弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人佐々木良一、同正木亮、同坂野英雄上告趣意第一点について。
 しかし原判決がその判示第一の一として所論摘示のように「Bが……C方を襲い
……D組と同家附近で乱闘をし……EはA方屋内で侵入し来るC方のFを薪で殴打
し」と判示しているばかりでなく、その他原判決の冒頭文及び判示第一事実の冒頭
文をその引用の証拠(第一審第二回公判調書中相被告人G、同H、同I、同J、同
K、同L、同M、同N、第一審第三回公判調書中相被告人B、同E、同F等の各供
述記載並に原審公判調書中相被告人O、Pの各供述記載参照)に対照して判読すれ
ば判示第一事実の一の実行行為担当者数名がQ組を背景としてその威力を示して本
件暴行等を行つたものであることが容易にうなづかれるのである。されば右各冒頭
文において、本件実行行為たる暴行等が相手方に多衆の威力を示してなされたもの
であることを判示しているものであるといえるから原判決には所論のような理由不
備又は擬律錯誤の違法は存しない。
 論旨はそれ故理由がない。
 同第二点について。
 論旨前段は、原判決はその判示第一の一の事実を「被告人AがR外第一審相被告
人Iその他十数名と共に昭和二三年五月五日夜に至り紛争の平和的解決に慊らず且
つD組の来襲は切迫していると思惟し機先を制してC方を襲撃することに決した」
旨判示して被告人Aが共同謀議をした事実を認定しているのであるがこの認定は原
判決の挙示している被告人Aに対する(イ)司法警察官の第二回聴取書(ロ)検事
の第二回聴取書(ハ)同第二回聴取書中の各供述記載だけでは勿論これ等の証拠と
原判決挙示のその他の証拠と綜合してもできないのであるから、原判決には虚無の
証拠によつて事実を認定した違法があると主張しその理由として、第一に原判決が
前述(イ)聴取書中の被告人Aが不良をやつけるようにRに指示した旨の供述記載
をもつて、被告人Aを殴つたSの平素出入しているC方の者等に対する仕返しを意
味するものと解したのは誤りであると同聴取書中の原判決の引用しない供述記載を
根拠として主張しているのである。なるほど、同聴取書中には所論引用の「朝鮮人
には困るし不良にも困るこれらが居らねば市民も喜ぶだろう吾々は之を押へつけね
ばならん」との供述記載はあるがこの供述記載中の「不良」の意味と、原判決引用
の「この際不良の征伐をしてやる」の供述記載中の「不良」の意味とはすこしも異
るところがなくいずれも被告人Aを殴打したS及びC方に出入する者を意味するも
のであることは供述記録の全趣旨に照して推知することができるのであつて、原判
決にはその摘録引用した上告人Aに対する司法警察官の聴取書中の供述記載部分を
所論のようにその趣旨を歪曲引用し前後一連をなす事実のうち中間事実を排斥し後
続事実が別個の意味を有するかの趣旨においてこれを証拠として引用したという違
法は毛頭存在ない。第二には原判決が引用した前述(ロ)の聴取書中の被告人Aの
供述記載の趣旨は仲裁ができなかつた場合にはRの不穏当な行動がなされてもその
結果として生ずべき費用や弁護士に関しては被告人AにおいてRを助けるというに
過ぎないのであつてしかも本件の暴行等は仲裁の進行中に突然にR等によつて決意
されるに至つたものであるから、前示(ロ)の聴取書中の被告人の供述記載自体が
共同謀議の事実を否定しているものであるというにあるが、(ロ)の聴取書中の被
告人Aの供述記載の趣旨は所論のように被告人Aが共同謀議を否定しているもので
なく、原審の理解したように被告人AはTやUに喧嘩の仲裁を任したもののD組と
の争闘を断念したわけでなく乾分等が譲り合わねば仲直りはできずD組との争闘は
さけられないことを熟知していたという趣旨と、解するのが相当であつて所論は失
当である。第三として(ハ)の聴取書中の供述記載は単に被告人Aがその乾分等を
おさえ独自の行動にいづることを禁ずる旨を明言すべきであつたという感想を述べ
ているのにすぎないから共謀の事実認定の資料となすに足らないというにあるが右
供述記載を仔細に検討すると所論のような趣旨のものではなく被告人とその乾分と
の間に行われた本件犯行についての微妙な交渉経過を述べているものに外ならない
から所論はあたらない。されば原判決が挙示(イ)(ロ)(ハ)の各聴取書と原判
決挙示のその他の証拠とを綜合して被告人Aの本件犯行についての共謀の事実を認
定したからといつて原判決には所論のような虚無の証拠によつて事実を認定した違
法は毛頭ない。論旨後段は被告人Aは既に犯意を抱いていたRに対して単に言語上
の助勢をしたのにすぎないのであるから被告人Aの所為は従犯を以て律すべきであ
るというにあるが、仮りに所論のように、Rが上告人Aから「費用云々」の話をさ
れる前既にC方襲撃についてある程度の意図を有していたとしてもこのことの故に
必ず被告人Aは従犯に問擬すべく共同正犯を以つて律してはならないという法はど
こにも存しない。そして判示第一の事実の認定は原判決の挙示する証拠によつてこ
れを肯認することができその間反経験則等の違法は存しないから原判決には所論の
ような違法はない。所論は結局独自の見解に立つて事実審たる原裁判所の裁量権に
属する証拠の取捨乃至事実の認定を非難するにとどまるから上告適法の理由とはな
らない。
 被告人V弁護人小林右太郎上告趣意第一点について。
 銃砲等所持禁止令第一条第一項の規定は銃砲等は法令に基き職務のためにこれを
所持する場合及び同条項所定の各号の一に該当するものについて、公安委員会の許
可を受けた場合でなければ絶対にその所持を禁止する法意であることは明瞭である。
 されば仮りに被告人が本件日本刀を所持するに至つた事由、所持していた時間等
が所論のとおりであるとしても被告人の本件日本刀の所持が同条項に違友するもの
であることは多言を要しない。
 それ故論旨は採用することを得ない。
 同第二点について。
 しかし原判決が判示第三の事実中「正当の事由がないのに拘らず」と判示したの
は、所論のごとく公安委員会の許可をうけるべきに拘らずこれを受けなかつたとい
う趣旨のことを判示したのではなく、単に本件所持罪の成立を阻却する事由がない
のに拘らずという趣旨を念のために説明したのにすぎないこと明らかであるから論
旨前段は採ることができない。次に仮りに被告人が刑事巡査の求めに応じて即座に
本件日本刀を同巡査に差出したとしても必ずしも被告人の本件所持罪の成立を阻却
するものではないのであるから原判決の正当事由ないのに拘らずとの判示は被告人
が本件日本刀を刑事巡査の求に応じて引渡をしなかつたことを指すのでないことは
いうまでもないところである。従つて被告人が刑事巡査に日本刀を引渡さなかつた
わけが被告人において同巡査が日本刀を提出すべく要求した理由を認識していなか
つたからだとしてもかゝる認識の有無は本件所持罪の成否に関係のないことがらで
ある。そして本件所持罪の成立に必要な犯意は被告人が日本刀であることを認識し
ながら自己の実力支配内に置くを以つて足るのであるから、その所持の動機時間等
が所論のとおりであるとしても犯意の存否に消長を来すものではないといわなけれ
ばならぬ。
 されば原判決がその判示第三の事実を認定し被告人を銃砲等所持禁止令に問擬し
たからといつて原判決には所論のような罪とならない事実を認め不法に法令を適用
したのみならず犯意に関し審理不尽の違法あるものとはいうことができない。論旨
は理由がない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年八月一八日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    齋   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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