弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一点について
 労働基準法第九三条は、就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働
契約を、その部分について無効とし、無効となつた部分は就業規則に定める基準に
よるものと定め、この限りにおいて就業規則に個々の労働契約を修正する効力を認
めているに過ぎないのであつて、所論のように、同条が就業規則の定める基準を上
まわる既存の労働条件についても、これを変更する効力を認めたものと解すること
はできない。そして、新たな就業規則の作成又は変更によつて既存の権利を奪い、
労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されず、ただ、
当該規則条項が合理的なものである場合に限つて、個々の労働者の同意がなくて
も、これを一律に適用することができると解すべきである(最高裁判所大法廷昭和
四三年一二月二五日判決、民集二二巻三、四五九頁参照)。
 ところで、退職金は、長期に亘る労働の対償として平常の賃金のほかに退職に際
して支給されるものであるが、後記の如く、就業規則に基く退職金規定によりその
支給の条件及び範囲が明確に定められ、これに従つて一律に支給されなければなら
ないものである限り、労働基準法第一一条にいう賃金にほかならず(最高裁判所第
三小法廷昭和四三年三月一二日判決、民集二二巻五六二頁参照)、右条件の充たさ
れる場合は、労働者は当然所定範囲の退職金の受給権を取得するのであるから、労
働者が就業規則に基き所定の退職金を受ける地位にあることは、これを既得の権利
といつて妨げないとともに、この退職金に関する定めが重要な労働条件に属するこ
と、いうまでもない。
 <要旨>而して、退職金の法的性格を賃金と解する限り、労働者保護のためその支
払確保を期する労働基準法上の保障を受け、全額払(同法第二四条第一項本
文)、不払に対する制裁(同法第二三条、第一〇条第一項第一号)に二関する規定
の適用がある外、性質に反しない限り一般賃金同様の保護を受けるものというべき
ところ、使用者が退職金に関する就業規則を変更し、従来の基準より低い基準を定
めることを是認し、その効力が全労働者に及ぶとすれば、既往の労働の対償たる賃
金について使用者の一方的な減額を肯定するに等しい結果を招くのであつて、この
ような就業規則の変更は、たとえ使用者に経営不振等の事情があるにしても、前記
労働基準法の趣旨に照し、とうてい合理的なものとみることはできない。右就業規
則の変更は、少くとも変更前より雇用されていた労働者に対しては、その同意がな
い以上、変更の効力が及ばないものと解するのが相当である。
 本件において、原判決の確定した事実によれば、被上告人が入社した当時の上告
会社の就業規則附属規定である退職金規定第六条では、上告会社の支給する退職金
の額は、現職最終月の基準賃金総額に勤続年数に応じた所定の倍率を乗じて算定す
ることとされていたが、上告会社は昭和三九年七月右旧規定を一方的に変更し、現
職最終月の基本給のみに右倍率を乗じて算定することと改めたというのであつて、
右変更後の新規定が旧規定において定められた基準よりも低い退職金支給基準を定
めたもので、被上告人より既得の権利を奪い、従前より不利益な労働条件を課する
ものであることは明らかであり、而も右退職金規定の変更に合理的な理由があつた
ものとすることができないこと、前説示のとおりであるところ、原判決によれば、
被上告人が右変更に同意した事実は認められない(この判断を相当とすることは、
上告理由第二点に対する後記説示参照)というのであるから、被上告人は右変更後
の新規定の適用を拒否することができるものといわなければならない。
 してみれば、本件退職金の算定は旧規定によるべきものとした原審の判断は、そ
の過程に以上の説示と見解を異にする点はあるけれとも、結論において是認するこ
とができ、原判決に所論の違法はないことに帰着する。論旨は、結局理由がなく、
採用することができない。
 同第二点について
 原判決が、被上告人が加入していた大阪日日新聞労働組合は、予てから前記退職
金規定の変更に反対し、変更後もなお反対の態度をとり続けてきたところ、被上告
人も右規定の変更に反対であつたが組合として反対の態度を表明しているので格別
個別的な意思の表示をしなかつたとの事実を確定した上、被上告人が個人として約
八ヶ月の間異議を述べることなく就労していたという事実だけでは、右規定の変更
に被上告人の黙示の同意があつたとはいえないと判示したのは、相当であつて、右
判断の過程に所論経験則違背の違法はない。論旨は、独自の見解に基いて原判決を
論難するに帰し、採用できない。
 よつて、民事訴訟法第四〇一条、第九五条、条八九条を適用して、主文のとおり
判決する。
 (裁判長判事 金田宇佐夫 判事 西山要 判事 中川臣朗)

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