弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人三浦強一、同合路義樹の上告理由第一点について。
 原判決の確定する事実によれば、被上告人、上告人、訴外Dの三名は共同して本
件土地でアイスケーキ製造販売業を営むことを約し、この共同事業の用に供する目
的で本件土地を買い受けることとなつたが、「借地権者である控訴人がこれを買受
ければ時価に較べて割安に取得できる関係にあつたので被控訴人は本件土地の購入
代金の四万五百円を右共同事業の出資金として控訴人に交付し、控訴人は同年四月
初これをEに支払つて本件土地を、右共同事業の用に供する目的で買受け、そして
右出資金を本件土地の買受代金として使用したことを明らかにするために、Eより
受取つた代金四万五百円の領収書二通をDを通じて被控訴人に交付した」(文中控
訴人とあるは被上告人、被控訴人とあるは上告人である。以下同じ)というのであ
る。してみれば本件土地所有権は、その登記関係の経緯の如何にかかわりなく、一
個の組合たる右共同事業の組合財産となり右三名の共有に帰したものと認めるのを
相当とする。ところで原判決はさらに進んで、右共同事業は失敗に帰したので、被
上告人、上告人、及びF(上告人に対する債権者)の三名は整理を目的とする判示
のような協議に達し、「被控訴人は右債務引受の代償として控訴人が被控訴人の前
示出資金四万五百円で買受けた本件土地につき控訴人の完全な所有権を認め、控訴
人に対し右出資金の返還を請求しない」旨の契約が成立したと認定しているから、
前記組合契約の一員たる上告人は、本件土地の共有関係についてその持分を放棄し、
被上告人の単独所有に帰することを承認した趣旨を判示したことにほかならない。
さらにまた原判決は、組合契約の他の一員たる訴外Dとの関係について「一方控訴
人は本件土地上の前記家屋に居住していたDに対し昭和二十二年十月以降三年間本
件土地の無償使用を許し、Dも本件土地が控訴人の所有に属することを承認した」
と認定しているから、右Dも本件土地の共有関係についてその持分を放棄し、被上
告人の単独所有に帰することを承認した趣旨の判示にほかならない。従つて原判決
は行文上やや足りないところはあるが、その結論とする本件土地が被上告人の単独
所有権に帰したという判断になんら誤りはなく、理由不備又は理由にくいちがいが
あるという非難はあたらない。
 同第二点ないし第四点について。
 所論の非難するところは、すべて原判決を正解せず、または独自の見解を強調す
るにすぎず、その理由のないこと第一点説示のとおりである。所論は採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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