弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成15年(行ケ)第327号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成16年1月15日
判          決
原      告   株式会社メモス
訴訟代理人弁護士   栗 原 良 扶
訴訟代理人弁理士   蔦 田 璋 子
同      蔦 田 正 人
   被      告   デル モンテ コーポレーション
訴訟代理人弁護士   又 市 義 男
同      南   かおり
主          文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が無効2002-35268号事件について平成15年6月17日に
した審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,別紙審決書の写しの〈後掲〉欄に示すとおり,丘にそびえ立つ城を
中心に描写した風景的な図形と,その図形の下部に「CASTELDELMON
TE」の欧文字を配した構成から成り,指定商品を,第29類「オリーブ油,その
他の食用油脂,オリーブの瓶詰,その他の加工野菜及び加工果実,食肉,食用魚介
類(生きているものを除く),肉製品,加工水産物,豆,卵,加工卵,乳製品,カ
レー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍
り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」とする,商標登録第42
26198号商標(平成7年6月27日出願(以下「本件出願」という。),平成
11年1月8日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
被告は,平成14年6月25日,本件商標の商標登録をすべての指定商品に
関して無効にすることについて審判を請求した。
  特許庁は,これを無効2002-35268号事件として審理し,その結
果,平成15年6月17日に,「登録第4226198号の登録を無効とする。」
との審決をした。
 2 審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件商標は,被告が使用する商
標「DelMonte」あるいは「デルモンテ」(以下,合わせて,審決と同様に
「使用商標」という。)と綴り及び称呼を同じくする「DELMONTE」の文字
を含むものであって,その指定商品に使用した場合,被告の使用商標を想起,連想
させ,被告の業務に係る商品,若しくは,被告と何らかの関係を有する者の業務に
係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあり,
商標法4条1項15号に該当する,とするものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決は,本件商標に関する事項の認定を誤り,その結果,本件商標の使用に
よる出所混同の発生のおそれの有無の判断を誤ったものであり,この誤りが結論に
影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。
1 古城「CASTELDELMONTE」の日本における周知性について
  審決は,「これら証拠によっては,「CASTELDELMONTE(カ
ステルデルモンテ)」がイタリア・プーリア州のアンドリアに現存する城の固有の
名称であって,かつ,世界遺産であるとして,我が国社会一般に本件商標の登録出
願時(平成7年6月27日)において知られているとするには充分なものとは認め
難い。そして,本件商標の登録審決時(平成10年10月5日)(判決注・以下
「本件登録審決時」という。)においてみても,イタリアないし世界遺産について
特別の関心をもつ者以外の我が国の一般世人にまでその認識性が高いものであると
いうこともできない。」(審決書14頁2段)と認定した。
 しかし,「CASTELDELMONTE」がイタリアの古城の固有名称
であることについては,既に本件出願時に,我が国においても知られていたのであ
り,審決の上記認定は誤りである。すなわち,古城「CASTELDELMON
TE」は,1240年に建てられた,イタリアで最も重要な古城の一つであって,
完璧な八角形の塔から成る,古典的な造りのゴシック建築であり,本件出願時既
に,我が国において,紀行書籍,イタリア旅行の案内パンフレット等の刊行物によ
り紹介されている(甲第7,第8号証)。また,この古城は,1996年に世界遺
産に指定され,その外観図形は,ユーロ硬貨の裏面にも刻印の模様として採用され
ている(甲第9,第10号証)。後者の二つの事実は,本件出願後のことであると
はいえ,本件出願時においても,古城「CASTELDELMONTE」が,史
跡あるいは観光の対象として世界的に有名であったことを推認させるものである。
さらに,古城「CASTELDELMONTE」のあるイタリアのプーリア地方
産のワインが,本件出願前から「CASTELDELMONTE」の商標で我が
国に輸入されていたのである(甲第12ないし第22号証ほか)。
2 本件商標について
  審決は,「本件商標は,構成後掲のとおり,古城を中心とした風景的描写図
形と「CASTELDELMONTE」の欧文字を表してなるところ,両構成要
素は視覚上自ずと分離して看取されるばかりでなく,我が国社会一般の外国語に対
する語学力において「CASTEL」の文字が「カステル」と称呼し,かつ「城」
の意味を容易に認識するものとはいい難く,「CASTELDELMONTE」
の文字部分からは,特定・固有の城を意味し,上記古城を表したものとして認識し
把握されるとみるのは困難といわなければならない。そうすると,本件商標は,該
図形内に描かれている古城と文字部分とを常に一体不可分のものとして把握される
とはいえず,「CASTELDELMONTE」の文字部分が独立して自他商品
識別のための要部として取引に資される場合があるというべきである。そして,該
文字部分は「CASTEL」「DEL」「MONTE」と分かち書きされていて,
全体として一体不可分の既成の観念を生ずるといえないこと上記のとおりであっ
て,簡易迅速性を重んずる商取引の実際においては,その一部だけによって簡略し
て取引に資される場合も決して少なくない。」(審決書14頁4段,5段)と認定
した。
しかし,審決のこの認定は誤りである。
(1)本件商標は,イタリアの古城「CASTELDELMONTE」の図形
を大きく表し,その下部に「CASTELDELMONTE」の欧文字を一連に
表記したものである。
 「CASTELDELMONTE」は,イタリア語で「山の城」を意味
し,1240年にスワビアノフリデリック2世により建築された,イタリアのプー
リア地方に実在する古城を意味する。なお,「CASTEL」の語は,「CAST
ELLO」(城)の省略形である。
 本件商標の図形部分は,特徴のある外観を有する古城「CASTELDE
LMONTE」のカラー写真であり,青い空を背景とした白い岩壁の古城の景観か
ら成り,しかも,商標全体の中にあって大きな部分を占めている。そのため,本件
商標に接する者には,この図形部分が深く印象に残ることになる。すなわち,図形
部分は,本件商標において中心的な識別機能を果たしているのである。
 本件商標の「CASTELDELMONTE」との欧文字は,この城を
表す固有名詞であるから,文字全体が不可分一体のものとして把握され,理解され
るものである。
(2)本件商標は,上記のとおり,その図形部分に特徴があり,被告の使用商標
とは,外観において相違することが明らかである。また,「CASTELDEL
MONTE」は,イタリアの古城を意味するのであるから,使用商標とは,観念に
おいても明らかに相違し,また,固有名詞として一体不可分に称呼されるのである
から,称呼においても明らかに相違する。このように,本件商標と使用商標とは,
著しく相違するものであり,本件商標をその指定商品に使用したとしても,被告と
何らかの関係があるとの誤認混同は生じ得ない。
3 本件商標と使用商標との混同のおそれについて
(1) 審決は,「被請求人は,「CASTELDELMONTE」について,
イタリアにおける古城の名称を表すものとして用いられているばかりではなく,イ
タリアのプーリア地方で生産されるオリーブ,オリーブオイルなどを示す特定の商
標として機能し,また,被請求人がこれらの商品を日本国内に輸入し,日本市場に
おいて販売することにより,本件商標が被請求人によって使用されているのであっ
て,商標使用の実態においても,イタリアのみならず日本国内においても請求人の
商品とは截然区別をして使用されている旨主張する。しかし,これら事情をもっ
て,使用商標が本件商標の登録出願時に請求人の業務に係る商品を表す商標として
需要者の間に広く知られ著名性を獲得していたことを否定し得ることにはならず,
かつ,商標「CASTELDELMONTE」が使用商標を凌ぐ程に,不可分一
体の商標として請求人以外の商品の出所を強く連想するとの事情ないし使用商標と
の関連性を否定し得るともいえない。」(審決書14頁末段~15頁2段)と判断
した。
  しかし,この判断は誤りである。原告は,1985年以降,「CASTE
LDELMONTE」との商標を使用して,プーリア地方のオリーブ,オリーブ
オイル,ワインを含む農産品を日本に輸入し,販売している。しかし,原告の「C
ASTELDELMONTE」との商標の使用により,被告の営業との間に何ら
かの混同を生じた,ということはない。
(2)被告の使用商標は,別紙のとおり,トマトを模した形状の赤地部分に,白
抜きで独特の字体の「DelMonte」の欧文字を配し,その下部に片仮名で「デルモン
テ」と記して成るものである。本件商標とは,明確に区別されるものである。
第4 被告の反論の骨子
 審決の認定・判断は正当であり,審決に原告主張の違法はない。
1 古城「CASTELDELMONTE」の日本における周知性について
 本件商標の図形部分の建物及び「CASTELDELMONTE」との欧
文字が,イタリアの古城を意味するものであることは,本件出願時及び本件登録審
決時のいずれにおいても,我が国における一般の消費者には知られていない事実で
ある。
2 本件商標について
  本件商標の構成からすれば,その構成要素である図形部分(カラー写真)と
文字部分とは,視覚上おのずと分離して看取される。また,一般の日本人は,本件
商標の図形部分の建物がイタリアの古城「CASTELDELMONTE」であ
ることは知らない。我が国においては,イタリア語教育は社会一般に普及していな
いから,イタリア語である「CASTEL」の意味を「城」と理解する者は極めて
限られている。一般の日本人が本件商標を上記古城を表したものと理解することは
極めて困難である。
3 本件商標と使用商標との混同のおそれについて
 被告の使用商標である「DELMONTE」,「DelMonte」及び「デルモンテ」が
著名な商標であることは明らかである。この事実の下では,原告の主張は,いずれ
も成り立つ余地がない。
第5 当裁判所の判断
1 古城「CASTELDELMONTE」の日本における周知性について
(1)証拠(甲第6ないし第8号証(各枝番を含む。以下同じ。))によれば,
「CASTELDELMONTE」との名称の城は,13世紀にフリードリッヒ
2世により,南イタリアのプーリア州に建造された古城であり,八角形の塔が組み
合わされたゴシック様式の建造物で,本件商標の図形部分にカラーで撮影されてい
る白い建物であると認められる。
  しかし,前掲甲第6号証は,「イタリアの旅から 科学者による美術紀
行」という題号の単行本(多田富雄著,1992年5月25日誠信書房発行)であ
り,イタリアの美術紀行に関心のある者を主たる読者層とする書籍であり,また,
甲第7号証は,イタリア政府観光局日本支局発行の観光案内ニュース(1995年
12月号。本件出願は,平成7年(1995年)6月27日である。)であり,そ
の発行部数も明らかではないことからすれば,いずれも多数の一般人によって読ま
れるものと認めるには不十分な証拠である。甲第8号証は,「イタリア プーリ
ア」(マリオ・アッダ出版社発行・翻訳牛尾有仁子)と題する文献であり,200
1年発行のものであって,本件登録審決時(平成10年(1998年)10月5
日。甲第3号証の3)以降に発行されたものであり,その発行部数等も不明であ
る。したがって,これらの証拠によっては,本件商標の図形部分の建物が,イタリ
アの古城「CASTELDELMONTE」であることが,本件出願時あるいは
本件登録審決時において,被告の使用商品の需要者である一般の日本人に,広く,
あるいは,相当程度まで知られていたと認めることは到底できない。
(2)古城「CASTELDELMONTE」は,1996年に世界遺産(文
化遺産)に登録された(甲第9号証)。しかし,1995年11月現在で「世界遺
産リスト」には,100か国において440の遺産(326の文化遺産と97の自
然遺産)が登録されており,2002年6月現在では,125か国において合計7
30の遺産(563の文化遺産と144の自然遺産と23の複合遺産)が登録され
ており,世界各国に極めて多数の遺産が存在しているため,1995年段階の世界
遺産をみても,一般の日本人にはほとんど知られていないものが極めて多数存在す
るのである(甲第9,乙第1,第2号証)。古城「CASTELDELMONT
E」についても,1996年に世界遺産に登録されたからといって,そのことによ
って,一般の日本人に知られるようになったということはできない。
(3)古城「CASTELDELMONTE」は,1セント(cent)のユーロ
硬貨のイタリア版の裏面の刻印として使用されている(甲第10,乙第3号証)。
しかし,ユーロ硬貨は,1セントから2,5,10,20,50セント及び1ユー
ロ及び2ユーロの各硬貨まで8種類あり,また,各硬貨の裏面の模様は,各国ごと
に,また,各硬貨の種類ごとに異なるものであるため,ユーロ硬貨の裏面の模様
は,全部で40種類以上あること,及び,古城「CASTELDELMONT
E」の模様は,イタリアで発行される1セント硬貨の裏面の模様にのみ使用されて
いるだけで,他のフランス,ドイツ,オーストリア,スペイン,ポルトガル,ギリ
シャ,ベルギー,オランダ,ルクセンブルグ,フィンランド,アイルランド,ヴァ
ティカン,サン・マリーノ,モナコの各国発行の硬貨には使用されていない(甲第
10,乙第3号証)。また,ユーロ導入の決定及び欧州中央銀行制度発足は199
9年,通貨統合完了は2002年である(公知の事実)から,本件登録審決後のこ
とである。これらのことからすれば,古城「CASTELDELMONTE」
が,イタリアで発行している1セントのユーロ硬貨の裏面の刻印の模様として使用
されているとしても,我が国の一般人が,本件出願時についてみた場合はもとよ
り,本件登録審決時についてみた場合にも,その後に発行された多種類のユーロ硬
貨中の特定の1種類の硬貨の裏面の模様を認識していたとは,極めて考えにくいと
ころである。
(4)「CASTELDELMONTE」という欧文字から成る商標のワイン
が,イタリアのプーリア州で生産され,本件出願前から日本にも輸入されていた
(甲第12,第14ないし第22,第25,第39ないし第42,第46,第47
号証)。しかし,「CASTELDELMONTE」との欧文字から成る商標名
のワインが日本に輸入されていたからといって,同名の古城がイタリアに存在して
いることが我が国の一般人に知られるわけではない。なお,2001年板の「世界
名酒事典」には,ワインのラベルに,「CASTELDELMONTE」の商標
とともに,古城「CASTELDELMONTE」の絵が描かれているものが掲
載されている(甲第16号証)。しかし,これは,本件登録審決時以後に発行され
た文献であり,また,このようなワインが本件出願時以前から日本に輸入されたこ
とがあったかどうか,仮に輸入されたとして,その輸入量がいくらであったかは,
全く不明である。同名の古城がイタリアに存在していることが我が国の一般人に知
られていたことを,この証拠によって認めることはできない。
(5)以上からすれば,本件全証拠によっても,本件出願時及び本件登録審決時
のいずれについてみても,本件商標の図形部分(カラー写真)に写された建物及び
「CASTELDELMONTE」との欧文字がイタリアに存在する古城「CA
STELDELMONTE」であることが,我が国において,一般に知られてい
る状況にあった,と認めることができないことは明らかである。
2 本件商標について
 本件商標は,青空を背景とした古城を撮影したカラー写真の図形部分と「C
ASTELDELMONTE」という文字とで構成されるものである。本件商標
の需要者である我が国の一般人は,本件商標の図形部分の建物が,イタリアに実在
する「CASTELDELMONTE」という名称の古城であることは知らない
のであり,また,一般の日本人は,イタリア語になじみがないため(我が国におい
てイタリア語教育が社会一般に普及していないという事実は立証を要しない公知の
事実である。),「CASTELDELMONTE」を「山の城」という意味の
イタリア語であると理解することは困難である(「CASTEL」が「CASTE
LLO」の省略形である(甲第33,第48号証)と理解することも当然ながら困
難である。)。
 以上からすれば,本件商標の需要者である一般の日本人にとっては,本件商
標の図形部分をみて,「CASTELDELMONTE」との名称のイタリアの
古城であると理解することは困難であり,また,下段の「CASTELDELM
ONTE」の欧文字を見て,これを,「山の城」の意味を有する言葉あるいはイタ
リアの特定の古城の名称として一体不可分のものである,と理解することも困難で
ある。そのため,一般の日本人は,本件商標中の「DELMONTE」の部分に着
目し,この部分から,周知の被告の使用商標を思い浮かべる,ということができる
のである。審決が「我が国社会一般の外国語に対する語学力において「CASTE
L」の文字が「カステル」と称呼し,かつ「城」の意味を容易に認識するものとは
いい難く,「CASTELDELMONTE」の文字部分からは,特定・固有の
城を意味し,上記古城を表したものとして認識し把握されるとみるのは困難といわ
なければならない。・・・該文字部分は「CASTEL」「DEL」「MONT
E」と分かち書きされていて,全体として一体不可分の既成の観念を生ずるといえ
ないこと上記のとおりであって,簡易迅速性を重んずる商取引の実際においては,
その一部だけによって簡略して取引に資される場合も決して少なくない。」(審決
書14頁4段,5段)と判断したことに誤りはない。
 原告は,本件商標の図形部分がこの商標の大部分を占めていることなどから
すれば,本件商標に接する者には,この図形部分が深く印象に残ることになる,す
なわち,同部分こそが識別機能を果たすことになるとか,本件商標の「CASTE
LDELMONTE」は,図形に示されている城を表す固有名詞であるから,文
字全体が不可分一体のものとして把握され,理解されるものである,とか主張す
る。しかし,一般の日本人にとって,本件商標の図形部分に表されている建物につ
き,「CASTELDELMONTE」との名称のイタリアの古城であると理解
することが困難であること,及び,「CASTELDELMONTE」につき,
「山の城」を意味する言葉あるいはイタリアの古城の名称として不可分一体のもの
であると理解することが困難であることは,上記のとおりである。
 原告は,本件商標と使用商標とは,著しく相違するものである,とも主張す
る。しかし,原告の同主張は,我が国の一般の消費者が,本件商標の図形部分の建
物につき,南イタリアにある「CASTELDELMONTE」という名称の古
城であると理解することを前提としたものであり,その前提が採用し得ないもので
あることは,前記のとおりであるから,理由がないことが明らかである。
3 本件商標の使用による出所混同の発生のおそれについて
(1)原告は,本件出願前から,イタリアから「CASTELDELMONT
E」の商標が付されたオリーブ,オリーブオイルを輸入しているものの,オリー
ブ,オリーブオイルについては,原告が経営するレストランあるいは他者が経営す
るレストランが主たる顧客であり,一般の消費者に販売されることは少ない(甲第
23,第24,第26ないし第29,第36ないし第38,第44,第45,第4
9号証)。原告の我が国における販売形態がこのように限定的なものであることか
らすれば,仮に,原告が,「CASTELDELMONTE」商標を使用したオ
リーブ,オリーブオイルを輸入,販売したことにより,これまでに被告の営業と何
らかの混同を生じたということがないとしても,このことによって,本件商標につ
き,その指定商品における使用により,被告の業務との間に混同を生じるおそれが
ある商標であることを否定することはできない。審決が,「これら事情をもって,
使用商標が本件商標の登録出願時に請求人の業務に係る商品を表す商標として需要
者の間に広く知られ著名性を獲得していたことを否定し得ることにはならず,か
つ,商標「CASTELDELMONTE」が使用商標を凌ぐ程に,不可分一体
の商標として請求人以外の商品の出所を強く連想するとの事情ないし使用商標との
関連性を否定し得るともいえない。」(審決書15頁2段)と判断したことに誤り
はない。
(2)原告は,被告の使用商標は,別紙のとおりである,と主張する。しかし,
別紙の商標は,その中央に「DelMonte」という文字が大きく表示され,その下部に
は「デルモンテ」と表示されており,その商標を「DelMonte」あるいは「デルモン
テ」商標と理解することができることは明らかである。また,被告は,別紙の商標
とは別に,「DelMonte」との欧文字のみから成る商標や「デルモンテ」との片仮名
文字から成る商標をも多用しているのである(甲第43号証)。被告の使用商標が
別紙のとおりのもののみであることを前提とする原告の主張に理由がないことは,
この点からも明らかである。
4 結論
 上述したところからすれば,審決が「使用商標が周知・著名であること,本
件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品が同一ないしは類似のものであるこ
と,及びその取引者,需要者を同じくすることの事情を総合的に勘案すれば,本件
商標は,使用商標と綴り及び称呼を同じくする「DELMONTE」の文字を含む
ものであって,その指定商品に使用した場合,使用商標を想起,連想させ,請求人
の業務に係る商品,若しくは,請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品
であるかの如く,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなけれ
ばならない。」(審決書15頁4段)とした認定判断に誤りはない。
第6 以上に検討したところによれば,原告の主張する取消事由は理由がなく,そ
の他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。そこで,原告の本訴請
求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法
61条を適用して,主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第6民事部
        裁判長裁判官  山   下   和   明
        
           裁判官    設   樂   隆   一
     裁判官    高   瀬   順   久
(別紙)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛