弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被上告人らの上告人に対する登記請求に関する部分を破棄し、
右部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     前項に関する上告費用は、上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人青山友親の上告理由について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。そして、右事実関係のもと
において、訴外Dが、上告人との間の昭和二二年七月一二日の売買により原判決別
紙目録一及び二記載の二筆の土地(以下「本件二筆の土地」という。)の現地にお
ける土地範囲のうち同図面(一)記載の(イ)部分の土地及び同土地上の立木の所有
権を取得し、次いで同じ上告人との間の昭和二三年一二月五日の売買により右土地
範囲のうち残りの同図面(一)記載の(ロ)、(ハ)部分の土地及び同土地上の立木
の所有権を取得し、その後右Dが死亡したことにより被上告人らが結局本件二筆の
土地及び同土地上の立木の全部を承継取得したものであるとして、被上告人らの上
告人に対する本件二筆の土地の所有権移転登記請求及び同土地上の立木の所有権確
認請求はいずれも正当であるとした原審の判断は、是認することができる。論旨は、
採用することができない。
 しかしながら、職権をもつて調査するに、原判決は、被上告人らの上告人に対す
る右登記請求を認容するにあたり、本件二筆の土地のそれぞれについて昭和二二年
七月一二日及び同二三年一二月五日の二つの売買を登記原因とする所有権移転登記
手続を命じたものであるが、原判決の命じた右登記は、一筆の土地につき二つの売
買を登記原因とするものであつて、実体法上ありえない物権変動を登記原因とする
ものであり許されないものといわなければならない。原審としては、さらに前記(
イ)部分の土地及び(ロ)、(ハ)部分の土地の本件二筆の土地に対する対応関係
を確定したうえ、(イ)部分の土地について昭和二二年七月一二日売買、(ロ)、
(ハ)部分の土地について同二三年一二月五日売買をそれぞれ登記原因とする所有
権移転登記手続を命ずべき筋合であつたのであり、前記のような所有権移転登記手
続を命じた原判決は、登記に関する法令の解釈適用を誤つた違法を犯すものといわ
ざるをえず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決中右登
記請求に関する部分に限り破棄を免れず、右部分についてはさらに審理を尽くす必
要があるから、右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。
 よつて、民訴法四〇七条、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    寺   田   治   郎
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治

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