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令和2年3月25日判決言渡
令和元年(行ケ)第10135号審決取消請求事件
口頭弁論終結日令和2年2月3日
判決
原告株式会社メイプル会
同訴訟代理人弁理士佐藤富徳
被告特許庁長官
同指定代理人木住野勝也
冨澤美加
豊田純一
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2018-11883号事件について令和元年9月2日にした審決
を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,原告が出願した商標について拒絶査定を受けたことから,不服審判
請求をしたところ,請求は成り立たない旨の審決がされたので,原告がその取消し
を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨に
より認められる事実)
(1)原告は,平成29年6月26日に,「AI介護」の文字を標準文字で表し
てなる商標(以下「本願商標」という。)について,商標登録出願(商願2017
-86243号)をし(甲5。以下,同出願を「本願」という。),平成30年2
月16日,指定役務を,「第44類美容,理容,入浴施設の提供,庭園樹の植樹,
庭園又は花壇の手入れ,肥料の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又
は林業に関するものに限る。),あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティッ
ク,きゅう,柔道整復,はり,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導,動物の飼
育,動物の治療,動物の美容,介護,植木の貸与,農業用機械器具の貸与,医療用
機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,
芝刈機の貸与」と補正した(甲6)ところ,同年7月20日付けで拒絶査定を受け
た(甲9。以下,同拒絶査定を「本件拒絶査定」という。)ので,同年9月5日に,
不服審判請求をした(不服2018-11883号)。
(2)特許庁は,前記(1)の不服審判請求について,令和元年9月2日に,「本件
審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,本
件審決の謄本は,同月17日に原告に送達された。
3本件審決の理由の要点
本願商標は,「AI介護」の文字からなるところ,その構成中の「AI」の文字は,
「人工知能」の意味を有する「artificialintelligence」
の略語として,「介護」の文字は,「高齢者・病人などを介抱し,日常生活を助ける
こと。」の意味を有する語として一般に知られている。
そして,「介護」に関連した分野の新聞記事情報やインターネット情報において
「AI」の文字が,「人工知能」の意味合いで使用され,また,「AI介護」の文字
が,例えば,「人工知能(AI)を活用して・・・高齢者の快適な入浴と介護者の負
担軽減につなげるのが狙い。」や「AI(人工知能)が介護現場に浸透し始めた。」
などの説明と共に使用されており,介護現場において介護ロボットや介護計画の作
成補助等,AIを活用した介護が実際に行われている実情が見受けられる。
そうすると,本願商標を構成する「AI介護」の文字は,「AI(人工知能)を活
用した介護」程の意味合いを容易に想起させるから,「AI介護」の文字からなる本
願商標を,その指定役務中「介護」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,
「AI(人工知能)を活用した介護」であることを認識するにすぎず,単に役務の
質を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにとどまるというべきである。
したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
4原告の主張する審決取消事由
(1)取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)
ア(ア)本願商標は,「AI介護」の文字を標準文字で書してなるところ,その
構成は,同じ書体,同じ大きさにより等間隔でまとまりよく表されているものであ
り,これより生ずる「アイカイゴ」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
(イ)「AI」の文字は,「愛」のローマ字読みであるが,他に,以下のとお
りの意味を有する(甲7)。なお,本願の商標出願・登録情報表示において,「AI
介護」の称呼を,第1に「アイカイゴ」,第2に「エイアイカイゴ」としている(甲
8)。
a「artificialinsemination」(人工授精)
b「airintercepter」(空中迎撃機)
c「AmnestyInternational」(アムネスティイ
ンターナショナル)
d「avianinfluenza」(鳥インフルエンザ)
(ウ)本願商標の「AI」の語は,上記のとおり,「愛」のローマ字読みであ
り,全体として,「愛の介護」というような意味合いを生じるものである。「AI」
を「アイ」と称呼している出願例もある(甲14,15)。
(エ)本願の指定役務である「介護」は,ほとんどが「介護保険法に基づく介
護サービス」である。
介護保険法に基づく介護サービスの代表的なものは,訪問介護,訪問看護,デイ
サービス,グループホーム等であり,これらは,介護保険法において明確に定義さ
れ,区別されている(甲18)。
(オ)「AI介護」の語が,本願の指定役務である「介護」の質等を直接的か
つ具体的に表示するものとして,需要者に認識されていることを裏付ける証拠はな
く,漠然とした意味合いを想起させるにとどまるものであり,本願商標全体から,
「AI(人工知能)を活用した介護」のような意味合いを直ちに看取させるとはい
い難く,本願商標が,指定役務の「介護」の質等を直接的かつ具体的に表示するも
のとして,取引者,需要者に認識されるともいい難い。
(カ)したがって,本願商標は,これをその指定役務について使用しても,役
務の質等を表示するにすぎないものとはいえず,自他役務の識別標識としての機能
を果たし得るものというべきである。
よって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当しない。
イ被告の主張について
(ア)被告は,「介護」に関連した分野での「AI(人工知能)」の活用状況や
「介護」に関連した分野での「AI」及び「AI介護」の文字の使用状況の立証の
ため,新聞やインターネットの記載を証拠として提出するが,以下のとおり,同証
拠から,被告の主張に係る事実を認めることはできない。
a乙14について
乙14の記載は,あくまで目標であり,現実には行われていない。
乙14には,「AI介護」の語の記載も示唆もなく,「AI介護」の語の具体的な
意味合いの記載も示唆もない。
b乙15について
乙15の記載内容は,開発事例であるところ,開発事例は開発段階にあるから,
乙15は,介護現場で現実に使用されていることを示すものではない。
c乙16について
乙16は,「AIを使った介護事業プランの開発事例」であり,開発段階にあるも
ので,介護現場で現実に使用されていることは記載されていない。
乙16に記載されている「Tapia(タピア)」は,本願の指定役務の「介護」
とは関係ない。
d乙17について
乙17には,先端テクノロジーを生かした製品やサービスの具体的な記載がない。
「見守りロボットを使った見守り」や「AIカメラが生体情報を読み取り,24
時間365日,安心見守り」は,本願の指定役務の「介護」とは非類似の役務であ
る。
「個別事情に配慮する煩雑なケアプランを,AIにより短時間で作成」と記載さ
れているが,介護計画(ケアプラン)作成者はケアマネージャーでなければならな
いから,正確には,「個人情報に配慮する煩雑なケアプランを,AIにより短時間で
作成するのを支援」とすべきである。そして,ケアプランの作成支援(補助)のソ
フトウェアは,ケアマネージャーのケアプラン作成の労務軽減を図るソフトウェア
であるから,本願の指定役務の「介護」には該当しない。
e乙18について
「AI介護ロボ」の語は,「AIを搭載したロボット」といった具体的な意味合い
が自然に生じるとともに,全体として一体として把握されるので,その語から,「A
I介護」の文字を分離抽出して観察すべきではない。
乙18では,実際にAIを搭載した介護ロボットが導入されたかどうかは不明で
ある。
「高齢者の見回り」は,本願の指定役務の「介護」とは非類似の役務であり,「食
事の配膳や片付け」,「洗濯物やごみの回収」,「介護士らの業務支援用途」は,独立
して商取引の目的たり得ないので,商標法上の役務ではない。このように,乙18
には,「AI介護ロボ」が介護サービスを提供するとは記載されておらず,「AI介
護ロボ」は「介護」以外の業務を行う旨明記されているから,乙18には,本願の
指定役務の「介護」の具体的な質,内容の記載はない。
f乙19について
「AI介護ロボ」の語は,「AIを搭載したロボット」といった具体的な意味合い
が自然に生じるとともに,全体として一体として把握されるので,その語から,「A
I介護」の文字を分離抽出して観察すべきではない。
乙19には,AI介護ロボの試作機が完成し,これから実用研究を行うことしか
記載されておらず,本願の指定役務の「介護」の具体的な質,内容の記載はない。
g乙20について
「AI介護」の語は,「ニチイ学館とNEC」を暗示するよう新聞記者が考えた造
語であり,「AI(人工知能)を活用して介護」という意味ではない。
介護計画(ケアプラン)作成を補助するソフトウェアは,ケアマネージャーのケ
アプラン作成の労務軽減を図るソフトウェアであるから,本願の指定役務の「介護」
には該当せず,したがって,乙20には,指定役務の「介護」の具体的な内容の記
載がない。
h乙21について
「AI介護活用」という語は,「AIを介護分野で活用」といった具体的な意味合
いが自然に生じるととともに,全体として一体と把握されるので,この語から「A
I介護」の語を分離抽出して観察すべきではない。
介護サービス計画を作成するのは,介護保険法ではケアマネ―ジャーであり,人
工知能(AI)で介護サービス計画を自動作成すると介護保険法違反となるから,
乙21の「人工知能(AI)で介護サービス計画を自動作成する技術の開発を本格
化させる。」との記載は,著しく妥当性を欠く表現である。
介護サービス計画を自動作成する技術は,介護計画(ケアプラン)作成を補助す
るソフトウェアに関するものであるところ,介護計画(ケアプラン)作成を補助す
るソフトウェアは,本願の指定役務の「介護」には該当しないから,乙21には,
「介護」の具体的な質,内容の記載がない。
i甲1について
「AI介護ロボット」の語は,「AIを搭載したロボット」といった具体的な意味
合いが自然に生じるとともに,全体として一体に把握されるので,その語から,「A
I介護」の文字を分離抽出して観察すべきではない。
甲1には,AIを介護の現場に導入する動きが始まったことが記載されているに
すぎない。実際にAI介護ロボットが導入されるためには,法整備が必要であり,
AI介護ロボットを活用して,本願の指定役務の「介護」を行うことは,現時点で
は時期尚早である。
したがって,甲1には,「AI介護」の具体的な意味合いの記載はない。
j甲2について
「介護サービスの社内教育」は,独立して商取引の目的たり得ないので,商標法
上の役務ではない。「ケアプラン作成の補助ソフト」は,本願の指定役務の「介護」
とは非類似の役務である。ケアプラン作成(サービス)は,介護と独立して商取引
の目的たり得ないので,商標法上の役務ではない。「AIカメラによる高齢者の身辺
の警備」は,「介護」とは非類似の役務である。
このように,甲2には,「AI介護」の語が,介護に関連した分野で記載(使用)
されておらず,「AI介護」の具体的内容の記載も示唆もない。
k甲3について
「AI介護ソフト」の語は,「AIを活用した介護業務効率化ソフト」程の具体的
な意味合いが自然に生じるとともに,全体として一体に把握されるので,その語か
ら,「AI介護」の文字を分離抽出して観察すべきではない。
甲3の内容は,介護業務効率化ソフトに関するものであり,本願の指定役務の「介
護」の具体的な内容の記載はない。
l甲4について
「AI介護のウェルモ」の語は,「AI介護を専門にするウェルモ」といったキャ
ッチフレーズの意味合いが自然に生じるとともに,全体として一体に把握されるべ
きであり,その語から「AI介護」の文字を分離抽出して観察すべきではない。
甲4における「ウェルモ」は,ケアプラン作成の補助ソフトウェアを開発してい
る会社であって,介護事業者ではなく,「AI介護のウェルモ」の表現は,紹介記事
として正確性を欠く。「AI介護ソフトのウェルモ」と記載すべきであり,そうする
と,「AI介護ソフト」の語からは,「AIを活用した介護用ソフト」の意味合いを
生じる。
m乙22について
乙22における「見守りサービス」は,本願の指定役務の「介護」とは非類似の
役務である。また,「音声入力システム」は,介護サービスとは関係ない。
乙22には,「AI介護」の見出しがあるものの,記事内容は「人工知能(AI)
を活用した最先端の施設」の記事であって,見出しと記事内容が不一致であり,「A
I介護」の意味合いが記載されていない。
n乙23について
乙23中の「・・・見守る」は,本願の指定役務の「介護」とは非類似の役務で
ある。
そして,服薬支援ロボット,清掃ロボットがAIを搭載したロボットか否か不明
である。
したがって,乙23には,「AI介護を目指す事業者との勉強会に活用する。」と
の記載があるものの,「AI介護」の具体的な意味合いの記載がない。
o甲4,乙20,21について
見出しは,観者の注意を引くためにコンパクトにインパクトを与える表現の語を
用いる傾向にある。
例えば,コンパクトにインパクトを与える表現の語が,本文(記事内容)に照合
してふさわしくない場合があり,このような場合は,当該情報は証拠として採用す
べきではない。
p乙11~17,22,23
本件審決がされた令和元年9月17日以降に作成されたものであり,証拠とする
ことはできない。
(イ)被告は,本願商標を,その指定役務中「介護」に使用しても,これに接
する取引者,需要者は,「AI(人工知能)を活用した介護」であることを認識する
にすぎないと主張する。
しかし,「介護」の分野では,取引者は介護事業者,需要者は介護サービスの利用
者であるところ,被告が提出する証拠は,新聞記事の単なる紹介記事が多く,取引
者,需要者である介護事業者・介護サービスの利用者が「AI介護」の文字に接し
てどのような具体的な意味合いを直ちに認識するのかどうかを裏付ける証拠は提出
されていない。
「AI」と「介護」の語は,共に,多義的であり,漠然とした意味合いにとどま
っているというべきであるから,その結合語である「AI介護」も,漠然とした意
味合いにとどまっているというべきである。
(2)取消事由2(審判手続の違法)
本件拒絶査定は,本願商標は,指定役務中「AIを利用した介護」に関する役務
に使用しても,識別力がなく,商標法3条1項3号に該当し,人工知能を利用した
役務以外の介護に利用するときは,同法4条1項16号に該当するというものであ
るが,本件審決は,同号の該当性についての判断はしていない。このように同号の
拒絶理由が解消したのであれば,その旨の通知をすべきであり,同通知があれば,
原告は,補正や分割出願をしていた。
したがって,本件審決は,違法であり,三審制を保障する憲法にも違反する。
5被告の主張
(1)本願商標が商標法3条1項3号に該当することについて
ア「AI」の欧文字及び使用状況について
「AI」の欧文字は,「artificialintelligence」(人
工知能)の略語の意味を有する(甲7,乙10)。
そして,「人工知能」は,「推論・判断などの知的な機能を備えたコンピューター
-システム。」(乙10)の意味を有する語であって,AI(人工知能)を活用する
役務も存在しており,例えば,「AI(人工知能)を活用した投資」を「AI投資」
(乙11),「AI(人工知能)を活用した監査」を「AI監査」(乙12),「医療分
野に活用されたAI(人工知能)」を「医療AI」(乙13)と称している。
イ「介護」に関連した分野での「AI(人工知能)」の活用状況について
「介護」に関連した分野において,「AI(人工知能)」の活用の進展について以
下のような実情が見受けられる。
(ア)政府の発表した「AI戦略2019~人・産業・地域・政府全てにA
I~」の資料中,32頁目には,「<具体目標1>」として,「健康・医療・介護分
野でAIを活用するためのデータ基盤の整備」があり,33頁目には,「<具体目標
3>」として,「予防,介護分野へのAI/IoT技術の導入推進,介護へのAI/
IoT活用による介護従事者の負担軽減」があり,「(取組)」として,「熟練介護士
等の知見の活用も含めた質の高い介護サービスを支援するAIシステムの実現と全
国展開」が挙げられている(乙14)。
(イ)「株式会社三菱電機ビジネスシステム」のウェブサイトにおいて,「介
護業界でのAI開発事例」の見出しの下,介護業界におけるAIの活用事例につい
て説明されており,また,「AIの活用に向けた政府の方針」の見出しの下,「厚生
労働省は,自立支援を重視した介護の展開やケアプラン作成を支援するAIの開
発・・・を推進していくと表明しています。」の記載がある(乙15)。
(ウ)「シニアのあんしん相談室」のウェブサイトにおいて,「AIを使った
介護事業プランの数々」の見出しの下,介護業界におけるAIの活用事例について
説明されており,「AI介護事業に参入する企業は今後さらに増加してゆくのは間
違いないでしょう。」の記載がある(乙16)。
(エ)「NHKハートネット」のウェブサイトにおいて,「AIで介護の世界
を支援する」の見出しの下,「AI(人工知能)・・・などが,介護現場での人手不
足を解消するものとして期待されています。・・・介護分野の産業見本市では,それ
らの先端テクノロジーを生かした製品やサービスが,展示ブースに並べられました。」
の記載がある(乙17)。
ウ「介護」に関連した分野での「AI」及び「AI介護」の文字の使用状
況について
以下のとおり,「介護」に関連した分野の新聞記事情報やインターネット情報にお
いて,「AI」の文字が,「人工知能」の意味で使用され,また,「AI介護」の文字
が,例えば,「人工知能(AI)を活用して・・・高齢者の快適な入浴と介護者の負
担軽減につなげるのが狙い。」や「AI(人工知能)が介護現場に浸透し始めた。」
の説明とともに使用されている。
(ア)新聞記事情報
a平成31年1月18日付け日経MJ(流通新聞)(乙18)
「日本にAI介護ロボ,米社,8月からレンタル。」の見出しの下,「ロボット開
発の米アイオロス・ロボティクス(カリフォルニア州)は人工知能(AI)を搭載
したヒト型ロボットを日本に投入する。人手不足が深刻な介護業界に狙いを定め,
片付けの手伝いや高齢者の見守りなど,介護士らの業務支援用途で導入を提案。」と
の記載がある。
b平成30年7月5日付け東京読売新聞朝刊(乙19)
「AI介護ロボで入浴楽々富大教授実用化へ協力企業探す=富山」の見出し
の下,「人工知能(AI)を活用して体格に応じて背もたれが自動で変形するのが特
徴で,高齢者の快適な入浴と介護者の負担軽減につなげるのが狙い。」との記載があ
る。
c平成29年11月10日付け日本経済新聞朝刊(乙20)
「ニチイ学館・NEC,「AI介護」で連携,ケアプラン作成を支援。」の見出し
の下,「ニチイ学館はNECと人工知能(AI)の共同開発で提携した。NECが開
発したAIにニチイが保有する介護保険データを読み込ませ,要介護者向けにつく
る介護計画(ケアプラン)の作成を補助する。」との記載がある。
d平成29年10月3日付け日経産業新聞(乙21)
「AI介護活用を加速,シーディーアイ,2.3億円調達。」の見出しの下,「人
工知能(AI)で介護サービス計画を自動作成する技術の開発を本格化させる。」と
の記載がある。
(イ)インターネット情報
a「NISSENDIGITALHUB」のウェブサイト(甲1)
「AIを搭載した介護ロボットの活躍現場に迫る」の見出しの下,「ロボットとA
I(人工知能)が介護現場に浸透し始めた。最先端技術は,深刻な人手不足を解消
できるのか。そしてAI介護ロボットは介護高齢者の心に寄り添うことができるの
か。」との記載がある。
b東京新聞のウェブサイト(甲2)
「AI介護で達人ケア」の見出しの下,「人工知能(AI)が社会のさまざまな分
野に進出し始めた2018年。介護の現場にも,AI導入の波がやってきている。
介護の「匠(たくみ)の技」をAIが学習して教育に生かしたり,自立支援に役立
つケアプランをAIが提示したり,AIカメラで高齢者の事故防止につなげたりと
さまざまだ。」との記載がある。
c芙蓉開発株式会社のウェブサイト(甲3)
「AI介護ソフト「安診ネットカイゴ」がIT導入補助金の対象に認定」の見
出しの下,「安診ネットカイゴはクラウドを活用したAI介護ソフトです。介護
施設におけるICT運用によるペーパーレス化,労務削減に貢献します。」との記載
がある。
d「THEBRIDGE」のウェブサイト(甲4)
「AI介護のウェルモが福岡市と実証実験,市内の介護データからケアマネージ
ャーの満足度など調査」の見出しの下,「介護関連ベンチャーのウェルモは8月27
日,福岡市とAIを活用したケアマネジャー支援の実証実験を開始すると発表した。」
との記載がある。
e「北國新聞」のウェブサイト(乙22)
「台湾の竹北市長,AI介護視察金沢のケア科学センター」の見出しの下,「介
護施設「ケア科学センター有松ステーション」を訪れ,人工知能(AI)を活用し
た最先端の施設に理解を深めた。」との記載がある。
f「北國新聞」のウェブサイト(乙23)
「高層タイプのAI介護施設金沢で内覧会」の見出しの下,「人工知能(AI)
を活用した介護施設「ケア科学センター若宮ステーション」の内覧会は・・・看護
師や介護士の業務をAIやロボットを駆使して軽減し・・・」や「5階には研修室
も設け・・・AI介護の導入を目指す事業者との勉強会に活用する。」との記載があ
る。
エ以上のとおり,「AI(人工知能)」を活用した種々の役務において,「A
I投資」,「AI監査」又は「医療AI」などのように,その役務と「AI」の文字
を組み合わせて,「AI○○」,「○○AI」のように使用されている実情があり,ま
た,「介護」の分野において,「AI(人工知能)」の活用が進んでおり,「AI」の
文字が,「人工知能」の意味で使用され,当該文字と共に「AI介護」の文字も使用
されている実情もある。
そうすると,本願商標を構成する「AI介護」の文字は,「AI(人工知能)を活
用した介護」というような意味合いを容易に想起させるから,本願商標を,その指
定役務中「介護」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,「AI(人工知能)
を活用した介護」であることを認識するにすぎず,単に役務の質を普通に用いられ
る方法で表示したものと認識するにとどまる。
オ原告は,本願商標は,「愛の介護」というような意味合いを生じると主張
するが,原告の主観によるものであって,本願商標に接する需要者が,本願商標を,
原告主張の意味合いで認識すると考え得る客観的な証拠はないから,原告の主張に
は理由がない。
カ以上より,本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
(2)審判手続の違法について
原告は,本件拒絶査定は,本願商標が商標法3条1項3号及び同法4条1項16
号に該当するとしたにもかかわらず,本件審決は,本願商標が同法3条1項3号の
みに該当するとしたものであって,拒絶理由が解消した旨の明示がされなかったか
ら違法であると主張する。
しかし,出願された商標が指定役務中の一部の役務について,登録要件を満たす
としても,商標登録出願が商標法15条各号に該当する場合には,審査官は,その
商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならないのであるから,
必然的に登録要件を満たすことについて通知しなければならない義務はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
第3当裁判所の判断
1取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について
(1)商標法3条1項3号は,「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,
用途,形状(包装の形状を含む。・・・),生産若しくは使用の方法若しくは時期そ
の他の特徴,数量若しくは価格又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する
物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格
を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受ける
ことができない旨を規定しているが,これは,同号掲記の標章は,商品の産地,販
売地その他の特性を表示,記述する標章であって,取引に際し必要な表示として誰
もがその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公
益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの
場合,自他商品・役務識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないことから,
登録を許さないとしたものである。
(2)本願商標は,前記第2の2(1)のとおり,「AI介護」の文字を標準文字で
表してなる商標であるところ,「AI」の語には,「artificialint
elligence」(人工知能),「artificialinseminati
on」(人工授精),「airinterceptor」(空中迎撃機),「Amne
styInternational」(アムネスティインターナショナル)及び
「avianinfluenza」(鳥インフルエンザ)の略語の意味があること
が認められ(甲7),また,「広辞苑第7版」(平成30年1月12日発行)には,
「エー・アイ〔AI〕」の項目には,「(artificialintellige
nce)人工知能」と記載され(乙10),「介護」の項目には「高齢者・病人など
を介抱し,日常生活を助けること」と記載されている。
(3)証拠(甲1~4,乙13~22)によると,「AI」の語が,以下のとおり
使用されていることが認められる。
ア「NISSENDIGITALHUB」のウェブサイト(甲1)
「AIを搭載した介護ロボットの活躍現場に迫る」の見出しの下,「ロボットとA
I(人工知能)が介護現場に浸透し始めた。最先端技術は,深刻な人手不足を解消
できるのか。そしてAI介護ロボットは介護高齢者の心に寄り添うことができるの
か。」,「ロボットが介護職員(人)の代わりになる」,「ロボットはパワーがある」,
「排泄処理ロボットが登場した」,「ロボットのコミュニケーション能力が高まって
いる」,「「介護ロボットの将来」を予感させるAI搭載のアイオロス・ロボット」と
の記載がある。
イ東京新聞のウェブサイト(平成30年12月30日付け。甲2)
「AI介護で達人ケア」の見出しの下,以下のとおりの記載がある。
(ア)「人工知能(AI)が社会のさまざまな分野に進出し始めた2018年。
介護の現場にも,AI導入の波がやってきている。介護の「匠(たくみ)の技」を
AIが学習して教育に生かしたり,自立支援に役立つケアプランをAIが提示した
り,AIカメラで高齢者の事故防止につなげたりとさまざまだ。」
(イ)「ベテランのケアマネジャーの「経験値」が詰まったケアプランを学
習したAIが,自立支援や重度化防止に役立つプランを提示するケアマネ支援AI
の実証実験が各地で始まっている。」
ウ芙蓉開発株式会社のウェブサイト(平成30年6月5日付け。甲3)
「AI介護ソフト「安診ネットカイゴ」がIT導入補助金の対象に認定」の見
出しの下,以下のとおりの記載がある。
(ア)「安診ネットカイゴはクラウドを活用したAI介護ソフトです。介
護施設におけるICT運用によるペーパーレス化,労務削減に貢献します。」
(イ)「*2安診ネット
バイタルデータや介護記録からAIが入居者健康異常をアラートでお知らせし,
その内容から申し送りを自動で作成するシステムです。・・・」
エ「THEBRIDGE」のウェブサイト(平成30年8月31日付け。
甲4)
「AI介護のウェルモが福岡市と実証実験,市内の介護データからケアマネージ
ャーの満足度など調査」の見出しの下,以下のとおりの記載がある。
(ア)「介護関連ベンチャーのウェルモは8月27日,福岡市とAIを活用し
たケアマネジャー支援の実証実験を開始すると発表した。」
(イ)「同社が提供するケアプラン作成支援AIの「CPA」は,ケアマネ
ジャーが要介護者の状態を入力するとAIが課題を提示し,様々なプラン案を提示
するサービス。・・・」
オ「AINOW」のウェブサイト(令和元年8月14日付け。乙13)
「なぜAIは医療を変えるか-企業の事例から読み取る医療AIの可能性」の見
出しの下,以下のとおりの記載がある。
「AI(人工知能)の進歩によって,医療が進化しています。ディープラーニン
グの発展により,画像認識や音声認識の精度が向上し,医療へAIを活用しようと
する取り組みが活発になっています。国内では2018年にメディカルAI学会が
発足。日本独自の優位性を活かしたメディカルAIの研究開発が盛んになってきま
した。」
カ政府が発表した「AI戦略2019~人・産業・地域・政府全てにAI
~令和元年6月11日統合イノベーション戦略推進会議決定」の資料(乙14)
(ア)「Ⅰ.基本的考え方(A)戦略スコープ」の項目において,以下のと
おりの記載がある。
「本戦略における「人工知能(以下,AI)」とは,知的とされる機能を実現して
いるシステムを前提とする。
近年のAIは,機械学習,特に深層学習(ディープラーニング)に基づくものが
中心であるが,AI関連の技術は急速に進展しており,AIに利用される技術に限
定してAIの定義とすることはしない。」
(イ)「Ⅲ-1社会実装(1)健康・医療・介護」の項目において,以下の
とおりの記載がある。
a「<具体目標1>
健康・医療・介護分野でAIを活用するためのデータ基盤の整備」
b「<具体目標3>
予防,介護分野へのAI/IoT技術の導入推進,介護へのAI/IoT活用に
よる介護従事者の負担軽減」
キ株式会社三菱電機ビジネスシステムのウェブサイト(平成30年3月1
6日付け。乙15)
「AIが介護業界の人材不足を救えるか」の見出しの下,以下のとおりの記載が
ある。
(ア)「・・・AI(人工知能)を介護に活用する動きが出てきました。今回
は,AI導入と介護業界における人材不足の解消について見ていきます。」
(イ)「AIの活用に向けた政府の方針
・・・厚生労働省は,自立支援を重視した介護の展開やケアプラン作成を支援す
るAIの開発・・・を推進していくと表明しています。」
ク「シニアのあんしん相談室」のウェブサイト(平成28年11月16日
付け。乙16)
「介護ロボットが更に進化AI(人工知能)が介護を救う?」の見出しの下,
以下のとおりの記載がある。
(ア)「介護福祉の分野では「介護ロボット」が浸透してきましたが,近い将
来,AIが介護の場で重要な役割を担うことになるかもしれませんよ。」
(イ)「ヘルステック事業などを手掛けるエルステッドインターナショナル
では,AI搭載介護ロボット「Tapia(タピア)」を提供しています。顔認識機
能で対話ができ,見守り機能も備えたコミュニケーションロボットです。」
(ウ)「AI介護事業に参入する企業は今後さらに増加してゆくのは間違い
ないでしょう。」
ケ「NHKハートネット」のウェブサイト(平成31年2月22日付け。
乙17)
「AIで介護の世界を支援する」の見出しの下,「AI(人工知能)・・・などが,
介護現場での人手不足を解消するものとして期待されています。・・・介護分野の産
業見本市では,それらの先端テクノロジーを生かした製品やサービスが,展示ブー
スに並べられました。」,「個別事情に配慮する煩雑なケアプランを,AIにより短時
間で作成」との記載がある。
コ日経MJ(流通新聞)(平成31年1月18日付け。乙18)
「日本にAI介護ロボ,米社,8月からレンタル。」の見出しの下,「ロボット開
発の米アイオロス・ロボティクス(カリフォルニア州)は人工知能(AI)を搭載
したヒト型ロボットを日本に投入する。人手不足が深刻な介護業界に狙いを定め,
片付けの手伝いや高齢者の見守りなど,介護士らの業務支援用途で導入を提案。」,
「介護士のアシスタントとして,食事の配膳や後片付け,洗濯物やゴミの回収など
での活用を見込む。」との記載がある。
サ東京読売新聞朝刊(平成30年7月5日付け。乙19)
「AI介護ロボで入浴楽々富大教授実用化へ協力企業探す=富山」の見出し
の下,「人工知能(AI)を活用して体格に応じて背もたれが自動で変形するのが特
徴で,高齢者の快適な入浴と介護者の負担軽減につなげるのが狙い。」との記載があ
る。
シ日本経済新聞朝刊(平成29年11月10日付け。乙20)
「ニチイ学館・NEC,「AI介護」で連携,ケアプラン作成を支援。」の見出し
の下,「ニチイ学館はNECと人工知能(AI)の共同開発で提携した。NECが開
発したAIにニチイが保有する介護保険データを読み込ませ,要介護者向けにつく
る介護計画(ケアプラン)の作成を補助する。」との記載がある。
ス日経産業新聞(平成29年10月3日付け。乙21)
「AI介護活用を加速,シーディーアイ,2.3億円調達。」の見出しの下,「人
工知能(AI)で介護サービス計画を自動作成する技術の開発を本格化させる。」と
の記載がある。
セ北國新聞のウェブサイト(令和元年5月14日付け。乙22)
「台湾の竹北市長,AI介護視察金沢のケア科学センター」の見出しの下,「介
護施設「ケア科学センター有松ステーション」を訪れ,人工知能(AI)を活用し
た最先端の施設に理解を深めた。」との記載がある。
(4)ア前記(2)のとおり,「AI」の語は,「artificialintel
ligence」,「artificialinsemination」,「air
interceptor」,「AmnestyInternational」及び
「avianinfluenza」という二つの単語からなる語の各頭文字をつ
なげた略語として使用されているが,広辞苑には,「エー・アイ〔AI〕」の項目に
は,「(artificialintelligence)人工知能」と記載され
ていることからすると,「AI」の語は,通常,「エーアイ」と発音し,「人工知能」
という意味で使用されるものと認められる。
また,前記(2)のとおり,「介護」は,「高齢者・病人などを介抱し,日常生活を助
けること」を意味する。
イ前記(3)のとおり,「AI」の語は,多くの新聞やウェブサイト等におい
て,「人工知能」を意味する言葉として使用されていること,その中には,「AI」
の語の意味を説明せずに「AI」とのみ表記されているものもある(甲3,4)こ
とからすると,「AI」の語は,人工知能を意味する言葉として一般的に知られてい
るものと認められる。
そして,前記(3)のとおり,介護の分野において人工知能である「AI」を活用す
ることに関する新聞やウェブサイトの記載が多数あると認められるが,一方で,証
拠上,介護の分野において,「AI」という語を人工知能以外の意味で使用している
例があるとは認められないことからすると,介護の分野において「AI」の語を使
用した場合は,その「AI」は,人工知能を意味するものと認識されるというべき
である。
前記(3)のとおり,新聞やウェブサイト等においては,「AI介護」の語が,AI
を活用した介護という意味で,「AI介護ソフト」の語が,AIを活用した介護のた
めのソフトウェアという意味で,「AI介護事業」の語が,AIを活用した介護事業
という意味で,「AI介護ロボ」及び「AI介護ロボット」の語が,AIを活用した
介護用ロボットという意味でそれぞれ使用されていることからすると,「AI」の語
に名詞が続いた場合は,当該「AI」は,「AIを活用した」との趣旨で使用され,
また,そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められる。
以上からすると,本願商標の「AI介護」からは,AIを活用した介護という意
味合いが生じ,本願商標に接した取引者,需要者は,通常,本願商標は,本願の指
定役務である「介護」の質を示すものと認識するため,本願商標は,自他役務識別
力を欠くというべきである。
したがって,本願商標は,商標法3条1項3号の商標に該当するというべきであ
る。
(5)原告の主張について
ア原告は,本願商標の「AI」の語は「愛」のローマ字読みであり,本願
商標からは,「愛の介護」というような意味合いを生じると主張する。
しかし,前記(4)のとおり,「AI」の語は,人工知能を意味する言葉として一般的
に知られていること,「愛」をローマ字読みで表記する場合に,「I」の文字を大文
字で表記することは不自然であることからすると,「AI」の語は,通常,「エーア
イ」と発音され,人工知能を意味するものと認識されるというべきであり,「愛」と
認識されるとは認められない。このことは,本願の商標出願・登録情報表示におい
て,「AI介護」の称呼を,第1に「アイカイゴ」としていることによって左右され
ない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
イ原告は,①「AI介護ロボ」,「AI介護ロボット」,「AI介護活用」,「A
I介護ソフト」及び「AI介護のウェルモ」の各語は,「AI介護」の文字を分離抽
出して観察すべきではない,②前記(3)の新聞やウェブサイト等に記載された役務
は,商標法上の役務ではないか,本願の指定役務である「介護」には当たらず,非
類似の役務である,③上記新聞やウェブサイト等の記載内容は,目標を記載したも
のや開発段階のものであり,AIが介護現場で現実に使用されたことの記載ではな
い,④甲4,乙20~22の見出しは,本文の記事にふさわしくないと主張する。
しかし,「AI介護ソフト」の語がAIを活用した介護のためのソフトウェアを
意味し,「AI介護ロボ」及び「AI介護ロボット」の語がAIを活用した介護用
ロボットを意味することは,前記(4)イ認定のとおりである。また,「AI介護活用」
は文字どおりAIを介護に活用するという意味である。取引者,需要者は,これら
について,「AI介護」とそれに続く「ソフト」,「ロボ」,「ロボット」又は「活
用」とを分離して認識するというべきである。
また,「AI介護のウェルモ」の語について,取引者,需要者が,「AI介護」
と「ウェルモ」を分離して認識することは明らかである。また,商標法3条1項3
号の商標に該当するというためには,当該商標が,取引者,需要者において同号が
規定する商標に当たると認識されることで足り,当該商標が,その指定役務又は類
似する役務において実際に使用されている必要はないところ,前記(4)のとおり,「A
I介護」という語からは,AIを活用した介護という意味合いが生じ,「AI介護」
という語は,取引者,需要者において,本願の指定役務である「介護」の質を示す
ものと認識されるのであり,新聞やウェブサイト等の記載内容が,目標を記載した
ものや開発段階のものであるとしても,この認定が左右されることはない。
さらに,甲4,乙20~22の見出しの「AI介護」の語がAIを活用した介護
という意味で用いられていることは明らかであって,そのことは本文の記載によっ
て左右されるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ウ原告は,「AI」と「介護」の語は,共に,多義的であり,漠然とした
意味合いにとどまっているから,取引者,需要者である介護事業者・介護サービス
の利用者が「AI介護」の文字に接して,「AIを活用した介護」であると認識する
ことはないと主張する。
しかし,前記(4)のとおり,「AI」の語は,種々の意味を有するが,通常は,「人
工知能」を意味し,しかも,「AI」の語が「人工知能」を意味することは一般的に
知られているといえるから,「AI」の語が漠然とした意味合いにとどまり,「AI
介護」の語を「AIを活用した介護」であると認識できないということはない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
エ原告は,乙13~17,22は,本件審決後に作成されたから,証拠と
することはできないと主張するが,乙13~17,22の記載が公表された日は,
前記(3)のとおりであり,いずれも本件審決の前であると認められるから,原告の上
記主張は理由がない。
オ原告は,「AI」を「アイ」と称呼している出願例もあると主張する(甲
14,15)。
甲14の登録商標は,その一部に「ai」の語を,甲15の登録商標は,その一
部に「AI」の語をそれぞれ含むものであるが,本願とは異なる登録例であり,商
標の構成も本願とは大きく異なるから,本願について,「AI」は,通常「エーア
イ」と発音され,人工知能を意味するものと認識されるとの前記(4)の認定を左右し
ない。
2取消事由2(審判手続の違法)について
原告は,本件拒絶査定は,本願商標は,商標法3条1項3号及び同法4条1項1
6号に該当するとしたにもかかわらず,本件審決は,同号該当性についての判断を
せず,また,同号の拒絶理由が解消したことの通知をしなかったことが違法であり,
三審制を保障する憲法にも反すると主張する。
しかし,拒絶査定不服審判における審理の対象は,拒絶査定の理由の当否ではな
く,当該出願に拒絶理由があるか否かであり,拒絶査定において,複数の拒絶理由
が挙げられていても,そのうちの一つの拒絶理由によって,当該出願を拒絶できる
のであれば,同拒絶理由によって審判請求を棄却することができるのであって,拒
絶査定において挙げられていた拒絶理由の全てについて判断をする必要はない。し
たがって,本件審決が拒絶査定において挙げられていた拒絶理由の全てについて判
断しなかったとしても違法ではない。
また,拒絶査定において挙げられていた拒絶理由のうち審決において判断しない
ものについての判断を出願人に対して通知することを義務付ける規定はなく,通知
しなかったとしても,違法ではない。
よって,原告の上記主張は理由がなく,本件の審判手続に違法があるということ
はできないし,また,憲法違反があるということもできない。
第4結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文
のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野信
裁判官
熊谷大輔

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