弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人代理人戸毛亮蔵の上告理由第一点について。
 原審は、係争の売買契約においては鉱山監督局長の承認をその効力発生条件とす
る旨の合意が為されたことを認め得られ右認定を左右するに足る措信し得べき証拠
はない旨を判示して、右承認が残代金の支払期のみに関するものでないことを明ら
かにして居るものであることが原判決の行文から容易に看取できる。されば、原判
決に所論矛盾なく、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 原審は、上告人が所論金三万円をDに支払うに至つた事情等を特に認定し、右支
払が所轄鉱山監督局長の承認以前に為されたものではあるけれども契約の趣旨を変
更するものではなかつたとの点につき詳細に説示して居るのであつて、右によれば
その趣意を諒解するに十分であり、原判決に所論矛盾ありと為し得ない。論旨は理
由がない。
 同第四点及び上告人代理人久保田美英の上告理由第四点について。
 売買契約において当事者がその効力発生を将来における行政行為の単なる存否如
何に繋らしめる合意を為すが如きはもとより原則として自由である、と解される。
而して原審は所論の点につき、係争の売買契約締結当時政府が鉱山の設備資材の所
有占有関係の移動を鉱山監督局長の承認に繋らしめ具体的な箇々の移動を政府の方
針に合致するよう監督し事実上統制する措置を採つて居たのであつて、所轄監督局
長の承認はその移動が政府の方針に合致することを確認する行政行為にほかならな
いものであつたこと、鉱業権者であつた上告人等は政府の右方針措置に協力し係争
の売買契約締結にあたつて右承認をその効力発生条件とする旨の合意を為したけれ
ども、結局右承認を得るに至らず該行政行為は存するに至らなかつたこと等を認定
判断して居るものであることが原判決に明らかであるから、不法条件その他特段の
主張の為された事迹の顕われていない本件においては、原審が更に進んで右行政行
為の効力等につき説示しなくとも、原判決に所論違法ありと為し得ない。論旨は理
由がない。
 同第七点及び上告人代理人久保田美英の上告理由第二点(二)、第三点について。
 記録によると、第一審被告Dは係争の売買契約のうちに代金残額七万円を大阪鉱
山監督局長の承認あり次第支払う旨表示せられた条項が存した旨の上告人主張事実
を認めた上、右条項に於ける該表示は右売買契約全体が右承認をその効力発生条件
と為す趣旨であつたがために代金の支払期についてもその趣旨を明らかにしたもの
であり、代金支払のみを右承認に繋らしめたものではない旨を主張立証して居たも
のであることが明らかであるから、原審が証拠資料に基いて右表示のD主張通りの
趣旨であつたことを認定し所論甲一号証につき説示しなかつたとしても原判決に所
論違法ありと為し得ない。此の点に関する論旨は理由がない。
 上告人代理人久保田美英の上告理由第二点について。
 論旨(一)は審理不尽を云うけれども、記録によると上告人は係争の売買契約締
結当時大阪鉱山監督局長名義の所論通牒の内容趣旨を知悉諒解して居たことを昭和
二一年四月二三日の第一審口頭弁論において認めて居り、その後之を争うに至つた
と認めるに足る事迹が顕われて居ないから、此の点につき原審に所論違法はない。
 論旨(三)乃至(五)は理由不備乃至理由齟齬を云うけれども、原審は所論通牒
が所有関係に移動なく単に場所的移転その他占有関係のみの移動の場合であつても
例外たり得ない趣旨のものであること、上告人の為した金三万円の支払が当時の状
況上所轄監督局長の承認を確実に得られるものと信じた結果為されたものであつて
契約の趣旨を変更するものではなかつたこと、Dが昭和一九年二月二一日に発した
電報が判示の所謂内諾を通知する趣意にすぎず所論の如き物権的意思表示を含むも
のではなかつこと等を認定判断する趣意であつたことが、原判決の行文上看取し得
られないわけではないから、原判決に所論違法ありと為すに足りない。論旨は理由
がない。
 同第五点、第六点について。
 原審は、係争の売買契約につき所有並に占有関係の各移動の承認を受くべきであ
つたが、これを比較的容易に承認の得られるのを常とする社内転用に対する承認の
形式により得ることとなつたところ、右社内転用の承認さえも遂に得られなかつた
のであつて、結局実質上右売買契約について所轄監督局長の承認行為は存在するに
至らなかつた旨を判示して居ることが原判決に明らかであるから、此の点及びこれ
を前提とする論旨はすべて理由がない。
 同第七点について。
 上告人の被上告会社に対する本訴請求は、原判決添付第二目録記載動産の所有権
がDから上告人に移転したことをその前提と為すものであることが記録に明らかで
あるところ、原審は右前提を否定して上告人が被上告会社に対し本訴請求権を有し
ないとし同旨に出でた第一審判決を相当としたものであることが原判決に照し看取
し得られるから、原判決にこの点につき理由不備の違法なく論旨は理由がない。
 叙上以外の部分に関する論旨はすべて、結局原判決に影響を及ぼすことの明らか
な法令の違背を主張するものと認められない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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