弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。
     被告人を懲役五月及び罰金三万円に処する。
     被告人において右罰金を完納することができない場合は金二百円を一日
に換算した期間被告人を労役場に留置する。但し此の裁判確定の日から三年間右懲
役刑の執行を猶予する。
     訴訟費用中原審において証人Bに支給した分は被告人及び原審相被告人
C、同Dの連帯負担とし当審における国選弁護人小林盛次に支給した分は被告人の
負担とする。
         理    由
 弁護人掘井久雄の控訴趣意は別紙記載のとおりである。
 原判決が情状により昭和二十四年法律第四十三号酒税法等の一部を改正する法律
附則第二十一項により同法による改正前の酒税法第六十条第二項に従い懲役及び罰
金を併科したこと並びに刑法第六十三条第六十八条第三、四号により従犯減軽をな
したことは所論のとおりである。しかしながら右刑の併科と減軽(尤も罰金につい
て減軽することがてきないことは後記説示のとおりである)との間に何等矛盾はな
いのみならず本件記録を精査するも原判決の量刑が不当であるという理由を発見す
ることができないから論旨は理由がない。
 <要旨>職権を以て按ずるに前示酒税法第六十六条によると同法第六十条第一項の
罪を犯した者に懲役刑を科する場合は刑法第六十三条の適用のあることは明
白であるが懲役及び罰金を併科する場合、両者につき、なお刑法第六十三条の適用
があるかどうかは解釈上疑問の存するところであるが、この場合も前示酒税法の精
神及び同法第六十六条の文言から考えて見て懲役刑についてのみ適用があり罰金刑
についてその適用がないものと解するを相当とする。従つて原判決が罰金刑につい
ても刑法第六十三条第六十八条第四号を適用し従犯減軽をなしたのは法令の適用を
誤つたものでその誤は判決に影響を及ぼすこと明白であるからこの点において原判
決は破棄を免れない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七條により原判決を破棄し同法第四百條但書に則り
更に判決する。
 原判決の認定した事集に法律を適用すると被告人の原判示所為は、昭利二十四年
四月三十日法律第四十三号酒税法等の一部を改正する法律附則第二十一項により同
法による改正前の酒税法第六十條第十四條刑法第六十二條第一項に該当するところ
情状により右酒税法第六十一條第二項により懲役及罰金を併科し、刑法第六十三條
第六十八條第三号に則り、懲役刑につき従犯減軽をなした刑期及所定罰金額(罰金
等臨時措置法第二條第一項をも適用)の範囲内において被告人を懲役五月及び罰金
三万円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法第十八條に従い金二百
円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し情状により同法第二十五條に則り
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し訴訟費用中原審において証人
Bに支給した分は刑事訴訟法第百八十一條第一項第百八十二條に従い被告人及び原
審相被告人C同Dの連帯負担とし当審における国選弁護人小林盛次に支給した分は
同法第百八十一條第一項に則り被告人の負担とすることゝし主文のとおり判決す
る。
 (裁判長判事 黒田俊一 判事 猪股薫 判事 鈴木進)

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