弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
一本件控訴を棄却する。
二控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一控訴人
1原判決を取り消す。
2被控訴人の各請求を棄却する。
3訴訟費用は、一、二審を通じて、被控訴人の負担とする。
二被控訴人
主文同旨
第二本件事案の概要及び当事者の主張
一当事者双方の原審における主張
当事者双方の原審における主張等は、原判決の「事実」欄記載のとおり(た
だし、原判決の四頁一〇行目に「第二当事者の求めた裁判」とあるのを「第
二当事者の主張」と改める)であるから、この記載を引用する。。
右の記載にあるとおり、本件は、控訴人が新潟県外で発生した産業廃棄物を
本件産業廃棄物処理施設に搬入の上処理し、また、被控訴人からの本件産業廃
棄物処理施設における煤煙等検査の実施に協力するようにとの求めを拒否して
いることが、控訴人が本件産業廃棄物処理施設建設に当たって本件確約書をも
って被控訴人に対してした本件合意や控訴人が被控訴人との間で締結した本件
公害防止協定の定めに違反するとして、被控訴人が、本件合意及び公害防止協
定に基づき、控訴人に対し、①県外で発生した産業廃棄物を本件産業廃棄物処
理施設において処理することの禁止、②被控訴人が本件産業廃棄物処理施設の
敷地内で排ガス測定を行うことに対する妨害の禁止及び③右の排ガス測定に要
する費用について控訴人に支払義務のあることの確認を求めている事案である。
二当事者双方の当審における追加主張
控訴人の当審における主張も基本的には右の原審における主張の範囲を出る
ものではないが、さらに控訴人は、これに加えて、本件確約書及び公害防止協
定は、いずれも控訴人に対して道義上の義務を負わせたいわゆる「紳士協定」
にすぎず、これらの合意等に基づく債務の履行を裁判上強制することまではで
きないと主張している。
この控訴人の追加主張に対し、被控訴人は、本件確約書及び公害防止協定に
よる合意は、行政主体たる町を一方当事者とし、地域の公害を防止し住民の健
康保護、地域全体の生活環境の保全という公共の福祉の実現を目的として締結
された公共的性格を有するものであり、法的拘束力を有するものであると反論
している。
理由
一当裁判所も、被控訴人の本訴各請求にはいずれも理由があり、これを認容す
べきものと判断するが、その理由は、原判決が「理由」欄で説示するところと
同一であるから、これを引用する。
二なお、控訴人の当審における主張等にかんがみ、いくつかの争点に関する当
裁判所の認定、判断を補足しておくと、以下のとおりである。
1強迫、詐欺、錯誤の主張について
本件確約書による合意が強迫又は詐欺による瑕疵のあるものである等とす
る控訴人の主張が、右の確約書の作成に直接関与した控訴人側と被控訴人側
の担当者が誰であったかの点に関する控訴人の主張が事実とは違っているも
のと認められることから、そもそもその前提を欠くものとせざるを得ない点
があることは、原判決の理由説示にあるとおりである。
仮にこの点をひとまず措いて考えると、確かに、本件確約書を提出するか
否かという問題は、建築基準法第五一条の規定に基づく県に対する許可申請
手続やその際の市町村長の意見書の作成手続とは直接には法的な関係のない
問題であり、本件確約書の提出がないことを根拠に被控訴人において右の許
可申請手続を進めることを拒否することが許されないことは、控訴人の主張
するとおりである。しかしながら、普通地方公共団体たる町は、地方公共の
秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること並びに公害の防止
その他の環境の整備保全に関する事項を処理することをその責務の一つとし
ている(地方自治法二条三項一号、七号)のであるから、本件産業廃棄物処
理施設の建設に係る右の許可申請手続に際しても、被控訴人が、地域の生活
環境の維持、向上を図るために、右施設の設置者たる控訴人に対して施設の
操業の方法等について一定の譲歩、協力を求める行政指導を行い、その協力
等の内容を被控訴人との間で書面によって合意することを求めることも、そ
の協力の要求の内容が不当なものであったり、協力要求の方法が不当な強制
にわたる等、社会通念に照らして相当性を欠くようなものでない限り、正当
として許されるものと言うべきである。
これを本件について見ると、被控訴人の担当者において、控訴人側に対し
て、本件確約書を提出しなければ許可申請手続や意見書の作成手続を進めな
いとの意向を示して確約書の提出を迫ったものとまで認められないことは原
判決の説示にあるとおりであり、また本件確約書による合意内容も社会通念
に照らして不当なものとは考えられず、その他この問題を巡る被控訴人側の
控訴人側に対する対応に社会通念上相当性を欠く点があったものとまでする
ことは困難なものというべきである。
そうすると、本件確約書の作成に関与した控訴人側と被控訴人側の担当者
が誰であったかの問題を別にしても、本件確約書の提出の要求に際して、被
控訴人側に違法な強迫や欺罔等の行為があったものとすることはできず、こ
の点に関する控訴人の主張は採用できないものというべきである。
また、控訴人は、本件確約書による合意をした当時、本件許可申請手続を
進行させるためには本件確約書を被控訴人に提出することが必要であると誤
信していたものであるから、右の合意は錯誤により無効であるとも主張して
いる。しかしながら、本件確約書を提出するか否かが本件許可申請手続とは
直接には法的な関係のない問題であることは、関係法規の定め等からして明
、、らかな事柄であるから仮に控訴人の主張するような錯誤の存在が認められ
またこれがいわゆる表示された動機の錯誤に当たるものと仮定しても、控訴
人がそのような錯誤をするについては重大な過失があったものとせざるを得
ない。したがって、この点に関する控訴人の主張も採用できない。
2公序良俗違反の主張について
控訴人は、本件確約書による合意が、公害の防止や生活環境の保護という
観点からしても合理的根拠を欠くものであり、また、多くの産業廃棄物処理
業者の内一人控訴人に対してのみ本件確約書の提出を求めてその営業に制限
を加えることは平等原則に反するものであり、したがって、本件確約書によ
る合意は、公序良俗に反し、無効であると主張する。
しかしながら、被控訴人が控訴人に対して本件確約書の提出を求めること
とした目的が、本件産業廃棄物処理施設において県外の産業廃棄物の処理を
も認めることが産業廃棄物の処理量の増大につながり、地域の生活環境を維
持する上で問題が生ずることを危惧したことから、このような事態を未然に
防止することにあったものと認められることは、原判決の説示にあるとおり
であり、その目的には、それなりの合理性が認められるものというべきであ
る。確かに、控訴人の主張するとおり、我が国全体を通じての産業廃棄物の
適正処理という観点からすれば、本件確約書による合意にあるような自県外
の産業廃棄物の処理を一律に禁ずるという扱いの当否については、さまざま
な見解があり得るものと考えられるところである。しかし、これは、地方自
治体としての被控訴人の政策判断の当否の問題にとどまるものであり、これ
によって、本件確約書による合意が公序良俗に違反するものとして無効にな
るといった性質のものでないことは、いうまでもないところである。
また、被控訴人の町内に施設を有する控訴人以外の産業廃棄物処理業者に
対しては本件確約書によるのと同様の規制が行われていないとの点も、その
一事だけをもってしては、未だ控訴人との間での本件確約書による合意を公
序良俗に反する無効なものとまでするには到底足りないものというべきこと
は、原判決の説示にあるとおりである。
したがって、これらの点に関する控訴人の主張も採用できない。
3本件確約書による合意及び本件公害防止協定がいわゆる「紳士協定」にす
ぎないとの主張について。
控訴人が、本件確約書による合意及び本件公害防止協定がいずれもいわゆ
る「紳士協定」にすぎず、その履行を裁判によって強制することまではでき
ないとする根拠がどのようなところにあるのかは、その主張からしても必ず
しも明らかでない。
、、、しかしながら被控訴人が控訴人に対して本件確約書による合意を求め
また控訴人との間で本件公害防止協定を締結することとした目的が、いずれ
も被控訴人の地域における公害を防止し生活環境の保全を図るための実効性
のある施策を講ずることにあったものと認められることは、原判決の認定に
ある本件の事実関係からして明らかなところであり、これらの合意を単に紳
士協定にとどめる旨の了解が控訴人と被控訴人の間に存在したことを認める
に足りる証拠はないものとせざるを得ない。
したがって、控訴人のこの主張も採用できない。
三結論
以上によれば、被控訴人の本訴各請求を認容した原判決は相当であるから、
本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一五民事部
裁判長裁判官涌井紀夫
裁判官小田泰機
裁判官合田かつ子

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛