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平成28年11月14日宣告
平成28年(わ)第556号,同第562号道路交通法違反,労働基準法違反被
告事件
主文
被告人A株式会社を罰金50万円に,被告人Bを懲役1年6月に処する。
被告人Bに対し,この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予す
る。
理由
(罪となるべき事実)
被告人A株式会社(平成28年7月12日,C株式会社から商号変更。以下「被
告会社」という。)は,埼玉県川口市ab番地のcに本店を置き,一般貨物自動車
運送事業等を営む事業主,被告人B(以下「被告人」という。)は,被告会社の取
締役兼統括運行管理者兼配車係として,被告会社の自動車の運行を直接管理し,か
つ,労働者の労働時間管理を統括していたものであるが,被告人は,被告会社の業
務に関し
第1被告会社運転手Dが連続勤務等の過重労働による過労のため正常な運転がで
きないおそれがある状態で自動車を運転することの情を知りながら,平成28
年3月16日午後5時40分頃,前記本店所在地の被告会社本社事務所におい
て,上記Dに対し,その頃から,被告会社が所有する中型貨物自動車を運転し
て上記事務所を出発し,川崎市d区内で積み込んでいた荷物を福岡市e区内へ
運搬する業務に従事するよう指示し,上記Dに,同月17日午前7時26分頃,
広島県東広島市f町gh自動車道下りiキロポスト付近に位置するjトンネ
ル内において,過労による仮睡状態のまま上記中型貨物自動車を運転させ,も
って自動車の運転者に対し,過労により正常な運転ができないおそれがある状
態で車両を運転することを命じた。
第2法定の除外事由がないのに,被告会社が,労働者の過半数を代表する者との
間で,書面により,平成27年4月1日から平成28年3月31日までの時間
外労働及び休日労働に関する協定を締結し,被告会社の自動車運転手としての
業務を行う労働者について,法定労働時間を超えて延長することができる時間
は,1か月につき40時間,1日につき3時間,法定休日において労働させる
ことができる休日は2週を通じ1回などとそれぞれ定め,同協定を平成27年
3月23日,川口労働基準監督署長に届け出ていたのであるから,同協定時間
及び同協定休日を超えて労働させてはならないのに,前記事務所等において
1被告会社労働者Dに対し,別表1記載のとおり
⑴平成28年2月1日から同月29日までの1か月につき40時間を超えて
ア同月15日から同月21日までの週につき27時間26分
イ同月22日から同月28日までの週につき19時間18分
ウ同月29日の週につき43分
の各時間外労働をさせた。
⑵同月2日から同年3月12日までの間,15回にわたり,1日について3
時間を超えて合計33時間47分の各時間外労働をさせた。
⑶同年2月17日から同年3月1日までの2週間にわたり,1回の休日も与
えず,もって同年2月24日から同年3月1日までの週において,協定休日
の範囲を超えて法定休日に労働させた。
2被告会社労働者Eに対し,別表2記載のとおり
⑴同年2月1日から同月29日までの1か月につき40時間を超えて
ア同月15日から同月21日までの週につき13時間47分
イ同月22日から同月28日までの週につき22時間31分
の各時間外労働をさせた。
⑵同月3日から同年3月16日までの間,14回にわたり,1日について3
時間を超えて合計29時間24分の各時間外労働をさせた。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
第1被告会社
被告会社の判示第1の所為は道路交通法123条,117条の2の2第10
号,75条1項4号,66条に,判示第2の1⑴アないしウ,同2⑴ア,イの
各所為はいずれも週ごとに労働基準法121条1項,119条1号,32条1
項に,判示第2の1⑵,同2⑵の各所為はいずれも日ごとに同法121条1項,
119条1号,32条2項に,判示第2の1⑶の所為は同法121条1項,1
19条1号,35条1項にそれぞれ該当するところ,以上は刑法45条前段の
併合罪であるから,同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金
額の範囲内で被告会社を罰金50万円に処する。
第2被告人
被告人の判示第1の所為は道路交通法117条の2の2第10号,75条1
項4号,66条に,判示第2の1⑴アないしウ,同2⑴ア,イの各所為はいず
れも週ごとに労働基準法119条1号,32条1項に,判示第2の1⑵,同2
⑵の各所為はいずれも日ごとに同法119条1号,32条2項に,判示第2の
1⑶の所為は同法119条1号,35条1項にそれぞれ該当するところ,判示
各罪につき各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合
罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に法
定の加重をした刑期の範囲で被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法2
5条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予す
る。
(量刑の理由)
被告人は,一般貨物自動車運送事業等を営む被告会社の取締役兼統括運行管理者
兼配車係として,その自動車の運行を直接管理し,かつ,その労働者の労働時間管
理を統括する業務に従事していたものであり,過労運転等を原因とする危険な交通
事故が発生しないよう,法令等に定める基準を遵守して自動車運転手の疲労の蓄積
を防止するとともに,その運転手に対して過労運転を命じることがないよう十分に
注意すべき立場にあった。それにもかかわらず,被告人は,労働時間の基準を守っ
ていては仕事にならない,配車係としてより多くの仕事をしている実績を作りたい
という思いや,これまで運転手が大きな事故を起こしたことがなく,これからも起
こすことはないだろうという油断から,自分が配車を担当する被告会社の労働者で
ある自動車運転手2名に対し,平成28年2月以降,労働者との間で締結した協定
に定める範囲を大幅に超える時間外労働や休日労働を命じるとともに,うち1名の
運転手に対しては,同人が連続勤務等の過重労働による過労状態にあることを認識
しながら,休養を取らせるなどの措置を何ら講じることなく,本件過労運転を命じ
たものである。被告人による本件各行為は,法を無視する身勝手な動機に基づく悪
質なものであり,危険な結果を生じさせるおそれも高く,実際,死者2名を出す交
通事故が発生し,その危険が現実化したことを考えると,被告人の刑事責任を軽く
見ることはできない。
被告会社も,以前に労働時間等について行政指導を受けたにもかかわらず,被告
人が本件各行為に及んでいることから,相応の刑事責任を免れない。
他方,被告会社は,本件事故後に運輸局から事業改善の指示を受けて,取締役で
ある被告人らの努力の下,運行管理及び労働時間管理等の改善に向けた具体的措置
を講じており,同年6月以降は法令遵守に努めていること,被告人は運行管理者の
資格喪失,被告会社は事業の一部停止処分及び報道による社会的信用の低下という
相当程度の社会的制裁をそれぞれ受けていること,被告人は,上記事故発生直後に
率先して配車業務日報を改ざんするなどの罪証隠滅工作に及んだものの,その後は
本件各事実を認めて反省するに至っていること,被告人に前科がないことなど,被
告会社及び被告人についてそれぞれ酌むべき事情もある。
そこで,これらの事情を考慮し,被告会社及び被告人には主文の刑を科した上で,
被告人については,その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(検察官岩本直人,弁護人白日雄歩〔主任〕,同安西紀皓各出席)
(求刑被告会社に対し罰金50万円,被告人に対し懲役1年6月)
平成28年11月28日
広島地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官丹羽芳徳
裁判官武林仁美
裁判官藤村香織

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