弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を仙台高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人遣水祐四郎の上告趣意について。
 所論は、事実誤認と量刑不当の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由に当ら
ない。
 弁護人渡辺大司の上告趣意第二点について。
 所論の一において判例違反をいう点は、判文を通読すれば、原判決の「共謀」ま
たは「謀議」に関する解釈及び共謀共同正犯の成立要件に関する解釈が、引用の判
例に牴触せず、また、本件共謀または謀議の認定が厳格な証明によつてなされてい
ることが自ら明らかであるから、論旨は理由がなく、所論の三において判例違反を
いう点は、原判決の認定していない事実を前提とする主張であつて採ることができ
ず、その余の論旨は、事実誤認と単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条
の上告理由に当らない。
 同第三点について。
 所論は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由に当らない。(なお、
原判決が判示第一、第二の事実につきBの証言を採証したのは、他にこれを裏付け
るに足る証拠が存在するためであることは、判文自体により明らかであり、所論の
如き違法は存しない。)。
 同第一点について。
 所論のうち憲法三七条一項違反をいう点は、迅速な裁判を受け得なかつたことを
理由とする主張が適法な上告理由に当らないことは、当裁判所の判例(昭和二三年
(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決、刑集二巻一四号一八五三頁)と
するところであり、その余の論旨は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴法四
〇五条の上告理由に当らない。
 しかしながら、職権をもつて調査するに、原判決認定の第二の事実については、
当初、昭和三一年六月一二日訴因2として「被告人は喜多方市e町b番地において
衣料品商を営んでいた者であるが、昭和二六年度の衣料品の暴落等により業績振る
わず経営頗る困難な状態に立至つたところ、予て自己に対し多額の不正融資をして
いたA農業協同組合専務理事Bがその回収を急いでいる弱点に乗じ、旧い債務と共
に返済するという口実等で同人から金員を騙取せんことを企て昭和二七年九月二四
日頃喜多方市字c丁目f番地A農業協同組合事務所において、右Bに対し、仕事も
順調だから儲けられる故、手形でもよいから貸してくれと虚構の事実を申し向け、
その旨誤信した同人から額面四〇万円の約束手形一通を騙取した」旨の所為につき
刑法二四六条一項に当るとして起訴されたものであるところ、昭和三六年六月二四
日第一審福島地方裁判所会津若松支部に対し、検察官より「被告人は喜多方市字c
丁目d番地所在A農業協同組合の専務理事として同農業協同組合の金銭出納保管な
ど一切の業務に従事していたBと共謀のうえ昭和二九年九月頃前同所においてその
業務上保管にかかる現金二〇万円を擅にCに対する借金の弁済として同人に交付し
て横領したものである」旨の所為につき刑法二五三条、六〇条、六五条に当るとし
て、訴因並に罰条の予備的追加の請求があり、同裁判所は、右請求を許可したうえ、
右予備的訴因につき「被告人は、右Bが被告人の業績をあげさせ、被告人に対する
融資の回収を得たいと焦慮しているのに乗じ、同人に対し種々の利益を得て返済で
きる旨をといて次々と融資方を懇願し、同人の応諾を得、同人が前記組合の金員を
同人の計算において浮貸するものであることを知りながら、同人と暗黙のうちに共
謀のうえ、昭和二七年中前同人から前記組合専務理事B振出名義の金額四〇万円の
約束手形一通を振出させ、これを担保にDから二〇万円をかりうけ、昭和二九年九
月ころ、前同所において、右Bから、その業務上保管にかかる金員中から現金二〇
万円を擅に自己への貸付金として、右Dの代理人Cに支払わせてこれを横領したも
のである」旨の事実を認定し、業務上横領罪として被告人を処断したものであるこ
とが認められる。
  そこで、まず、右本位的訴因と予備的訴因との間に公訴事実の同一性が存する
か否かの点につき審究するに、両者は、その日時において約二年の開きがあり、対
象において約束手形と現金との違いがあり、その金額も前者は額面四〇万円である
のに対し後者は現金二〇万円であり、犯罪の法律的構成において詐欺と業務上横領
の相違があり、更に被告人とBとの関係につき加害者と被害者の関係から共犯関係
への移動があつて、両者を訴因自体として比較するとき、殆んど何らの共通点を発
見しえないばかりか、仮に前記第一審判決認定前段の事情に属する事実(前記事情
を知つているBと共謀のうえ、昭和二七年中前同人から前記組合専務理事B振出名
義の額面四〇万円の約束手形一通を振り出させ、これを担保にDから二〇万円を借
りうけたとの事実)を媒介として公訴事実の同一性を考察するとしても、右媒介の
事実は背任に問擬すべき被告人の所為を含むものと見られ、これと本位的訴因たる
詐欺の事実とが公訴事実の同一性の範囲内にあることは認められるけれども、右背
任の事実と予備的訴因たる業務上横領の事実とは併合罪の関係にあるものと解する
のが相当であるから、結局、右背任と業務上横領、従つて詐欺と業務上横領との間
には公訴事実の同一性は存しないものといわざるを得ない。従つて、本件詐欺の訴
因に対して本件業務上横領の事実を予備的訴因として追加することは許されないの
であつて、第一審裁判所が検察官の右追加請求を許可したことは、刑訴法三一二条
一項に違反するものというべきであるから、第一審判決が右違法の許可にもとづき
本件公訴事実との同一性を欠く右予備的訴因の事実について審理判決をしたのは、
結局刑訴法三七八条三号にいう「審判の請求を受けない事件」について判決をした
違法があることに帰する。
 しかるに、原判決は第一審判決を破棄して自判するに当り、前記予備的訴因の追
加の許可を適法であるとして右訴因につき被告人を有罪としたものであることが判
文上明らかであるから、原判決には本件第一審判決につき説示したと全く同様の違
法があることとなり、破棄を免れない。
 よつて、刑訴法四一一条、四一三条本文に則り原判決を破棄し、本件を仙台高等
裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。
 検察官 横井大三公判出席
  昭和四一年四月一二日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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