弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成18年6月30日判決言渡
平成13年(ワ)第3895号損害賠償請求事件
判決
主文
1被告は,原告らそれぞれに対し,1628万1202円及びこれに対する平
成11年10月27日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。
2原告らのその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負
担とする。
4この判決は1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告ら
(1)被告は,原告らそれぞれに対し,2728万1202円及びこれに対す
る平成11年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
(3)仮執行宣言
2被告
(1)原告らの請求を棄却する。
(2)訴訟費用は原告らの負担とする。
第2事案の概要
本件は,原告A(以下「原告A」という)が,被告が開設する病院におい。
て,女児であるB(以下「B」という)を分娩する際,肩甲難産が発生し,。
Bが重度仮死の状態で娩出され,まもなく死亡したのは,被告病院医師に胎児
仮死の徴候を見落とし,適切な治療を行わなかった過失,肩甲難産が発生する
可能性があったのに帝王切開を選択しなかった過失,肩甲難産が発生した際,
適切な手技を行わなかった過失によるものであるなどとして,Bの両親で相続
人である原告らが,被告に対し,民法715条に基づき損害賠償を求めた事案
である。
1争いのない事実等
(1)当事者等
Bは,平成11年10月27日,原告Cと原告Aの間の子として出生した
が,同日,死亡した(甲1。)
被告は,岐阜県中津川市内においてD病院(以下「被告病院」という)。
を開設している。
E医師(以下「E医師」という)は,平成11年当時,被告病院に勤務。
していた医師である。同人は,平成元年5月医師国家試験に合格後,F医科
大学大学院医学研究科において医学博士号を取得し,同大学付属病院産婦人
科助手を経て,平成7年7月から被告病院産婦人科へ勤務し,平成10年4
月,同病院産婦人科部長となった。
(2)事実の経過
ア原告Aは,平成11年3月4日,被告病院産婦人科を受診し,E医師か
ら妊娠と診断された。分娩予定日は同年11月5日であった。
胎児の推定体重は,同年10月6日(妊娠35週5日)に3183グラ
ム,同月13日(妊娠36週5日)に3354グラム,同月19日(妊娠
37週4日)に3526グラム,同月26日(妊娠38週4日)に434
8グラムであった。
イ原告Aは,同月26日午後4時ころ,破水(前期破水)し,同日午後5
時ころ,被告病院に入院した。
翌27日午前6時ころから,プロスタルモン(陣痛促進剤)の投与が行
われた。
同日午後8時50分ころ,子宮口全開大となり,分娩室に入室した。
同日午後9時50分ころ,クリステレル圧出法(腹壁上から子宮底に手
をあてて,胎児の背部を母体脊柱方向に押し,児頭を娩出する手技)と吸
引分娩(急速遂娩術の一つで,児頭に吸着させた吸引カップを牽引するこ
とにより胎児を娩出させる手技)が行われ,同日10時13分ころ,児頭
が娩出するも,肩甲娩出困難となり,分娩が停止した。
原告Aは,同日午後10時30分ころ,手術室に搬送され,同日午後1
0時59分,Bが娩出されたが(児体重4852グラム,重度仮死の状)
態であった。
被告病院医師により,蘇生措置がなされたが,同日午後11時30分,
Bの死亡が確認された。Bの死亡の原因は肩甲難産によるものであった。
ウその他,平成11年10月26日及び同月27日の診療経過は,別紙1
診療経過一覧表(争いがない)記載のとおりである。
(3)胎児仮死の一般的知見(甲3ないし5,乙4ないし8,鑑定)
ア胎児仮死とは,原因を問わずに,胎児一胎盤系の呼吸循環不全を主徴と
する症候群をいう。
胎児仮死の診断は,分娩監視装置の胎児心拍数図によって行うのが一般
的である。分娩監視装置は,妊婦を仰臥位にして,その腹部に測定装置を
バンドで固定して,胎児心拍数,陣痛による腹圧を計測する装置である。
分娩監視装置による胎児心拍数の計測においては,妊婦の体動による心
拍計のずれや胎動による胎児の位置の変化により,胎児心拍数が記録され
なかったり,胎児心拍数図によれば徐脈に見えても,分娩監視装置が母体
心拍を記録している場合がある。その場合,母体の脈拍を触診し,母体脈
拍数を確認するか,超音波断層装置によって胎児心拍を確認する。
イ胎児心拍数図による胎児仮死診断には,胎児心拍数基線の持続性徐脈,
遅発一過性徐脈,高度変動一過性徐脈,胎児心拍数基線細変動消失の4種
の異常心拍数変動がある。
遅発一過性徐脈とは,一過性徐脈の最少点(心拍数が最も減少した点)
が陣痛波形のピークから18秒以上遅れており,これが反復継続し,各徐
脈が同じ波形をしている状態をいう。
胎児仮死と診断すべき場合については「産婦人科医療Vol.66,
No.5」に掲載された「特集・産婦人科緊急の実際2.胎児仮死とそ
の対策(甲4「産婦人科最新診断治療指針新訂第5版(乙4)に」),」
よれば,この状態が15分間持続した場合とされ「看護要員の医療事故,
防止のために異常発見のためのチェックポイント(分娩・新生児管
理(甲3)によれば,遅発一過性徐脈が3回以上連続して出現した場)」
合とされている。
ウ分娩経過中に胎児仮死に陥った場合,母体の体位変換,酸素吸入,陣痛
抑制などの経母体治療を行う。
胎児仮死の所見が消失すれば,経過観察とし,胎児仮死の所見が不変又
は悪化したときは急速遂娩術を行い,胎児仮死が重症のときは経母体治療
を行いながら急速遂娩術を行うべきである。
(4)肩甲難産等の一般的知見(甲2,8,9,11,乙12,15,鑑定)
ア肩甲難産とは,児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ,肩甲娩出の
困難な状態のため,児の娩出が不可能な状態をいう。
肩甲難産の発生機序は,骨盤入口部における肩の通過障害である。通常,
成熟胎児においては,頭部周囲が体幹のどの部位の周囲よりも大きく,正
常の分娩経過において,頭部が娩出された後は,胎児の体幹はそれに追従
して円滑に娩出される。しかし,胎児の肩甲周囲が児頭周囲より大きかっ
たり,肩甲帯の嵌入などの場合には,児頭が娩出されたあとも,肩甲部が
産道を通過できにくい状態に陥る。
イ肩甲難産の胎児合併症には,娩出遅延による胎児仮死や胎児死亡,肩甲
娩出に伴う神経叢損傷や骨折がある。
肩甲難産に遭遇した児は短期的にも長期的にもその罹病率,死亡率は高
いとされ,その周産期死亡率は19/1000から286/1000との
報告,予後の死亡率は16パーセントとの報告がある(甲2,鑑定。)
ウ肩甲難産の危険因子は,分娩前の因子として,①巨大児,②糖尿病,③
母体肥満,④母体体重過剰増加,⑤過期妊娠,⑥母体高年齢,⑦既往肩甲
難産,⑧既往巨大児分娩,⑨扁平骨盤・狭骨盤・変形骨盤が,分娩中の因
子として,①分娩第2期遷延,②陣痛促進剤使用,③中在鉗子又は吸引分
娩がある。
中でも,胎児の大きさが最も強く肩甲難産に相関しており,巨大児(わ
が国では,4000グラム以上の児を巨大児という)出生の危険因子が。
いずれも肩甲難産の危険因子になる。
児体重と肩甲難産の関係について,児体重が4000グラム以下だと肩
甲難産頻度は1パーセント程度であるのに対し,4000グラムを超える
と,4500グラムまでは10パーセント,4500グラムを超えると2
3パーセントとなるとの報告(鑑定「4000グラム以上の巨大児分),
娩において60例中1例の割合で起きる」との報告(甲2「0.2~。),
0.5パーセント。しかし,児体重が4000グラム以上の新生児の5~
15%,4500グラム以上の児の35%に肩甲難産が起こる」との報告
(甲8)がある。ただ,巨大児でなくとも肩甲難産は起こり得るもので,
肩甲難産の18パーセントが出生体重3500グラム以下で発生している
との報告もある(鑑定。)
その他の危険因子と肩甲難産の関係について,自然分娩では肩甲難産頻
度が0.16パーセントであるのに対し,分娩第2期遷延,中在鉗子など
の処置群では4.6パーセントと高率となり,分娩第2期遷延,中在鉗子
又は吸引分娩に児体重4000グラム以上の因子が加わると,23パーセ
ントに上昇するという報告がある(鑑定。)
また「産婦人科最新診断治療指針新訂第5版(甲8)では,肩甲,」
難産の発生が予測される場合として「①子宮底長が40センチメートル以
上の時,②超音波計測で胎児の胸部経が大横経より13ミリメートル以上
多い時,③胸囲が頭囲より16ミリメートル以上大きい時,④腹囲が頭囲
より15ミリメートル以上大きい時,⑤分娩第2期が遷延し,骨盤中位で
分娩が停止した時。こういう時に鉗子分娩か吸引分娩を行うと肩甲難産の
発生が6~10倍に増える」との報告に基づき「上記のように肩甲難。,
産が予測される時には,児頭が娩出される前に帝王切開する」とし,。
「周産期の母児管理4版(甲9)でも「肩甲難産は起こしてしまっ」,
てからではもう遅い。あくまでも,その発生を防止しなくてはならない。
今までは帝切の適応に『肩甲難産の発生を予防(回避)するため…』とい
う項目はなかったかもしれない。しかし今日ではその起こってからの障害
のことを考えるなら立派にあり得るだろう」とする。。
他方「CLINICALMANAGEMENTGUIDELIN,
ESFOROBSTETRICIAN-GYNECOLOGISTS
NUMBER40,NOVEMBER2002(アメリカ産婦人科学」
会による肩甲難産に関するガイドライン,鑑定)では「巨大児や母体の,
糖尿病は肩甲難産のリスクを増すといわれているが,かなりの症例は,糖
尿病をもっていない女性や4000グラム未満の児で発生する「それ。」,
ぞれのケースで危険因子を識別することは可能であるが,それにより臨床
方針を決定するのに役立つほどの肩甲難産の高い的中率ではない「肩。」,
甲難産を予測したり,予防することはできない。なぜなら,どの胎児がこ
の合併症を経験するかを識別する正確な方法が存在しないからである。巨
大児分娩が疑われる妊婦全員に選択的分娩誘発や選択的帝王切開をするこ
とは適切ではない」とする。。
エクリステレル圧出法は,吸引分娩の牽出力補助のため通常行われる手技
である。しかし,子宮胎盤循環を悪化させるため胎児仮死を助長する可能
性がある。また,高い位置からの吸引分娩とクリステレル圧出法の実施は,
軟産道の十分な拡張が得られず,また,肩甲がより高い位置にあるため,
肩甲難産の発生に影響を及ぼす可能性がある(甲11,鑑定。)
オ吸引分娩の適応は,胎児仮死,分娩第2期における分娩停止又は分娩遷
延,回旋異常,軟産道強靱,母体疲労,母体腹圧不全,母体合併症(妊娠
中毒症,心疾患合併など,双胎第2児分娩,帝王切開時の児頭娩出であ)
る(甲11。)
吸引分娩の要約は,原則として子宮口が全開大していること,破水して
いること,経膣分娩が可能であること,CPD(児頭骨盤不適合)がない
こと,先進部が児頭で少なくとも骨盤濶部まで下降していること,母体の
膀胱・直腸が空虚なことである(甲11。)
吸引分娩において,児頭が比較的高い位置の中在以上にあるときには肩
甲難産の危険が増し,吸引分娩施行に当たっては児頭の下降をできるだけ
待つ慎重さが求められる(鑑定。)
カ児頭下降度の表現法として,坐骨棘間線を基準に児頭先進部との距離を
標記する表現方法(ステーションの表現法)のほか,児頭先進部の高さに
よるのではなく,外診,内診所見から総合して骨盤内における児頭の最大
周囲径の位置を,高在・中在・低在・出口部と表現する方式などがある。
両表現方式の関係については,正常分娩における平均的な所見は別紙2対
応関係表のとおりである(甲13,乙15,鑑定。)
2原告らの主張
(1)胎児仮死に対する処置を怠った過失
ア一過性徐脈の最少点(心拍数が最も減少した点)が陣痛波形のピークか
ら30秒から40秒以上遅れて出現する状態を遅発一過性徐脈といい,こ
の状態が3回以上持続すれば胎児仮死と診断される。
分娩経過中,胎児仮死に陥った場合,母体の体位変換,酸素吸入,陣痛
抑制等の経母体治療を行う必要がある。これにより,胎児仮死の所見が消
失すれば経過観察とし,同所見が不変又は悪化した場合は,吸引分娩,鉗
子分娩,帝王切開などの急速遂娩術を行い,胎児仮死が重症の場合は,経
母体治療を行いながら急速遂娩術を行う。
本件では,平成11年10月27日午後7時00分20秒ころに1回目
の遅発一過性徐脈が,同日午後7時05分50秒ころに2回目の遅発一過
性徐脈が,同日午後7時15分30秒ころに3回目の遅発一過性徐脈が発
生し,更に,同日午後7時50分ころから徐脈が継続していた。
イそうとすると,同日午後7時00分20秒ころには,胎児仮死の徴候で
ある遅発一過性徐脈が発生したのであるから,被告病院医師には,速やか
に経母体治療を行うべき注意義務があった。それにもかかわらず,被告病
院医師はこれを怠り,同日午後10時30分ころに行われた酸素投与まで,
経母体治療を行わなかった過失がある。
経母体治療が奏功すれば,Bは胎児仮死に陥ることなく,死亡しなかっ
た。
ウそうでなくとも,同日午後7時15分30秒ころ,3回目の遅発一過性
徐脈が発生したのであるから,被告病院医師は,重度の胎児仮死と診断し,
直ちに急速遂娩術を行うべき注意義務があった。そして,その時点におけ
る子宮口開大9センチメートルであったものの,軟産道が強靱で伸展性が
悪く,胎児が巨大児であることが予測されたのであるから,吸引分娩ない
し鉗子分娩による急速な経膣分娩が困難であると判断した場合,経母体治
療を行いながら帝王切開に切り替えるべき注意義務があった。それにもか
かわらず,被告病院医師は,これを怠り,急速遂娩術を行うことなく,漫
然と経膣分娩を行った過失がある。
被告病院医師が同日午後7時15分30秒ころに重度の胎児仮死と診断
し,急速遂娩術を行っていれば,Bは死亡しなかった。
エまた,胎児仮死のある場合,陣痛促進剤であるオキシトシンの投与は禁
忌とされている。Bには,同日午後7時00分ころから遅発一過性徐脈が
発生し,更に,同日午後7時50分ころから徐脈が継続していたから,同
日午後8時05分ころには胎児仮死が明白であった。
したがって,被告病院医師には,オキシトシンの投与を差し控えるべき
注意義務があった。それにもかかわらず,被告病院医師は,これを怠り,
オキシトシンの点滴投与を開始した過失がある。
Bは,オキシトシンの投与により胎児仮死が増悪し,死亡するに至った。
(2)分娩方法選択の過失
ア本件では,平成11年10月26日における胎児の推定体重は4348
グラムの巨大児と予測され,本件分娩前の原告Aの体重は95キログラム,
子宮底長は43センチメートルであった。原告Aは,同日,前期破水し,
同日午後5時の入院時の子宮口開大3センチメートルであったが,翌27
日午後0時でも子宮口開大度に変化はなく,分娩は停止していた。
したがって,本件では,肩甲難産の可能性が高く,経膣分娩は困難であ
ったから,被告病院医師には,同日午後0時の時点で,帝王切開を選択す
べき注意義務があった。それにもかかわらず,被告病院医師は,これを怠
り,経膣分娩を選択した過失がある。
Bは,これにより肩甲難産となり,死亡した。
イ被告病院医師は,同日午後9時50分ころ,クリステレル圧出法を単独
で施行した上で,同手技と併せて吸引分娩を行った。
肩甲難産の危険因子として,分娩前には,巨大児であることが,分娩中
には,陣痛促進剤の使用,分娩第2期の遷延,中在の鉗子分娩又は吸引分
娩があげられる。分娩第2期の遷延,中在鉗子分娩又は吸引分娩という危
険因子に,児体重4000グラム以上の巨大児という危険因子が加わると,
肩甲難産の発生率は23パーセントとなる。そのため,巨大児で中在にお
ける分娩第2期遷延あるいは分娩停止の場合は帝王切開を選択すべきであ
るとされている。
本件は,分娩前に4348グラムの巨大児と予測され,分娩中に中在に
おける分娩第2期遷延ないし分娩停止があり,吸引分娩を行えば,肩甲難
産となる可能性が高く,帝王切開を選択すべき症例であった。
さらに,本件では,吸引分娩が行われた同日午後9時50分ころ,児頭
先進部がステーションプラス2に下降しておらず,吸引分娩の要約も満た
していなかった。また,クリステレル圧出法は,子宮胎盤循環を悪化させ
て胎児仮死を助長する可能性があり,児頭が骨盤出口部にあり,1回から
2回の圧出で分娩しないような状況において,クリステレル圧出法を単独
で施行することは適切でない。
したがって,被告病院医師には,同日午後9時50分の時点で,吸引分
娩を差し控え,帝王切開を選択すべき注意義務があった。それにもかかわ
らず,被告病院医師は,これを怠り,クリステレル圧出法を単独で施行し
た上で,同手技と併せて吸引分娩を行った過失がある。
Bは,これにより肩甲難産に陥り,死亡した。
(3)肩甲娩出術施行上の過失
肩甲娩出術としては,McRoberts法,Woodsのスクリュー法
(Rubin法,Schwarz法,Zavanelli法があり,中で)
もMcRoberts法は,欧米では広く用いられ,最良の肩甲娩出術とさ
れている。
肩甲難産となった場合,胎児を速やかに娩出させなければ予後が不良であ
るから,被告病院医師には,胎児の状態に応じて上記の各種手技を施行し,
胎児を速やかに娩出させるべき注意義務があった。それにもかかわらず,被
告病院医師は,肩甲娩出術について十分な知識がないまま,胎児の肩甲を回
転させるWoodsのスクリュー法と思われる手技を繰り返し行ったのみで,
最も有効とされるMcRoberts法のほか,他の手技を行わなかった過
失がある。
これにより,胎児の娩出が遅れ,Bが死亡するに至った。
(4)被告の責任
被告病院に勤務する医師の診療行為は,医師としての職務を執行するに当
たって行われたものであるから,被告は,民法715条に基づき,被告病院
医師の上記の過失によりB及び原告らが被った損害を賠償する責任がある。
(5)損害
ア逸失利益
Bは,平成11年10月27日生まれの女子であり,18歳から67歳
までの49年間働き,この間少なくとも女子労働者の平均賃金額に等しい
収入を得たはずであるから,平成10年度賃金センサス第1巻第1表,産
業計,企業規模計,全年齢計の女子の平均賃金の年間合計金341万79
00円を基礎とし,生活費としてその3割を減じ,年5分の割合による中
間利息をライプニッツ方式により控除して,Bの死亡による逸失利益の現
価を求めると,1806万2405円となる。
(計算式)
3,417,900×(1-0.3)×(19.2390-11.6895)=18,062,405
イ慰謝料
Bは,被告病院医師の過失により,生後間もなく死亡するに至った。そ
の両親である原告らの精神的苦痛は筆舌に尽くしがたく,その慰謝料は原
告らそれぞれにつき1500万円を下回らない。
ウ葬儀費用
Bの死亡により,原告らはBの葬儀を行った。本件の不法行為と相当因
果関係にある葬儀費用は原告らそれぞれにつき75万円を下らない。
エ弁護士費用
本件の不法行為と相当因果関係にある弁護士費用は原告らそれぞれにつ
き250万円を下らない。
(6)よって,原告らそれぞれは,被告に対し,民法715条に基づき,27
28万1202円及びこれに対する不法行為の日である平成11年10月2
7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める。
3被告の主張
(1)原告らの主張(1)(胎児仮死に対する処置を怠った過失)に対する反論
分娩監視装置は,母体を仰臥位にして,その腹部に測定装置をバンドで固
定して,胎児心拍数,陣痛による腹圧を計測するものであるが,母体の体動,
胎児の胎動,母体の体格(母体が肥満体で腹部の皮下脂肪層が厚い場合)な
どによって,胎児心拍数が記録できないことがあり,逆に母体の心拍数が記
録されることがある。
原告らが一過性徐脈の最少点と主張している部分は,母体の体動,胎児の
胎動,母体の体格などが原因で胎児心拍数の記録が取れず,母体自身の心拍
数が記録されてしまった部分である。遅発一過性徐脈と判定するためには,
胎児心拍数が表示された部分から連続した波形で把握されなければならず,
本件のような断続的な波形をもって,遅発一過性徐脈があったとはいえない。
このように,平成11年10月27日午後7時ころ,分娩監視装置によっ
て胎児心拍数が記録されなかったため,助産婦がドップラーで胎児心拍数を
聴診したところ,胎児心音は良好であった。
したがって,同日午後7時ころに胎児仮死ないしその徴候はなかったから,
被告病院医師には,胎児仮死に対する処置として経母体治療及び急速遂娩術
を行うべき注意義務も,陣痛促進剤の投与を差し控えるべき注意義務もなか
った。
(2)原告らの主張(2)(分娩方法選択の過失)に対する反論
ア被告病院医師に平成11年10月27日午後0時の時点で帝王切開を行
う注意義務はなかった。
そもそも肩甲難産は予測不可能で避けられない。母体肥満で巨大児出産
が疑われる場合,常に帝王切開をしなければならないとする医学的根拠は
ない。児体重の推定には誤差があるし,肩甲難産の危険因子があったとし
てもその発生頻度は低く,そのすべてについて帝王切開を選択すれば膨大
な不必要な帝王切開を行うことになる。
胎児の推定体重が4348グラム,妊婦の体重が95キログラムという
本件症例は,担当医師が,陣痛・産道・胎児の状態や分娩経過と今後の分
娩経過の予測を総合的に判断して,分娩方法の選択及びその施行時期を決
定すれば足り,その裁量に委ねられるべき症例である。
米国の産婦人科学会は,5000グラム以上の体重が推定される場合,
帝王切開を勧めており,日本においては明確な取り決めはないが,450
0グラム以上を帝王切開とするという意見が多い。本件では4500グラ
ム以上の児体重を推定しておらず,帝王切開の適応はない。
イ被告病院医師に平成11年10月27日午後9時50分の時点で,吸引
分娩を差し控え,帝王切開を選択すべき注意義務はなかった。
同日午後9時50分ころの時点で児頭先進部はステーションプラス2ま
で下降していた。児頭が十分に下降し吸引分娩に適した状態になっていた
からこそ,E医師らは,吸引分娩を行うことができた。カルテにはこの記
載がないが,分娩室に入室した同日午後8時50分ころ以降は,肩甲難産
となる緊急事態が発生したため,カルテを記載する暇がなくなったにすぎ
ない。
分娩の進行は,子宮口の開大・児頭の下降度・子宮口の軟らかさなどが
相互に関連して進行する。理論的には子宮口が開大するにつれて児頭も下
降するが,実際には必ずしもそのように進行するとは限らず,子宮口の開
大が進まなくても児頭の下降が進む場合もあるし,その逆もある。また,
分娩の進行経過は,急激に変化することはよくあり,同日午前9時ころか
ら午後6時ころまで児頭の下降等が進行していないからといって,当然に
同日午後9時50分の時点でも同様であったとは判断できない。
巨大児,母体肥満のほか,陣痛促進剤の使用や分娩第2期の分娩停止な
いし分娩遷延をもって,帝王切開の絶対的適応とする医学的根拠はない。
また,中在とは,児頭先進部がステーションプラスマイナス0,骨盤潤部
にある場合を指し,ステーションプラス2は,ステーションプラス3に近
く,むしろ低在の方にあり,本件が肩甲難産の危険因子である中在以上の
吸引分娩であったとはいえない。
そもそも,吸引分娩開始の判断は,産道の状態,陣痛の状態,胎児の状
態を総合的に判断して決めるものであり,臨床における医師の裁量が許さ
れる範囲の問題である。
(3)原告らの主張(3)(肩甲娩出術施行上の過失)に対する反論
E医師が肩甲難産と判断してから行った処置は,以下のとおりであって適
切であり,同医師らの処置に過失はない。
E医師は,まず,分娩の進行にあわせて行っていた母体下肢の開大と母体
腹部への下肢の屈曲をより強く行わせ,さらに看護師,助産婦の介助も加え
て屈曲を補助し,肩甲難産の軽減に努めた(McRoberts法。)
これとほぼ同時に助産師,医師によって恥骨結合上縁部(下腹部のほぼ中
央付近)に触れる胎児の前在肩甲(母体の腹側にある胎児の肩)を斜め45
度下方へ向かって押し下げつつ,もう1名の医師が娩出している児頭を下方
に牽引して胎児の娩出に努力した(恥骨結合上縁部圧迫法。)
分娩の進行が認められなかったため,下腹部の圧迫,母体のいきみを一時
中断させ,医師の手を児頭の後頭部側から膣内に挿入し,胎児の後在肩甲
(母体の臀部側にある胎児の肩)を押しながらゆっくり回転させ,後方にあ
った肩を回旋させつつ恥骨結合の下を潜らせて娩出させようと試みた(Wo
odsのスクリュー法。)
手の挿入が困難であり,胎児の回旋による分娩の進行が行われなかったた
め,より余裕があると考えられる母体臀部側の膣下方側から手を挿入し,児
の後在の上肢(母体の臀部側にある胎児の腕)をつかみ,それを胎児の胸か
ら顔をぬぐうようにして膣外へ脱出せしめ,分娩を進行させるように試みた
(後在上肢介出法Schwarts法。本件では,腕をつかめなかったた)
め,この方法は成功しなかった。
以上の4つの手技を手を変えて何回も試みたが,娩出には至らなかった。
そのため,最後の手段として,児頭を膣内に還納して帝王切開術へ切り換
えることも考え,手術室への移送の準備をした。
子宮収縮剤の投与を中止し,児頭の後頭部が恥骨結合側(母体の腹側)に
くるように回旋をさせ,さらに屈位にして膣内に児頭を挙上させようと試み
た(児頭再配置法。)
手術室へ到着後,母体の疼痛,緊張,不安をとるために,鎮痛剤・鎮静剤
の投与を行い,帝王切開術の準備を行った。この間にも医師2名の管理によ
り,再度,上記の肩甲娩出術を試みたところ,帝王切開を行う前に経膣分娩
に至った。
第3当裁判所の判断
1前記争いのない事実等,証拠(甲1,7,乙1ないし3,10,11,証人
E(第1,2回,証人G,原告A,鑑定)及び弁論の全趣旨によれば,以下)
の事実が認められる。
(1)妊娠から入院までの経過
原告Aは,平成11年3月4日,被告病院においてE医師から妊娠と診断
された。分娩予定日は同年11月5日であった。
胎児の推定体重は,同年10月6日(妊娠35週5日)に3183グラム,
同月13日(妊娠36週5日)に3354グラム,同月19日(妊娠37週
4日)に3526グラムであった。
E医師は,同日,骨盤レントゲン検査の結果,CPD(児頭骨盤不適合)
がなく,経膣分娩が可能であると診断した。
(2)入院後の経過
原告Aは,平成11年10月26日午後4時ころ,破水(前期破水)し,
同日午後5時ころ,被告病院に入院した。
同日,胎児の推定体重4348グラム,原告Aの体重94.8キログラム,
子宮底長43センチメートルであった。子宮収縮は弱く不規則で陣痛発来は
なかった。子宮口3センチメートル開大,児頭先進部ステーションマイナス
2,展退度70パーセント,子宮頸部の硬さ軟,子宮口の位置前方であった。
胎児心音は良好,羊水は黄色で漿液性できれい,BTB(テストテープによ
る羊水反応試験)は陽性であった。
E医師は,翌27日までに胎児が娩出されなければ,分娩誘発を行うこと,
経膣分娩を基本としながらも状況によっては帝王切開を行うこととし,その
準備として原告Aに絶食するよう指示した。
翌27日(以下,特に断りがない限り,日付は「平成11年10月27
日」を指す,自然陣痛の発来がないため,E医師は,原告Aに対し,分。)
娩誘発が必要であることと,帝王切開を行う可能性があることを説明したと
ころ,原告Aは,経膣分娩を希望するも,状況によっては帝王切開もやむを
得ない旨回答した。
午前6時ころから午前9時ころまでの間,1時間ごとに,分娩誘発剤プロ
スタルモンE2の内服投与(1回1錠・合計4錠)がされたが,有効な陣痛
発来はなく,子宮口3センチメートル開大,児頭先進部ステーションマイナ
ス2,展退度50パーセント,子宮頸部の硬さやや軟,子宮口の位置中央で
あった。
午前9時ころから,毎時60ミリリットルの速度でプロスタルモンの点滴
投与が開始された。
(3)分娩第1期の経過
ア午前9時30分ころ,陣痛が開始した(分娩第1期。)
同時ころ,プロスタルモンの点滴投与を毎時70ミリリットルに増量さ
れ,その後,概ね30分毎に毎時10ミリリットルずつ増量され,午後5
時ころには,毎時220ミリリットルの速度で投与された。
午後0時ころ,子宮口3センチメートル開大,展退度60パーセント,
児頭先進部ステーションマイナス2,子宮頸部の硬さやや軟,子宮口の位
置中央,陣痛間歇は3分から4分(陣痛発作40秒)であった。
午後3時30分ころ,子宮口4センチメートル開大,児頭先進部ステー
ションマイナス1からマイナス2,子宮頸部の硬さやや軟,子宮口の位置
中央,陣痛間歇は2分から3分(陣痛発作40秒)であったほか,産瘤形
成があった。
午後5時20分ころ,子宮口4センチメートルから5センチメートル開
大,展退度80パーセント,児頭先進部ステーションマイナス1からマイ
ナス2,子宮頸部の硬さ軟,子宮口の位置前方であった。回診した被告病
院医師は,児頭下降が少しずつあることを確認し,もうしばらく点滴管理
を行うこととした。
午後5時50分ころ,ブスコバン1管が筋肉注射された。
午後6時ころ,子宮口8センチメートル開大,展退度80パーセント,
児頭先進部ステーションマイナス1,子宮頸部の硬さ軟,子宮口の位置前
方,陣痛間歇は50秒(陣痛発作60秒)であった。回診した被告病院医
師は,子宮収縮が続けてあることを確認し,プロスタルモンの点滴投与を
毎時220ミリリットルから180ミリリットルに減量した。
午後7時10分ころ,子宮口9センチメートル開大,展退度90パーセ
ントから100パーセント,陣痛間歇は1分30秒(陣痛発作50秒)で
あった。プロスタルモンの点滴投与が毎時200ミリリットルに増量され
た。
午後8時5分ころ,プロスタルモンに換えて,毎時50ミリリットルの
速度でアトニンOの点滴投与が開始された。
イ午後2時12分ころから午後8時40分ころまで,分娩監視装置によっ
て胎児心拍数が記録された(乙3号証⑥。)
胎児心拍数図上,午後2時15分ころ以降,胎児の心拍基線の記録に,
時折,数秒間から1分間程度の途切れが見られ,午後2時40分ころから
午後2時55分ころまで及び午後6時10分ころから午後6時20分ころ
までは,胎児の心拍基線がほとんど記録されていないが,その前後の胎児
の心拍基線は120bpmから160bpm程度である。
また,午後3時42分ころからは5分間程度連続して,70bpmから
80bpm程度の心拍基線が,午後6時4分ころから午後6時20分ころ
までは時折,70bpmから90bpm程度の心拍基線が記録されている
が,入院診療録中の助産録(乙2・27頁ないし32頁,以下同じ)に。
おける午後6時5分の胎児心音の欄には「140~120」との記載があ
る。
その後,午後7時ころまでの胎児の心拍基線は140bpmから170
bpm程度であったが,それ以降から午後7時50分ころまでは,150
bpm程度と80bpm程度の心拍基線が,所々途切れつつ交互に記録さ
れ(150bpm程度と80bpm程度の心拍基線は連続していない,。)
午後7時50分ころから胎児心拍数モニタリングが一旦終了した午後8時
40分ころまで,80bpm程度の心拍基線が途切れ途切れに記録されて
いるが,入院診療録中の助産録における午後7時10分の胎児心音の欄に
は「良,午後8時の欄には「155,午後8時25分の欄には「14」」
0~150」との記載がある。
(4)分娩第2期の経過
午後8時50分ころ,原告Aは,分娩の準備のため分娩室へ移動した。分
娩介助には,E医師及び被告病院助産婦Gのほか,被告病院医師H(以下
「H医師」という)が立ち会った。。
同時ころ,子宮口全開大となり(分娩第2期,自己努責(腹圧)が開始)
され,アトニンOが毎時70ミリリットルに増量された。入院診療録のカル
テ(乙2号証・13頁ないし24頁,以下同じ)における午後8時50分。
の欄には「自己のいきみで児頭下降(+」との記載がある。)
午後9時50分ころ,E医師は,母体の疲労から自己努責のみでは不十分
と判断し,陣痛を助けるため,クリステレル圧出法を数回行った後,会陰切
開の上,同手技と併せて吸引分娩を行った。吸引の際,児頭に装着する吸引
カップが数回滑脱した。
午後10時13分ころ,児頭が娩出されたが,両側肩甲が娩出せず肩甲難
産となり,分娩が停止した。
(5)肩甲難産発生後の経過
E医師らは,自己努責の促し,クリステレル圧出法に加え,母体の恥骨に
引っかかっている胎児の肩部に手を添えて旋回を助けるという手技を繰り返
し行った。その際,カテーテルによる胎児の気道確保は行われなかった。
その後も両側肩甲が娩出しなかったことから,原告Aは,午後10時26
分ころ,帝王切開の準備のため手術室へ向けて搬送され,午後10時30分
ころ,手術室へ入室した。
E医師らが,帝王切開の準備を待つ間,再度,上記の手技により経膣分娩
を促したところ,午後10時59分ころ,4852グラムの女児であるBを
経膣分娩した。Bは重度仮死の状態であった。
被告病院医師により,蘇生措置がなされたが,午後11時30分,Bの死
亡が確認された。
2原告らの主張(1)(胎児仮死に対する処置を怠った過失)について
(1)本件の胎児心拍数図には,平成11年10月27日午後7時ころから午
後7時50分ころまで,150bpm程度と80bpm程度の心拍基線が所
々途切れつつ交互に記録され,原告らが遅発一過性徐脈が生じたと指摘する
3つの箇所で陣痛波形のピークに遅れて80bpm程度の心拍基線が記録さ
れている。また,同日午後7時50分ころから午後8時40分ころまで,8
0bpm程度の心拍基線が途切れ途切れに記録されている(前記第3,1
(3)イの認定事実。)
その他,同日午後2時15分ころ以降,時折,数秒間から1分間程度の途
切れが見られたり,同日午後2時40分ころから午後2時55分ころまで及
び同日午後6時10分ころから午後6時20分ころまで,心拍基線がほとん
ど記録されていない部分があるほか,同日午後3時42分ころからは5分間
程度連続して70bpmから80bpm程度の心拍基線が記録され,午後6
時4分ころから7時ころまでも時折70bpmから90bpm程度の心拍基
線が記録されている(前記第3,1(3)イの認定事実。)
(2)ところで,分娩監視装置による胎児心拍数の計測においては,妊婦の体
動による心拍計のずれや胎動による胎児の位置の変化により,胎児心拍数が
記録されなかったり,母体心拍を記録する場合がある(第2,1(3)の認定
事実。)
本件の胎児心拍数図のうち,上記(1)で認定された部分の前後の心拍基線
を見ると,概ね120bpmから160bpm程度の正常脈の領域にあり,
特段の異常所見は認められない。そして,一過性徐脈の場合でも心拍基線は
連続して記録されること(甲3,鑑定,成人の標準心拍数は80bpmか)
ら90bpm程度であり,原告Aの入院時の脈拍は84であること(乙2・
28頁,29頁,証人E)からすれば,上記(1)で認定された心拍基線が途
切れている部分は,心拍計のずれや胎動による胎児の位置の変化により胎児
心拍数が記録されなかった部分であり,70bpmないし90bpm程度の
心拍基線が記録されている部分は,母体心拍が記録された部分であると推認
される(鑑定。)
そうとすると,同日午後7時ころから遅発一過性徐脈が生じたとも,同日
午後7時50分ころから継続した徐脈が生じたとも認められない。
したがって,原告らの主張(1)は採用できない。
3原告らの主張(2)(分娩方法選択の過失)について
(1)まず,被告病院医師に平成11年10月27日午後0時の段階で帝王切
開を行う注意義務があったか否かにつき検討する。
平成11年10月26日における胎児の推定体重は4348グラムの巨大
児と予測され,本件分娩前の原告Aの体重は95キログラム,子宮底長は4
3センチメートルであったこと,原告Aは,同日,前期破水し,同日午後5
時の入院時の子宮口開大3センチメートルであったが,翌27日午後0時で
も子宮口開大度に変化はなく,分娩は停止していたことなどの事情は存する
ものの,肩甲難産が発生する絶対的な確率は高いものではなく,その後の分
娩経過に応じて帝王切開に移行することも可能である。
担当医師において原告Aに肩甲難産の危険性を説き,同人が帝王切開を希
望するなどの事情があれば別段,原告Aも強固ではないにせよ経膣分娩を希
望していた本件においては,同日午後0時の段階で直ちに帝王切開を選択す
べき注意義務があったとは認められない。
(2)次に,被告病院医師に平成11年10月27日午後9時50分の時点に
おいて,吸引分娩は差し控え,帝王切開を選択すべき注意義務があったか否
かにつき検討する。
アまず,平成11年10月27日午後9時50分までに存在した肩甲難産
の危険因子につき検討する。
(ア)巨大児及び母体肥満
本件は,原告Aが被告病院に入院した平成11年10月26日,胎児
の推定体重は4348グラム,原告Aの体重は94.8キログラム,子
宮底長は43センチメートルであり,巨大児出産が,ほぼ確実視された
(前記第3,1の認定事実。)
(イ)陣痛促進剤の使用
平成11年10月27日午前6時ころから午前9時ころまでの間,1
時間ごとに,陣痛促進剤であるプロスタルモンE2の内服投与(1回1
錠,合計4錠)が行われ,同日午前9時ころから,プロスタルモンの点
滴投与が,同日午後8時5分ころ,同じく陣痛促進剤であるアトニンO
の点滴投与がそれぞれ開始された(前記第3,1の認定事実。)
(ウ)分娩第2期遷延の可能性
分娩第2期とは,子宮口全開大から娩出までの期間をいい,分娩第2
期遷延及び停止に明確な定義はなく,諸説あるが,一般的には,分娩第
2期遷延は,初産婦で2時間以上の遷延をいい,分娩第2期停止とは,
1時間以上の児頭の下降停止をいう(鑑定。)
本件では,平成11年10月27日午後8時50分ころ,子宮口全開
大となって分娩第2期に入ったが,その1時間後の同日午後9時50分
にクリステレル圧出法と吸引分娩が行われているため,同時点において
分娩第2期遷延に該当するとは断定できないし,胎児の下降停止の有無
についても,定かではない(乙2。)
とはいえ,分娩第2期に入ってから既に1時間が経過した時点で,自
己努責が不十分であるとして,午後9時50分以降,クリステレル圧出
法が単独で数回行われた上で同手技と併せて吸引分娩が行われたところ,
その23分後に児頭を娩出したなどの吸引分娩の開始に至るまでの分娩
経過に照らせば,児頭の下降は思わしくなく,同時点において吸引分娩
を行わなければ,分娩第2期遷延ないし停止となっていた可能性が相当
程度あったものと推認される。
イ次に,同日午後9時50分の時点における児頭降下度につき検討する。
(ア)入院診療録中の助産録の平成11年10月27日午後6時5分の欄
に「SP-1,カルテの同日午後8時50分の欄に「自己のいきみで」
児頭下降(+」との記載があるのみで,吸引分娩が行われた同日午後)
9時50分ころの具体的な児頭下降度に関する記載はなく,証人Eも証
人Gも,吸引分娩施行時の児頭下降度について明確な供述をしていない
ことから,吸引分娩を開始した際の児頭先進部の位置は確定できない。
すなわち,児頭先進部がステーションプラス2に達していたとも,いな
かったとも,断定できない。
もっとも,同日午後9時50分以降に,クリステレル圧出法を数回行
った上,同手技と併せて吸引分娩を行ったこと,その23分後に児頭を
娩出したこと,通常,児頭先進部がステーションプラスマイナス0以下
であれば吸引カップの装着が可能であること(鑑定)に照らせば,児頭
先進部は少なくともステーションプラスマイナス0程度に達していたと
は認められる。
(イ)ところで,児頭下降度の表現法としては,ステーションの表現法の
ほか,高在・中在・低在・出口部と表現する方式があり,両表現方式の
関係については,正常分娩における平均的な所見は別紙2対応関係表の
とおりであって(前記第2,1(4)の認定事実,通常の場合,ステー)
ションプラス2は,後者の表現方法によれば中在と低在の境界域に相当
するということができる(鑑定。しかし,骨盤の深さ,形に個人差が)
あり,同じステーションでも嵌入の度合いが異なって,ステーションに
よる高さの表現のみでは産道内での児頭下降の程度が正確に看取できず,
特に,胎児が大きい場合,通常の胎児に比べて児頭の先進部と最大周囲
径の距離が長い上,大きな児頭は強く横経する傾向にあり,横経変化に
応じて児頭の最大周囲径は先進部から離れてくるため,ステーションプ
ラス2でも中在にあると推定される(甲13,乙15,鑑定。)
児頭先進部がステーションプラスマイナス0程度であったとすれば,
児頭の最大周囲径が中在に位置していたことは明らかであるが,仮に,
児頭先進部がステーションプラス2にあったとしても,Bが巨大児であ
ったことからすると,児頭の最大周囲径は,未だ中在に位置していたと
認められる。
ウ被告病院医師の注意義務の内容について
一旦,肩甲難産に陥った場合,児の死亡や重篤な後遺症の発生等,その
予後は極めて不良であるところ,産科臨床において,その発生を予測すべ
く肩甲難産の危険因子が指摘されているものの,肩甲難産の発生を胎児娩
出前に正確に診断する基準は確定されていない(前記第2,1(4)の認定
事実。)
そうとすると,分娩管理に当たる医師としては,肩甲難産発生の可能性
を予測させる因子を常に念頭におき,診療当時の臨床医学の実践における
医療水準に即し,可能な診断方法を総合して,母児に対する分娩前及び分
娩中における臨床上の危険因子及びその徴候を発見し,それを総合するこ
とを通じて,肩甲難産発生の可能性を予測し,これを前提とした分娩管理
に努めなければならない。
本件においては,前記ア,イの認定事実からすると,平成11年10月
27日午後9時50分の時点において肩甲難産の危険因子及びその徴候が
存在し,肩甲難産の発生が十分に懸念されるべき症例であったということ
ができる。
そうとすると,被告病院医師としては,急速遂娩術として吸引分娩を選
択するにしても,中在からの吸引分娩,クリステレル圧出法は差し控えて
十分な児頭下降を待って行い,その結果,十分な児頭下降が見られず,分
娩第2期遷延ないし停止や著しい母体疲労等経膣分娩に不利になる事情が
生じた場合には,帝王切開に移行するという注意義務があり,平成11年
10月27日午後9時50分の時点では直ちに帝王切開をすべき義務があ
ったとまでは認めがたいものの,吸引分娩,クリステレル圧出法を差し控
え経過を観察すべき義務があったということができる。
エ被告病院医師の注意義務違反について
E医師は,児頭が中在にあった同日午後9時50分ころ,漫然と単独で
クリステレル圧出法を数回行った上で,同手技と併せて吸引分娩を行った
というのであるから,上記注意義務に違反する。
オこの点,被告は,肩甲難産は予測不可能で避けられない,巨大児,母体
肥満のほか,陣痛促進剤の使用や分娩第2期の分娩停止ないし分娩遷延を
もって,帝王切開の絶対的適応とする医学的根拠はない,児体重の推定に
は誤差があるし,肩甲難産の危険因子があったとしてもその発生頻度は低
く,そのすべてについて帝王切開を選択すれば膨大な不必要な帝王切開を
行うことになる,本件症例における吸引分娩開始の判断は,産道の状態,
陣痛の状態,胎児の状態を総合的に判断して決めるものであり,臨床の現
場における医師の裁量事項であると主張し,鑑定人Iも,肩甲難産の可能
性からの吸引分娩の適否の判断は微妙である,児頭の最大周囲部分は内診
などにより骨盤形態,児頭の変形・回旋を判断して推定するもので,一律
に規定できない,分娩管理をしていた医師が適と判断したものを否といえ
るような医学的根拠を挙げるのは困難であるとし,本件のクリステレル圧
出法,吸引分娩の実施を適切であったとする。
確かに,危険因子があったとしても肩甲難産の発生頻度は低く,不必要
な帝王切開を避けるべきであるとの指摘は一般論としては首肯し得る。し
かし,一旦,肩甲難産に陥ったならば,児の死亡ないし重篤な後遺症を完
全に回避する術がないことに照らせば,本件のように肩甲難産の危険因子
が幾重にも重なった場合,更なる危険因子の発生に繋がる事態を回避する
よう努め,その後の分娩経過の如何によっては帝王切開に移行するという
担当医師の注意義務を否定するまでの根拠とはならない。
また,分娩機序の複雑さとその個別性に照らせば,分娩方法の選択及び
実施は,医師の高度の知識,経験に基づく専門的裁量に属するとはいい得
る。しかし,その裁量は全くの自由裁量ではなく,診療当時の臨床医学の
実践における医療水準に即し,十分な資料の収集とそれに対する高度の知
識と経験に基づく適切な評価に裏打ちされたものでなければならない。
本件では,午後9時50分の時点において,巨大児出産がほぼ確実視さ
れ,陣痛促進剤が使用されたほか,分娩第2期遷延ないし停止となるおそ
れがあったのであるから,担当医師は肩甲難産発生の可能性について常に
念頭におき,これを前提とした分娩管理に努めなければならなかった。し
かし,担当であるE医師は,同時点において早急に急速娩出術を実施しな
ければならない事情も窺われないのに,肩甲難産の危険性を高める中在に
おける吸引分娩,クリステレル圧出法を併用したというのであるから,そ
の分娩管理において肩甲難産発生の可能性を全く念頭に置いていなかった
というべきであり,結局,同医師は,その裁量を逸脱したものといわざる
を得ない。
したがって,被告の同主張は採用できない。
4原告らの主張(3)(肩甲娩出術施行上の過失)について
(1)被告病院医師の注意義務の内容について
ア肩甲難産に対する処置は複数あるが,概要,以下の手技により娩出を図
るものとされている(甲8,9,乙12,鑑定。)
(ア)鼻と口をよく拭き,吸引器に連結したカテーテルで口腔内,鼻腔内
を吸引して気道を確保する。
十分な会陰切開を行う。
(イ)まず,恥骨結合上縁部の圧迫を行う。
助手が恥骨結合上縁部に触れる児の前在肩甲を斜め45度下方で,か
つ胎児胸部に向かって側方へ押し下げる。その間,通常通りの力で児頭
を下方に牽引する。この処置によって肩甲幅を骨盤入口の斜径に一致さ
せることにより,前在肩甲が恥骨結合裏側で骨盤腔内に引き下げられて
くる。
(ウ)次に,McRoberts法を行う。
2人の助手が,それぞれ母体の下腿をつかんで母体の腹部の方へ大腿
を強く屈曲させる。この姿勢は仙骨を腰椎に対して伸展させ,腰椎と仙
骨とをほぼ一直線にさせることにより恥骨結合は頭側へ移動する。その
結果,骨盤入口角が減少し,つかえていた前在肩甲は解除される。体位
の変換だけで成功しない場合は,恥骨結合上方の圧迫法も併用する。
(エ)上記方法でも成功しない場合,努責を中止させ,Woodsのスク
リュー法を行う。
術者の手指を後頭部の後方から膣内に挿入し,児の後在肩甲を押しな
がらゆっくり回転させ,後方にあった肩を回旋させつつ恥骨結合の下を
潜らせて肩甲を解除する。
(オ)上記方法でも成功しない場合,Shuwartz法を行う。
術者の手指を腔内に挿入し,後在上腕に沿って肘に到達させ,前腕を
屈曲させ胎児の手をつかみ,胎児の胸を横切ってはわせながら膣外へ介
出する。この処置のみで分娩が進行することが多いが,不可能であれば
躯幹を回旋させ,後在上腕を前方にまわして児を娩出させる。
(カ)前在鎖骨又は上腕骨を故意に骨折させて娩出させることもある。
(キ)最後の手段として,児頭を膣内へ還納して帝王切開する手技である
Zavanelli法を行う。
イ以上のとおり,肩甲難産に陥った場合は,気道の確保及び十分な会陰切
開を行った上,恥骨結合上縁部の圧迫,McRoberts法,Wood
sのスクリュー法,Shuwartz法,Zavanelli法の施行に
より娩出を図るとされる。
中でも,恥骨結合上縁部の圧迫及びMcRoberts法は,比較的安
全かつ容易に行える手技であり,肩甲難産に対する処置について記載があ
る「産婦人科最新診断治療指針新訂第5版(甲8「周産期の母児管」),
理4版(甲9「研修ノート(No.55)巨大児と肩甲難産(鑑」),」
定)のいずれもが他の手技に先立ち施行すべきとしている。
McRoberts法については,その成功率は20パーセントから5
0パーセントとする報告(甲8)があるほか「研修ノート(No.5,
5)巨大児と肩甲難産」によれば「この方法により,胎児の肩にかかる,
牽引力は減少し,腕神経叢の伸展,鎖骨骨折の頻度は減少することを母体
骨盤と胎児のモデルを用いた実験により,証明されている」とされてい。
る(鑑定。)
そうとすると,肩甲難産となった際,被告病院医師としては,胎児を速
やかに娩出すべく,状況に応じて各種手技を施行すべきであり,少なくと
も,胎児の気道確保及び十分な会陰切開をした上,恥骨結合上縁部の圧迫
及びMcRoberts法を施行すべき注意義務があったというべきであ
る。
(2)被告病院医師の注意義務違反について
E医師及びH医師は,カテーテルによる気道確保を行うことなく,自己努
責の促し,クリステレル圧出法に加え,母体の恥骨に引っかかっている胎児
の肩部に手を添えて旋回を助けるというWoodsのスクリュー法に相当す
る手技を繰り返し行ったのみで,恥骨結合上縁部の圧迫及びMcRober
ts法を施行しなかったのであるから,上記注意義務に違反する。
(3)この点,被告は,E医師及びH医師は,恥骨結合上縁部の圧迫,McR
oberts法,Woodsのスクリュー法,Shuwartz法を施行し
たが,これらが成功しなかったため,最後の手段として,児頭を膣内に還納
して帝王切開術へ切り換えること(Zavanelli法)も考え,手術室
への移送の準備をした旨主張し,これに沿う証人E(第2回)及び同人の陳
述書(乙12)がある。
しかし,証人Eは,1回目の尋問において,カテーテルによる気道確保に
ついては,呼吸運動ができないため,理論上ではあっても,実際の現場では
見たことがなく,今回のケースでも行っていない旨明確に述べるとともに,
肩甲娩出術についても,自己努責の促し,クリステレル圧出法に加え,母体
の恥骨に引っかかっている胎児の肩部に手を添えて旋回を助けるという手技
を繰り返し行った旨明確に述べている。
同証人は,2回目の尋問において,上記のように多種多様な施術を駆使し
たかの如く供述しているが,前の供述内容に照らし,その変遷は著しく,い
かにも不自然であり,1回目の尋問の段階で原告らが肩甲娩出術に関する過
失の主張をしていなかったことを考慮しても,その変遷に合理性は見いだせ
ない。
また,肩甲娩出が極めて困難な事例としては,大学病院におけるチーム医
療の際,その一員としてWoodsのスクリュー法やShuwartz法が
施行されたのを見た程度である旨の同証人の供述内容,肩甲難産に陥ってか
ら分娩に至るまで都合46分間を要した本件の分娩経過に照らせば,多種多
様な肩甲娩出術を駆使したとする上記供述それ自体も不合理である。
したがって,証人Eの2回目の供述は信用できず,被告の同主張は採用で
きない。
5被告病院医師の過失行為とBの死亡との因果関係について
Bの死亡の原因は肩甲難産に陥り肩甲娩出が遅延したことにあるところ,肩
甲難産の周産期死亡率に照らせば,上記3,4の注意義務違反がなければ,早
期に肩甲を娩出し,Bの死亡が回避された高度の蓋然性が認められる。
6被告の責任
被告は,E医師ら被告病院医師の使用者であって,以上のとおり,Bが死亡
したのは被告病院医師の過失によるものであるから,被告は民法715条によ
りB及び原告らが被った損害を賠償する責任がある。
7損害
(1)逸失利益
Bは,平成11年10月27日生まれの女子であり,18歳から67歳ま
で稼働可能であり,その間,女子労働者の平均賃金額に等しい収入を得るこ
とができ,全期間について生活費として収入の3割を必要としたものと推認
される。そして,年5分の割合による中間利息の控除はライプニッツ方式に
よるのが相当であるから,以上を基礎として,本件事故当時の逸失利益の現
価を算出すると,1806万2405円となる。
(計算式)
3,417,900×(1-0.3)×(19.2390-11.6895)=18,062,405
(2)慰謝料
本件に現れた一切の事情を斟酌すると,Bの両親である原告ら固有の慰謝
料は,原告らそれぞれにつき500万円と認めるのが相当である。
(3)葬儀費用
本件における被告病院医師の不法行為と相当因果関係のある葬儀費用は原
告らそれぞれにつき75万円と認めるのが相当である。
(4)弁護士費用
本件における被告病院医師の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相
当の損害額は,原告らそれぞれにつき150万円と認めるのが相当である。
8結論
以上によれば,原告らの請求は,被告に対し,それぞれ1628万1202
円及びこれに対する不法行為の日である平成11年10月27日から支払済み
まで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれ
を認容し,その余は棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第6部
裁判長裁判官内田計一
裁判官安田大二郎
裁判官高橋貞幹

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