念に点検していたほか,会計事務所の担21
当者が毎月行う会計帳簿等の点検の際も立ち会っていたが,上記点検によっても使
途不明金が発見されるなどの問題が生ずることはなかったことなどを認定した上,
本件横領行為等を認めるに足りないとするにとどまらず,被上告人らが上告人にお
いて無断で作成し,又は偽造したと主張する小切手等の振出しや預貯金の払戻し等
については,そのほとんどを,Xが自らこれを上告人に指示したもので,上告人2
において小切手等を現金化し,又は預貯金の払戻し等を受けた現金は,その多くを
Xが上告人から受領し,その他についてもXの業務に係る支払等に充てられたこ21
とを積極的に認め,本訴請求についてはこれを棄却すべきものとしたが,反訴請求
については,本訴の請求原因事実である本件横領行為等を全体的にみれば,Xが2
自己の主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知
りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて本訴を提起し
たなど,本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものとま
では認めることができないとして,これを棄却した。
3しかしながら,反訴請求を棄却した原審の上記判断は是認することができな
い。その理由は,次のとおりである。
(1)訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において
提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提
訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たと
いえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らし
て著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である
(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集4
2巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判
決・裁判集民事193号85頁参照)。
(2)原審の認定するところによれば,被上告人らが主張する本件横領行為等に
係る小切手等の振出しや預貯金の払戻し等のほとんどについて,Xが自らこれを2
指示しており,小切手金や払戻し等に係る金員の多くを,X自身が受領している2
というのである。
そうであれば,本訴請求は,そのほとんどにつき,事実的根拠を欠くものといわ
ざるを得ないだけでなく,Xは,自らが行った上記事実と相反する事実に基づい2
て上告人の横領行為等を主張したことになるのであって,Xにおいて記憶違いや2
通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情がない限り,Xは,本訴2
で主張した権利が事実的根拠を欠くものであることを知っていたか,又は通常人で
あれば容易に知り得る状況にあった蓋然性が高く,本訴の提起が裁判制度の趣旨目
的に照らして著しく相当性を欠くと認められる可能性があるというべきである。加
えて,原審は,Xが本訴の提起に先立ち上告人により5億円程度の小切手が無断1
で振り出されたとして告訴をしたが,上告人は小切手金約34万円の業務上横領の
嫌疑で逮捕勾留されたものの勾留期間満了前に釈放されたことを認定していること
や,その後に提起された本訴の請求金額が合計約3900万円に達することなどを
も考慮すると,なおさらである。以上によれば,X及びXの本訴の提起は,裁判12
制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとみる余地が大きい。また,X及3
びXについても,Xの子であって,Xの主張に依拠して本訴を追行しているこ422
とがうかがわれることからすれば,これと同様に解することができる。
しかるに,原審は,請求原因事実と相反することとなるX自らが行った事実を2
積極的に認定しながら,記憶違い等の上記の事情について何ら認定説示することな
く,被上告人らにおいて本訴で主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を
欠くものであることを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得た
のにあえて本訴を提起したとはいえないなどとして,被上告人らの上告人に対する
本訴提起に係る不法行為の成立を否定しているのであるから,この原審の判断に
は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をい
うものとして理由があり,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。
そして,不法行為の成否について更に審理を尽くさせるため,本件事案の内容及
び審理の経過等にかんがみ,同部分につき,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官須藤正彦裁判官古田佑紀裁判官竹内行夫裁判官
千葉勝美)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛