弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人近幹之助の上告理由一について。
 論旨は、上告人の延滞賃料の弁済供託の主張が認められれば、本件賃貸借契約解
除前の賃料債権は消滅しているにもかかわらず、原審が右主張を目して本訴の結論
に影響がないと判示したのは、判断遺脱、理由不備の違法があるという。しかし、
上告人は、本件建物の延滞賃料債務の消滅原因として供託の事実を主張するには、
右供託が適法になされたことにつき主張立証の責を負うべきところ、記録によつて
も、所論供託が適法になされたことの主張のされた形跡が認められない。従つて、
単に供託の事実の主張のみでは、被上告人の延滞賃料債権の存否に関する判断を左
右しうるものとはいえない。原審の所論判示は、結局右の趣旨をいうものと解し得
ないでもない。それゆえ、原判決に所論の違法は認められないから、論旨は採用で
きない。
 同二について。
 論旨は、賃料に損害金を不可分的に加えてなされた請求をもつて賃貸借契約解除
の前提たる催告となし、本件契約解除を有効と認めた原審は、民法五四一条の解釈
適用を誤つたものであるという。しかし、延滞賃料の催告に際し、併せて賃貸借の
存しない建物占有部分についての損害金を請求したところで、右賃料催告が無効と
なるわけのものではなく、右賃料催告に対して、ついに不払いに終つた以上、これ
を理由として賃貸借契約を解除しうるのは当然であり、論旨は、独自の見解に立つ
て、原審の判断を非難するに帰し、採用し得ない。
 同三について。
 論旨は、本件賃貸借契約解除の前提たる催告は過大の催告であるから無効である
にもかかわらず、原審がこれを有効と判断したのは、民法五四一条の解釈適用を誤
つた違法があるという。しかし、原判決(引用の一審判決)によれば、上告人が被
上告人のした本件催告に対して適正賃料の範囲内で支払つたとしても被上告人がこ
れを拒絶したと認める証拠はないというのであるから、催告金額と適正賃料額との
間に所論原判示のような差があつたとしても、前記事情のもとにおいて、右催告は
適正賃料額の限度において有効と解すべきであり、これと同趣旨に出た原判決(引
用の一審判決)の判断は、正当として肯認しうる。従つて、論旨は採用できない(
昭和三一年(オ)第五九六号同三二年三月二八日第一小法廷判決・民集一一巻三号
六一〇頁参照)。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六

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