弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
○ 事実
控訴人ら代理人は、「原判決を取消す。被控訴人総理府総務長官が昭和三六年一二
月九日付で控訴人A、同B、同Cに対してした懲戒処分を取消す。被控訴人総理府
統計局長が昭和三六年一二月九日付で控訴人D、同E、同Fに対してした懲戒処分
を取消す。被控訴人人事院が昭和四四年九月一九日付で控訴人ら六名に対してした
不利益処分審査請求事案に関する判定を取消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控
訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、控訴棄却の判決を
求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、次に訂正、付加するほか、原判決事実摘示のと
おりであるから、それをここに引用する。
一 訂正
原判決二六枚目表三行目の「○○」を「○○」と訂正し、同裏五行目の「(右改
正」の次に「前」を加える。
二 控訴人らの主張
本件処分が懲戒権の濫用にあたる旨の主張について、次のとおり補足する。
1 本件処分の理由となつている控訴人らの行為(以下「本件行為」という。)の
性質
本件行為は、個人的、私的な破廉恥行為とは全く異なり、憲法上保障された勤労者
の団結権に基づいて組織された団体の意思に則し、実施された団体行動そのもので
ある。
2 本件行為の原因・動機
(一) 職場大会開催の原因・動機
統計職組は、左記のような当局の不当な労務管理に対し、その改善を求める職場要
求をしていたのであるが、これに対し、当局は不誠実な対応しかしなかつたので、
組合員の不平不満が高揚し、職場改善要求の実現を主たる目的とし、職場大会が開
催されるに至つたのである。
(1) 生理休暇の病欠扱い
当局は、予算上の制約なしに、すぐにでも改めることのできる生理休暇の病欠扱い
を容易に改めず、本件行為後の昭和三六年一二月八日、ようやく右扱いを廃止する
に至つた。
(2) 生理休暇手続の簡素化
当局は、生理休暇手続についても容易に改めず、前同日、ようやく届出用紙の記載
事項の記載方式を届出人の自筆から印刷による方式に変更した。
(3) 個人日報制、能率グラフの掲示
当局は、存続させることに問題のある個人日報制及び能率グラフの掲示を容易に廃
止しようとしなかつた。
(4) 生理休暇、産前産後休暇の取得による昇給延伸等
当局は、生理休暇、産前産後休暇の取得による昇給延伸等の不当な扱いをしていた
が、統計職組がこの問題を人事院に持ち込むまで改めようとしなかつた。
(5) 職業病に対する措置
統計職組は、遅くとも昭和三五、六年ころから、当局に対し、職業病に対する予防
措置をとることを訴えてきたが、当局にはこれに積極的に取組もうとする姿勢がみ
られなかつた。その後、キーパンチヤーの労働条件は改善されたが、それは、同四
三年、公務災害認定者を出すに至つたため、ようやく腰を上げ、改善について譲歩
をしたにすぎない。
(6) 勤務管理担当官制度の設置
当局は、同三六年一〇月五日、勤務管理担当官制度を導入したが、同制度は、統計
職組が男性を中心とした執行部支配の組合ではなく、大多数を占める女子組合員の
意向を正しく反映する全組合員の組合に移行したので、当局がこれを抑圧するため
に設置したものである。
(二) 職場オルグ活動の原因・動機
当局が、職場大会に参加した組合員九十余名に対し、他の官庁にはみられない賃金
カツトをしたため、このことを問題としかつ、前記のような職場改善の要求につい
て、国公共斗の指揮、指示、指導のもとに、統計職組以外の外部組合の組合員多数
の支援を得て、職場オルグ活動が行われるに至つたのである。
3 本件行為の態様
統計局において従来行われてきた職場オルグ活動は、休憩時間内に始まり、若干勤
務時間にくい込んで終了するのが通例であり、当局もこのことを許容し、少くとも
放任していたのである。控訴人らの職場オルグ活動も、従来の例により行われたも
のであるにすぎない。
そして、控訴人らの職場オルグ活動のうち一部のものについては、従来行われてき
た同活動に比し、勤務時間へのくい込みが若干上廻つているが、これは、職制が組
合員多数の要求を容れ、合意のうえで話合つたことによるものか、若しくは写真撮
影を行うなど勤務管理担当官ら職制側の挑発があつたため、控訴人らの意に反して
事態が紛糾したことによるもので、いずれも、偶発的、突発的なものであり、組織
的計画的なものではなかつた。
また、控訴人A、同B、同Cは、職場オルグ活動をめぐり、紛糾が生じた場所に当
初からいたものではなく、いずれの場合でも、ことに原判決摘示の抗弁(二)2
(10)、(12)、(13)の場合には、紛糾が生じたのち、急を聞いてその場
に馳せつけ、組合員らと当局側勤務管理担当官らとの間に立ち、事態を収容するた
め努力したのである。
また、控訴人らは多数の職員を同時に勤務から離脱させ、あるいはその勤務を妨げ
たことはなく、統計職組の組合員である多数の職員が、休憩時間を経過し、勤務時
間内に入つても、各自、任意自発的に、職場オルグ活動、話合あるいは集会に参加
し、又は勤務に従事しなかつたにすぎない。
4 本件行為の結果、影響
前記引用にかかる原判決事実摘示二、五(二)3(原判決三八枚目裏一行目から同
八行目まで)と同一である。
5 控訴人らの地位・役割
控訴人らは、いずれも、本件行為当時、たまたま統計職組の役員等の地位にあつた
ため、統計職組の意思決定を忠実に実行したにすぎない。特に、控訴人Aは、本件
行為が行われた昭和三六年、初めて執行委員長となり、統計職組の組合員のうち圧
倒的多数を占める女子組合員の要求事項を実現するため専心努力したのであつて、
上部の国公共斗の企画、指示、指導と右組合員の総意との間に立ち、執行委員長と
しての職務を忠実に行つたにすぎない。
6 控訴人Aに対する免職処分の不当性
控訴人A、同B、同Cの本件処分理由となつている行為を比較してみると、右三名
の行為の間に大差はなく、職場大会において、右三名は、いずれも、「指揮」と書
かれた腕章を着用し、控訴人Aが、そのほかに、「執行委員長」と書かれた腕章を
着用していたにすぎない。また、職場オルグ活動についても、控訴人Aの原判決事
実摘示の抗弁(二)2(4)、(8)、(10)、(12)、(13)に記載され
ている行為、控訴人Bの同二2(3)、(6)、(10)、(11)、(13)に
記載されている行為、控訴人Cの同(二)2(2)、(5)、(9)、(12)、
(13)に記載されている行為、すなわちいずれも五か所での行為が本件処分の理
由とされているのであるが、右三名のうち控訴人Aだけが免職とされるのは、首肯
するに足りる理由を欠いている。
三 控訴人らの主張に対する被控訴人総理府総務長官、同総理府統計局長の反論
次のような諸般の事情に照らせず、本件処分が、社会観念上著しく妥当を欠き、裁
量権の濫用によるものとみる余地はないものというべきである。
1 控訴人らの主張1について
職場大会の開催に関する控訴人らの行為が統計職組の執行委員、代議員、婦人部委
員で構成する合同委員会の決定に従うものであるとしても、右決定は、明らかに、
法律上禁止されている争議行為を行うことを目的とするものであるから、控訴人ら
がこのような違法な決定を執行する責務を負うとは到底いえない。控訴人らは、統
計職組の執行委員長又は幹部として、国公共斗の指令に基づくとはいえ、前記のと
おり、右合同委員会の違法な決定に関与し、職場大会の開催を企画し、指導し、実
行したのであるから、右企画が統計職組の機関の決定によるものであるとしても、
当然責任を負うべきである。
2 控訴人らの主張2について
(一) 同2(一)について
当局は、後配のとおり、統計職組の要求事項に対し誠意をもつて対応し、そのうち
実現できるものの大半が昭和三六年又は三七年中に実現をみている。
(1) 同2(一)(1)について
当局は、当初から、生理休暇を病欠として処理していたことはなく、忌引と同様、
特別休暇として処理していたのである。
(2) 同2(一)(2)について
生理休暇手続の簡素化とは、生理休暇届出用紙の様式を変更し、同用紙の記載のう
ち自筆によるものを大量に省略することができるようにすることをいうものと解さ
れるが、このような様式の変更は労務管理の当不当とは全く無関係であり、届出手
続の簡素化であるにすぎない。この簡素化は昭和三六年以降実施されている。
(3) 同2(一)(3)について
個人日報制については、作業内容の点検という業務上の必要からその廃止が見送ら
れていたが、昭和三七年ころから、組日報にまとめる方法で、その廃止が実現し
た。
(4) 同2(一)(4)について
生理休暇、産前産後休暇の取得による昇給延伸の問題については、昭和三五年一〇
月七日統計職組からの依頼をうけ、人事院審査課が調査し、翌年二月ころ結論を下
したのであるが、人事院当局としては、生理休暇、産前産後休暇による昇給延伸が
行われていたとの事実を認定したことはなく、統計局及び統計職組双方の主張を聞
き、前者に対しては誤解を招くような勤務評定をしないように、後者に対しては生
理休暇、産前産後休暇の申請を濫用しないようにとそれぞれ勧告し、この問題につ
いて終止符が打たれたのである。
(5) 同2(一)(5)について
統計職組は、昭和三六年四月末ころから、キーパンチヤーの職業病の問題につい
て、職業病対策と称し、具体的な行動を示し始めた。
このような行動を契機として、統計職組と統計局総務課長との間の交渉も何回か行
われ、その結果、昭和三六年中に、騒音対策としての耳栓の支給、疲労防止策とし
ての足台の支給その他の設備の改善が行われ、キーパンチヤーに対する特別検診
も、同年秋を第一回として、以後毎年実施されることとなつたのである。本件処分
が行われたのちに実施された職業病対策としては、休憩室の設定(昭和三七年実
現)、更衣室の設定(同年実現)、扇風機(昭和三八年実現)の設置、個人日報の
組日報への移行(昭和三七年実現)がある。
キーパンチヤーの職業病としての手指障害の問題は、昭和三七年以降、次第に社会
的な注目を集めるようになつたのである。そして、民間労働者の右職業病に対する
対策としては、昭和三八年に至り、初めてI・B・Mユーザー協議会が作業に関す
る自主調整基準を設定し、労働省も、各都道府県労働基準局長に対し、同年二月八
日付基発第一一二号をもつて、キーパンチヤーの健康管理について通達したのであ
る。右通達は、穿孔作業時間、休憩時間、穿孔数、健康管理、作業室の広さ照明、
騒音、湿度その他の項目について、行政当局として、初めて言及した作業基準であ
る。ついで、労働省は、都道府県労働基準局長に対し、昭和三九年九月一六日付基
発第一〇八五号をもつて「キーパンチヤー等の手指を中心とした疾病の業務上外の
認定基準」と題する通達をした。
他方、国家公務員であるキーパンチヤーの作業管理基準に関し、人事院は昭和四〇
年三月五日付で各省庁あてに初めて通達しているのであるが、その内容は、民間労
働者に関する労働省の昭和三九年九月二二日付基発第一一〇六号通達の定める基準
の例によるべきであり、臨時健康診断を行うべきである旨のものであつた。また、
昭和四〇年三月五日付職厚-一一三人事院事務総長通達により、国家公務員である
キーパンチヤーの手指を中心とした疾病に関する公務上の災害を人事院事務総長昭
和二六年七月一日付二四-三七五通達に該当する疾病として取扱うこととされ、し
かも、右通達は、また、労働省の昭和三九年基発第一〇八五号通達による民間労働
者に関する認定基準を国家公務員に関するものとして示している。
以上の経過にかんがみれば、職業病防止対策に関する統計局の具体的取組の姿勢
は、政府機関の中では率先して実行し、かつ、誠実、熱心であつたと評価するに値
するものといわなければならない。
なお、統計局の職場において穿孔作業により発病した頸肩腕症候群の最初の患者は
訴外G(昭和三七年九月六日発病)であり、次いで同四〇年九月二日発病の訴外H
である。右両名から当局に対し公務災害認定申請されたのは、同四二年一二月であ
る。右申請をうけたのちの被控訴人統計局長及び同総理府総務長官の対応は迅速か
つ適切であり、右両名に対する公務災害補償通知を同四三年一二月二七日付で発出
するに至つている。
(6) 同2(一)(6)について
被控訴人統計局長は昭和三六年一〇月五日所要数の職員を勤務管理担当官に指名
し、一般職員の服務についての監督に当らせたが、このような勤務管理担当官の指
名は、統計局の職場において、職場要求名下の組合運動等にかこつけて、当局の屡
次にわたる警告注意にもかかわらず、勤務時間を遵守しない事態が続発したので、
これを是正するためにされたものにほかならない。その後この制度を廃止したの
は、本件処分発令後約一年を経過し、職場の秩序もほぼ平常に回復したとみられる
に至つたからである。したがつて、勤務管理担当官制度は本件処分を行う意図のも
とに、あるいは統計職組の活動を抑圧するために設けられたものであるとの主張
は、全く根拠を欠くものである。
(二) 同2(二)について
当局が職場大会の開催に関して行つた賃金カツトは、一般職の職員の給与に関する
法律第一五条の規定に従い、支給義務者として当然すべきことをしたにすぎない。
そして、右賃金カツトは、統計局として、初めてのものではなく、昭和三四年五月
九目の国税労組支援デモに参加した控訴人A、同Fについてそれぞれ三時間の賃金
カツトを実施した先例がある。次に、当局の労務対策は、控訴人らの主張するよう
な劣悪なものではなく、むしろ誠意あるものであつた。このことは、右(一)にお
いて述べたとおりである。また、職場オルグ活動は、控訴人らが自主的に企画し、
指導し、かつ、実行したものである。
3 控訴人らの主張3について
従前、職場オルグ活動が休憩時間内に始まり勤務時間にくい込んでも、数分の程度
にとどまり、かつ、職制の注意により、取りやめ、速かに勤務に服していたのが実
情であつて、本件の職場オルグ活動のように、長時間にわたつて勤務時間にくい込
み、行われたのを職制が放置した例はない。
次に、控訴人らの職場オルグ活動が組織的計画的なものであつたことは原審で主張
したとおりであり、職制側の挑発行為があつたため、控訴人らの意に反してたまた
ま紛糾する事態となつたというようなことはない。
また、控訴人A、同B、同Cが、職場オルグ活動において事態収拾のため努力を払
つたというようなことは全くない。
控訴人らは、本件行為により、多数の職員を勤務から離脱させ又はキの勤務を妨げ
たものである。すなわち、まず職場大会についてみれば、入門が可能となるまで約
一〇〇〇名の職員が正門付近において滞留した一事にみても、職員が任意自発的に
勤務に就かなかつたということはできない。また職場オルグ活動についてみても、
これに参加したのは控訴人らを含む一部積極的な組合員及び外部団体員のみであ
り、その間、その他の一般職員は、控訴人らの行動のため、ほとんどといつてよい
くらい、仕事が手につかず、当該職場における吊し上げの対象となつた職制は全く
予定の業務を遂行することができなかつたのである。
4 控訴人らの主張4について
控訴人らの本件行為のため統計局における統計業務の進行が遅延し、そのため翌昭
和三七年に集計を持ち越さざるをえない案件が相当数にのぼつたのである。
5 控訴人らの主張5について
職場大会は、国公共斗の要望により、統計職組の合同委員会においてその開催を決
定したのであるが、開催決定後は、控訴人らが自主的に企画、指導、実行したもの
であり、実際の運営にあたつても、控訴人らがそれぞれ分担して積極的役割を果し
ているのである。また、職場オルグ活動についても、控訴人らが自主的に企画し、
指導し、かつ、実行したものである。
6 控訴人らの主張6について
控訴人Aは、統計職組の執行委員長として、その中核となり、職場大会及び職場オ
ルグ活動の企画、実施にあたり、常に指導的役割を果したのであるから、被控訴人
総理府総務長官が同控訴人を免職する処分をしたのは、諸般の事情に照らし、適正
妥妥当というべきである。
四 証拠関係(省略)
○ 理由
一 本件処分及び判定の存在
控訴人らの地位、勤務関係が控訴人ら主張のとおりであつたこと、控訴人らに対し
控訴人ら主張のとおりの懲戒処分がされたこと、それに対し、控訴人らが被控訴人
人事院に対して審査請求を申立てたところ、同被控訴人が控訴人ら主張のとおりの
判定をし、それを同人らに送達したことは、当事者間に争いがない。
二 本件処分に至る経過
次に、本件処分に至る経過についての当裁判所の認定は、次に付加、訂正、削除す
るほか、原判決理由二に説示するところ(原判決四五枚目表五行目から同七一枚目
裏一〇行目まで)と同一であるから、それをここに引用する。
1 原判決四五枚目表一一行目の「原告A本人尋問」、同裏八行目の「証人I」、
同裏一一行目の「同I」、同四六枚目表二行目の「同A」の次にそれぞれ「(原
審)」を加える。
2 同四七枚目裏六行目の「ないし第三七号証」を「及び第三六号証」と、「第二
八号証」を「第二三、第二五、第二七、第二八号証」と改め、同裏七行目の「第二
二号証の二」及び同裏九行目の「第二二号証の一、」を削り、同裏八行目の「証人
I」、同裏一〇行目の「間」、同裏一一行目の「証人I」、同四八枚目表二行目の
「同A」の次にそれぞれ
「(原審)」を加える。
3 同四九枚目表五行目及び同表一一行目の「証人I」、同裏一行目の「原告A本
人尋問」の次にそれぞれ「(原審)」を加え、同表六行目の「ないし」を「、第一
四号証、第一五号証の一、二、第一六、」と訂正する。
4 同五〇枚目裏八行目の「ないし」を「、第一四号証、第一五号証の一、二、第
一六、」と訂正し、同五一枚目裏三行目の「忠」の次に「(原審)」を加える。
5 同五二枚目表一〇行目の「第三一号証、」の次に「第五九号証、」を加え、同
表一〇行目から一一行目にかけての「、第五九」を削り、同表一一行目の「証人
I」の次に「(原審)」を加え、同五三枚目表七行目の「これらの者と腕組みをし
て」を「これらの者が腕組みをしている傍らに立つて」と改める。
6 同五三枚目裏一行目の「第一三ないし」を「第一三、第一四号証、第一五号証
の一、二、第一六、」と訂正し、同裏二、三行目の「甲第一七号証、」を削り、同
裏九行目の「証人I」の次に「(原審)」を加える。
7 同五四枚目裏五行目の「ないし」を「、第一四号証、第一五号証の一、二、第
一六、」と訂正し、同裏八行目の「I」の次に「(原審)」を加える。
8 同五五枚目裏六行目(の「証人I」の次に「(原審)」を加え、同五七枚目表
四行目の「第一〇、第一一、一を削る。
9 同五九枚目表一行目(の「証人I」、同表一、二行目の「原告A本人尋問」の
次にそれぞれ「(原審)」を加え、同六〇枚目裏二行目の「第二五号証、」を削
る。
10 同六四枚目表二行目の「第一一」を「第一五」と改め、同表三行目の「原告
A本人尋問」の次に「(原審)」を加える。
11 同六六枚目表一行目一ツ社1這吃)の「4同A」の次に「(原審)」を加
え、同六七枚目裏五行目一鴎紅、一一話一の「甲第一一号証」を「甲第一二号証」
と改める。
12 同六九枚目表四、五行目の「第二一、」を削り、同表六行目、同七〇枚目表
九行目、同表一一行目から同裏一行目にかけての「同A」の次にそれぞれ「(原
審)」を加える。
三 法令の適用
次に、控訴人らの本件行為に対する法令の適用については、原判決七二枚目表二行
目の「事実が認められる」を「とおりである」と訂正するほか、原判決理由三に説
示するところ(原判決七二枚目表一行目から同七八枚目表三行目と同一であるか
ら、それをここに引用する。
四 不利益取扱いの主張について
次に、控訴人らの不利益取扱いの主張に対する判断は、次に付加、訂正するほか、
原判決理由四に説示するところ(原判決七八枚目表五行目から同七九枚目表九行目
と同一であるから、それをここに引用する。
原判決七八枚目表九行目の「甲第一一ないし」を「甲第一二ないし」と改め、その
次に「第一六、第一八ないし」を加え、「第二八号証」の次に「成立に争いのない
甲第一一号証」を加え、同裏二行目の「証人I」及び同裏四行目の「同A」の後に
それぞれ「(原審)」を加える。
五 思想、信条による差別の主張について
控訴人らは、本件処分が控訴人らの思想、信条を嫌悪してされたものである旨主張
する。
控訴人らが、統計職組の役員として、統計局における職員の職場環境及び勤務条件
の改善のため活動をしてきたものであることは、右四で認定した事実から推認され
るところであるが、前記のとおり、本件処分は控訴人らの違法行為を理由として行
われたものであるから、控訴人らが右のような活動をしてきたからといつて、直ち
に本件処分が控訴人らの思想、信条を嫌悪したためにされたものということはでき
ない。したがつて、控訴人らの思想、信条による差別の主張も、また、理由がな
い。
六 懲戒権の濫用の主張について
次に、控訴人らの本件行為に対する懲戒として、被控訴人長官及び被控訴人局長が
国公法旧第八二条により本件処分をしたことが懲戒権の濫用にあたるかどうかの点
について検討する。
1 控訴人らの本件行為の性質
前記引用にかかる原判決理由二の(一)の2ないし4(原判決四五枚目表八行目か
ら同四八枚目裏九行目に判示したとおり、職場大会及び職場オルグ活動は、統計職
組がその要求を貫徹するため、国公共斗の指示又は支援のもとに有つた争議行為で
あるが、右指示又は支援があつたにしても、統計職組が、みずからの意思により、
これを実施することを決定し、しかも、控訴人らは、その実施にあたり、すでに判
示したとおりの違法行為に及んだのであるから、その責任を免れえないことは当然
であり、また、職場大会及び職場オルグ活動が統計職組の組合員の意思に基づく団
体行動として行われたからといつて、その実施にあたり、すでに判示したとおり、
違法行為をした控訴人ら個人の責任が軽減されるものでないことも当然である。
2 本件行為の原因・動機
(一) 職場大会開催の原因・動機
(1) 前示甲第二九号証、原審及び当審証人Iの証言、原審及び当審における控
訴人A本人尋問の結果を総合すれば、職場大会が行われた昭和三六年一〇月当時、
統計職組は、当局に対する職場要求として生理休暇の病欠扱いの是正、生理休暇手
続の簡素化、個人日報制・能率グラフ掲示の廃止、生理休暇・産前産後の休暇の取
得者に対する昇給延伸等の廃止、職業病に対する措置を求めていたことが認めら
れ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
(2) 前示甲第二九号証、当審における控訴人A本人尋問の結果により真正に成
立したものと認められる甲第五二号証、原審証人J、同Iの各証言、当審における
控訴人A本人尋問の結果を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を左右す
るに足りる証拠はない。
統計局の女子職員が生理時の勤務困難を理由とし、承認を得て、休暇をとる場合に
は、従前から月二日以内に限り、特別休暇として取扱われてきたが、当局は、出勤
簿の処理として、病気休暇と同じく、青色の印影で「休暇」を表示していたので、
病気休暇として扱つているのではないかとの疑問が持たれ、統計職組としても、統
計局総務課長との交渉などにおいて、その改善を求めていた。そこで、当局は、昭
和三七年一月から、生理休暇の場合も、他の特別休暇の場合と同じく、出勤簿に赤
色の印影で「休暇」を表示する扱いに改めるに至つた。
(3) 前示甲第二九号証、原審証人J、原審及び当審証人Iの各証言、原審にお
ける控訴人A本人尋問の結果を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を左
右するに足りる証拠はない。
生理休暇手続の簡素化というのは、従来、統計局では、女子職員が生理休暇の承認
を求める際、自筆で生理休暇願を作成していたのを、当局が、あらかじめ、印刷さ
れた生理休暇願用紙を備えて置き、当該職員はそれに所要事項を記入すれば足りる
様式に改めることであつて、統計職組の要求により、右簡素化は、昭和三六年一二
月当局により実施されるに至つた。
(4) 前示甲第一号証の八、成立に争いのない甲第四七号証、第四二号証の三、
当審における控訴人A本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第
四九、第五四、第五五号証、当審証人G同K、同Iの各証言、原審における控訴人
C、、同B、同E、同D同F各本人尋問の結果、当審における控訴人A本人尋問の
結果を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はな
い。
個人日報は、主として統計局製表部のキーパンチヤーについて、職員個人の毎日の
出来高や訂正件数を報告するため、作成されるものであるが、統計職組では、同日
報が職員の競争心をあおり、労働強化につながるとして、その廃止を要求してい
た。しかし、当局は、業務の進行状況を把握するなど業務上の必要があることを理
由として右要求に応じなかつたが、組単位の日報でも足りうるということで、昭和
三七年初ころ、個人日報を廃止し、組日報をもつてこれに代えるに至つた。また、
統計局製表部の一部では、職制が組単位の出来高をグラフにした「能率グラフ」を
職場の人目につきやすい場所に掲示していたが、統計職組では、それにより精神的
圧迫を受け、労働強化につながるという理由で、「能率グラフ」の掲示の廃止を求
めていた。当局は、これについても、業務の進行状況を把握するのに必要があるこ
とを理由として、すぐには応じなかつたが、同三六年一二月、同グラフを人目につ
きやすい場所に掲示することを廃止するに至つた。
(5) 前示甲第一号証の五、第二号証の五の(イ)ないし(ハ)、第二九号証、
成立に争いのない甲第四八号証、原審証人I、同Lの各証言、原審における控訴人
C、同B、同M各本人尋問の結果、原審及び当審における控訴人A本人尋問の結果
を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
統計職組は、生理休暇及び産前産後休暇の取得者に対する昇給あるいは勤勉手当の
支給について差別をしているとして、同三六年九月、当局に対し、そのような不当
な差別をやめるよう要求したが、受入れられなかつたので、同年一〇月、人事院に
対し、その実態調査と勧告を依頼した。人事院は、調査の結果、同年一一月、当局
に対し、生理休暇あるいは産前産後の休暇の取得が勤務評定に影響しているのでは
ないかと疑われるふしもあるという理由で、誤解を招くことのないよう慎重に扱う
ことを申入れた。当局は、その後、右休暇の取得に対しては、慎重に取扱うように
なつた。
(6) 前示甲第二九、第四八、第四九、第五五号証、成立に争いのない甲第二号
証の三の(イ)、第三九号証、第四二号証の一ないし五、第四四号証、第四六号証
の二、乙第七七号証、第八三、第八四号証の各一、当審証人Iの証言により真正に
成立したものと認められる乙第八二号証の二ないし一〇、原審及び当審証人Iの証
言(ただし、当審証言については後記信用しない部分を除く。)、当審証人Gの証
言、原審における控訴人C、同N、同D各本人尋問の結果、当審における控訴人A
本人尋問の結果を総合すれば、、次の事実が認められ、当審証人Iの証言のうち右
認定に反する部分は、当審証人Gの証言に照らし、たやすく信用できず、他に右認
定を左右するに足りる証拠はない。
統計局製表部の集計業務にたずさわるキーパンチヤーの一部に、昭和三四年ころか
ら、身体障害の発生をみるに至り、統計職組でも次第にこれを問題とするようにな
つた。これに対して、当局も、すでに同三五年三月、疲労防止のため、足台を支給
していたが、統計職組は、同三六年四月ころ、職業病対策委員会を設け当局に対
し、特別検診の実施、作業時間の短縮、照明・防音など職場施設の改善整備を要求
した。そこで、統計職組と統計局総務課長との間で何回か交渉が行われた結果、当
局も、予算の範囲内で可能なことを実現することとし、同三六年七月から同年九月
にかけて水道を増設し、荷物専用エレベーターを設置し、防音対策として耳栓を支
給したりしたが、同三七年一月にはキーパンチヤーに対する第一回の特別検診を実
施した(特別検診は、その後毎年二回程度行われている。)ほか、同年中に螢光灯
を取付け、穿孔室の防音間仕切りをし、休憩室、更衣室を設置し、同三八年には、
扇風機を供用するなど職場施設の改善をはかつてきた。その間、製表部のキーパン
チヤーであるGは、身体障害を訴えて医師の治療を受け、同三六年九月ころ、打鍵
作業による頸腕手肩症候群と診断されたが、同人の症候は、のちに同四三年一二月
二七日、内閣総理大臣により、頸肩腕症候群の傷病名で公務によるものである旨認
定された。
ところで、キーパンチヤーの職業病としての手指等の障害の問題は、同三七年以
降、次第に社会の注目を集めるようになつたが、これに対する医学的解明の立遅れ
などもあつて、同三八年に至り、初めて労働省により、民間労働者に関して、穿孔
作業時間、休憩時間、穿孔数、健康管理、作業室の照明、騒音その他の項目につい
ての作業基準が設定され、国家公務員であるキーパンチヤーに関しては、更に遅れ
て、同四〇年、人事院により、民間労働者についての基準の例により健康管理を行
うよう通達されるに至つた。
(7) 原審証人I、同Lの各証言、当審における控訴人A本人尋問の結果を総合
すれば、当局は、同三六年一〇月五日、職場秩序の回復を目的として、勤務管理担
当官と称する役職を設けたことが認められるが、職場大会が開催された同年一〇月
二六日以前に、統計職組が、勤務管理担当官の任務を不当であるとして、当局に対
し、なんらかの措置をとることを要求したことを認めるに足りる証拠はない。
(8) 以上認定した事実によれば、職場大会の前後を通じ、当局の労務管理が不
当であつたとか、統計職組の職場要求に対する当局の対応が不誠実であつたとはい
えないといわざるをえない。
(二) 職場オルグ活動の原因・動機
当局が昭和三六年一〇月末ころ、職場大会の開催に関し、ピケツトなどに参加した
職員に対し、年次休暇の承認をせず、かつ、勤務につかなかつた時間を欠勤とし、
該当職員について賃金カツトを行うことを決定したことは、当事者間に争いがな
い。控訴人らは、右賃金カツトは他官庁にはみられない異常なものであるので、そ
れを問題とし、かつ、前記のような職場要求を貫徹するため職場オルグ活動を行つ
た旨主張する。しかし、原審証人Iの証言によれば、当局が行つた右賃金カツト
は、一般職の職員の給与に関する法律第一五条の規定に従つてしたものであること
が認められ、また、成立に争いのない乙第二二号証の二、原審証人Iの証言、原審
における控訴人A、同F各本人尋問の結果を総合すれば、当局は、同三四年五月九
日、国税労組支援デモに参加するため勤務時間内に就労しなかつた控訴人A、同F
に対して賃金カツトを行つたことが認められる。
右認定の事実によれば、右賃金カツトが違法であるとか不当であるということはで
きない。
3 本件行為の態様
まず、控訴人らは、統計局においては、従来、勤務時間内にくい込んで職場オルグ
活動が行われることが通例であり、当局もそれを許容ないし放任していて、そのこ
とが慣行化していた旨主張する。しかし、前示乙第二〇、第二一号証、成立に争い
のない乙第六八号証の一、第六九号証、当審証人Oの証言により真正に成立したも
のと認められる甲第三五号証の一ないし一六、第三六号証の一ないし一〇、当審証
人Iの証言により真正に成立したものと認められる乙第七三号証の一ないし三、同
号証の二、三、原審及び当審証人I、当審証人Oの各証言、原審及び当審における
控訴人A本人尋問の結果を総合すれば、統計局においては、従前、勤務時間内にく
い込んで組合活動が行われたことがあつたこと、しかし、当局としては、それを許
容するとか放任していたわけではなく、かねてから統計職組に対し、勤務時間内に
組合活動をしないように注意してきたことが認められ、他に右認定を左右するに足
りる証拠はない。右認定の事実によれば、統計局においては、勤務時間内に組合活
動をすることが慣行化していたとはいえない。
次に、控訴人らは、職場オルグ活動のうち勤務時間へのくい込みが長びいたもの
は、職制が組合員多数の要求を容れ、合意のうえで、話合つたものか、写真撮影を
行うなど職制側の挑発があつたため、控訴人らの意思に反して紛糾する事態となつ
たもので、いずれも偶発的、突発的なものであると主張するが、勤務時間内にくい
込む職場オルグ活動が行われた情況は前記引用にかかる原判決理由二(二)2
(1)ないし(13)(原判決五五枚目裏三行目から同七一枚目裏一〇行目まで)
に判示したとおりであつて、控訴人らの主張するような事情は認められず、また、
職場オルグ活動が組織的計画的なものであつたことは、同じく原判決理由二(一)
4(原判決四七枚目裏三行目から同四八枚目裏九行目まで)に判示した事実によつ
て明らかである。
次に、控訴人らは、「控訴人A、同B、同Cは、職場オルグ活動の場に当初からい
たものではなく、急を聞いてその場に馳せつけ、組合員らと当局側勤務管理担当官
らの間に入つて事態収拾のため努力した。」旨主張するが、右控訴人らが右事態収
拾のため努力したことを認めるに足りる証拠はなく、前記引用にかかる原判決理由
二(二)2(10)、(12)、(13)(原判決六五枚目裏七行目から同六七枚
目表末行目まで及び同六九枚目表一行目から同七一枚目裏一〇行目まで)に判示し
た事実によれば、右(10)、(12)の場合は控訴人Aが、右(13)の場合は
控訴人A、同B、同Cが職場オルグ活動の紛糾の場に赴いたものであるが、同人ら
が事態収拾のため努力したようなことはなく、かえつて、当初からその場にいた組
合員らとともに、職制に対して抗議し、あるいは話合いを強要したものであるとい
うべきである。
また、控訴人らは、多数の職員を同時に勤務から離脱させ、あるいはその勤務を妨
げたことはなく、組合員である多数の職員が任意自発的に職場オルグ活動等に参加
し、あるいは仕事に就かなかつたにすぎない旨主張するが、職場オルグ活動が行わ
れた際の状況は前記引用にかかる原判決理由二(二)2(1)ないし(13)(原
判決五五枚目裏三行目から同七一枚目裏一〇行目まで)に判示したとおりであつ
て、控訴人らは職場オルグ活動により、多数の職員を同時に勤務から離脱させ、あ
るいはその勤務を妨げたものというべきである。
4 本件行為の結果、影響
前記引用にかかる原判決理由二(二)1(1)ないし(5)、2(1)ないし(1
3)(原判決四八枚目裏一〇行目から同七一枚目裏一〇行目まで)に判示したとこ
ろによれば、控訴人らの本件行為の勤務時間へのくい込みは僅少なものとはいえ
ず、しかも、多数の職員を同時に勤務から離脱させ、あるいはその勤務を妨げたも
のというべきである。そして、原審証人Pの証言によれば、本件行為が行われた当
時、統計局では国勢調査の集計や各地方公共団体から委託された統計調査の集計の
最中であつたが、本件行為により、これらの業務の進行が遅延し、超過勤務を余儀
なくされるとか、あるいは、期限に遅れたため、翌年に持越さざるをえない案件も
かなりあつたことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。以上の
事実によれば、控訴人らの本件行為による統計局の業務の阻害、停廃は相当程度に
達したものといわざるをえない。
5 控訴人らの地位・役割
本件行為が統計職組の意思決定に基づく団体行動として行われたことは前記のとお
りであり、本件行為当時、控訴人Aは統計職組執行委員長、控訴人Bは同副執行委
員長、控訴人C、同E、同Dはいずれも同執行委員、控訴人Fは同代議員の地位に
あり、なお、控訴人Cは事実上、同事務局長の事務を行つていたものであること
は、前記のとおりである。ところで、職員組合の組合員は、役員であると否とを問
わず、たとい組合の決定に基づくものであつても、業務の正常な運営を阻害する行
為をすることを本来禁止されているのである(国公法旧第九八条第五項参照)。と
ころが、控訴人らは、自己の意思に基づいてあえて違法な本件行為を行つたのであ
るから、当時たまたま統計職組の役員の地位にあつたためしたことであるとして
も、その責任を軽減されるものではないといわなければならない。
6 控訴人Aに対する免職処分
すでに判示したところによれば、控訴人Bは統計職組副執行委員長として、控訴人
Cは同執行委員で、事実上、同事務局長の事務を行つていたものとして、いずれ
も、職場大会の開催に際し、ピケツトによる正門あるいは西門、非常門からの入門
阻止行為の指揮にあたり、それぞれ指導的な役割を果したほか、賃金カツトに抗議
するため、勤務時間中の職場オルグ活動、話合の強要、職制に対する抗議行動が実
行された際にも、各五回にわたり、指導的かつ積極的な役割を果しているのであ
り、他方、控訴人Aは、統計職組の執行委員長として、同職組の代議員会及び合同
委員会の決定に基づく職場大会の開催にあたり、これを指導するとともに、ピケツ
トによる各門からの入門阻止行為の総指揮にあたるなど職場大会の全般にわたり指
導的な役割を果したほか、同職組の執行委員会の決定に基づき、賃金カツトに抗議
するため、勤務時間中の職場オルグ活動、話合の強要、職制に対する抗議行動をし
た際にも、五回にわたり、指導的かつ積極的な役割を果しているのである。
以上のとおり、控訴人Aは、職場大会の全般にわたり指導的な役割を果したほか、
右3で判示したとおり、職場オルグ活動等をめぐり紛糾が生じた際、三回も、途中
から当該紛糾の場所に赴き、他の組合員らと共同の行動をとつている点からみて、
職場オルグ活勲等についても、執行委員長として全般的に指導的な役割を果したも
のとみることができるのであつて、職場大会及び職場オルグ活動等に際し、局部的
に指導的な役割を果したにすぎない控訴人B、同Cに比して、その情状は重いもの
といわざるをえない。
したがつて、控訴人Aの行為は、すでに判示したとおり、国公法第八二条旧第一
号、第二号所定の事由に該当し、その情状は最も重く、職場秩序の維持に関する服
務規律をみだしたものとして、同条第三号所定の事由にも該当するものというべき
であるから、被控訴人長官が同控訴人を免職処分としたことについては、相当の理
由があるものというべきである。
7 結論
以上に判示した控訴人らの本件行為の性質、原因・動機、態様、結果・影響、控訴
人らの地位・役割、その他諸般の事情を合せ考えると、控訴人らには、従来、懲戒
処分歴が認められず、また、職場大会及び職場オルグ活動に関し、統計職組の他の
組合役員又は組合員についてなんら懲戒処分がされず、更に、国公共斗の企画、指
導のもとに、昭和三六年一〇月二六日勤務時間にくい込む職場大会を開催した他の
官庁の職員について、控訴人らと同様の懲戒処分がされなかつたとしても、本件処
分が社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者である被控訴人長官及び被控訴人局長
に委された裁量権の範囲を超え、これを濫用したものということはできない。
なお、控訴人らは、本件処分が統計職組の組織を破壊し、民主的な労働組合活動を
不当に弾圧する意図のもとにされた旨主張するが、右主張の理由のないことは、前
記四及び右に判示したところから明らかである。
以上の次第で、控訴人らの懲戒権の濫用に関する主張も採用することができない。
七 本件判定についての違法性の存否
次に、本件判定に違法がある旨の控訴人らの主張に対する判断は、原判決八三枚目
表一行目の「争いのない事実と」の次に「成立に争いのない甲第七号証の一、」を
加えるほか、原判決理由七に説示するところ(原判決八二枚目裏四行目から同八五
枚目裏八行目まで)と同一であるから、それをここに引用する。
八 結論
よつて、本件判定及び本件判定に控訴人ら主張の違法はなく、その取消を求める控
訴人らの本訴請求は失当であるから、これを棄却すべきであり、これと同趣旨の原
判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、いずれもこれを棄却することと
し、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九
条、第九三条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 枡田文郎 日野原 晶 山田忠治)

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