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平成22年1月15日宣告
平成21年(わ)第403号殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決
主文
被告人を懲役17年に処する。
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
押収してある脇差1振を没収する。
理由
(犯行に至る経緯)
被告人及びA(以下「被害者」という。)は,それぞれa市内で「甲」「乙」と
いう港湾荷役業を営んでいた。平成18年,被害者が被告人の業務拡大を阻止した
り,元請会社の従業員でもある立場を利用して乙を優先した仕事の割り振りを行う
などしたため,両者の関係が悪化したが,平成19年ころ,被害者が元請会社の従
業員を辞めたため,関係は沈静化していた。しかし,平成21年になると,他の元
請会社である丙と甲間の取引に被害者が介入したことなどにより再び関係が悪化し,
同年6月22日,甲の未成年の従業員Bから,被害者から15万円を恐喝されてい
る旨の相談を受けて,同月23日早朝,被告人は,被害者が話合いに応じなければ,
被害者を殺すこともやむを得ないと考え,脇差(刃渡り約43センチメートル)を
準備した。そして,同日午前6時40分ころ,被告人が,自動車の運転席に乗車中
の被害者に対し,「Bの15万円って,どういうことなんだ」と怒鳴ると,被害者
が「何をっ,この野郎」と述べたため,被告人は話合いはできないと思い,被害者
の殺害を決意した。
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成21年6月23日午前6時45分ころ,静岡県a市b番地付近路上にお
いて,同所に駐車中の自動車の運転席に乗車中のA(当時39歳)に対し,殺
意をもって,その胸部を所携の脇差(刃渡り約43センチメートル)で1回突
き刺すなどし,よって,そのころ前記路上において,同人を心臓刺切により失
血死させて殺害し
第2法定の除外事由がないのに,前記日時ころ,前記路上において,前記脇差1
振を所持し
たものである。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
罰条第1の行為について刑法199条
第2の行為について銃砲刀剣類所持等取締法31条の
16第1項1号,3条1項
刑種の選択第1の罪について有期懲役刑
第2の罪について懲役刑
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪
の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)
未決勾留日数の算入同法21条
没収同法19条1項1号,2項本文
訴訟費用の処理刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1本件は,港湾荷役業において競業関係にあった被害者に対して,長年にわたり
不満を抱えていた被告人が,被害者を脇差で刺し殺した殺人1件と,同脇差を法
定の除外事由なく所持した銃砲刀剣類所持等取締法違反1件である。
2裁判所が量刑を決めるに当たって,重視した事情は次のとおりである。
(1)まず,被害者の死亡という結果が重大であることはいうまでもない。被
害者の落命自体が取り返しがつかないことは勿論,被害者に支えていくべき家
族があり,港湾荷役業を営んでいたことを考えると,その社会的影響は大きい。
(2)被告人は,人を殺傷するための武器である鋭利な刃渡り約43cmの脇
差で,不意打ちで,被害者の胸部を狙いすまし,右肺から心臓を貫通する程深
く刺し,さらに,被害者の頭部めがけて,数回脇差を振り下ろしており,犯行
態様は,強固な殺意に基づく残虐なものである。
(3)被告人は,平成21年6月23日の早朝,脇差の刃が錆びていないこと
を確認し,持ち運ぶために雨合羽に隠し入れたのであるから,遅くとも同時点
では殺意を生じ,被害者を殺害するための準備を行っているといえる。同月2
2日夜に殺意を生じたとする検察官の主張は認められないが,この殺意発生時
期の違いは量刑を左右するような違いであるとはいえない。
弁護人は,被告人が被害者と話合いで解決をしようと考えていたというが,
脇差の準備や犯行直前の被害者との会話の内容及びその短さなどからは,被告
人に話し合う気がなかったわけではないが,話合いがつく可能性はかなり低く,
話合いがつかない場合には,被害者を殺すのもやむを得ないと考えていたとい
うべきである。被告人が,最初に被害者に話しかけた際,脇差を所持していな
かったのは,被告人が乙の従業員に話しかけている最中に被害者が現れたので,
被害者のところへ行ったからにすぎないともいえよう。
(4)殺害理由について,検察官は,刑を軽くするような被害者の落ち度はな
く,被告人に同情すべき事実も認められないと主張する。
しかしながら,被告人と被害者間には,犯行に至る経緯記載のトラブルがあ
り,競業関係にあることを前提にしても,被害者に行き過ぎた点があり,Bに
対する金銭要求は明らかに被害者に非のある行為であり,弁護人の主張するよ
うに,これらが本件犯行の契機となったことは明らかであり,被告人に有利に
考える事情といえる。
もっとも,これらのことは,被害者を殺害するしかないといえるほどの事情
とは到底いえず,被告人は,短絡的,自己中心的かつ凶暴な考え方に基づき本
件犯行に及んだといわざるを得ない。
(5)また,突如,被害者を失った遺族らの処罰感情が厳しいことも,もっと
もなことである。
3弁護人が主張する被告人の反省についてであるが,確かに被告人は反省の言葉
を述べているが,公判供述からしても,未だ被害者に原因があるとの気持ちが捨
てきれず,内省が深まっているとはいえない。
その他の弁護人が指摘した,被告人が犯行直後に110番通報するよう呼びか
けたことや被告人のために嘆願書が作成されたことなどの事情については,特段
被告人に有利に考えるべき事情とまでは認められない。
4以上の事情をふまえ,被告人を主文の刑に処するのが相当と判断した。
(求刑-懲役20年,主文掲記の没収。なお,弁護人は懲役13年が相当であると
弁論した。)
平成22年1月15日
静岡地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官長谷川憲一
裁判官本間敏弘
裁判官森千春

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