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平成12年(行ケ)第435号 審決取消請求事件(平成13年5月9日口頭弁論
終結)
          判         決
       原      告   モントル・ロレックス・ソシエテ・アノニ
ム  
       訴訟代理人弁護士   加 藤 義 明
       同    弁理士   アインゼル・フェリックス=ラインハルト
   
       被      告   A
       訴訟代理人弁護士   森     徹
          主         文
      特許庁が平成11年審判第35302号事件について平成12年6月
21日にした審決を取り消す。
      訴訟費用は被告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   被告は、「PRO-LEX」の欧文字を横書きしてなり、商標法施行令別表の区分に
よる第14類「時計」を指定商品とする登録第3369665号商標(以下「本件
商標」という。)の商標権者である。
   本件商標は、ケントレーディングブレイン株式会社(以下「ケン社」とい
う。)が平成6年11月24日に登録出願し、平成10年6月5日に設定登録を受
けた後、プロレックス有限会社が商標権の譲渡を受けて、平成11年6月22日に
その旨の商標権の移転登録がされ、さらに、被告が商標権の譲渡を受けて、平成1
2年1月25日にその旨の商標権の移転登録がされたものである。
   原告は、平成11年6月16日、ケン社を被請求人として、本件商標につき
登録無効の審判の請求をし、平成11年審判第35302号事件として特許庁に係
属したところ、上記本件商標に係る商標権の移転に伴い、プロレックス有限会社及
び被告が、順次被請求人の地位を承継した。
   特許庁は、同審判請求につき審理した上、平成12年6月21日に「本件審
判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年7月19日、原告に
送達された。
 2 審決の理由
   審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件商標は、「ROLEX」の欧文字を
横書きしてなり、旧商標法施行細則(明治42年農商務省令第44号)に基づく区
分による第21類「時計類及其附属品」を指定商品とする登録第125919号商
標(大正9年12月29日登録出願、大正10年2月25日設定登録、昭和16年
1月7日、昭和36年10月31日、昭和47年3月6日、昭和56年6月30
日、平成3年6月26日各存続期間の更新登録、商標権者原告、以下「引用商標」
という。)と類似し、原告の商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあるから、
商標法4条1項11号又は同項15号に該当するにもかかわらず登録されたもので
あるとする原告の主張に対し、本件商標は引用商標と称呼において相紛れるおそれ
がなく、観念においては比較することができず、外観上も区別し得る差異を有する
から非類似であり、また、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者
が、原告の業務に係る商品又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある
者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはな
いから、同法4条1項11号及び15号に違反して登録されたものではないとし
た。
第3 原告主張の審決取消事由
   審決は、本件商標が引用商標と非類似であると誤認し、さらに、本件商標を
指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生ずるおそれはない旨誤った判
断をして、本件商標が商標法4条1項11号及び15号に違反して登録されたもの
ではないとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきで
ある。
 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)
  (1) 審決は、本件商標と引用商標との類否判断をするに当たって、本件商標よ
り「プロレックス」の称呼が、引用商標より「ロレックス」の称呼が生ずる旨認定
した上、「『プロレックス』と『ロレックス』の称呼とを比較するに、両称呼は、
『ロレックス』の音を共通にし、語頭において『プ』の音の有無の差異を有するも
のである。しかして・・・その差異音『プ』は、明確に響く破裂音であるばかりで
なく、称呼の識別上重要な要素を占める語頭に位置していることから、『プ』の音
の有無の差異は両称呼に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼するとし
ても、語韻語調も相違し相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。ま
た、両商標は、特定の意味を有しない造語よりなるものであるから、観念おいては
比較することができないし、外観上も区別し得る差異を有するものである」(審決
謄本4頁30行目~5頁5行目)と判断した。
  (2) しかしながら、本件商標より「プロレックス」の称呼が、引用商標より
「ロレックス」の称呼が生ずること、両称呼の差異音「プ」が破裂音であることは
認めるが、両称呼が相紛れるおそれがないとの判断は誤りである。
    すなわち、一般に促音を伴う音にはアクセントが置かれるため、両称呼は
「レ」の音が強く発音され、その前の「ロ」の音は弱く、本件商標の称呼の「プ」
の音は更に弱く発音され、結果として「プ」の音は印象に残らないから、本件商標
と引用商標とは、称呼において類似する関係にある。
    また、本件商標の要部は「LEX」の文字部分であるといえるから、本件商標
は「レックス」の称呼をも生ずるところ、当該「レックス」の称呼と引用商標より
生ずる「ロレックス」の称呼とは、引用商標の称呼において「ロ」の語頭音を有す
る点においてのみ相違する。そして、上記のとおり、促音を伴う音にはアクセント
が置かれるため、引用商標の称呼は「ロ」の音が弱く、その余の「レックス」の音
は強く発音される結果、両称呼の差異音である「ロ」の音は印象に残るものではな
い。したがって、この点からも、本件商標と引用商標とは、称呼において類似する
関係にある。
  (3) さらに、商標の類否は、取引の実情を明らかにし得る限りこれに基づいて
判断すべきものである。
    そして、引用商標は、本件商標の出願以前から現在に至るまで、原告の製
造販売する商品である時計(以下「原告商品」という。)を表示するものとして、
我が国の取引者、需要者に著名であり、このような著名商標についての類似の範囲
は、そうでない商標に比べて広く認められるべきである。また、被告の経営するケ
ン社は、原告商品の販売を行うとともに、自社の製造に係る時計(以下「ケン社商
品」という。)の販売をも行っているところ、著名な引用商標が付された原告商品
とともに、本件商標を使用してケン社商品を販売するときには、需要者においてケ
ン社商品の出所が原告であるかのように誤認混同することは明らかであり、現に、
ケン社は、殊更このような誤認混同を招来するような方法で本件商標を用いてい
る。
  (4) 上記のような称呼における類似及び取引の実情を総合考慮すれば、本件商
標は引用商標に類似するものであり、商標法4条1項11号に当たるものというべ
きである。
 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性判断の誤り及び同項19号該当性
の看過)
  (1) 審決は、「本件商標は、引用商標『ROLEX』の各文字を有し、かつ、引用
商標が商品『時計』に使用されその著名度を考慮するとしても、なお、本件商標と
引用商標とは・・・非類似の商標であり、互いに相紛れるおそれのない別異のもの
と認識、理解されるものというのが相当である。また、請求人(注、原告)は、本
件商標が・・・フリーライドしようと(注、審決謄本に「フリーライド使用と」と
あるのは誤記と認める。)している意図は明白である、と主張しているが、これを
そうだとは断じ得ない。そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、取
引者、需要者をして、請求人の業務に係る商品若しくは請求人と経済的又は組織的
に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混
同を生ずるおそれはない」(審決謄本5頁13行目~27行目)と判断した。
  (2) しかしながら、審決の上記判断は、本件商標と引用商標とが非類似である
ことを前提とするものであるが、上記1のとおり、本件商標は引用商標に類似する
ものであるから、前提を欠く。
    また、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の出願以前から現在に至る
まで、原告商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者に著名であるとこ
ろ、本件商標は、「PROFESSIONAL」の略語である「PRO」と引用商標の「ROLEX」と
を巧妙に組み合せたもので、本件商標を付した商品の出所の混同を生じさせ、原告
の業務上の信用にフリーライドしようとする意図は明白であり、さらに、上記1の
とおり、被告の経営するケン社が、原告商品の販売を行うとともにケン社商品の販
売も行っており、殊更、需要者にケン社商品の出所が原告であるかのように誤認混
同させる方法で本件商標を使用していることに照らして、本件商標をその指定商品
に使用したときには、取引者、需要者が、原告の業務に係る商品又は原告と経済的
若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の
出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
  (3) したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれが
ある商標として、商標法4条1項15号に当たるとともに、他人の著名商標と類似
する商標を不正の目的をもって使用するものとして、同項19号にも当たるものと
いうべきである。
第4 被告の反論
   審決の認定、判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について
  (1) 原告は、本件商標より生ずる「プロレックス」の称呼と引用商標より生ず
る「ロレックス」の称呼とが類似すると主張するが、誤りである。
    すなわち、両称呼の差異音である本件商標の「プ」の音は、明確に響く破
裂音であるのみならず、称呼の識別上重要な位置であり記憶に残りやすい語頭に位
置するものであるから、本件商標の称呼に接する者の印象に強く残るものであっ
て、両称呼の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいものである。原告は、本件商標
の称呼において「レ」の音にアクセントがあり、その前の「ロ」の音は弱く、
「プ」の音は更に弱く発音されると主張するが、アクセントのある「レ」の音から
間に一音置いた語頭音の「プ」が弱く発音されるということはない。
    また、本件商標の構成がハイフンを介して「PRO」の文字部分と「LEX」の
文字部分とに分離して表され、かつ、「PRO」の語が「PROFESSIONAL」の略語として
親しまれているのに対し、「LEX」の語が特定の意味を直ちに看取させるものではな
く、両者間に一体不可分性がないことから、本件商標は、「プロ」の部分に続き、
感覚的に一拍を置いて「レックス」と称呼され聴取されるものといえる。これに対
し、引用商標は「レ」の音にアクセントを置いて、一息に「ロレックス」と称呼さ
れるものである。したがって、本件商標と引用商標とは、語調上の差異もあり、両
者の称呼はともに簡潔なものであるから、この語調上の差異が称呼の類否に与える
影響も大きい。
    なお、原告は、本件商標の要部が「LEX」の文字部分であり、「レックス」
の称呼をも生ずるとした上、当該称呼と引用商標より生ずる「ロレックス」の称呼
との差異音である引用商標の称呼の「ロ」の音が弱く発音され、印象に残るもので
はないから、本件商標の称呼と引用商標の称呼とが類似するとも主張するが、本件
商標が「LEX」の文字部分のみを要部とすると解する根拠はなく、また、本件商標よ
り「レックス」の称呼が生ずるということも考え難い。のみならず、仮に、本件商
標より「レックス」の称呼が生ずるものとして、これと引用商標より生ずる「ロレ
ックス」の称呼とを対比したとしても、語頭に位置する差異音である引用商標の称
呼の「ロ」の音は語頭音であるから、これが弱く発音され、印象に残らないという
ことはあり得ず、ともに簡潔な両称呼において、語頭音の差異が称呼の類否に与え
る影響は極めて大きいというべきである。
    したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において紛らわしい点はな
い。
  (2) 本件商標と引用商標とが、外観において紛らわしいものでないことは明ら
かであり、さらに、本件商標は特定の観念を看取させるものではないから、両者の
観念については類否判断をすべくもない。
  (3) 商標の類否は、取引の実情を明らかにし得る限りこれに基づいて判断すべ
きものであること、引用商標が原告主張のとおり著名であることは争わない。
    しかしながら、著名商標についての類似の範囲は、そうでない商標に比べ
て広く認められるべきであるとすることは誤りである。商標が著名であることは、
類否判断に当たって考慮される一要素にすぎず、逆に、商標が著名であれば、その
識別力が強いから、他の商標と相紛れる範囲は狭まるともいえるものである。
    また、商標の類否判断において考慮すべき取引の実情とは、当該商標の指
定商品に係る需要者層(専門家であるか一般消費者であるか等)、流通経路、取引
方法、商標の採択の傾向(特定の国の言語が採択される傾向等)及び商標の使用方
法(取引が主として称呼によるのか、構成全体の外観によるのか等)等を意味する
ものであり、この観点によるときは、著名な引用商標が使用されている原告商品が
極めて高価であり、需要者層もいわゆる目が肥えている者が多く、原告商品の購入
に当たっては商標に対しても相当程度の注意を払うことが通常であることを考慮す
べきである。
    これに対し、原告は、被告の経営するケン社が原告商品の販売を行うとと
もにケン社商品の販売をも行っていることを主張するにすぎず、このような指定商
品に関する競業の事実があるからといって、称呼、外観及び観念において非類似の
商標が類似するとはいえない。
  (4) したがって、本件商標が引用商標と非類似であるとした審決の判断に誤り
はない。
 2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性判断の誤り及び同項19号該当性
の看過)について
  (1) 本件商標と引用商標の各指定商品は同一又は類似するものであるから、本
件商標が引用商標と同一又は類似である場合には、商標法4条1項15号の適用の
問題とはならない(同号括弧書き、同項11号)。
    そして、本件商標が原告の著名商標である引用商標と非類似であるにもか
かわらず、なお、引用商標との関係において原告の業務に係る商品と混同を生ずる
おそれがあるとして、商標法4条1項15号に当たるとするためには、少なくと
も、本件商標の構成中に引用商標を構成する文字を有しており、かつ、その文字が
全体から分離独立して看者の目をひくといった特段の事情が必要であるというべき
である。
    しかしながら、本件商標の構成において、「PRO」の文字部分は、それ自体
が「PROFESSIONAL」の略語として親しまれており、「PRO」の文字部分中の「RO」の
部分は「PRO」の文字部分に埋没融合するに至っているから、当該「RO」の部分
が「PRO」の文字部分から分離独立し、かつ、ハイフンを介して分離して表されてい
る「LEX」の文字部分と一体となって「ROLEX」の文字を看取させるというようなこ
とはあり得ない。
    したがって、本件商標については、その構成中に引用商標を構成する文字
を有しており、かつ、その文字が全体から分離独立して看者の目をひくといった特
段の事情は存在せず、被告が本件商標をその指定商品について使用しても、取引
者、需要者がこれを原告又は原告と何らかの関係がある者の業務に係るものと誤認
し、出所を混同するおそれはないから、商標法4条1項15号に当たらない。
  (2) 原告は、本件商標が商標法4条1項19号にも当たると主張するが、審判
において、このような主張はされておらず、したがって審理判断されてもいないか
ら、本件訴訟において、当該主張をすることはできない。
    のみならず、本件商標が同号に当たらないことは、本件商標が引用商標に
フリーライドしようとしているとは断じ得ないとした審決の判断のとおりである。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性判断の誤り)について
  (1) 本件商標より「プロレックス」の称呼が、引用商標より「ロレックス」の
称呼が生ずることは当事者間に争いがないから、まず上記両称呼についてその類否
を検討する。
    上記両称呼は、引用商標の称呼の全体に相当する「ロレックス」の音を共
通にし、本件商標の称呼が上記共通部分の前に語頭音として「プ」の音を有する点
においてのみ相違するものである。そして、本件商標の称呼及び引用商標の称呼と
も、促音を伴う「レ」の音の位置にアクセントがあって、それぞれの構成音のうち
で当該「レ」の音が最も強く発音されることは明らかであるところ、本件商標の称
呼のうち上記共通部分(「ロレックス」の部分)は、促音を含めて5音から成るに
すぎないこともあって、上記「レ」の音が最も強く発音されることにより、引用商
標の称呼全体と単に音を共通にするだけでなく、称呼する際の語感、語調において
も引用商標の称呼全体と極めて近似するものになるものと認められる。本件商標の
称呼は、上記共通部分の前に語頭音として「プ」の音を有しており、また、「プ」
の音が破裂音であることは当事者間に争いがないところ、一般には、語頭音は称呼
の識別上重要な要素を占めるものとされ、また、破裂音が明確に響くものであるこ
とは、審決のいうとおりである。しかしながら、本件商標の称呼にあっては、上記
のとおりアクセントのある「レ」の音と比較して、「プ」の音の識別性が勝るもの
とは認められず、また、上記共通部分が促音を含め5音から成ることを考慮すれ
ば、本件商標の上記共通部分が、引用商標の称呼全体と、単に音を共通にするだけ
でなく、称呼する際の語感、語調においても極めて近似するとの印象を与えること
は明らかであり、この点は、上記共通部分の前に語頭音として「プ」の1音がある
からといって、さほど減殺されるものということはできない。
    したがって、本件商標の称呼は、全体として、引用商標の称呼と相紛らわ
しく、互いに聴き誤るおそれがあるものというべきである。
    被告は、本件商標の構成がハイフンを介して「PRO」の文字部分と「LEX」
の文字部分とに分離して表され、かつ、「PRO」の語が「PROFESSIONAL」の略語とし
て親しまれているのに対し、「LEX」の語が特定の意味を直ちに看取させるものでは
なく、両者間に一体不可分性がないことから、本件商標は、「プロ」の部分に続
き、感覚的に一拍を置いて「レックス」と称呼され聴取されると主張する。しかし
ながら、仮に、被告主張のとおり、本件商標の外観及び観念において「PRO」の文字
部分と「LEX」の文字部分とに一体不可分性がないとしても、これを称呼する場合
に、わずか2音の「プロ」の音の次に一拍置いて「レックス」の音を称呼するもの
とは直ちに認め難く、まして、称呼する際に、そのように一拍置いたように聴取さ
れるものとは到底認め難い。したがって、被告の上記主張は採用することができな
い。
  (2) 他方、本件商標と引用商標とは、外観上は区別することがさほど困難では
なく、外観において類似するとまでいうことはできない。また、弁論の全趣旨によ
れば、本件商標の少なくとも「LEX」の文字部分及び引用商標はそれぞれ造語である
ことが認められるから、両商標の観念は比較すべくもない。
  (3) 進んで、具体的な取引状況について検討するに、引用商標が、本件商標の
出願以前から現在に至るまで、原告商品を表示するものとして我が国の取引者、需
要者に著名であることは当事者間に争いがなく、引用商標と本件商標の各指定商品
が同一であることからすれば、取引の実際において、本件商標を称呼した場合に、
取引者、需要者が馴染みのある引用商標の称呼と聴き誤り、相紛れるおそれのある
ことは明らかである。
    また、被告の経営するケン社が原告商品の販売を行っていることは、被告
において明らかに争わないところ、平成10年10月1日株式会社グリーンアロー
出版社発行の「ロレックス・マスターブックⅡ」(甲第6号証の1)中のケン社店
舗の紹介記事及び同月31日世界文化社発行の雑誌「時計
   Begin」(甲第7号証)中のケン社のPR記事によれば、ケン社は、本件商標
の登録出願当時(平成6年11月24日)、既に東京都港区南青山所在の店舗にお
いて、原告商品の販売の業務を行っており、本件商標の登録査定日(本件商標に係
る商標登録原簿写し(甲第2号証)により、平成10年2月12日と認められ
る。)においても引き続き同様の営業をしていたことが認められる。他方、上記の
とおり、本件商標の登録出願をし、設定登録を受けたのはケン社であるから、本件
商標が指定商品としてのケン社商品に使用されることは、本件商標の出願当初から
予測されたところであるし、上記雑誌「時計Begin」(甲第7号証)中のケン社のP
R記事によれば、現に平成10年に販売を開始したケン社商品に本件商標が使用さ
れていることが認められる。なお、本件商標に係る商標権が、ケン社からプロレッ
クス有限会社を経て被告に移転したことも上記のとおりであるが、ケン社が被告の
経営する会社であることにかんがみれば、本件商標に係る商標権が被告に帰属した
後も、本件商標が指定商品としてのケン社商品に使用される取引状況には変化がな
いものと推認される。そして、本件商標を使用したケン社商品と引用商標を使用し
た原告商品とが同一店舗で販売されれば、その取引に当たって本件商標を称呼した
ときに、取引者、需要者が引用商標の称呼と相紛れ、商品の出所を誤認混同するお
それが更に増すことは明白であるといわなければならない。
    なお、被告は、商標の類否判断において考慮すべき取引の実情とは、当該
商標の指定商品に係る需要者層、流通経路、取引方法、商標の採択の傾向及び商標
の使用方法等を意味するものであり、著名な引用商標が使用されている原告商品が
極めて高価であって、需要者層もいわゆる目が肥えている者が多く、原告商品の購
入に当たっては商標に対しても相当程度の注意を払うことが通常であることを考慮
すべきである旨主張する。しかしながら、上記のとおり、登録出願に係る本件商標
を使用した商品と他人の引用商標を使用した商品とが同一販売者によって同一店舗
において販売される事態が登録出願当時において予測され、かつ、登録査定時にお
いても同様である場合に、両商標の称呼、外観及び観念を総合して商標の類否を全
体的、かつ、具体的に判断するに当たって、このような取引の状況を判断の基礎と
することが妨げられるべき理由はない。また、著名な引用商標が使用されている原
告商品が高価であり、需要者層に目が肥えている者が多いとしても、上記のような
取引の状況の下で、上記各構成よりなる引用商標と本件商標とを的確に識別し、商
品の出所を誤認混同することはないのが通常であるとまで認めることはできない。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
  (4) 以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観において類似するとはいえ
ず、また、観念は対比することができないものの、称呼において類似するものであ
り、かつ、引用商標が著名であること及び本件商標を使用したケン社商品と引用商
標を使用した原告商品とが、ともにケン社によって同一店舗で販売されることが登
録出願当時から予測され、かつ、登録査定時においても同様であるという具体的な
取引の状況に照らせば、取引者、需要者がこれらの商標を使用した商品につき出所
を誤認混同するおそれがあるものというべきであって、これらの事情を総合して全
体的に考察すれば、本件商標は引用商標に類似する商標であると認められる。
 2 以上のとおり、原告の主張する取消事由1は理由があるから、その余の点に
つき判断するまでもなく、審決は違法として取消しを免れない。
   よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の
負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決
する。
  東京高等裁判所第13民事部
    裁判長裁判官 篠   原   勝   美
    裁判官 石   原   直   樹
    裁判官   宮   坂   昌   利

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