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平成28年9月29日宣告
平成28年(わ)第246号,同第367号過失運転致死傷,道路交通法違反被
告事件
主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人は,平成28年3月17日午前6時45分頃,広島県福山市a町bc
番地de自動車道下りfサービスエリア付近道路において,同年1月5日から
のほぼ連続した長時間勤務による過労のため,正常な運転ができないおそれが
ある状態で,中型貨物自動車を運転した。
第2被告人は,同年3月17日午前6時45分頃,前記中型貨物自動車を運転し,
前記fサービスエリアを発進するに当たり,蓄積した疲労から同サービスエリ
アに到着するまでに何度も眠気を催し,再び運転を開始すれば同様に眠気を催
し前方注視が困難な状態になるおそれがあったから,厳に運転を差し控えるべ
き自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,その運転を開始した過失に
より,同日午前7時26分頃,広島県東広島市g町he自動車道下りiキロポ
スト付近に位置するjトンネル内の第1通行帯(走行車線)を岡山県方面から
山口県方面に向けて時速約77キロメートルで進行中,仮睡状態に陥り,同ト
ンネル内で渋滞のため停止中のA運転の普通乗用自動車に気付かないまま進
行し,自車との衝突を回避するため第2通行帯(追越車線)に待避しようとし
たA運転車両左後部に自車右前部を衝突させ,その前方で停止していたB運転
の普通乗用自動車後部に自車前部を激突させた上,自車前部でB運転車両を前
方に押し出して自車もろとも進行しながら,その前方で停止していたC運転の
普通乗用自動車(軽自動車)後部にB運転車両前部を衝突させるなどしてC運
転車両を第2通行帯にはじき飛ばし,その際,同車前部をその前方で停止して
いたD運転の普通乗用自動車後部に衝突させて転回させ,同車右側面部をその
前方で停止していたE運転の普通乗用自動車(軽自動車)後部に衝突させ,同
様に自車前部でB運転車両を前方に押し出して自車もろとも進行しながら,D
運転車両左側面部に衝突させるなどし,同車及びE運転車両を次々と第2通行
帯にはじき飛ばした上,同車を転覆させ,同様に自車前部でB運転車両を前方
に押し出して自車もろとも進行しながら,その前方で停止していたF運転の普
通乗用自動車後部に衝突させて同車を第2通行帯にはじき飛ばし,同様に自車
前部でB運転車両を前方に押し出して自車もろとも進行しながら,その前方で
停止していたG運転の中型貨物自動車後部に衝突させるなどし,さらに,自車,
B運転車両,G運転車両,E運転車両及びF運転車両を次々と炎上させて上記
トンネル内に黒煙を充満させるなどし,よって,B(当時34歳)を,その頃,
同所において,火傷死させ,C(当時65歳)に脳挫傷の傷害を負わせ,その
頃,同所において,同傷害により死亡させるとともに,A運転車両に同乗して
いたH(当時53歳)に黒煙の吸入による全治2日間を要する一酸化炭素中毒
の傷害を,D(当時50歳)に加療約10日間を要する頭部打撲等の傷害を,
E(当時39歳)に加療約2週間を要する頸椎捻挫等の傷害を,F(当時58
歳)に加療約22日間を要する横紋筋融解症等の傷害を,上記のとおり通行が
困難となった上記トンネル内を徒歩で避難していたI(当時46歳)に黒煙の
吸入による加療約30日間を要する一酸化炭素中毒の傷害を,同様に避難して
いたJ(当時25歳)に黒煙の吸入による全治約2週間を要する一酸化炭素中
毒の傷害を,同様に避難していたK(当時32歳)に転倒等による加療約23
日間を要する頸椎捻挫等の傷害を,同様に避難していたL(当時31歳)に転
倒による加療約1週間を要する両側手掌挫創,左膝関節挫傷の傷害を,それぞ
れ負わせた。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
・罰条
判示第1の行為道路交通法117条の2の2第7号,66条
判示第2の行為死亡又は負傷した被害者ごとに自動車の運転により
人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本

・科刑上一罪の処理判示第2について,刑法54条1項前段,10条(1
個の行為が10個の罪名に触れる場合であるが,死
亡した被害者2名に対する各過失運転致死罪の犯
情の軽重を決することができないので,一罪として
過失運転致死罪の刑で処断)
・刑種の選択いずれも懲役刑を選択
・併合罪刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第
2の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定
の加重)
・未決勾留日数の算入刑法21条
・訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件の量刑に当たって重視されるべきは,本件事故により被害者2名が死亡し,
被害者8名が傷害を負ったという結果の重大性である。被害者らは,渋滞や本件事
故のために本件トンネル内で停止を余儀なくされた車両の運転者又は同乗者であり,
何らの落ち度がないにもかかわらず,本件各被害に遭ったものである。死亡した被
害者2名は逃げる間もなくその場で絶命したものであり,その無念さは察するに余
りある。かけがえのない家族を失った遺族の悲しみは深く,処罰感情が強いのも当
然といえる。負傷した被害者8名の身体的・精神的苦痛も大きい。
被告人は,自身が過労状態にあり,運転を開始すれば眠気を催し前方注視が困難
な状態になるおそれがあることを認識しながら,運転を差し控えることをせずに運
転を開始した結果,仮睡状態に陥り,渋滞のために停止中の車列に気付くことなく,
本件事故を引き起こしたものである。被告人が職業運転手であることを考えると,
本件過失は重大である。
他方,本件過失につながる被告人の過労は,被告人が勤務会社から十分な休息時
間や休日を確保できないほど連日長時間にわたって過酷な勤務を強いられ,労働時
間の短縮や休日の取得等を運行管理者に申し出ることも困難な状況にあったことに
由来するものである。そうすると,本件事故が発生した要因は勤務会社にもあると
いうべきであり,被告人のみに本件事故の責任を負わせるのは酷であるから,上記
のとおり本件の結果及び過失の重大性に照らせば,被告人を相当期間の実刑に処す
ることはやむを得ないとしても,本件が過失運転致死傷の事案において特に重い部
類に属するとまではいえない。
そこで,被告人運転車両に係る対人賠償無制限の損害賠償責任保険により各被害
者に対する損害賠償がされる見込みがあること,被告人が本件各犯行を認め反省の
態度を示していることなど,被告人のために酌むべき事情を考慮し,被告人には主
文の刑を科すのが相当であると判断した。
(検察官山名論平,同岩本直人,弁護人井上道各出席)
(求刑懲役6年)
平成28年9月29日
広島地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官丹羽芳徳
裁判官武林仁美
裁判官藤村香織

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