弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人A1代理人難波貞夫及び上告人両名代理人宮内勉、同多田克の上告理由一
について。
 所論は、原判決は、「控訴人A2(本件上告人)と被控訴人B(本件被上告人)
との間の大阪高等裁判所昭和二八年(ネ)四六一号請求に関する異議事件につき、
昭和二九年二月二五日同裁判所がなした確定判決(原判決取消、控訴人の請求認容)
と牴触する」というのであり、右異議事件の判決は、所論D弁護士の弁護士法二五
条一号違反を理由とし、本件和解調書に基づく強制執行はこれを許さないとしたも
のであることは所論のとおりであるが、原判決は、別段これと牴触する判断をした
ものではなく、ただ、その後(本件和解調書が作成された後)A2とBとの間に、
私法上の契約によつて、本件和解を当初から有効のものとする合意が成立するに至
つたから云々と判断したに過ぎないものであることが判文上明らかであるから、論
旨は理由がない。
 同二について。
 所論前段は、「裁判上の和解は、訴訟上の効果の発生に関するかぎり、訴訟終了
後にこれを追認することによつて有効ならしめることはできない。ことに訴訟委任
は要式行為であるから、なおさらそうである」というのであるが、本件原審の昭和
三一年(ネ)七二二号事件は、私法上の和解契約の履行を請求原因とするものであ
り、同(ネ)七二四号事件は私法上の和解の効果についての無効確認の訴であつて、
いずれも所論裁判上の和解を対象にしたものでないことが明らかであり、そして和
解調書に対する執行力排除の訴の確定後、本件一審訴訟である昭和二九年(ワ)四
一三号事件が提起され、次いでこれに対抗して昭和二九年(ワ)一一〇二号事件が
提起されたのであるから、所論は本件事案に即した主張とみることができない。そ
れゆえ論旨は採るを得ない。
 同後段の所論は、「A2、同Eの代理人D弁護士は、Bを相手方とする和解の授
権を受けておらず、Bの代理人D弁護士は、A2、同Eを相手方とする和解の授権
を受けておらない。和解条項は全体が一連の関係において成立するのであつて、一
つの条項が効力を欠くときは全体として和解そのものが効力を失う」というにある
が、所論授権の欠缺に関する部分の原審事実認定は、挙示の証拠に照らし首肯する
に難くない。所論前半は結局原審の適法にした事実認定を争うに帰し、その後半の
所論は原審の事実誤認もしくは原判示に副わない事実を前提とするものであるから
採るを得ない。
 同三について。
 しかし、所論民法一〇八条に関する原判示は正当であつて、所論のような違法は
なく、弁護士法違反の所論については、原判決もこれを無効としているのであるか
ら論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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