弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は弁護人渡辺喜八提出の控訴趣意書に記載されたとおりであるか
ら、ここにこれを引用し、これに対し次のように判断する。
 第一点について、
 原判決挙示の証拠を総合すれば判示株式会社(本件当時は株式会社A製作所と称
する)の代表取締役たる被告人が右会社工員B外二十八名に対し判示第一覧表記載
のようにその就業日にいずれも午前七時から午後五時までの間就労させるについて
その間正午から午後一時まで一時間の休憩しか与えないで、一日につき九時間ずつ
労働をさせ、一日につき一時間ずつ法定の労働時間をこえて労働をさせたことを認
めることができ、本件記録を調査するも原判決はこの点において事実を誤認した違
法があるとは認められない。被告人は右会社の工員等が午前午後の就労時間中適宜
事実上一時間の休憩をとることを黙認していたのであるから違反にはならないと弁
解するけれども、右工員等が所論のように毎日一時間ずつ昼休みの時間外に休憩を
とつていた<要旨>と云う点に関する被告人の供述は措信し難く他にこれを確認する
に足る証拠はない。しかのみならず労働基準法第三十四条によれば、一日の
労働時間が八時間を超える場合には少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に
与えなければならないのであり右休憩時間は一斉に与えなければならないのであつ
て、これに異つた休憩時間を定めるには行政官庁の許可を受けることを要し、又右
休憩時間は労働者をして自由にこれを利用させなければならないのであるから、被
告人の主張するように労働者が適宜事実上休憩するのを黙認していたと云うのみで
はこれを労働基準法にいわゆる休憩時間を与えたと云うことにはならないと認める
のが相当である。故にこの点に関する論旨はこれを採用することができない。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 谷中董 判事 坂間孝司 判事 荒川省三)

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