弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告会社を免訴する。
         理    由
 弁護人梅田鶴吉の上告趣意について。
 論旨のうち憲法三一条違反の主張は公訴時効期間に関する刑訴法の解釈の誤の主
張をその実質もしくは前提とするものであり、判例違反の主張はその判例を示さな
いものであるから上告適法の理由とならない。
 職権をもつて調査するに、原判決の是認した事実によれば、被告会社の取締役社
長A及び職員Bが昭和二五年七月から同年一二月までの間に行つた各所為は、いず
れも昭和二五年一二月法律二八六号附則七項により同法律による改正前の物品税法
一条己類七〇、二条、一八条一項二号、二一条の物品税法違反罪に該当し、同法二
二条によれば、被告会社の代表者又はその他の従業者である右両名が右違反の行為
をしたときは右両名が処罰されるほか被告会社に対しては同条所定の各本条の罰金
刑が科せられるべきものであることは原判示のとおりである。
 しかし、右物品税法二二条のいわゆる両罰規定は、事業主たる法人又は人はその
代表者その他の従業者たる行為者の刑事責任とは別個の刑事責任を負うべきものと
し、不正の行為をもつて物品税を逋脱した所為等に対する罰条としては同一八条一
項の規定のうち罰金刑に関する部分を適用すべきものとしているのであるから、こ
れに対する公訴の時効については刑訴二五〇条五号により時効期間は三年であり、
その起算点は同法二五三条一項により右物品税法一八条一項の違反行為が終つた時
と解するのを正当とする。そして、一個の違反行為を原因とする二つの刑事責任の
うち、行為者に対しては懲役若しくは罰金の刑を科し、事業主たる法人又は人に対
しては罰金刑を科すべきものとされている場合にあつては、公訴の時効につき、行
為者に科すべき刑により時効期間を定める旨の特別の規定が設けられていれば格別、
しからざる以上は、事業主たる法人又は人に対する公訴の時効は、これに対する法
定刑たる罰金刑につき定められた刑訴二五〇条五号の規定によるほかない。このこ
とは当裁判所大法廷判決の趣旨に照らして明らかである(昭和二九年(あ)一三〇
三号同三五年一二月二一日言渡刑集一四巻一四号二一六二頁)。すなわち、被告会
社に対する本件公訴については公訴の時効期間は刑訴二五〇条五号所定の三年であ
るといわねばならない。
 しかるに、記録によると、本件公訴は昭和二九年一二月二八日に提起されたもの
であること明らかであるから被告会社に対する本件公訴は、起訴にかかる違反行為
の終つた時からすでに三年以上を経過し公訴時効完成後に提起されたものというの
ほかなく、本件については刑訴四一四条、四〇四条、三三七条四号により判決をも
つて被告会社に対し免訴の言渡をなすべきものである。よつて、本件公訴の時効期
間に関する原判決の解釈は相当でなく、原判決の右法令違反は判決に影響を及ぼす
ものであつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認める。
 よつて刑訴四一一条一号、四一三条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官石坂修一の少数意見あるほか裁判官一致の意見によるものであ
る。
 裁判官石坂修一の少数意見は次のとおりである。
 わたくしは、本件物品税法違反の罪について、未だ公訴の時効が完成して居らな
いものと思料する。その理由は、昭和二九年(あ)第一三〇三号取引高税法違反被
告事件につき同三五年一二月二一日大法廷の宣告した判決中に示したわたくしの少
数意見と同一であるから、それをこゝに引用する。
 検察官 羽中田金一公判出席
  昭和三六年七月二五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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