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主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を福岡地方裁判所に差し戻す。
第2事案の概要
本件は,原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)を買。
い受けた控訴人が,前所有者の代理人として,平成13年度の固定資産課税台
帳に登録された本件土地の価格を不服として,被控訴人に対して審査の申出を
したところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という)がされた。
ので,今度は,控訴人自身が原告となって,本件決定の取消しを求めている事
案である。
原審は,控訴人には原告適格がないとして本件訴えを却下した。
1前提となる事実及び争点は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決2頁7
行目から10頁7行目までのとおりであるから,これを引用する。
(前提となる事実)
「」「(「」。)」,()原判決2頁11行目の株式会社の次に以下Aというを1
12行目の「これらを所有し」の次に「同日」をそれぞれ加える。,,
()同15行目の「北九州市長は」の次に「同年6月6日に,地盤沈下を2,
要因として」を加え,同16行目の「決定し」を「修正し」と改める。,
()同20行目の「被告に対し」の次に「同価格を2億円未満に引き下げ3,
るべきことを主張して」を加える。,
()同3頁1行目の次に,改行の上,次のとおり加える。4
「()控訴人は,平成17年1月25日,これを不服として,自ら原告とな6
り,本件登録価格のうち,上記本件土地買受代金額を超える部分の取消
しを求めて,本訴を提起した」。
(争点)
()原判決3頁12行目の次に,改行の上,以下のとおり加える。5
「ウ固定資産評価審査委員会の審査手続については,行政不服審査法(以
下「行服法」という)37条が準用(地方税法(以下「法」という。)。
433条)されており,審査請求人の地位の承継ができることになって
いる。控訴人は,本件審査申出において,Aの代理人として,当初から
手続に関与していたのであり,許可を与えることによって,手続を著し
く遅延されるなど不許可とすべき事由はなかった。そうであれば,年度
途中での土地の譲受人である控訴人に審査請求人の地位の承継が認めら
れるのは当然である。
エそもそも,本件決定は,30日以内に審査の決定をしなければならな
いとされているのに(法433条1項,1214日もかかってなされ)
ており,常識の範囲を超えたものである。法433条1項は訓示規定で
,。,あるからといってそれで済まされる問題ではない控訴人の請求権は
平成18年3月には時効消滅するともいわれており,権利侵害は明らか
であるから,本件決定は,地方自治法2条16項,17項からしても無
効である。
(なお,上記エは,当審での新主張である」。)
()同18行目の冒頭に「イ」を加える。6
()同4頁21行目の次に改行の上,次のとおり加える。7
「エ控訴人は,当審で,固定資産税を納付したから納税者であると主張す
るが,控訴人は,単に「第三者」として納付したに過ぎず(法20条の
6第1項,納税者には当たらない」)。
第3当裁判所の判断
1争点()及び()について12
()前記のとおり,本件訴訟は,平成13年3月16日に本件土地を買い受1
けた控訴人において,平成13年度固定資産課税台帳に登録された本件土地
の価格についての審査申出に対してなされた本件決定の取消しを求めるもの
である。
()ところで,固定資産税は固定資産の所有者に課されるものであり(法32
43条1項,ここに所有者とは,土地については,登記簿等に登記等がさ)
れている者をいう(同条2項。また,固定資産税の賦課期日は当該年度の)
初日の属する年の1月1日とされている(法359条。したがって,本件)
土地に対する平成13年度の固定資産税は,平成13年1月1日に本件土地
の登記簿上の所有者であったAに課されることは疑問の余地がない。
しかして,固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある納税者
,(),は固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ法432条
これに対し,同委員会は申出を受けた日から30日以内に審査の決定をする
ものとされ(法433条1項,この決定に不服のある納税者はその取消し)
の訴えを提起することができ(法434条1項,かつ,この審査の申出と)
審査の決定に対する取消しの訴えによってのみ争うことができるものとされ
ている(同条2項。)
そうすると,平成13年度固定資産課税台帳に登録された本件土地の価格
について被控訴人に審査の申出をすることができ,また,同申出に対する被
控訴人の決定の取消しの訴えを提起することができるのは,Aであることも
また明白である。それ故,本件申出はAがしたのであり,控訴人はあくまで
その代理人として振る舞うにとどまったのである。
()然るに,被控訴人が本件申出に対する本件決定をしたところ,これに対3
,,。しては一転して控訴人自身が原告となって本件訴訟を提起したのである
しかしながら,本件土地の平成13年度の固定資産税の納税者は,上記の
とおり,Aであって,控訴人ではないから,控訴人には本件訴訟の原告適格
がなく,また,審査の申出もAがしたものであって,控訴人はその代理人に
すぎなかったのであるから,本件訴訟は審査請求前置の要件も充足していな
いことが明らかである。
()控訴人は,平成13年度の登録価格が平成14年度の固定資産税の課税4
標準とされるから,控訴人にも原告適格があるとか,不動産取得税の課税標
準は固定資産課税台帳の登録価格により決定されるところ,不動産取得税の
納税者は,その賦課決定の取消訴訟において上記登録価格を実質的に争うこ
とができないから,控訴人にも原告適格が認められるべきであるなどと主張
するが,いずれも独自の見解であって,採用の限りでない。
また,控訴人は,審査請求前置の関係についても,平成13年度分の本件
土地の固定資産税を負担するのは控訴人であるから,本件審査申出は実質的
には控訴人のための審査申出と同視しうるとか,本件審査申出を実際に担当
したのは控訴人であり,平成13年度の固定資産税を実際に納付したのも控
訴人であるし,控訴人はAの保証人であるから,控訴人のために適法な審査
申出を経たものといえるなどと主張するが,既に見たところに照らして採用
することができないことは明らかである。
さらに,控訴人は,控訴人がAの地位を承継したものと認めるにつき何ら
の不都合もなかったとか,被控訴人は控訴人に対して地位の承継について教
示すべきであるのにしなかったのであるから,地位の承継が認められるべき
は当然であるなどとも主張するが,審査手続きの過程で,一定の要件を充足
する場合に,被控訴人の許可を得ることによって,はじめて地位の承継が認
められるのであるし,被控訴人にそのようなことについての教示義務がある
とまでいうことはできないから,上記主張を採用することはできない。
なお,本件決定までに異常なまでに時間がかかっていることは控訴人の指
摘するとおりであり,いかなる事情があるにせよ遺憾なことといわなければ
ならない。しかしながら,被控訴人の主張するとおり,法433条1項の期
間は,いわゆる訓示規定であって,その期間を遵守しなかった場合に当該決
定が無効になるというものではない(本件審査申出をして3箇月を経過して
も決定がないときは,それを経ないで取消しの訴えを提起することもできた
のである(行訴法8条2項。)。)
2以上の次第であるから,いずれの点からしても本件訴えは不適法として却下
を免れないものというべきである。これと同旨の原判決は正当であって,本件
控訴は理由がない。
福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官西理
裁判官有吉一郎
裁判官吉岡茂之

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