弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人小風一太郎上告趣意第一点並びに上申書第二について。
 従来酒税法でその犯則者に対して刑罰を科するおもなる趣旨は犯則によつて国に
財政上の損失を生ぜしめないことを担保するにあるから、その刑罰も純然たる刑事
犯と異り犯人の責任年令、心神の状態、法の不知等の主観的条件を顧慮せずに各犯
罪行為を客観的、数理的に考察して、罰金科料等の金刑だけを脱税額の倍数を以て
法定し自由裁量を許さない建前を執つたのである。されば犯則者には例外なく刑法
四八条二項の規定を適用しない旨規定されていたのである(明治二九年法律第二八
号酒造税法第三一条、昭和一五年法律第二五号酒税法第六六条参照)。しかるに終
戦後に至つて犯則者に刑罰を科する趣旨が前記のものの他に犯人の主観的条件をも
重要視され犯則者に対する刑罰として金刑の他に新に懲役刑を科する規定が設けら
れるに至つたので犯則者に懲役刑を科する場合には従来の規定に例外の規定を特に
設ける必要を見るに至つたのである(所論の酒税法第六六条但書、昭和二四年法律
第四三号酒税法第六六条但書参照)されば、所論の酒税法(原審の認定した本件犯
行の当時たる昭和二三年一一月当時施行されていた)六六条「第六〇条第一項、、、、
ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法、、、、第四八条第二項、、、、ノ規定ヲ適用セズ但シ
第六〇条第二項、、、、ノ場合ニ於て懲役ノ刑ニ処スルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の
規定は同法の犯則者に対して懲役と罰金とを併科する場合にも罰金刑については従
前通り各犯罪行為ごとに罰金刑を科すべく刑法四八条二項の規定を適用しない趣旨
と解するのを相当とする。若しも罰金だけを科せられる犯則者には刑法四八条二項
の規定が適用されないのに、懲役と罰金とを併科せられる犯則者には同条項の規定
が適用されると解すると、税法本来の性格が失われるばかりでなく、併科の場合に
は罰金刑についても刑法所定の犯人の主観的条件に関する規定を除外する規定を全
部適用しないことにしなければ首尾一貫しない不条理を生ずる。されば所論酒税法
第六〇条一項二項の規定を適用して被告人に罰金と懲役とを科するに当り罰金につ
いても刑法四八条二項を適用した原判決は所論酒税法六六条の規定の解釈をあやま
つて右刑法の規定を適用した違法あるものといわなければならぬ。しかしかかる酒
税法の解釈に関する論旨は明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由にあたらないし、
また、右の違法の主張は被告人に対し却つて不利益な結果を生ずるから、被告人の
ための本件上告としてはこれを以て原判決を破棄しなければ著しく正義に反するも
のとは認め難い。それ故同四一一条を適用すべきものとも認められない。
 同第二点について。
 所論に引用の大審院判決は明治二九年法律第二八号酒造税法(昭和一五年法律第
三五号酒税法附則第七一条によつて廃止された)第三一条(此ノ税法ヲ犯シタル者
ニハ刑法ノ不論罪及減軽、再犯加重、数罪倶発ノ例ヲ用ヰズ、、、、)適用の要否
についての判例であり本件に適切でないばかりでなく、原判決は同法と別個の酒税
法六六条の規定についての解釈を示したものであるから、原判決が所論大審院の判
決に反する判断をしたという論旨はあたらない。
 同第三点について。
 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏から告発をなすことは訴訟要件ではあるが、
酒税法違反罪の構成要件ではないから、受訴裁判所は告発が適法になされているか
否かを審査しなければならぬことはいうまでもないところであるが、裁判所は公判
廷において告発に関する書類を被告人に読みきけ、その意見を聴く等これが証拠調
をしたり、告発のありたることを判決に示しその証拠を説明すべき法令上の義務は
裁判所に存しない。されば論旨は当該税務官吏のなす告発を犯罪の処罰要件と誤解
せるに基くものであつてとるをえない。そしてかかる論旨は明らかに刑訴四〇五条
に定める上告理由たる事由にあたらない。
 弁護人の上申書第一及び第三について。
 酒税法犯則者に科する罰金に限つて特に所論刑法の規定の適用を除外する趣旨の
認められる法令の規定は存しないし、少年に対して労役場留置の言渡をすることの
できないことは少年法(旧法第一三条現行法第五四条)に明定するところであるか
ら論旨第一の見解にはにわかに賛同しえないのであるし、原判決の量刑が甚だしく
不当であるとも認められない。されば本件には刑訴四一一条を適用すべきものとは
認められない。
 被告人の上告趣意について。
 論旨は罰金を免除してほしいというのであつて原判決の量刑を非難するにとゞま
るものであるから明らかに刑訴四〇五条の定める上告理由たる事由にあたらないし、
同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて刑訴四一四条同三九六条同一八一条一項に従ひ裁判官全員一致の意見で主
文のとおり判決する。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二五年一〇月一二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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