弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤邦雄の上告趣意について。
 所論は、刑法九六条ノ三にいう公の「入札」であるためには、入札を求める施行
者の行為が契約の申込で、最低価格で入札する行為が契約の承諾となり、そこに当
然契約が成立するごときものを指称するのである。本件のように、施行者が見積書
の提出を求める行為が申込の誘引で、入札者が見積書を提出する行為が契約の申込
であり、施行者は右見積書の提出によつてなんら法律上の拘束を受けず、何人と契
約を締結するか、或は何人とも契約を締結しないかの自由を有するごときばあいは、
同条の「入札」に当らない。本件の請負契約方式は随意契約であつて競争入札では
ないから、本件被告人らの所為は同条の談合罪を構成しないものである、というに
ある。
 職権をもつて調査するに、原判示によれば、岩手県土木部においては本件当時、
所管の土木工事の請負契約を締結するにあたり、会計法、予算決算及び会計令、旧
道路工事執行令或いは地方自治法、同法施行令に基く岩手県規則等所定の一般競争
入札若しくは指名競争入札又は随意契約の方式によることなく、岩手県土木部の内
規によりいわゆる「価格申告制」或いは「見積による随意契約」なる契約方式が採
られていたもので、本件道路工事の請負契約も右後者の方式によつたものであるこ
と、その内容は原判決が詳細に説示するところであり、要するに前掲会計法規上の
指名競争入札に類似するもので、異るところは、施行者において落札者を決定する
に当り、競争入札に付した事項(価格その他)について入札者が入札施行者に最も
有利な条件を申し出ることが契約締結の唯一の要素ではなく、重要な要素でありこ
れに他の条件をも参酌することができるとする点にある。しかして、刑法九六条ノ
三にいう公の入札は、入札施行者たる国または地方公共団体において、自己に有利
な契約内容を見出すため入札者をして自由競争をさせる契約締結の方法であつて、
契約の内容たるべき事項のうち競争に付する事項(価格その他)については、入札
者が互に他の入札者の申し出る内容を知らないで自己の申出を行うことを要し且つ
施行者において落札者を決定するに当つては、入札の結果入札施行者に最も有利な
条件(価格のみが競争の対象であるときは最低価格)を申し出たことを契約締結の
唯一の要素とする場合に限定すべきではなく、そのことを重要の要素としつつこれ
にその他の条件を加味して落札者を決定することができる場合も、前記競争入札の
実質を保有するものであるから、同条にいう公の入札に当るものと解すべきである。
けだし後者の場合にも施行者は自己に有利な条件で契約を締結する利点を有するも
のであり、又入札者は自己に契約を獲得するためにその条件につき入札者間におい
て競争するを常とするからである。従つて原判決が、本件当初の見積による随意契
約の方式をもつて、指名競争入札の実質を具備するものと判断したことは正当であ
つて、これを所論のように単なる随意契約であると認めることはできない。
 しかして、刑法九六条ノ三所定の談合罪は、公の競売又は入札において「公正ナ
ル価格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的」で競争者が互に通謀して或る特定の者を
して契約者たらしめるため、他の者は一定の価格以下又は以上に入札しないことを
協定することによつて直ちに成立するのであり、それ以上その協定に従つて行動さ
れたことを必要とするものではない(昭和二八年(あ)第一一七一号、同年一二月
一〇日第一小法廷決定、集七巻一二号二四一八頁参照)。されば、本件第一、二回
の入札において入札価格が予定価格を超過したため不調となり、後に単なる随意契
約に変更せられたことは、なんら本件犯罪の成否に影響を及ぼすものではない。論
旨は採るをえない。
 よつて刑訴四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決
する。
 検察官 高橋一郎出席
  昭和三三年四月二五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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