弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 本件訴を却下する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一、当事者の求める裁判
(原告)
 被告が昭和四三年七月六日訴外Aに対してなした、大阪府門真市<以下略>にお
ける薬局開設許可処分(許可番号第四七六八号)を取消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
 との判決を求める。
(被告)
第一次申立
 原告の請求を却下する。
 訴訟費用は原告の負担とする、
 との判決を求める。
第二次申立
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする、
 との判決を求める。
第二、主張
(原告)
請求原因
(一) 原告は昭和四三年一月二三日被告から大阪府門真市<以下略>における医
薬品販売業の営業許可(許可番号第八七三二号)を受け、現在同所において日之出
薬店を営業している。
(二) 訴外Aは、大阪府門真市<以下略>所在の古川橋トツプセンター内におい
て東洋薬局なる名称で薬局を開設することを企画し、被告に対し薬局開設許可を申
請したところ、被告は昭和四三年七月六日これを許可(許可番号第四七六八号)し
た。
(三) ところで、大阪府条例第三三号「薬局等の配置の基準に関する条例」(以
下単に府条例という。)第二、三条によれば、新規に薬局等の開設を許可する場合
には、他の薬局等から一三〇メートル以上の距離をおくことが必要である旨規定さ
れているのに、Aの前記東洋薬局は原告の日之出薬店からせいぜい八〇メートル位
しか離れていない。
(四) よつて、被告のAに対する薬局開設許可処分は、薬事法並びに府条例に違
反する違法な処分であるから、これが取消を求める。
(被告)
本案前の抗弁
 薬事法の委任に基づく、府条例の距離制限の規定の趣旨は、もつぱら、住民に対
し適正な調剤の確保と医薬品の適正な供給を図り、薬局の地域的偏在を防止すると
いう公益的目的による規制としてのみ是認しうるもので、既設業者が右距離制限に
よつて享受する利益は反射的利益にすぎない。
 従つて、原告はAに対する被告の本件許可処分の取消を求める原告適格を有しな
い。
本案の答弁
 請求原因事実は認める。
本案の抗弁
(一) 府条例第二条第五号によれば、「薬局開設者、一般販売業者又は薬種商
が、天災土地の収用その他これらに類する理由により、他の場所において薬局を開
設しようとし、又は一般販売業若しくは薬種商販売業を行なおうとするときは府条
例の適用がない。」旨規定されているが、Aは、かつて、大阪市<以下略>におい
て薬局を経営していたところ、その土地が大阪府道高速大阪東大阪線の用地に指定
されたため、大阪府の買収交渉に応じ右土地を任意に大阪府に売渡し、右薬局に代
わる薬局開設許可を被告に申請したものであつて、Aに対する本件許可処分は、同
条項にいう「天災土地収用その他これらに類する理由による場合」に該当する。
(二) 大阪市<以下略>所在の薬局は、被告が府条例施行以前にAの妻である訴
外Bに対しその開設を許可したもので、本件許可処分と何の関係もない。
(三) 従つて、府条例第三条の規定は本件許可処分に適用されないから、原告の
日之出薬店とAの東洋薬局間の距離が一三〇メートルに満たないとしても、被告の
本件処分は適法である。
(原告)
本案前の抗弁に対する答弁
(一) 薬事法並びに府条例の立法趣旨は、医薬行政の円滑な運営を図ることを目
的とすると同時に、薬局開設者の最低限度の経営の安定化、合理化を図ることをも
その目的としているのであつて、距離制限の規定によつて既設業者が享受する利益
もまた法によつて保護された利益である。
 従つて、原告は行政事件訴訟法にいう「当該処分の取消を求めるにつき法律上の
利益を有する者」に該当する。
本案の抗弁に対する答弁
(一) Aは大阪市<以下略>において薬局を経営していたところ、その土地が大
阪府道高速大阪東大阪線の用地に指定されたため、大阪府の買収交渉に応じ右土地
を大阪府に任意売却したことは認め、その余の事実は否認する。
 府条例第二条第五号の趣旨は、「一種の緊急避難的見地から、新設の薬局業者が
既設の薬局業者の既得権を侵害するのもまた己むをえない。」とするものであるか
ら、本件が同条項に該当するかどうかは、これを制限的に厳格に解釈する必要があ
る。しかるに、Aは数年前から、前記大阪市<以下略>所在の薬局が立退きを要求
されることを予想し、既に昭和三九年三月二日<以下略>に別の薬局を建設して大
々的、多角的に営業しているのであるから、同人に何ら緊急避難的な右救済を与え
る必要はない。
 従つて、被告のAに対する本件許可処分は薬事法並びに府条例に違反する違法な
処分である。
第三 証拠関係(省略)
       理   由
一、本案前の抗弁について、
(一) 薬事法第五条第一項は、「薬局はその所在地の都道府県知事の許可を受け
なければ開設してはならない。」と規定し、同法第六条第二項は、「その薬局の設
置の場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、右許可を与えないことができ
る。」と規定している。そして、同条第四項は第二項を受けて、「同条第二項の配
置の基準は、住民に対し適正な調剤確保と医薬品の適正な供給を図ることができる
ように都道府県条例で定める。」と規定し、この委任に基づき大阪府条例第三三号
「薬局等の配置の基準に関する条例」が制定され、同条例第三条第一項は、「薬局
等の設置の場所の配置基準は次のとおりとする。」として同項第一、二号に「薬局
等の数が、人口、交通事情、住民の調剤及び医薬品に対する需要状況等、調剤の確
保と医薬品の需要に影響を与える各般の事情を考慮して、知事が定める区域ごとの
数をこえない区域にあつては、他の薬局等との距離が一三〇メートル以上であるこ
と。」「薬局等の数が適正数をこえる区域にあつては、他の薬局等との距離が二六
〇メートル以上あること。」と規定している。
 そこで薬事法(及び同法の委任に基づく府条例)が薬局等の開設につき許可制を
とり、その配置の基準を定めている趣旨について考えてみると、薬局業は、本来は
何人も自由に営業しうるものであるが(憲法第二二条)、法は医薬品が国民の生命
健康の保持に密接な関係を有する特殊な商品であり、その適正な調剤を確保し、医
薬品の適正な供給を図ることが国民の生命健康の保持増進のため必要不可欠である
ところから、公益を図る衛生行政上の見地に立つて薬局等の開設を知事の許可(一
種の営業免許)にかからしめているのであつて、法の委任に基づいて府条例が規定
する距離制限も、もつぱら「国民に対する適正な調剤を確保し、医薬品の適正な供
給を図るため、その地域的偏在を防止して国民の便宜をはかる。」という公益的見
地からの規制としてのみ是認しうるもので、既設業者が右距離制限によつて享受す
る営業上の利益はいわゆる反射的利益にすぎないと解すべきである。
 従つて、原告は本件訴を提起する原告適格(行政事件訴訟法第九条)を有しな
い。
(二) なお最高裁昭和三七年一月一九日第二小法廷判決(民集一六巻一号五七
頁)は公衆浴場業について、「適正な許可制度の運用によつて保護さるべき営業上
の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず、公衆浴場法によつて保
護せられる法的利益と解するを相当とする。」と判断しているが、公衆浴場業の場
合はその事業設備に多額の資本投下を要し、しかも一たび完成した設備は他の目的
に転用するのが困難であり、また、物価統制令、公衆入浴料金の統制額の指定等に
関する省令(昭和三二年厚生省令第三八号)によつて入浴料金が統制されている等
の理由から、自由競争を放任した場合には、浴場の濫立によりその経営が経済的に
困難となり衛生設備の低下をきたす等、国民生活に好ましくない影響を及ぼすおそ
れがあるので、国民保健及び環境衛生を確保すると同時に、既設業者の営業上の利
益を法的に保護することもまた、憲法第二二条にいう「公共の福祉」の内容として
是認されるけれども、薬局業の場合はこれと異り薬局構造設備規則(昭和三六年厚
生省令第二号)によつて薬局の構造設備に一定の基準が要求されているといつて
も、その基準の達成、保持にはそれほど多くの資本を必要とせず、薬局設備を他の
目的に転用することもさほど困難なものではなく、医薬品の調剤販売についての価
格統制はなく、自由競争の放任により業者が濫立しても、利潤の低下により医薬品
の性状品質が低下して国民生活に重大な影響を及ぼすことは通常考えられないか
ら、右の判例を本件に適用するのは相当でない。
二、よつて、本件訴は訴訟要件を欠く不適法なものであるからこれを却下すること
とし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決す
る。
(裁判官 井上三郎 藤井俊彦 小杉丈夫)

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