弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人海野普吉、同佐伯千仭、同西田公一、同甲元恒也、同小林直人、同大野正
男、同小島成一、同六川常夫の上告趣意第一点は、違憲(二八条、二一条違反)を
いうが、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、上告適法の理由に当ら
ない。なお、原判決の認定した事実によると、被告人らは、その所属のD労働組合
E地方本部と岡山鉄道管理局当局との間に発生した昇給の不均衡是正に関する件な
どの紛争について、公共企業体等労働委員会広島地方調停委員会委員長Aが、あつ
せんを試みるため、同管理局に来る本件当日、同管理局当局に対する抗議意思を表
明し、世論に訴えるなどして、紛争の結末を有利に導こうと考え、被告人Bの指揮
により、同被告人を除くその余の被告人らが、他の組合員約六〇名とともに、同管
理局係員の制止を無視して、午前八時過ぎごろ、同管理局庁舎屋上に立入り、屋上
から懸垂幕をたらしたり、鉄道旗を掲揚中の柱に組合旗を併わせて掲げたりしたう
え、同庁舎四階から屋上に通ずる出入口の戸を屋上の側から押えて閉鎖し、同管理
局関係者の屋上への立入を阻止する態勢をととのえ、次いで同庁舎前に参集した約
二〇〇名の組合員らと呼応し、一団となつて労働歌を合唱したり、スクラムを組ん
でデモ行進をしたりして、かなり喧騒をきわめたので、同管理局長Cが、午前一〇
時二五分ごろから午後零時三〇分ごろまでの間に、約四〇回にわたつて、右屋上参
集者に対し、庁舎外への退去を要求したのにかかわらず、右被告人らは、被告人B
と共謀のうえ、他の組合員約六〇名とともに、午後四時ごろまで右屋上にとどまり、
庁舎外に退去しなかつたというのである。右事実関係によると、被告人らの企図し
たところはともかくも、その手段として採つた行為は、管理権者の受認すべき限度
を超えたものというべきである。したがつて、前記管理局長が、被告人ら屋上参集
者に対し庁舎外への退去を要求したのは、当然のことであり、その要求にもかかわ
らず、退去しなかつた被告人らの行為を、正当なものといえないとした原判決の判
断は相当である。
 同第二点は、違憲(二八条違反)をいうが、実質は単なる法令違反、事実誤認の
主張であつて、上告適法の理由に当らない。なお、同管理局庁舎屋上の利用に関す
る所論のような慣行が存在するとしても、その慣行が、第一点について記述したよ
うな事実関係のもとでも妥当するものとは認められない。
 同第三点のうち、違憲(三一条違反)をいう点は、原審が、被告人らの出頭のも
とで、本件の争点に関係のある現場検証をし、その検証調書の取調をしていること、
およびこれについて被告人らに意見弁解の機会を与えていることが明らかであるか
ら、所論は前提を欠き、判例違反をいう点は、引用の各判例が事案を異にし本件に
適切でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて、いずれも上告適法の理由
に当らない。
 同第四点は、単なる法令違反、事実誤認の主張てあつて、上告適法の理由に当ら
ない。
 また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文
のとおり決定する。
  昭和四二年八月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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