弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
原判決を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人石川元也,同渡辺和恵,同井上直行,同杉本吉史の上告受理申立て理
由第一点,第二点について
 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,大阪府下の教職員により組織された教職員組合であり,被上
告人は,銀行業務を営む株式会社である。
 (2)
上告人は,被上告人に対し,平成2年4月3日当時,第1審判決別紙預金目録の番
号1ないし20の定期預金債権(以下「本件各定期預金」という。)を有していた。
 (3) 本件各定期預金のうち上記目録記載の番号1ないし8の定期預金(以下
「本件1ないし8の定期預金」という。)は自動継続定期預金であって,満期日ま
でに預金者から特段の申し出のない限り自動的に従前と同一の期間の定期預金とし
て継続する旨の自動継続特約が付されていた。同番号9ないし20の定期預金(以
下「本件9ないし20の定期預金」という。)は自由金利型定期預金であり,自動
継続特約は付されていなかったが,被上告人は,上告人に対して,各満期日の到来
の際に継続の手続を遺漏なく行うことを約束していた。そして,上告人は,満期日
が到来する都度,被上告人に対し,継続の意思表示をした。
 (4) 平成2年4月3日,D組合の申立てにより,上告人を債務者,被上告人
を第三債務者とする債権仮差押命令(東京地方裁判所平成2年(ヨ)第2230号)
が発せられ,同月5日,同命令が被上告人に送達されたことにより,本件各定期預
金に仮差押えの執行がされた。その後,被上告人は,上告人に対し,本件各定期預
金について,満期日における継続を拒絶した。
 平成6年3月29日,D組合の申立ての取下げにより,本件仮差押えの執行が取
り下げられた。
 (5) その後,上告人は,被上告人に対し,本件仮差押えの執行を受ける前に
到来した直近の各満期日から平成6年3月29日までの間の本件各定期預金の定期
預金利息として1億3149万5763円の支払を請求した。これに対し,被上告
人は,本件仮差押えの執行を受けた後に最初に到来した各満期日において本件各定
期預金の定期預金契約は終了したとして,上告人に対し,同各満期日までの定期預
金利息と同日以降の普通預金の利率による期限後利息の合計1687万2797円
のみを支払った。
2 本件において,上告人は,定期預金契約に基づく約定利息として,被上告人に
対し,1(5)記載の請求に係る定期預金利息金から既に支払を受けた金員を控除
した残額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている。
 3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の本件請
求を棄却すべきものとした。
 (1) 本件1ないし8の定期預金は,自動継続特約付きであるから,預金者で
ある上告人が満期日後は継続しないことを特に申し出ないときは,期限の延長の申
し出があったとみなし,被上告人において期限を延長したものとして取り扱うべき
であるが,被上告人は,正当な理由がある場合には継続を拒絶(停止)できるもの
と解するのが相当である。そして,自動継続特約に基づく期限の延長は,期限到来
時に,預金者が特段の申し出をしないという不作為をもって継続(期限の延長)と
いう処分行為がされていると解するのが相当であるから,同特約による継続は仮差
押債権者を害する処分行為に当たる。したがって,被上告人は,本件各定期預金が
本件仮差押えの執行を受けたことをもって,本件各預金の継続を拒絶する正当な理
由とすることができる。
 (2) 本件9ないし20の定期預金については,被上告人が上告人に対し継続
手続を遺漏なく行うことを約束していたものの,満期が到来した場合に当然に継続
の扱いをする旨を約束したことまでは認めるに足りない。そして,被上告人は,上
告人の同各定期預金の継続の申し出を拒絶したが,仮に銀行業務の公共性から被上
告人において定期預金を継続すべき民事上の義務があるとしても,上記のとおり被
上告人には拒絶する正当な理由があると認められる。
 (3) いずれにしても,本件仮差押えの執行を受けた後に最初に到来した各満
期日をもって,本件各定期預金についての定期預金契約は終了したものである。
 4 しかし,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとお
りである。
 (1) 自動継続定期預金における自動継続特約は,預金者から満期日における
払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い戻
すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間,定期預金として継続させ
ることを内容とするものであり,預入期間に関する合意として,当初の定期預金契
約の一部を構成するものである。したがって,【要旨】自動継続定期預金について
仮差押えの執行がされても,同特約に基づく自動継続の効果が妨げられることはな
い。
 そうすると,被上告人は,本件1ないし8の定期預金に対して仮差押えの執行が
されたとの一事をもって継続拒絶の理由とすることはできず,本件においては他に
継続拒絶を正当とする事情も認められないから,本件1ないし8の定期預金につい
て平成6年3月29日までの定期預金利息の支払等を求める上告人の請求は理由が
あるというべきである。これと異なる原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがあ
り,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
(2) 本件9ないし20の定期預金について,原審は,被上告人が上告人に対し
,各満期日の到来に際して継続の手続を遺漏なく行うことを約束していた事実(以
下,この約束を「本件合意」という。)を認定した上,「満期が到来した場合に当
然に継続の扱いをする旨を約したことまでは認めるに足り」ないと判示した。この
判示は,本件合意が本件1ないし8の定期預金に付されていた自動継続特約ないし
これと同旨の特約ではなかったとの判断を示すものと解される。しかし,本件合意
は,各満期に際して預金者たる上告人から被上告人に対し継続の申入れがあれば,
それによって各満期日に従来の定期預金が継続されるとの趣旨(民法556条,5
59条参照),あるいは,被上告人において上告人の継続申入れに応じるべき義務
を生じるとの趣旨にも解釈し得るものである。そして,上告人が,本件9ないし2
0の定期預金について,各満期日の到来する都度,被上告人に対し継続の申入れを
していたことは原審の認定するところであるから,本件合意の趣旨ないし法的性質
のいかんによっては,被上告人に正当な抗弁がない限り,上告人の申入れによって
本件9ないし20の定期預金が継続されて以後定期預金利息が発生し,あるいは被
上告人にこれを継続すべき義務が生じてその履行を拒絶した被上告人の債務不履行
責任が問題となり得る筋合いである(記録によれば,上告人はその趣旨の主張をも
していると認められる。)。したがって,原審としては,本件合意の存在を認定し
た以上,その趣旨及び法的性質を審理した上,被上告人の抗弁の成否について判断
すべきであった。しかるに原審がこのような措置をとらなかったことは,契約の解
釈に関する法令の適用を誤り,ひいては審理不尽の違法を犯したものというべく,
これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
 5 論旨は以上と同旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。
そこで,本件1ないし8の定期預金については被上告人の支払うべき定期預金利息
の金額について,本件9ないし20の定期預金については本件合意の趣旨ないし法
的性質等について,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川
弘治 裁判官 亀山継夫)

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