弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
       被告人株式会社Aを罰金1億円に,被告人Bを懲役2年6月に処す
る。
被告人Bに対し,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を
猶予する。
理       由
(罪となるべき事実)
 被告人株式会社A(平成15年3月24日,有限会社Cを組織変更。以下「被告
会社」という。)は,山梨県甲府市○○(平成15年3月14日,甲府市○○から
移転)に本店を置き,遊技場の経営等を目的とする資本金2600万円の株式会社
であり,被告人B(以下「被告人」という。)は,被告会社の代表取締役としてそ
の業務全般を統括するとともに,平成15年3月3日,いずれも有限会社Cに吸収
合併され解散した,当時の山梨県中巨摩郡○○に本店を置き,前同目的とする資本
金1000万円のD有限会社,同郡○○に本店を置き,前同目的とする資本金30
0万円のE有限会社,甲府市○○に本店を置き,前同目的とする資本金1000万
円の株式会社Fの代表取締役としてそれぞれその業務全般を統括していたものであ
るが,被告人は,
第1 被告会社の業務に関し,法人税を免れようと企て,同社が経営するパチンコ
店のホールコンピュータを操作して売上を除外する等の方法により所得を秘匿した
上,
1平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度における被告
会社の実際所得金額が3億268万2944円であったにもかかわらず,平成14
年5月31日,甲府市○○所轄G税務署において,同税務署長に対し,所得金額が
503万9639円で,これに対する法人税額が105万7800円である旨の虚
偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行
為により,被告会社の上記事業年度における正規の法人税額9011万3800円
と上記申告税額との差額8905万6000円を免れ,
 2 平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度における被告
会社の実際所得金額が5億7599万6122円であったにもかかわらず,平成1
5年6月2日,前記G税務署において,同税務署長に対し,所得金額が1億327
7万7763円で,これに対する法人税額が3918万4000円である旨の虚偽
の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為
により,被告会社の上記事業年度における正規の法人税額1億7214万9700
円と上記申告税額との差額1億3296万5700円を免れ,
第2 前記D有限会社の業務に関し,法人税を免れようと企て,前同様の方法によ
り所得を秘匿した上,平成13年5月1日から平成14年4月30日までの事業年
度における同会社の実際所得金額が2億8506万7988円であったにもかかわ
らず,平成14年7月1日,前記G税務署において,同税務署長に対し,所得金額
が2050万2579円で,これに対する法人税額が548万6300円である旨
の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正
の行為により,同会社の上記事業年度における正規の法人税額8485万5800
円と上記申告税額との差額7936万9500円を免れ,
第3 前記E有限会社の業務に関し,法人税を免れようと企て,前同様の方法によ
り所得を秘匿した上,平成13年7月1日から平成14年6月30日までの事業年
度における同会社の実際所得金額が6536万8306円であったにもかかわら
ず,平成14年9月2日,前記G税務署において,同税務署長に対し,所得金額が
628万2180円で,これに対する法人税額が136万4000円である旨の虚
偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行
為により,同会社の上記事業年度における正規の法人税額1895万2300円と
上記申告税額との差額1758万8300円を免れ,
第4 前記株式会社Fの業務に関し,法人税を免れようと企て,前同様の方法によ
り所得を秘匿した上,
 1 平成12年12月1日から平成13年11月30日までの事業年度における
同会社の実際所得金額が8249万1843円であったにもかかわらず,平成14
年1月31日,前記G税務署において,同税務署長に対し,所得金額が1012万
2491円で,これに対する法人税額が238万5600円である旨の虚偽の法人
税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為によ
り,同会社の上記事業年度における正規の法人税額2409万6300円と上記申
告税額との差額2171万700円を免れ,
 2 平成13年12月1日から平成14年11月30日までの事業年度における
同会社の実際所得金額が7297万1882円であったにもかかわらず,平成15
年1月30日,前記G税務署において,同税務署長に対し,所得金額が1632万
7208円で,これに対する法人税額が425万4100円である旨の虚偽の法人
税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為によ
り,同会社の上記事業年度における正規の法人税額2124万7300円と上記申
告税額との差額1699万3200円を免れ
たものである。
(法令の適用)
1 被告会社について
被告会社の判示第1の1の所為は法人税法164条1項,平成14年法律第7
9号(法人税法等の一部を改正する法律)による改正前の法人税法159条1項,
法人税法159条2項に,判示第1の2の所為は同法164条1項,平成16年法
律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)による改正前の法人税法159条
1項,法人税法159条2項にそれぞれ該当するところ,以上は刑法45条前段の
併合罪であるから,同法48条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の
範囲内で被告会社を罰金1億円に処することとする。
2 被告人について
被告人の判示第1の1,第2ないし第4の所為はいずれも平成14年法律第7
9号(法人税法等の一部を改正する法律)による改正前の法人税法159条1項
に,判示第1の2の所為は平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する
法律)による改正前の法人税法159条1項にそれぞれ該当するところ,いずれも
所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条
本文,10条により犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重をした刑期
の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこ
の裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
1 本件は,パチンコ店を経営していた被告人が,自己が代表取締役を務めていた
被告会社やこれに吸収合併された3会社において,それぞれ2又は1事業年度にわ
たり,コンピュータを不正操作してパチンコ店の売上金を除外するとともに,従業
員給与を水増し計上するなどして虚偽過少申告を行い,合計約3億5000万円あ
まりもの法人税をほ脱したという法人税法違反の事案である。
2 被告人のほ脱税額の総合計は3億5768万3400円(うち被告会社のほ脱
税額は2期合計で約2億2202万1700円)と多額であり,ほ脱率は86.9パ
ーセント(うち被告会社のほ脱率は84.6パーセント)と高率であって,このよう
な金額や数値に照らすと,本件の結果は重大である。犯行態様について見ると,被
告人は,腹心の従業員に指示して売上除外を実行させたり,従業員の給与を水増計
上させたりするなど複数の手段を用いて所得隠しを行っており,強固なほ脱意思に
基づく計画的かつ悪質な犯行である。特に,パチンコ店に設置されたホールコンピ
ュータにいわゆる裏ロムを装着し,遊技台ごとに売上除外額を設定するという不正
操作の方法を選択しているが,単純な経理帳簿上の不正操作にとどまらないその巧
妙かつ悪質な手口
は厳しい非難を免れない。被告人は,競争激化による将来の会社経営に対する危機
感にかられての資金確保や,暴力団に対するみかじめ料捻出などを理由に本件各犯
行に及んだものであるが,そもそも将来の経営危機に対する備えは健全な経営努力
により解決を図るべきものであって,これを脱税によって解決しようとすることは
短絡的かつ身勝手な考えといわざるを得ず,他の事情も何ら脱税を正当化するもの
ではないから,本件の動機において斟酌すべきものはない。さらに,売上除外金に
ついては,定期的にそれに見合う金額の現金を腹心の従業員に回収させて同人宅の
金庫や銀行の貸金庫に保管させた上,割引債券を購入させるという巧妙な方法で簿
外資金として隠匿・管理していたほか,親族に贈与したり,各種団体等への寄付な
どに費消しており,
犯行後の行状も芳しくない。
以上によれば,本件の犯情は悪質であり,被告人及び被告会社の刑事責任は重
い。
3 しかしながら,他方,本件発覚後,被告会社において修正申告を行い,本件に
関する本税,重加算税及び延滞税についてはいずれも完納していること,被告人の
発案により本件を機に被告会社においてコンプライアンス委員会を設置し,税理
士・弁護士等の関与を得て内部の監視を強化するなど経理体制を刷新し,法令遵守
及び再犯防止に尽力していること,被告人は,査察当初においてこそ否認していた
ものの,その後は捜査に協力し,当公判廷においても本件各犯行を素直に認めて反
省の弁を述べているほか,既に被告会社の代表取締役及び取締役を辞任するなど反
省の態度を示していること,贖罪の意を表す趣旨で被告人名義で法律扶助協会に多
額の寄付をしていること,被告人は昭和60年に外国人登録法違反の罪により罰金
刑に処せられたことが
あるほかは前科がないこと,被告会社の従業員や関係者から被告人のために嘆願書
が作成されていることなど,被告人及び被告会社のために酌むべき事情も認められ
る。
4 そこで,当裁判所は,以上の事情を総合考慮して,主文のとおりの刑を量定し
た次第である。
(検察官佐藤方生,被告会社及び被告人ともに私選弁護人古屋俊仁(主任)・永野
義一・吉永祐介・中島大督各出席)
(求刑 懲役2年6月〔被告人B〕,罰金1億円〔被告会社〕)
  平成17年6月1日
     甲府地方裁判所刑事部
         裁判長裁判官   川  島  利  夫
            裁判官   矢  野  直  邦
            裁判官   肥  田     薫

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