弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を罰金三、〇〇〇円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した
期間、被告人を労役場に留置する。
     原審訴訟費用中証人Aに支給した分および当審訴訟費用は被告人の負担
とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、大阪地方検察庁検察官杉島貞次郎作成にかかる大阪高等検察
庁検察官斎藤周逸提出の控訴趣意書、同庁検察官田中義雄作成の控訴趣意補充書各
記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人佐藤一平作成の答弁書、補足答
弁書各記載のとおりであるから、いずれもこれを引用する。
 控訴趣意について
 論旨は要するに、本件公訴事実については被告人に共同加害の目的があつた点を
含め犯罪を証明するに足りる十分な証拠があるのに、原判決は被告人に右目的のあ
つたことの証明がないとして無罪の言渡をしたのであつて、ひつきよう原判決は証
拠の取捨選択ないしその価値判断を誤りひいて事実を誤認したものであつて、その
誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れない、と
いうのである。
 そこで、当裁判所の判断を示すと、それは次のとおりである。
 一、 原審および当審で取調べた証拠によると、次の事実が認められる。
 1 被告人は、公訴事実摘記の日すなわち昭和四三年一〇月二一日がいわゆる国
際反戦デーであつて同日を期し各種革新団体により大阪市御堂筋においていわゆる
御堂筋デモが行われることを知り、総評またはべ平連主催のデモに参加するつもり
で、その集合場所であるB公園(大阪市a区所在)へ赴くべく、当日京都市内の下
宿先を出て阪急電車を利用し午後六時過頃ひとりで梅田駅一番ホームに到着下車
し、改札口ヘ向う途中、同駅三番ホームで約一二〇名の学生集団が四、五列縦隊に
隊列を組んで集会を開きリーダー達が演説しているのを見ていた。
 2 右学生集団はC派の集団であるが、被告人もその集団員の多くが「C」と書
いてあるヘルメツトを被つていることから、右集団がC派のそれであることを知つ
た。ところで、被告人(当時D大学E学部に在学中)は、もともとC派に属するも
のではなかつたが、右学生集団もB公園に赴くものと思い、自己が同公園への地理
不案内のため、同集団に追従して同公園へ赴こうと考え、同集団から少し離れたと
ころで、その集会の模様を見ていた。そのうち、右集団の中から拍手が起つたの
で、被告人は何事だろうと思つて同集団の最後尾辺りに行つたところ、ちょうどC
派学生約一一〇名が別の電車で同駅四番ホームに到着し右拍手に迎えられて下車し
つつあるところであつて、これらの学生は直ちに三番ホームに赴いて先着の学生集
団に合流し、ここにその集団員の数は約二三〇名に達したが、その際被告人も右集
団の隊列の中に加わつた。その間、別の電車で木の角材(証第一号とほぼ同様のも
の)約二〇〇本が三番ホームに運び込まれていた。
 3 やがて、ヘルメツトを被つていない集団員達に「C」と書いてあるヘルメツ
トが配られたが、その際被告人もその一個を受取つてこれを着用した。次いで前記
角材が配られて来たとき、被告人は、一度はこれを受取ることを断つたものの、
「持つているだけでよいのだから」といわれたので、現に集団の隊列に伍している
立場上からも拒み切れずにその一本を受取り、間もなく他の集団員から「角材を替
えてくれ」といわれて右角材を渡して代りに証第一号の角材(約四センチメートル
角で長さ約一・五メートル)を受取り、続いて配られた軍手一双をはめたうえ、右
角材を手にしたまま隊列に加つていた。その間、「石を拾え」というリーダーの声
に応じて線路上に降りて石塊を拾う者も幾人かあつたが、被告人はその状況を見た
だけで、自らはその挙に出なかつた。
 4 かくして、その殆んどがヘルメツトを被り角材を手にし中には石塊をも携え
た者もある約二三〇名の学生集団は、四、五列の縦隊となつて隊列を組み梅田駅正
面(南側)改札口を通つて駅構外の歩道に出たうえ、さらに歩道と車道とを劃する
柵(以下安全柵という)を乗り越え、続々と車道に飛び出したが、被告人も隊列先
頭から三分の二くらいの処に伍しながら安全柵を乗り越えて車道に出た。その頃先
頭付近にあつて車道に飛び出した集団員らは、そのまま南へ御堂筋へのデモ行進に
移ろうとして、曽根崎警察署前交差点で阻止線を張つていた大阪府警察機動隊にそ
の前進をはばまれたため、右阻止線を突破すべく機動隊員に向つて激しく投石しま
たは所持の角材をふるつて同隊員に殴りかかる等の所為に及んだが、大盾を構えた
機動隊の反撃に遭つて、集団員の多くは北方に逃げた。被告人は前記のように安全
柵を乗り越えて車道へ数歩出たものの、集団員の多くか逃げるのを見て、共に逃
げ、安全柵切れ目を通つて西側(阪急梅田駅側)歩道に上つて約一〇〇メートル北
へ逃げた。その頃集団員の中には「止まれ、止まれ」と叫んで退却を制止しようと
する者もあり、これに応じて、一旦は北へ逃げた集団員中約百二、三十名は南へ戻
り、車道上で再び隊列を整え、北進して来た機動隊員に向つて投石、角材をふるう
等の暴行を加えたが、検挙活動に出た機動隊に逐次規制されて四散した。
 5 被告人は、前記のように北へ逃げるうち、「止まれ、止まれ」という声を聞
き、かつ集団員の多数が車道上で隊列を整えようとしているのを見たので、角材を
手にしたままその場から引き返えし、歩道上を約四〇メートル南進したが、車道上
の集団員が機動隊に規制されるのを見て、自らも逮捕の危険を感じ、同歩道上を再
び北へ約六〇メートル逃げ、たまたま歩道ぞいに阪急百貨店商品場への通路のある
のを知り同通路内に他の集団員約一〇名とともに逃げ込んだものの、道路途中に立
入禁止の表示のあるのを見て引き返えし歩道に出たところ、検挙活動中の機動隊員
の姿を認め、北へ約二〇メートル逃げたところでつまづいて転び折から駆けつけた
機動隊員Aに逮捕された。そして、被告人は、梅田駅三番ホームで前記のとおりヘ
ルメツト、角材、軍手を受取つてからは右逮捕に至るまで、終始、ヘルメツトを被
り軍手をはめ角材を携えていた。
 二、 ところで、検察官がその所論において援用する証人Aの原審証言による
と、警察機動隊の分隊長である同人は、他の機動隊員とともに当初曽根崎警察署前
交差点で阻止線を張り、襲いかかつて来る学生達を排除しつつ北進したところ、学
生達が一旦逃げ出した後再び隊列を整えて襲いかかつて来たので、これを押し返え
しながらコマ劇場南西角前の車道上(同証人は、当審においては、この地点につい
てコマ劇場に小路を隔てて南接する北野劇場北西角前車道の東側部分にあるマンホ
ール付近といい、それは同車道を隔てて前記阪急百貨店納品場への通路の入口と相
対する位置にある)まで進んだとき、五、六名の学生が右Aを含む機動隊の隊列に
立ち向い、機動隊員の構えている大盾を角材で突いたりこれを振り上げて殴りかか
るなどしたが、その中に被告人も居て、被告人自身機動隊員の大盾を角材で二、三
回突いた、その時検挙命令が出たので、Aはすぐその場から逃げる被告人を約三〇
メートル追い、被告人が西側歩道に上つて間もなく倒れたので、これを逮捕した、
というのである。しかし、被告人がそのように機動隊員に直接暴行を加えたとの右
証言部分は、これを否定する被告人の供述と対比し、容易に信用できない。けだ
し、被告人は、逮捕された日の翌日以来捜査官の面前および原審公判廷を通じ、終
始直接暴行の事実を否認し、自己の行動については一貫して前記一にそう供述をし
ているのであり、殊に元来現場付近の地理に暗い被告人が前記阪急百貨店納品場へ
の通路へ逃げ込んだ旨供述し、しかもその道路の状況について述べるところは実際
に符合しているのであつて(司法警察員F作成の事実確認捜査復命書参照)、これ
らの事情はすべて被告人の供述の信用性を担保するものというべきである。特に被
告人が右納品場への通路へ逃げ込んだ事実を動かし得ない以上、そこから西側歩道
に戻つた被告人がさらに相当幅広い車道の東端付近まで駆けて行き機動隊に攻撃を
加えるということは、被告人が後記の如く内飜足であることをも考え合わせると、
到底あり得ないことと思われる。他方、A証言についてみると、同証人が被告人を
暴行者の一人と認めた事情は、結局、「1」前記暴行犯人五、六名のうちに、一人
だけ覆面をしていない背がやや他の者より低くいくらか小肥りな男が目についたの
で、その男の行動を注視していた、「2」検挙命令が出たので、逃げ出したその男
をその場から約三〇メートル追つて倒れたところを逮捕したが、被逮捕者は被告人
であつた、との二点に尽きるのである。たしかに、被告人は、当時ヘルメツトを着
用していただけで他の多くの集団員のようにタオル等による覆面はしておらず、ま
た、その背恰好も右「1」にいうところと似ている。しかし、当審において取調べ
た被告人の検察官に対する昭和四三年一一月二日付供述調書添付の写真(特に錦巡
査撮影の写真No.24、25)によると、学生集団にはヘルメツトのみを着用し
覆面はしていない者が少なからず加わつていたことがうかがわれ、そのいう背恰好
も必ずしも被告人にのみ特有のものではない。しかも、被告人は先天性内飜足でそ
の歩行に顕著な特異性が認められ(このことは当裁判所の現認するところであ
る)、従つてその走行ぶりには一層顕著な特異性が現われるはずであるところ、逃
げる被告人を約三〇メートル追つたというA証人は右特異性については全く気づい
ていないようである。また、A証人がコマ劇場前または北野劇場前での前記暴行に
際し現認した犯人がそのいうとおり五、六名に過ぎなかつたにしても、当初約二三
〇名にも及ぶ学生集団であるから、その後の攻防の過程で少なからぬ脱落者があつ
たことを見込んでも、なお右暴行犯人らの周辺にはヘルメツトを着用し角材を手に
した集団員が相当数居たと推測するに難くない。しかも、現場は劇場等の多数集つ
た大阪市内屈指の繁華街で時間的に見て相当数の群集も居たと思われる。さらに、
付近のビルの明りやネオンサインによつて周辺はある程度明るかつたことがうかが
われるが(当審で取調べたA作成の供述書参照)、それにしても夜のことである。
してみると、A証人は「2」にいう相手の男を実際には見失いながら現に逮捕した
被告人がその男に似ていたところから被告人をその男と誤つて思い込んでいるとの
疑いを払拭し得ない。従つて、A証言に信用性のあることを前提とする検察官の所
論部分は採用できない。
 三、 そこで、前記一に認定した事実関係のもとで犯罪の成否について考えてみ
るのに、その認定事実自体、特に、被告人はその多くがヘルメツトを着用し角材を
手にしなかには石塊を持つた者もいるC派学生集団約二三〇名の隊列に加わり、自
らも「C」と書かれたヘルメツトを被り、軍手をはめて角材を所持したこと、曽根
崎警察署前交差点での学生集団と機動隊との最初の攻防で崩れた学生集団とともに
被告人も北へ逃げ、その後被告人は車道へは出なかつたけれども、「止まれ、止ま
れ」と叫ぶ集団員の声を聞き、かつ車道上にある集団員多数が隊列を整えようとし
ているのを見て、角材を手にしたまま引き返えし、歩道上を約四〇メートル南進し
たこと、その頃被告人は車道上の集団員が機動隊に規制されるのを見て、自らも逮
捕の危険を感じて逃げたが、阪急百貨店納品場への通路内に逃げ込んだ時はもとよ
り他の時点についてみても何時でも角材を捨てヘルメツト、軍手を脱ぎ捨てる機会
があつたのに、それをしないで、逮捕されるまでそれらの物を所持しまたは着用し
ていたこと等の諸事実に徴すると、前記曽根崎警察署前交差点における最初の攻防
自体もともと被告人の予想を越えたものとは認め難く、ひいて他の集団員多数が角
材を携え石塊を持つたのは予想される機動隊の阻止に対抗しこれに攻撃を加えるた
めの兇器を準備したものであることを被告人自身少くとも自ら角材を受取り携えた
時点において認識したものと認めざるを得ず、さらに自らもヘルメツトを被り角材
を携え集団に伍して梅田駅三番ホームを出発してからの叙上認定の被告人の行動全
体は右認識のもとに機動隊への攻撃を意図する他の集団員に対しその気勢をそえる
目的でなされたものと認定せざるを得ない(検察官の所論指摘の「事の成り行き如
何によつては自ら角材を使用して警察官を殴つたり突いたりするかも知れないとの
気持でこれを所持していた」旨の司法警察員および検察官の面前における被告人の
供述は、被告人のした実際の行動に照らし、取調官からの理詰の追究に屈してやむ
なくされたとの疑いが濃く、到底信用し難いので、当裁判所は被告<要旨>人には仮
定的にもせよ自ら加害行為を実行する意図はなかつたものと判断する。)そして、
刑法二〇八条の二第一項所定の兇器準備集合罪が公共危険罪的性質をも具有
するものであることにかんがみるとき、被告人が、叙上認定のとおり、前記認識の
もとに共同加害の目的を持つ集団員多数の参集した集団にその気勢をそえる目的で
加わつた以上、これをもって同条項にいう「共同して害を加うる目的」をもつて集
合した場合にあたると解するのが相当である。してみると、原判決が被告人には右
集団に気勢をそえるつもりすらなかつたとの事実判断のもとに共同加害の目的の存
在を認め難いとして無罪の言渡をしたのは事実を誤認したものというのほかなく、
その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから原判決は破棄を免れない。
検察官の論旨は結局理由がある。
 四、 以上の次第で、本件控訴は理由があるから、刑事訴訟法三九七条一項、三
八二条により原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条ただし書に従いさらに次のとお
り判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、昭和四三年一〇月二一日、国際反戦統一行動の一環として大阪総評ま
たはべ平連主催の集会および集団示威行進が行なわれるのに参加するつもりで、午
後六時過頃大阪市a区b町京阪神急行電鉄梅田駅に赴いたところ、たまたまC派に
属する字生約二三〇名が同駅三番ホームに参集しているのに出会い、それらの学生
が当日の集団示威行進の警備に出動する大阪府警察機動隊所属の警察官の身体に対
し共同して害を加うる目的で角材約二〇〇本、石塊多数を携帯準備して集合してい
るものであることを知りながら、午後六時四〇分頃右学生らに気勢をそえる目的で
自ら角材一本(約四センチメートル角、長さ約一、五メートル)を所持して右手生
集団に加わり、もつて兇器を準備して集合したものである。
 (証拠の標目)省略
 (法令の適用)
 当裁判所の認定した事実に法令を適用するのに、被告人の所為は刑法二〇八条の
二第一項、罰金等臨時措置法三条一項に該当するところ、被告人が右所為に及んだ
動機、いきさつ、実際の行動等諸般の情状を考慮して所定刑中罰金刑を選択したう
え被告人を罰金三千円に処し、かつ刑法一八条、刑事訴訟法一八一条一項本文を適
用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 河村澄夫 裁判官 瀧川春雄 裁判官 村上保之助)

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