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平成15年(ネ)第3357号損害賠償等請求控訴事件(原審・奈良地方裁判所平
成13年(ワ)第132号)
           判    決
      控訴人(1審原告)       A
      同代表者代表取締役       D
      同訴訟代理人弁護士       髙 野 嘉 雄
      同               古 川 雅 朗
      同               小 城   達
      被控訴人(1審被告)      B
      同代表者代表取締役       E
      同訴訟代理人弁護士       玉 越 久 義
      同               柴 崎   崇
      被控訴人(1審被告)      C
      同代表者代表取締役       F
      同訴訟代理人弁護士       高 坂 敬 三
      同               夏 住 要一郎
      同               間 石 成 人
      同               鳥 山 半 六
      同               田 辺 陽 一
      同               小宮山 展 隆
      同               小 田 大 輔
      同               加賀美 有 人
      同               高 坂 佳郁子
      同               塩 津 立 人
           主    文
1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
 事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して4739万6500円及びこれに
対する平成13年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3)ア 被控訴人らは,被服の販売にあたり,原判決別紙標章目録(以下「別紙
標章目録」という。)記載1ないし4の各標章を使用してはならない。
 イ 被控訴人らは,前項の各標章を付した被服を廃棄せよ。
  (4) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
(5) (2)につき仮執行宣言
 2 被控訴人ら
   主文と同旨
  (以下,控訴人を「原告」,被控訴人Bを「被告B」,被控訴人Cを「被告
C」という。)
第2 事案の概要
   本件は,原告が,被告らが原告の使用する標章を付した商品を販売する行為
を行い,この行為が不正競争行為(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2
条1項1号)に当たり,被告らの上記行為により営業上得べかりし利益相当の損害
等を被ったと主張し,主位的に不競法に基づく損害賠償及び販売の差止め等を求
め,仮に,被告らの上記行為が不正競争行為に当たらないとしても,不法行為に当
たると主張し,予備的に不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。
 原判決は,原告の請求をいずれも棄却した。原判決に対し,原告が本件控訴
を提起した。
   前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加,訂正等
するほか,原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」1ないし3(原判決
2頁19行目から7頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用す
る。
 (原判決の訂正等)
 1 原判決2頁22行目の「被告B株式会社」を「被告B」と,同23行目から
24行目にかけての「被告株式会社C」を「被告C」と各改め,同24行目の「株
式会社である」の次に「。」を加え,同行目から25行目にかけての「(以下,各
被告の「株式会社」は省略する。)」を削る。
 2 同3頁4行目の「被告Bに対し,」の次に「本件標章を使用した」を加え,
同21行目の「3つ」を「三つ」と,同25行目の「9月中旬ころ」を「10月こ
ろ」と各改める。
 3 同4頁7行目の「争点に対する」を「争点に関する」と,同17行目の「同
標章」及び5頁8行目から9行目にかけての「本件各標章」をいずれも「本件標
章」と各改める。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,争点(2)に関する被告らの主張(被告らが本件商品を販売するこ
とを原告が承諾したこと)が認められ,原告の主位的請求及び予備的請求は,その
余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がないものと判断する。その理由は,
次のとおり付加,訂正等するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対
する判断」1,2(原判決7頁24行目から16頁4行目まで)に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
 (原判決の訂正等)
  (1) 原判決7頁末行の「証人G」及び8頁1行目の「原告代表者」のそれぞれ
の次にいずれも「(一部)」を加える。
  (2) 同8頁17行目の「約20万8000枚」を「約20万枚」と,同21行
目から22行目にかけての「,素材」を「で約3万枚」と各改め,同行目の「同程
度」の次に「で約7万枚」を加える。
  (3) 同11頁11行目,同12行目,同行目から13行目にかけて,同行目,
同23行目,同25行目及び12頁6行目の各「解約」をいずれも「解除」と改
め,同7行目の「同月31日」の次に「午前中」を加える。
  (4) 同12頁10行目から同17行目までを次のとおり改める。
 「(3) 本件契約の合意解除後の経過
     ア HとJは,中国の工場に在る在庫品(本件商品)の処分方を検討
し,買取り業者などに買取りを打診したが,これを断られた後,9月中旬ころ,被
告Cに買取りを打診した結果,同被告は本件商品を買い取ることとした。そこで,
被告Bは,中国の工場から本件商品を買い取り,10月から11月にかけて,被告
Cに対し本件商品を出荷した。
       なお,被告Bは,9月末ころ,中国の工場に本件商品の数量を問い
合わせて在庫表の提出を受けたが,この在庫表によると,仕掛かり商品及び完成品
は合計で約6万枚であった。」
  (5) 同12頁24行目の「イ」を削り,13頁5行目末尾の次に改行の上,次
のとおり加える。
 「イ 他方,原告は,9月初旬,中国の工場と直接交渉した上,中国の工場
との間で,被告Bを仲介業者とせずに,原告が中国の工場から商品を直接購入する
旨の契約を新たに締結し,以後,中国の工場から商品の供給を受けるようになっ
た。
  被告Bは,9月中旬,上記の契約の存在を知り,Hにおいて,Gに対
し電話をかけ,抗議の趣旨も含めて,本件契約を合意解除しておきながら,中国の
工場と直接交渉して上記の契約を締結したのは,仲介業者である被告Bを排除し手
数料の支払を免れるためのいわゆるエージェント飛ばしであるから,手数料を請求
する旨伝えた。しかし,原告は上記の手数料の請求に応じず,被告Bは,その後,
上記の契約に関して,中国の工場に対し,契約内容の詳細を確認したり抗議したり
することはなく,原告に対しても,上記の電話以外には抗議をしたことはなかっ
た。」
 (6) 同13頁15行目から15頁5行目までを次のとおり改める。
  「(4) 前記(2)オ,カの認定事実に関し,原告代表者は,8月30日ころにH
から電話を受けたことはなく,Hに対して「売れるんやったら売れや」と言ったの
は,10月2日ころ,Hから本件契約の手数料を請求された際のことにすぎず,そ
れ以前はそのようなことは言っていない旨供述し,原告代表者作成の陳述書(甲2
1)にも同旨の記載が存在する。また,証人Gは,8月25日ころ,被告Bから前
記認定のような本件商品についての確認の電話を受けたことはない旨供述してい
る。
 しかし,そもそも,商品の製造販売に関する契約の合意解除に際して
は,損失の発生を最小限にすべく,既に生産された在庫品の行く末が契約当事者間
で問題となるのが通常と考えられる。
 そして,原告代表者の上記の供述及び陳述書(甲21)の記載について
検討すると,原告代表者は,9月20日ころには,被告C等が本件商品を販売して
いる旨の情報を取引先から入手した旨供述する。しかし,そうであれば,原告代表
者としては,10月2日ころの段階では,Hに対し,本件商品を被告C等に販売し
ていないかどうか確認なり抗議をしてしかるべきであるのに,上記の供述及び陳述
書の記載は,かえって,被告Bの本件商品の販売を是認するような言動をしたとす
るものであり,不自然不合理というべきである。また,このような言動をした趣旨
についての原告代表者の供述は,ネームを外し,又はデザインを変えて売るという
趣旨であった旨供述しながら,一方で,訴訟問題を生じさせるために言った旨供述
したり,被告Bが転売しているかどうかを確認するために同被告に売らせれば確認
がとりやすい旨の供述もしており,供述内容自体に整合性がなく,また,転売確認
の趣旨については,確認の手段としてそもそも適切とはいえず,合理性を欠くもの
である。さらに,被告Bは,9月中旬には被告Cとの商談がまとまり10月には本
件標章を付したままで本件商品を出荷しており(前記(3)ア),商品を出荷したか又
は出荷直前の同月初旬の段階で,原告に転売の許可を問い合わせることは不自然と
いうべきである。また,合意解除の際,被告Bは既に出荷された分を含めて手数料
を放棄することを容認しており,その後,Hは9月中旬にGに電話をかけて手数料
を請求しているものの,この請求がいわゆるエージェント飛ばしの抗議の趣旨を込
めてなされたものであるのに対し(前記(2)カ,(3)イ),原告代表者の供述及び陳
述書の記載は単純な手数料の請求があったとするのみであり,上記のとおり,被告
Cとの商談が既にまとまり,出荷したか又は出荷直前の10月初旬の段階で,被告
Bが,エージェント飛ばしであるとの抗議の趣旨もなく単純に既に放棄した手数料
をわざわざ原告に請求することは不自然というべきである。
   次に,証人Gの上記供述についてみると,上記供述は,Gが9月中旬こ
ろにHから初めて電話を受け,その内容は本件契約の手数料の請求であったとする
G自身の供述を前提とするものであるが,この手数料の請求に関する供述は,時期
の点ではHの供述と一致するものの,原告代表者の供述と同様,単純な手数料の請
求があったとするのみであり,エージェント飛ばしであるとの抗議の趣旨もなく,
単純に既に放棄した手数料をわざわざ原告に請求することが不自然であることは上
記のとおりである。また,7月上旬に一部商品につき出荷が始まっているのに,原
告が手数料を支払わないという事情があったのであるから(前記(2)オ),8月ころ
からH自身が原告に対し手数料の請求のため電話をかけたとしても,何ら不自然で
はない。そして,本件契約は約64万ドルの規模の取引であるにもかかわらず,早
くも被告Bは原告から被告Bに三つの選択肢が提示された8月29日の翌々日であ
る31日午前中に連絡して本件契約を合意解除しているのであって(前記(2)カ),
これらの事情からすれば,原告の提示した選択肢の内容が同被告にとって全く唐突
なものというわけでもなかったと考えられ,8月29日より前に原告と被告B間に
おいて選択肢の内容について話題となっていたとみるのが自然である。
 他方,前記の原告代表者の供述及び陳述書(甲21)の記載並びに証人
Gの供述と反対趣旨のH及び証人Jの各供述については,格別,不自然不合理な点
はなく,供述相互の間にも大きな不一致はなく,十分信用性を有するものである。
 なお,被告Bは,9月中旬,原告と中国の工場との間の新たな契約の存
在を知り,Hにおいて,電話でGに対し,いわゆるエージェント飛ばしであるとの
抗議の趣旨で手数料の請求をしているが,その後は,中国の工場に対し契約内容の
詳細を確認したり抗議したりすることはなく,原告に対しても,上記の電話以外に
は抗議をしたことはなかった(前記(3)ウ)。しかし,この点については,被告B
は,今後の中国の工場との取引を考え,売れない在庫品を買い取って中国の工場に
損失を被らせないために本件契約の合意解除を行ったものであり,9月末に在庫品
の数量を確認し,原告が購入しなかった商品を買い取ることで十分であり,原告と
中国の工場との新たな契約を巡りさらに紛争を生じさせる考えはなかったものと認
められ(証人J,被告B代表者),H及び証人Jの各供述の信用性を左右するもの
ではない。
 以上によると,原告代表者の供述及び陳述書(甲21)の記載並びに証
人Gの供述は直ちに採用することができず,他に,前記認定を覆すに足りる証拠は
ない。」
 (7) 同15頁10行目の「ところで,商品の製造に関する」を「そして,前記
のとおり,商品の製造販売に関する」と改め,同12行目の「そうして,」を削
り,同16行目の「被告Bの転売」を「被告Bに対し本件商品の販売」と改め,同
18行目の「何らの指示をもしていない上,」の次に「商品に付された標章,」を
加え,同20行目から21行目にかけての「ネーム及びタグ等」を「商品に付され
た標章,ネーム及びタグ」と改め,同25行目の「本件標章」の次に「,ネーム及
びタグ」を加え,16頁1行目から同4行目までを次のとおり改める。
 「 以上によると,本件契約の合意解除に際し,原告は,被告Bに対し,同
被告が本件標章の付された本件商品を販売することを無条件で承諾したものと認め
るのが相当である。
 したがって,原告の主位的請求及び予備的請求は,その余の点を判断す
るまでもなく,いずれも理由がない。」
 2 その他,原審及び当審における原告及び被告ら提出の各準備書面記載の主張
に照らして,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,引用に
係る原判決も含め,当審の認定判断を覆すほどのものはない。
第4 結論
 以上によると,原告の主位的請求及び予備的請求は,いずれも理由がないか
ら棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴を棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
 (当審口頭弁論終結日平成16年1月28日)
    大阪高等裁判所第8民事部
  裁判長裁判官  竹  原  俊  一
           裁判官  小  野  洋  一
           裁判官  黒  野  功  久

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