弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成18年2月9日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(ワ)第11960号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成17年10月13日
判        決
原    告            A
原    告      B
原告ら訴訟代理人弁護士    森  田      明
田  丸 明  子
被    告       東京都
同代表者知事         C
同指定代理人          松  下   博  之
藤  本   清  孝
松  本   邦  男
主        文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告Aに対し金3111万3174円,原告Bに対し金4211万3174円及
びこれらに対する平成11年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。 
第2 事案の概要
本件は,被告の開設する病院において腎移植手術を受けたDが,術後,EBウイ
ルス感染に関連した移植後リンパ球増殖性疾患(PTLD)を発症して,約5か月後
に死亡したことに関し,Dの父母である原告らが,担当医師において,①腎移植後
の免疫抑制剤の血中濃度の適切なコントロールを怠った,②腎移植手術後,EBウ
イルスによる感染症を発症していることを診断して,免疫抑制剤の減量又は中止を
するとともに,抗ウイルス剤を投与すべきであった,仮にそうでなくても,感染症の
発症を疑って,これを診断するための検査を実施すべきであったのに,これらを怠
った,③腎移植手術を実施するに当たって必要な説明を尽くさなかった,それらの
結果,Dが死亡した(予備的に,①及び②については,適切な診療を受ける機会を
喪失させて期待権を侵害した,③については,説明義務違反それ自体によって権
利利益を侵害した。)と主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為(使用者
責任)に基づき,逸失利益等の損害金及びこれに対する死亡日からの民法所定の
割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 
1 前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア 原告A(昭和34年3月14日生)はD(平成2年1月21日生,平成11年7月2
7日死亡)の父であり,原告B(昭和35年3月6日生)はDの母である。
イ 被告は,東京都清瀬市内において「E病院」という名称の病院(以下「被告病
院」という。)を開設している。
平成10年及び11年当時,いずれも医師であるF,G及びHは被告病院の
泌尿器科に,医師であるIは被告病院の腎臓内科にそれぞれ勤務していた。
被告病院の腎臓内科において,日本全国の腎不全患者の15%,特に乳
幼児の患者については25%が治療を受けている。また,被告病院の泌尿器
科は,小児に対する腎移植を日本で最も多く行っている。(乙B3の1・2)
(2)ア Dは,平成3年10月14日(1歳8か月時)に溶血性尿毒症症候群(HUS)を
発症した後,平成6年ころから腎機能が悪化し,遅くとも平成9年には慢性腎
不全と診断されて,その治療のため,同年9月16日,被告との間で診療契約
を締結して被告病院に入院し,同月24日(7歳時),腹膜透析(CAPD)を開
始し,平成11年2月24日,原告Bをドナーとして生体腎移植手術(以下「本件
腎移植手術」という。)を受けた。
Dは,本件腎移植手術後,免疫抑制療法下においてEBウイルス感染に関
連した移植後リンパ球増殖性疾患(PTLD)を発症して,消化管潰瘍及び消化
管穿孔(小腸穿孔)を惹起し,出血及び敗血症から多臓器不全に陥って,同
年7月27日に死亡した(以下の月日は,特に断らない限り,平成11年の月日
である。)。
イ 被告病院におけるDの診療経過の概要は,次の事実を加えるほか,別紙診
療経過一覧表の「年月日(日時)」,「診療経過(入通院状況・主訴・所見・診
断)」,「検査・処置」欄記載のとおりである(ただし,下線を付した部分を除
く。)。
5月15日に,同月11日実施の血液検査の結果が報告され,EBウイルス
抗体価の陽転化があり,DがEBウイルスに初感染したことが判明した。
(3) 本件で前提となる医学的知見は,別紙医学的知見のとおりである。
2 原告らの主張
(1)タクロリムスの血中濃度の管理義務違反
ア タクロリムスは,感染症によるPTLDの発症の危険性を高めるものであっ
て,特に小児の臓器移植後のEBウイルスによるPTLDが高い確率で発生す
るから,免疫抑制の必要性との兼ね合いで投与量を調整する必要がある。
被告は,Dについて,タクロリムスを経口投与していた4月26日(移植後8
週間以降に当たる検査日)から5月20日までの間はその血中濃度を5ないし
10ng/mlに,タクロリムスを静注していた6月7日以降はその血中濃度を10な
いし15ng/mlにそれぞれコントロールすべき義務を負っていた。
しかるに,被告は,タクロリムスの血中濃度の適切なコントロールを怠った。
イ 被告がタクロリムスの血中濃度のコントロールを適切に行っていれば,度を
超した免疫抑制が進むことはなく,EBウイルスによるPTLDの発症及び進展
も生じず,Dが死亡することはなかった。
なお,仮に死亡との因果関係が断定できないとしても,適切な診療をうける
機会を喪失した(期待権侵害)。
(2) 5月31日時点における義務違反
ア 入院させて経過観察をすべき義務の違反
腎移植後は,免疫抑制剤の投与等のため,重篤な感染症を発症する危険
性がある。
Dは,本件腎移植手術を受けた後,5月15日,EBウイルスに初感染してい
ることが判明していたほか,被告病院に対し,同月29日に3回,同月30日に
1回,それぞれ腹痛がある旨の連絡をした。
よって,被告は,Dが同月31日に被告病院の外来を受診した際,入院させ
て,経過観察をすべき義務があった。しかるに,被告はこれを怠った。
イ 義務違反と結果との因果関係
被告が5月31日時点でDを入院させて経過観察を実施していれば,PTLD
を診断して,タクロリムスの中止又は大幅な減量をするとともに,抗ウイルス
剤を投与することができて,Dの死亡を回避することができた。
なお,仮に死亡との因果関係が断定できないとしても,適切な診療を受ける
機会を喪失した(期待権侵害)。
(3) 6月19日時点における義務違反
ア 薬剤の調整義務違反
(ア) 下記①ないし⑦に照らすと,被告は,6月19日時点において,DがEBウ
イルス感染によるPTLDを発症していると診断できた。
① 5月ないし7月当時,臓器移植後にタクロリムスの投与を受けた小児患
者についてEBウイルスによるPTLDが高い確率で発症することが既に
報告されており,医師の間にもこれが広く知れ渡っていた。
② 本件腎移植手術前の時点では,ドナーである原告BはEBウイルスが
陽性で,レシピエントであるDはこれが陰性であったところ,本件腎移植
手術後の5月11日にDについて実施された血清の検査の結果,同月15
日,陽性であることが報告され,DがEBウイルスに初感染したことが明
らかになった。
③ 本件腎移植手術後のDの腹部症状等の原因について,J病院では,E
Bウイルス感染によるものであることを疑っていた。そして,J病院がその
ように疑ったのは,被告病院からEBウイルス感染が原因である可能性
があると指摘されたからであった。よって,被告病院も,当然,Dの腹部
症状等の原因がEBウイルス感染による可能性があることを認識してい
たといえる。
④ EBウイルスに伴うPTLDについて,日本においては主に消化管に潰瘍
性病変を形成する例が多いと報告されているところ,Dには,被告病院
に入院する前から入院中にかけて常に消化器症状が見られた。
⑤ PTLDは,一般的に,発熱,倦怠感及び体重減少等の非特異的な症状
として発症することが多いと報告されているところ,Dには発熱,顔色不
良,衰弱化等の兆候が常に見られた。
⑥ Dのタクロリムス血中濃度は,6月19日時点においても,10ng/mlをは
るかに超えていた。
⑦ 同月18日,DについてEBウイルス陽性の検査結果が判明した(検査
実施は同月12日)。
他方,同月19日,DについてCMウイルス陰性の検査結果が判明し
た(検査実施は同月12日)。
(イ) 被告は,上記(ア)のとおり,DがPTLDを発症していると診断できたので
あるから,下記①及び②に照らすと,タクロリムス血中濃度が15ng/ml以下
になるよう,タクロリムスの中止又は大幅な減量をするとともに,抗ウイルス
剤を投与すべき義務があった。しかるに,被告はこれを怠った。
① 5月ないし7月当時,タクロリムスの使用法が確立されつつあり,PTLD
の発症を回避するためにタクロリムスの投与量の調整が非常に重要で
あるとされていた。
② タクロリムスを減量すれば,拒絶反応を起こして移植腎が廃絶する危
険性があるが,6月19日時点では,PTLDによる生命への危険が切迫
していたのであるから,タクロリムスの血中濃度のコントロールを最優先
する必要があった。
イ 検査義務違反
仮に上記アの義務違反が認められないとしても,上記ア(ア)①ないし⑦に
照らすと,EBウイルス感染によるPTLD発症を疑うことができたのであるか
ら,これを診断すべく,6月19日時点において,PCR法又はISH法による検
査を実施すべきであった。これを実施していれば,その検査結果(EBウイル
スによるPTLD発症の事実)が,遅くとも同月24日には判明したはずであるか
ら,その時点で直ちにタクロリムスの中止又は大幅な減量及び抗ウイルス剤
の投与をすべき義務があった。
しかるに,被告は,これらを怠った。
ウ 義務違反と結果との間の因果関係
上記ア又はイの各時点から,直ちに,タクロリムス血中濃度が15ng/ml以
下になるよう,タクロリムスの中止又は大幅な減量をするとともに,抗ウイルス
剤を投与していれば,Dが死亡することはなかった。
なお,仮に死亡との因果関係が断定できないとしても,適切な診療を受ける
機会を喪失した(期待権侵害)。
(4) 6月24日時点における義務違反
ア薬剤の調整義務違反
上記(3)ア(ア)①ないし⑦及び下記⑧ないし⑫に照らすと,被告は,6月24
日時点において,DがEBウイルス感染によるPTLDを発症していると診断で
きた。したがって,被告は,タクロリムス血中濃度が15ng/ml以下になるよう,
タクロリムスの中止又は大幅な減量をするとともに,抗ウイルス剤を投与すべ
き義務があった。
⑧ Dのタクロリムス血中濃度は,投与量を減らしているにもかかわらず,同
月19日に16.6ng/ml,同月21日に18.4ng/ml,同月22日に19.0
ng/mlと上昇し,同月24日においても10ng/mlをはるかに超えていて,安心
できる状態にはなかった。
⑨ 同月24日,DについてEBウイルス陽性の検査結果が判明した(検査実
施は同月19日)。
⑩ 同月24日,DについてCMウイルス陰性の検査結果が判明した(検査実
施は同月19日)。
⑪ 同月24日のカルテに「上部消化管の粘膜病変は説明不能!!」との記
載があり,遅くともこの時点でCMウイルス感染以外の可能性を強く疑う必
要性があった。
⑫ 同月24日当時,Dの腹部はいわゆるカエル腹のように腫れていた。
イ検査義務違反
仮に,上記アの義務違反が認められないとしても,上記(3)ア(ア)①ないし⑦
及び上記ア⑧ないし⑫に照らすと,EBウイルス感染によるPTLD発症を疑う
ことができたのであるから,これを診断すべく,6月24日の時点において,PC
R法又はISH法による検査を実施すべきであった。これを実施していれば,そ
の検査結果(EBウイルスによるPTLD発症の事実)が遅くとも同月29日には
判明したはずであるから,その時点で直ちにタクロリムスの中止又は大幅な
減量及び抗ウイルス剤の投与をすべき義務があった。
しかるに,被告は,これらを怠った。
ウ 義務違反と結果との間の因果関係
上記ア又はイの各時点から,直ちに,タクロリムス血中濃度が15ng/ml以
下になるよう,タクロリムスの中止又は大幅な減量をするとともに,抗ウイルス
剤を投与していれば,Dが死亡することはなかった。
なお,仮に死亡との因果関係が断定できないとしても,適切な診療を受ける
機会を喪失した(期待権侵害)。
(5) 説明義務違反
ア 説明義務違反(腎移植について)
腎移植患者に対する説明は,患者に腎移植が必要と判断されたとき(移植
希望登録時)と腎提供があって腎移植の実施が可能となったときの2段階に
おいてなされるべきである。
まず,被告は,腎移植が予定される患者の対象としてDがリストアップされ
た平成10年4月ころまでに,原告らに対し,①腎移植には腎の提供者が必要
であること,生体腎移植と死体腎移植があること等の腎移植の一般的事項,
②腎移植の成績,③拒絶反応の病態,④免疫抑制法,⑤腎移植実施までに
必要な検査及び手続,⑥腎移植後の日常生活,特に,現在の透析療法との
違いや長期の展望,⑦ドナーの安全性及び危険性(合併症)について説明す
べき義務があった。
次に,被告は,腎移植を実施する際,すなわち,同年12月以降,原告らに
対し,①ビデオ等の供覧による腎移植のあらまし,②腎移植までの検査,処
置及び準備の手順及び内容,③腎移植手術の内容,手術中のアクシデント,
輸血の必要性,④腎移植手術後に予想される経過・合併症及びそれに対す
る対応,⑤拒絶反応の症状,発症時期,ささいなことでも前日や前と違った気
分や症状があれば必ず主治医に報告すること,⑥免疫抑制剤の種類,作用
及び副作用並びに服用の仕方,⑦免疫抑制剤が大量に投与される移植直後
から3か月くらいまでは細菌感染症や重篤なウイルス感染症に罹りやすく,死
亡率も高いので厳重な注意が必要であること,⑧腎移植後の長期成績を左
右する諸事項,⑨腎移植をした後は腹膜透析を再開できなくなる危険性があ
り,その場合は死亡する危険性が高いことついて説明すべき義務があった。
しかるに,被告は,かかる説明義務を怠り,必要な説明を行わなかった。
なお,本件で特に問題であるのは,腎移植手術に関するマイナス面ないし
リスク(免疫抑制療法下での感染症等の合併症等)についてはほとんど説明
を受けていないことである。一般的形式的にマイナス面に触れていても,すぐ
にそれを打ち消すような言い方をしていれば,その件についてはマイナス面を
述べていないのに等しく,医師が「大丈夫」と言えば,安全だと思うのが当然で
あるから,説明義務違反となる。
イ 説明義務違反(ドナーについて)
被告は,ドナーである原告Bに対し,腎移植手術の必要性,緊急性,危険
性,臓器を取り出すことによるドナーの身体及び生活への影響等について説
明すべき義務があった。しかるに,被告は,かかる説明義務を怠り,必要な説
明を行わなかった。
ウ 説明義務違反と結果との間の因果関係
原告らは,被告病院の医師から強力に腎移植を勧められ,他方,腎移植の
危険性等について説明がなかったため,腎移植を受ける以外に選択肢はな
いものと考え,腎移植に同意するに至った。原告らは,もともと腎移植を希望
しておらず,透析開始後1年目で腎移植を急ぐ必要性がなかっただけでなく,
家庭において,1歳の子供を抱え,中学受験を控えていた長男,小学校入学
を控えていた次女がいたため,被告病院の医師から必要な説明を受けていれ
ば,腎移植に同意することはなかった。原告らが同意しなければ,本件腎移
植手術が行われることはなく,Dが死亡することもなかった。
また,原告Bは,上記イのような説明を受けていれば,自己の腎臓の片方
を提供することはなかった。
なお,仮に,Dの死亡ないし原告Bの腎臓の提供との因果関係を断定する
ことができないとしても,説明義務違反それ自体による権利利益の侵害があ
る。
(6) 損害
ア Dに生じた損害
① 逸失利益 2831万3174円
基礎となる収入を年345万3500円(平成11年の賃金センサスによる
女子労働者学歴年齢計の年収),労働能力喪失期間を18歳から67歳ま
での49年(ライプニッツ係数11.712),生活費控除率30パーセントとして
計算。
② 慰謝料  2500万円
第1次的には死亡による慰謝料であり,第2次的には期待権侵害又は説
明義務違反自体による慰謝料である。
③ 葬儀費用  120万円
イ 原告Bに生じた慰謝料  1000万円
第1次的には,腎臓提供を余儀なくされ,自己の腎臓の片方を失ったことに
よる慰謝料であり,第2次的には説明義務違反自体による慰謝料である。
ウ 弁護士費用  871万3174円(原告Aにつき385万6587円,原告Bにつ
いて485万6587円)
3 被告の主張
(1) 上記2(1)(タクロリムスの血中濃度の管理義務違反)について
腎移植手術後のタクロリムスの目標血中濃度に関しては,ガイドラインやそれ
に準じるような一般的な基準はない(ただし,移植治療にとって免疫抑制療法は
必須であって,移植後早期にタクロリムスの血中濃度を10ng/ml以下に下げる
と,かえって拒絶反応を惹起する危険性を相当に高める結果になるので,注意
が必要である。)。
よって,タクロリムスの血中濃度のコントロールについて,原告らが主張する
ような義務はない。
なお,被告は,タクロリムスの血中濃度を見ながら段階を踏んでその投与量を
減らしており,拒絶反応に留意しながら自ら目標とする血中濃度を10ないし15
ng/mlに設定し,6月23日ころからはほぼこの目標値を達成しているのであっ
て,血中濃度の管理を怠っていたという事実はない。
また,Dは,タクロリムスを実際に減量しても,その反応性が良くなく,症状が
改善することがなかったのであるから,より積極的に減量をしていても結果に違
いが生じることはなかったといえる。よって,結果との間に因果関係もない。
(2) 上記2(2)(5月31日時点における義務違反)について
ア 入院させて経過観察をすべき義務の違反について
Dが5月31日に被告病院を外来受診した際,腹部の激痛や圧痛,筋性防
御等の特別な所見はなく,腹部のエックス線検査及び生化学血液検査の結
果からも入院が必要な状況にはなかった。また,Dの症状は風邪を含むウイ
ルス性の腸炎に一致するものであると考えられたため,一般感冒薬及び抗生
剤を処方し,自宅で安静にして経過を観察して何かあれば連絡するよう指示
したものである。
かかる状態のDを直ちに入院させて経過観察をすべき義務はない。
イ 義務違反と結果との間の因果関係について
5月31日当時,Dの症状については風邪等のウイルス性感染が疑われた
こと,腹部の腫瘤や体表面のリンパ節腫脹等のPTLDに比較的特徴的な外
部所見が認められなかったこと,下血,タール便の出現等の消化管潰瘍を疑
わせる所見もなかったことに照らすと,同日直ちに入院させていたとしても,P
TLDを診断することはできず,免疫抑制剤の減量や抗ウイルス剤の投与とい
う処置がとられることはない。
よって,原告ら主張の義務違反と結果との間に因果関係はない。
(3) 上記2(3)(6月19日時点における義務違反)について
ア 薬剤の調整義務違反について
(ア) 下記①ないし④に照らすと,被告は,DのPTLDの発症を疑ったり診断
することはできなかったというべきである。
① EBウイルスは,大半の者が感染する常在ウイルスであり,免疫抑制下
で感染しても,通常は感冒様症状で終了し,感染症状は軽微であること
がほとんどであり,EBウイルス感染はPTLD発症に直結するものではな
い(EBウイルス抗体価検査が陽性を示していても,PTLDの診断にはつ
ながらない。)。
② Dの場合,PTLDに比較的特徴的なリンパ節の腫脹や腫瘤性病変等が
認められず,消化管のみに症状が限局したPTLD(GI-PTLD)である
が,平成11年6月当時,GI-PTLDについては,日本国内において報
告例はなく,診断が難しいものであった。
③ PTLDの診断は,組織内に感染リンパ球の浸潤を証明することである
が,Dの場合,繰り返し行った内視鏡生検ではいずれもそれを認めること
ができなかったのであり(最終的な確定診断は,7月18日で,同月11日
の開腹手術時に採取した腸管穿孔部位の腸管壁全層標本検査の結果
により粘膜下層及び筋層に強いリンパ球浸潤が認められたことによ
る。),消化管の潰瘍をもってPTLDの発症を疑うことはできない。
④ 発熱,腹痛,下痢等の臨床症状は,非特異的であり,一般のウイルス
感染にも共通して認められるものであるし,顔色不良や衰弱等の臨床症
状もPTLDに直結するものではないから,これらからPTLDを疑うことは
できない。
(イ)下記①ないし③に照らすと,タクロリムスの中止又は大幅な減量をすべ
き義務があったとはいえない。
① 平成11年当時,PTLDについて,免疫抑制剤の減量や抗ウイルス剤
の積極的投与が一般的な治療方針として定められていたわけではな
い。
② 免疫抑制剤を中止して急性拒絶反応が起きた場合,移植腎の廃絶に
至るだけでなく,PTLDの治療とともに拒絶反応の治療をも同時に行う必
要が生じる。また,腎機能が低下すれば,抗ウイルス剤などの治療薬の
投与量の調節が難しくなり,副作用の発現頻度も高くなるといった弊害
が生じる。そして,Dの場合のように経口摂取が困難で全身状態の不良
な状態の患者について,血液透析,腹膜透析による腎不全治療を行うこ
とは,患者への負担を更に増大させることになる。
③ タクロリムスの血中濃度について,10ng/mlを超えないようにすべきで
あるといったような一般的な基準は存在しない。
イ検査義務違反について
(ア)最近,real-timePCR法によるEBウイルスの判定量法が開発され,PTL
Dの早期診断が可能となりつつあるが,平成11年当時,EBウイルス抗原
に対するPCR検査は,確立された一般的な検査ではなく,定性検査(陽
性・陰性の判別)のみ可能なものであった。そして,このPCR法による検査
を行えば,EBウイルス感染が判明するが,EBウイルス感染がPTLD発症
に直結するものではないことからすると,PCR法による検査を行ったとして
も,PTLDの診断が困難であったことに変わりはない。
よって,PCR法による検査を実施すべき義務があったとはいえない。
(イ)平成11年当時,PTLDの診断は,リンパ節や腫瘤性病変の生検による
組織学的診断以外に確定診断ないし有力な補助診断の方法は非常に少
なかった。また,ISH法によるEBウイルス感染リンパ球の定量検査を有用
とする報告はあったものの,当時は極めて特殊な検査であった(現在でもP
TLDの診断に利用されている検査ではない)。被告病院の医師は,6月中
旬以降,ISH法の検査が可能な施設を探したが,結果として同検査が可能
な施設は見つからなかった。
よって,ISH法の検査を実施すべき義務があったとはいえない。
ウ 義務違反と結果との間の因果関係について
一般にPTLDの予後は良好とはいえないこと,J病院における内視鏡検査
結果が得られた時点からDに対して免疫抑制剤の減量ないし中止と抗ウイル
ス剤の投与を行ったが,治療に対する反応性は悪く,軽快することはなかった
ことに照らすと,原告ら主張の時点から,タクロリムスの中止又は大幅な減量
をするとともに,抗ウイルス剤を投与していたとしても,Dの死亡を回避するこ
とはできなかった。
(4) 上記2(4)(6月24日時点における義務違反)について
ア 薬剤の調整義務違反について
上記(3)アと同じ。
上記2(4)ア⑧ないし⑫の事実が加わったとしても,PTLDを診断できたとは
いえない。
イ 検査義務違反について
上記(3)イと同じ。
ウ 義務違反と結果との間の因果関係について
上記(3)ウと同じ。 
(5) 上記2(5)(説明義務違反)について
ア 説明義務違反(腎移植)について
(ア) 下記(イ),(ウ)のとおり,被告は,原告らに対し,必要な説明を尽くしてい
るから,説明義務違反はない。
原告らは,移植希望登録時と移植手術直前の2段階に分けて説明をす
べき義務があるとするが,その根拠とする文献(甲B第2号証)には2段階
に分けて説明をするのが適当であるという趣旨が記述されているにすぎな
い(なお,下記(イ),(ウ)のとおり,被告は,原告らに対し,2回にわたって説
明を行っている。)。
また,腎移植をした後に,移植腎が拒絶反応によって廃絶することにな
れば,腹膜透析を行うための手術(カテーテル留置)が必要になるが,この
手術自体は特に危険性の高いものではない。そして,治療抵抗性のある消
化管に限局した型のPTLD(GI-PTLD)を発症した場合には,腹部状態の
悪化により透析を再開することが困難となる可能性があるが,かかる稀少
かつ複雑な経過を事前に予測することは困難である。よって,腎移植前に,
移植腎廃絶後の腹膜透析を復活させる手術に死亡の危険性があることを
説明すべき義務はない。
(イ) 平成10年12月ころの説明
Fは,平成10年12月ころ,原告らに対し,1時間ないし1時間半にわたっ
て,腎臓移植の治療法等について説明した。
具体的には,①腎臓移植は今日では末期腎不全に対する最良の治療
法として確立していること,②腎臓移植は末期腎不全患者のほとんどすべ
ての患者にとって適応があるが,今後のQOLの問題を考慮すると,特に人
工透析を必要とする小児の患者には勧められる治療法となること,③QOL
を考慮すると,移植時期は思春期前の今か思春期後が適切であること,④
移植後に拒絶反応が起きる可能性があること,その頻度,それが起きた場
合にはステロイド剤のパルス療法等で対応すること,⑤拒絶反応を予防す
るために免疫抑制薬を生涯継続して服用する必要があり,移植術後早期
の時期(約6か月間)では,免疫抑制薬の投与量が多くなること,⑥免疫抑
制療法の下では,感染症などの合併症が生じる可能性があること,⑦被告
病院における腎臓移植後の短期及び長期成績(生着率)などについて説明
した。特に,感染症については,ウイルス感染が主体で,最も危険なのは
麻疹であり死亡例があること,水痘ウイルスにより間質性肺炎等の重症性
肺炎に罹患して致命的になりうること,術前に全例予防接種を行っており,
重症感染の頻度は少なくなっているが,注意が必要であること,強力な免
疫抑制療法により,移植後ドナーからCMウイルスやEBウイルスといった
持ち込み感染が増加しており,その場合は治療が必要となることなどにつ
いて説明した。
なお,PTLDに関しては,最近報告例があるので注意が必要であると簡
単に触れたが,被告病院に発症例がなく,日本での報告例もほとんどなか
ったことから,特に致命的な合併症としては強調しなかった。
(ウ) 平成11年2月22日の説明
F及びGは,平成11年2月22日,原告らに対し,腎臓移植に関する説明
を改めて行った。内容としては,Dの現在の病名・症状・治療法・予後及び
腎臓移植の成功率(被告病院の成績等)のほか,腎臓移植の手術法,手
術後に必要な諸注意,移植後の拒絶反応の予防及び免疫抑制療法,手術
後に必要な定期的臨床諸検査等について,一通り説明した。
腎臓移植のリスクについては,移植術そのものに伴う出血,感染といっ
た合併症の可能性,術後の大量輸液に伴う心肺機能障害(心不全,肺水
腫,けいれん等),全身麻酔に伴う合併症の可能性等の術後合併症の問
題,移植による急性拒絶反応が出現する可能性,免疫抑制療法を行うこと
による感染症の問題(麻疹性肺炎による死亡例,重篤な感染症に罹患する
可能性がないとはいえないこと,細菌感染は抗生物質で治療し,ウイルス
感染は抗ウイルス剤で対処して乗り切っていくこと)を説明した。
イ 説明義務違反(ドナー)について
Fは,平成10年12月の時点で,原告らに対し,ドナーに関しては,手術後
の経過に問題がなければ,1つの腎臓を提供しても,標準の寿命における生
活において,両側腎臓のある場合と比べて通常は不利益が生じることはない
旨説明した。
また,Hは,平成11年2月22日,原告Bに対し,ドナーの腎摘出術につい
て,手術に伴う出血,感染,肺(呼吸器)合併症等の危険性があることを説明
した。また,Gは,同日,原告Bに対し,腎移植の成功率,移植される腎臓の
予後に関する事項,一側の腎臓及び尿管の摘出手術,その予後並びに合併
症に関する事項,検査及び手術に伴う万一の事故に関する事項について説
明を行った。
原告Bは,かかる説明を受けて,腎摘出手術に承諾する旨の書面を提出し
た。
よって,被告は,ドナーである原告Bに対し,必要な説明を尽くしているとい
うべきであり,説明義務違反はない。
ウ 説明義務違反と結果との間の因果関係について
争う。
(6) 上記2(6)(損害)について
争う。 
第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実に証拠(各項に掲記したもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の
事実が認められる。
(1) Dが被告病院を受診するに至った経緯(乙A1,4,14)
Dは,K大学医学部附属病院小児科の医師の紹介で,平成9年9月16日,C
APDの導入を目的として被告病院を受診し,同日,被告病院に入院した。原告
らは,同月22日,Iから腹膜透析や腎移植に関する説明を受けた。Dは,同月2
4日,CAPD用のカテーテル挿入術を受け,同年11月27日に退院した。
なお,K大学医学部附属病院小児科医師の紹介状には,「紹介目的」欄に「C
APD導入,腎移殖」という記載があり,「主訴および特に連絡すべき事項」欄に
「腎移植を前提としたCAPDの適応と考える。最終的には腎移植までお願いした
い。」旨の記載があった。
(2) Dが腎移植予定患者としてリストアップされ,腎移植の準備がされた経緯(甲B
24,25,乙A4,6,14,17,18,証人F,同G,原告A)
CAPD導入後の被告病院での外来受診において,腎移植が話題となり,平成
10年4月10日,原告Bから,Iに対し,Dが腎移植について嫌ではないと言って
いる旨が話された。
そこで,そのころ,Iは,平成11年春ころに腎移植を実施する予定の患者とし
てDをリストアップした。そして,腎移植の準備として,Dとドナーとなる原告Bにつ
いて組織適合抗原検査(HLA)とクロスマッチ検査を実施する必要があったた
め,平成10年7月10日,両検査の予約がされて,同年8月11日,両検査が実
施された。なお,両検査は,早朝の空腹時に20mlの採血が必要な検査であっ
た。
同年12月,被告病院で平成11年2月に腎移植を予定していた別の患者が手
術をキャンセルしたため,Iが,原告らに対し,電話で,平成11年2月に腎移植を
実施できる旨伝えたところ,原告らの希望もあって後日泌尿器科のFから腎移植
についての説明がされることになった。
(3) 平成10年12月の腎移植に関する説明(甲B24,25,乙A16,証人F,原告
A)
Fは,その後の平成10年12月,原告らに対し,約1時間30分ほどかけて,下
記①ないし⑥について説明した。
① 慢性腎不全の小児に対する治療として,腎移植治療は,透析治療に比べ,
より健常児に近い成長・発達を促し,将来の社会適応を可能とする点で,第1
選択と考えられること。CAPDは,硬化性腹膜炎という合併症があるため,永
遠に継続できるものではなく,5年ないし8年が限界であること。
② 腎移植は,成人が腎提供者となるため,通常の手術に比して大量の輸血を
必要とすることから,心肺合併症や痙攣等の中枢神経合併症を引き起こす可
能性があること。
③ 術後に良好な腎機能を長期にわたって維持するためには,移植腎が機能し
ている限り,免疫抑制療法を継続して行う必要があること。免疫抑制療法を行
っても,2人に1人は拒絶反応を起こすこと。
④ 免疫抑制療法による合併症・副作用について,通常の免疫能を有する小児
ではほとんど問題とならないサイトメガロウイルスや水痘ウイルス等でも肺炎
等を引き起こす例があること,麻疹の肺炎は重症で,被告病院においても死
亡した患者がいること,リンパ腫のような血液系の悪性腫瘍の報告があるこ
と。免疫抑制剤は,移植後の期間の経過に従って減量されていくため,これら
の合併症・副作用は,腎移植後1年以内に起こる場合が多いこと。
⑤ 被告病院における腎移植後の長期成績は,5年,10年の生着率がそれぞ
れ86%,80%であること。
⑥ 拒絶反応や合併症については,新しい治療薬の登場によって,昔に比べる
と随分治療効果が上がってきていること。合併症,副作用及び生着率等につ
いてはいろいろな問題が残されているが,ひとつずつ乗り越えていくことによ
って,良好な長期成績と就学,就職,結婚,妊娠,出産等における生活の向
上が得られること。
その上で,Fは,原告らに対し,きっといい結果が得られる,大丈夫であるとも
言った。
(4) 2月22日の腎移植に関する説明等(甲B24,乙A8,9,15,16,20,証人
G,原告A)
Dは,1月8日,高血圧の管理及び腎移植前の検査等のため,被告病院に入
院し,同月21日,直接的にはレニン性高血圧の治療のため,両側固有腎摘出
術を受けた。
G及びFは,2月22日,原告らに対し,約1時間30分ほどかけて,Dの現在の
病状,予定している腎移植の手術方法,手術後の免疫抑制剤を中心とした管理
方法(免疫抑制剤の副作用,薬の飲み忘れは拒絶反応に直結すること等),移
植後に必要な検査,移植成績(5年生着率は約85%であること等),腎移植に
伴うリスクについて説明した。
その際,腎移植に伴うリスクについては,手術そのものに伴う出血(腎不全に
よる貧血があるので輸血の必要性があること),創感染の問題,大人から子供
への移植に伴う大量輸液による問題(心不全,肺水腫,痙攣等),拒絶反応の可
能性(約50%は起こり得ること)とその対応(ステロイドパルス療法等によって約
95%は治療が可能であること),細菌感染やウイルス感染,特に,サイトメガロ
ウイルスなどいろいろなウイルスが感染症の原因となり,症状も様々で感冒症
状程度からリンパ腫や肺炎等の重篤な状態にもなり得ること,それらの感染へ
の対応(個室隔離,細菌感染に対する抗生剤,一部のウイルス感染に対しては
抗ウイルス剤の投与)を説明した(乙A8の,70頁,71頁)。
さらに,Hが,同日,原告Bに対し,ドナーの腎摘出手術について,手術の名
称及び方法,出血,感染,肺(呼吸器)等の合併症について説明した。また,G
も,同日,原告Bに対し,上記説明のほか,一側の腎臓及び尿管の摘出手術,
その予後,合併症について説明した。(乙A8,20)
(5) 本件腎移植手術の実施と術後の経過(甲B10ないし12,24,25,乙A8,9,
15,16,証人F,同G)
Dは,2月24日,原告Bをドナーとして,生体間腎移植手術(本件腎移植手
術)を受けた。この時,CAPD用のカテーテルが抜去された。
Gらは,術後管理として,Dに対し,タクロリムス,メドロール,ブレジニンの3種
類の免疫抑制剤を併用した。タクロリムスの投与量については,当時,欧米で最
もタクロリムスを用いた腎移植の経験のあるアメリカ合衆国のL大学の投与方法
を参考にした。
Dは,3月31日,軽度の拒絶反応が見られたが,ステロイドパルス療法によっ
て軽快し,その後の経過も概ね良好で,5月21日に退院した。
(6) J病院及び被告病院に入院するに至った経緯(甲A1,2,甲B24,25,乙A1
0,16,証人F,同G,原告A)
5月29日,Dが腹痛を訴えたため,原告らが被告病院に電話連絡をしたとこ
ろ,被告病院の医師から近医を受診するよう指示があったため,Dは,長野県南
佐久郡M町に所在するJ病院を受診して,浣腸を受けた。
Dは,同月31日,同月29日から腹痛,全身倦怠感,微熱がある旨訴えて,被
告病院を受診した。その際,腹部診察上,圧痛や筋性防御等の特別な所見はな
く,腹部レントゲン写真でも便塊が多少目立つ程度でガス像に異常は認められ
なかった。また,血液検査所見において,末梢血白血球数が1万1310/mm3,
CRPが2.0と上昇が見られたが,Fは,風邪を含むウイルス性の腸炎に一致す
る所見であると判断して,Dに対し,一般感冒薬及び抗生剤を処方して,自宅に
おいて経過を見るよう指示した。
Dは,その後も時々腹痛があり,6月5日には嘔吐及び軟便があって,同月6
日,水分も取れない状態となったので,J病院の救急外来を受診して,胃腸炎,
イレウスの疑いで同病院に入院した。同月8日,上部消化管内視鏡検査の結
果,胃及び十二指腸に重度のびらん性病変が見られた。
そのころ,Fは,J病院の担当医師から電話連絡を受けた際,サイトメガロウイ
ルスによる消化管潰瘍を疑って,タクロリムスを静注で0.06mg/kg/日(通常の
初期投与量の60パーセント)と減量した上で投与することとサイトメガウイルス
に有効な抗ウイルス剤であるガンシクロビルを投与することなどを指示した。
J病院は,ウイルス感染等を疑って治療を行ったが,腹痛等の症状は改善せ
ず,腎移植後のタクロリムスのコントロールや合併症等の治療経験がなかった
ため,同月12日,Dを被告病院に転院させた。
(7) 6月12日から7月27日までの被告病院における診療経過(乙A11,15,1
6,乙B11,証人F,同G)
ア 被告病院の医師は,Dが転院してきた後,抗潰瘍剤タガメットの投与,貧血
に対する輸血や鎮痛剤ペンタジンの投与等の対症療法を実施するとともに,
J病院において認められた多発性潰瘍の原因としてウイルス,細菌,真菌によ
る感染症を強く疑って,その原因を検索するための検査(各種ウイルス抗原・
抗体価検査,血液・便培養検査等)を行い,さらに,ガンマグロブリン及び抗生
剤の投与を開始した。
ウイルス感染症の可能性については,比較的頻度が高く報告例も多いサイ
トメガロウイルスによる感染症を一番に疑ったが,当時比較的症状も緩和して
いたと判断したこと及び原因ウイルスが同定されていなかったことから,骨髄
抑制,肝・腎障害の副作用を考慮して,ガンシクロビルではなく,ガンマグロブ
リンを3日間(6月13日ないし同月15日)投与した。
もっとも,同月16日の上部消化管内視鏡検査の結果,胃・十二指腸の多
発性潰瘍が持続しており,発熱や炎症反応の上昇も見られたため,同月17
日からガンシクロビルの投与を開始した。
イ 被告病院の医師は,Dに投与する免疫抑制剤について,ブレジニンを中止
し,タクロリムスを継続して投与することとしたが,腹痛等により経口投与が困
難であること,吸収のピークを作らずに安定化させることを考えて,入院当初
から持続静脈投与の方法を採用した。
タクロリムス静注の通常の投与量は0.1mg/kg/日であり,Dの体重が15.
5kgであったことを考慮すると,Dに対する通常投与量は1.55mg/日であっ
た。
被告病院の医師は,6月12日から,Dに対し,通常投与量の約3分の2で
ある1mg/日でタクロリムスの投与を開始したが,その血中濃度の上昇,臨床
症状,拒絶反応の危険性等を考慮しながら,同月14日に0.9mg/日,同月1
5日から0.8mg/日,同月19日から0.7mg/日,同月21日から0.6mg/日,
7月1日に0.4mg/日,同月2日に0.2mg/日,同月3日から0.1mg/日に減
量した(同月7日投与中止)。
なお,被告病院の医師は,タクロリムスの血中濃度につき,経口投与時の
トラフ濃度(次の薬を投与する直前の濃度で,1日で最も低い血中濃度)として
約10~15ng/mlを通常の目標値としていたところ,Dについては,感染症を
考慮して,約5~10ng/mlを目標値とした。そして,タクロリムスの持続静注に
おいては,経口投与時のトラフ濃度の約1.5倍が通常の目標値であるため,
Dについては約10~15ng/mlを目標値としていた。しかし,現実のタクロリム
スの血中濃度は,別紙診療経過一覧表のとおりであって,全般的に,目標値
より高値であった。なお,この目標値は,被告病院の医師が海外の報告(ピッ
ツバーグの医師グループの報告等)を参考にしながら独自に設定したもので,
当時,タクロリムスの血中濃度の目標値に関するガイドラインはなかった。
また,免疫抑制剤を減量すれば,それだけ拒絶反応が生じて移植腎を廃絶
する危険性があった。そして,2月24日にCAPD用のカテーテルが抜去され
ていたこと,6月及び7月当時,Dの腹部症状が悪かったことから,その時点
において,腹膜透析を再開することは困難で(血液透析も循環動態を変動さ
せるので危険が伴った。),移植腎を廃絶すると,腎機能がないために死亡す
る危険性が十分あった。
ウ 被告病院の医師は,サイトメガロウイルス感染症を強く疑っていたが,6月1
5日,サイトメガロウイルス検査(アンチゲネミア法)の結果が陰性であること
が判明した。しかし,サイトメガロウイルス感染症については,サイトメガロウ
イルスそのものによる組織障害を呈する症例では,必ずしも陽性になるとは
限らないため,サイトメガロウイルス感染症であることを否定できなかった。
他方,被告病院の医師は,同月18日,EBウイルス検査の結果が陽性で
あることが判明したため,EBウイルスによるPTLDの可能性を考えたが,そ
の発症を疑わせる表在リンパ節の腫脹は見られず,腹部長音波検査(同月2
0日,同月29日実施)やCT検査(同月21日,7月3日実施)においても腹腔
内腫瘤やリンパ節の腫脹は見られなかったため,PTLDであると診断し,ある
いは強く疑うには至らなかった。
エ サイトメガロウイルスによる消化管潰瘍の場合でもPTLDによる場合でも,通
常,消化管潰瘍部の生検による組織学的診断が診断の決め手となるが,6月
16日実施の上部消化管内視鏡生検の結果,明らかな病原体を示唆する所
見は見られなかった。また,同月22日実施の上部消化管内視鏡生検及び大
腸ファイバーにおいても,明らかなリンパ球浸潤やウイルス感染は認められな
かった。
しかし,同月22日実施の上部消化管内視鏡生検において採取した胃及び
十二指腸粘膜組織について,PCR法によるサイトメガロウイルス検査を実施
していたところ,7月2日,その結果が陰性であることが判明したため,被告病
院の医師は,サイトメガロウイルス感染症はほぼ否定的であると判断した。そ
して,EBウイルスについてもPCR法による検査をするため,採血を行った。
7月7日実施の上部消化管内視鏡生検においても,確定診断ができる所見
はなかったが,同日,7月2日に実施していたEBウイルス検査(PCR法)が陽
性であることが判明した。
オ Gは,7月7日,原告らに対し,①入院後約1か月間にわたって免疫抑制剤
の減量,抗ウイルス剤やガンマグロブリンの投与を行ってきたが,腹痛や発熱
等の症状が持続していること,②同日の内視鏡検査においても胃から結腸ま
で潰瘍性病変があること,③肝移植症例であるが,海外における類似の症例
報告(GI-PTLD)を文献検索によって発見したこと,④PTLDの原因となり得
るEBウイルス感染が成立していることの総合判断から,確定診断に至ってい
ないが,EBウイルス感染に伴う消化管潰瘍(GI-PTLD)が強く疑われ,その
治療のためにはタクロリムスの投与を中止する必要があり,その場合,拒絶
反応のリスクが高まることを説明した。
そして,Gは,同日,タクロリムスの投与を中止することについて原告らの了
解が得られたため,これを中止した。
カ Dは,7月11日,多発性潰瘍による消化管穿孔を併発したため,緊急開腹
手術を受けた。
また,同月18日,上記緊急開腹手術時に腸管穿孔部位から採取した腸管
壁全層標本の病理検査の結果,粘膜下層及び筋層に強いリンパ球浸潤があ
ることが判明し,腸管壁に限局したPTLD(GI-PTLD)であると確定診断がさ
れた。
Dは,その後も抗ウイルス剤の投与等の治療を受けたが,出血及び敗血症
から多臓器不全に陥って,同月27日に死亡した。
(8) EBウイルス及びPTLDについて(甲B1,4ないし8,13ないし23,乙A15,1
6,乙B10,証人F)
ア 腎移植後にEBウイルスに感染した場合,風邪の症状や下痢が生じることが
あるが,その後に回復する例が多く,必ずPTLDを発症するものではない。
臓器移植において,新たにタクロリウムスなどの強力な免疫抑制剤が用い
られるようになり,その結果,例えば,腎移植後早期の治療成績は著しく向上
した。しかし,他方,ウイルス感染を中心とした日和見感染に関連する合併症
の頻度は増大している。平成13年頃刊行された国内の医学文献に,EBウイ
ルスによるPLTDは,移植後の感染症のなかで最も重要な感染症の一つとな
っていると注目されるようになってきている,腎移植後の約0.5%~2.0%に
その発生を認めるが,いったん発症すると,その治療は極めて困難であり,死
亡することもまれではない,国内の報告では消化管に潰瘍性病変を形成する
報告が多いとの記載がある。
しかし,平成11年6月ないし7月当時,国内では,腎移植後の免疫抑制時
のEBウイルスによるPTLDの症例報告は数例に止まり,消化管に症状が限
局したPTLD(GI-PTLD)については,Dの症例についての報告(甲B1号
証)がされるまでは症例報告がなかった。当時,海外においては,小児腎移
植,小児肝移植後の免疫抑制時のEBウイルスによるPTLDの報告がされて
おり,小児肝移植においては,少なくとも9例のGI-PTLDの症例報告がされ
ていた。ここで,臓器移植後の感染症の内容や頻度は,臓器によって異なり,
例えば,腎移植に比べて肝移植の方が,全般的に感染症の発生率は高く,特
にEBウイルスによるPTLDの発症率も高い。
被告病院の医師は,Dの症例について,平成11年6月中旬以降,国内外
の文献を検索するとともに,国内の主要な移植施設であるN大学腎移植グル
ープ,O大学腎移植グループ,P大学肝移植グループ,Q病院腎移植グルー
プ,R大学腎移植グループ,S大学肝移植グループ等に直接連絡をして,類
似症例の有無や検査・治療方法について相談をした。国内の施設からは参考
になる意見を得られなかったが,同月末頃までに,海外の小児肝移植につい
ての文献であるが,GI-PTLDの症例報告を含む医学文献(上記(7)オ③記
載の文献)を見出した。
イ EBウイルスの検査
(ア)EBER-ISH
EBウイルス感染の組織学的診断の方法として,EBウイルス感染細胞
に存在するEBvirus-encodedRNA(EBER)をinsituhybridization法(ISH)
で検出する方法がある。
しかし,ISHは,平成11年6月ないし7月当時,被告病院を含め,一般の
病院において実施されている検査ではなかった。被告病院の医師は,6月
ないし7月当時,ISHがPTLDの補助診断として有用であるという医師グル
ープの報告があったため,大学病院,研究施設等にISHの検査依頼をした
が,これを実施できる施設はなかった。
なお,現在,ISHはPTLDの診断に利用されていない。
(イ) PCR検査
EBウイルスのPCR検査は,平成11年6月ないし7月当時,被告病院を
含め,一般の病院において実施されている検査ではなかった。被告病院が
Dについて実施したPCR検査は,Tという施設に依頼して行ったものであっ
た。
平成13年以降,EBウイルス感染の早期診断に,そのDNA量を測定す
るreal-timePCR(polymerasechainreaction)法が有用であるとの報告があ
る。
  上記(1)ないし(4)のうち腎移植に関する説明に係る事実の認定に反して,原告A本
人は,①平成10年12月の電話の時点まで被告病院側から腎移植についての話
は一切されておらず,同年4月10日にDが腎移植について嫌ではないと言ったと
原告Bが話したことはない,②同年12月のFの説明では,腎移植に伴うリスク(免
疫抑制療法下の感染症等)についての説明はなく,この点について原告らが質問
しても,大丈夫と言うだけであった,③平成11年2月22日のG及びFの説明でも,
腎移植に伴うリスク(免疫抑制療法下の感染症等)についての説明はなかったなど
と供述し,原告らの陳述書(甲B24,25)中にも同旨の記載がある。
  しかしながら,上記①の点についてみると,カルテの平成10年4月10日欄(乙A4
の11頁)に原告BからDが腎移植について嫌ではないと言ったと話された旨が記
載されていること及び上記のとおり現に同年8月に腎移植の準備であるHLAやク
ロスマッチ検査がされていることに照らし,また,Iの陳述書(乙A14)に照らして,
上記の供述,陳述記載は採用することができない。上記②及び③の点についてみ
ても,腎移植のように重大な手術に際して,これに伴うリスク(免疫抑制療法下の
感染症等)につき,医師側が説明しないとか,わざわざ質問までした患者側が,単
に大丈夫と言われて,そのまま了承するなどということは,容易に想定し難く,カル
テの記載(乙A8の62頁,70頁,71頁)並びにF及びGの各証言に照らしても,上
記の供述,陳述記載は採用することができない。
  他に,本件全証拠を検討してみても,上記(1)ないし(8)の事実の認定を覆すに足り
る証拠はない。
2 タクロリムスの血中濃度の管理義務違反
(1) 前記前提事実(3)(別紙医学的知見2(3)イ,(5),3(1))のとおり,タクロリムス
は,免疫抑制剤であって,患者の抵抗力を減弱するものであるから,その投与
に当たっては,定められた用法・用量に従うべきである。もっとも,感染症を発症
していると疑われる場合においては投与量を減じて抵抗力の回復を図るなど,
患者の症状に応じて投与量を増減する必要があるといえる。
この点,前記前提事実(3)(別紙医学的知見2(3)イ)のとおり,タクロリムス(商
品名プログラフ注射液5mg)の腎移植における用法・用量は,通常,1回0.1
mg/kgを生理食塩液又はブドウ糖注射液で希釈して,24時間かけて点滴静注
するとされている。
しかして,上記1(6)のとおり,Fは,DがJ病院に入院していた際,同病院の担
当医師から電話連絡を受け,サイトメガロウイルス感染による消化管潰瘍を疑っ
て,タクロリムスを静注で0.06mg/kg/日(通常の初期投与量の60パーセント)
投与するよう指示した。また,上記1(7)イのとおり,Dの体重が15.5kgであった
ことを考慮すると,Dに対する通常投与量は1.55mg/日となるところ,被告病院
の医師は,Dが被告病院に入院した6月12日から,Dに対し,感染症を考慮し
て,通常投与量の約3分の2である1mg/日でタクロリムスの投与を開始した。そ
して,被告病院の医師は,血中濃度の上昇,臨床症状,拒絶反応の危険性等を
考慮しながら,同月14日に0.9mg/日,同月15日から0.8mg/日,同月19日
から0.7mg/日,同月21日から0.6mg/日,同年7月1日に0.4mg/日,同月2
日に0.2mg/日,同月3日から0.1mg/日に減量した(同月7日投与中止)。
このように,被告病院の医師は,感染症を疑って,被告病院への入院当初か
らタクロリムスを通常の用量よりも減じて投与していたのであり,その投与方法
が不適切であったということはできない。
(2) なお,原告らは,タクロリムスを経口投与していた4月26日(移植後8週間以
降に当たる検査日)から5月20日までの間は,その血中濃度を5ないし10
ng/mlに,タクロリムスを静注していた6月7日以降は,その血中濃度を10ないし
15ng/mlにコントロールすべき義務を負っていたと主張する。
しかし,上記1(7)イのとおり,タクロリムスの血中濃度の目標値について標準
的なガイドラインはないのであるから,原告ら主張のような義務を認めることはで
きない。タクロリムスの現実の血中濃度が被告病院の設定した目標値よりも高
値のことがあった点についても,タクロリムスの血中濃度の目標値について標準
的なガイドラインがない以上,それを捉えて注意義務違反と解することはできな
い。
さらに,原告らは,タクロリムスの血中濃度の管理義務違反の前提として,小
児の臓器移植後にEBウイルスによるPTLDが高い確率で発生することを挙げ,
甲B22,23には,移植後タクロリムスの血中濃度(トラフ値)を下げることによっ
てPTLDの発症率を下げることができたとの海外の論文の紹介があるが,その
論文が前提とする移植臓器,症例数,症例の詳細等について把握することが困
難であるし,その論文の発表が平成11年12月であることなどからすると,これ
らによって,上記標準的なガイドラインと同視し,原告らの主張に反する血中濃
度の管理を被告病院の注意義務違反と断定することはできない。
3 5月31日時点における義務違反について
前記前提事実(3)(別紙医学的知見2(5),3(1))のとおり,腎移植後は,免疫抑制
に伴う宿主の抵抗力減弱のため,移植後3~6か月以内にウイルス等を原因とす
る感染症を発症することが多く,厳重な経過観察が必要となる。
よって,患者の症状等に照らして,入院が必要と判断される場合には,入院させ
た上で,経過観察をして,必要な検査・治療を実施すべきであるといえる。
この点,前記前提事実(2)イのとおり,5月15日には,同月11日実施の血液検
査の結果が報告され,EBウイルス抗体価の陽転化があり,DがEBウイルスに初
感染したことが判明していた。そして,上記1(6)のとおり,Dは,同月29日,腹痛を
訴えて,被告病院に電話連絡をした後,J病院を受診して,浣腸を受け,同月31日
には,同月29日から腹痛,全身倦怠感,微熱がある旨訴えて,被告病院を受診し
た。
しかし,上記1(8)のとおり,腎移植後にEBウイルスに感染した場合,風邪の症
状や下痢が生じることがあるが,その後に回復する例が多く,必ずPTLDを発症す
るものではないし,本件当時,国内では,EBウイルスによるPTLDの発症例の報
告は数例しかなく,消化管に症状が限局したPTLD(GI-PTLD)の報告例は全く
なかった。また,上記1(6)のとおり,Dについて,同月31日,腹部診察上,圧痛や
筋性防御等の特別な所見はなく,腹部レントゲン写真でも便塊が多少目立つ程度
でガス像に異常は認められなかった。さらに,血液検査所見において,末梢血白血
球数が1万1310/mm3,CRPが2.0と上昇が見られたところ,腹部所見や腹部レ
ントゲン写真は,消化管に重篤な疾病が発症していることを窺わせる所見に乏し
く,他方,血液検査の結果は,風邪を含むウイルス性の腸炎に一致する所見であ
った。
このような,当時の国内でのEBウイルスによるPTLDの発症例の報告の状況
と,当時のDの症状が上記の程度に止まることを総合すると,この時点で,Dにつ
いて,EBウイルス感染によるPTLDが発症するなど,重篤化することを予見するこ
とは困難であったから,入院させた上で検査・治療を行う必要があったと認めること
はできず,他にそのような必要性を肯定するだけの事情を認めるに足りる証拠はな
い。
よって,同月31日時点で,被告において,Dに対し,被告病院に入院させた上,
経過観察をすべき義務があったとはいえない。
4 6月19日時点における義務違反について
(1) 薬剤の調整義務違反について
この点に関する原告らの主張は,被告において,6月19日時点で,DがEBウ
イルスによるPTLDを発症していることを診断できたことを前提とするものである
が,同日時点において,そのような診断はできなかったというべきであり,その理
由は次のとおりである。
ア 確かに,前記前提事実(3)(別紙医学的知見3(3))のとおり,PTLDは,EBウ
イルス感染に関連する臓器移植後の重篤な合併症とされているところ,前記
前提事実(2)(診療経過一覧表)のとおり,5月15日には,血液検査の結果が
報告され,EBウイルス抗体価の陽転化があり,DがEBウイルスに初感染し
たことが判明し,6月18日には,EBウイルスの検査結果が陽性,サイトメガ
ロウイルスの検査結果が陰性であるとの報告がされた。
イ しかし,上記1(8)アのとおり,腎移植後にEBウイルスに感染した場合,風邪
の症状や下痢が生じることがあるが,その後に回復する例が多く,必ずPTLD
を発症するものではないし,PTLDの発症を疑わせる表在リンパ節の腫脹は
見られなかった。また,上記1(7)ウのとおり,サイトメガロウイルス感染症につ
いては,サイトメガロウイルスそのものによる組織障害を呈する症例では,必
ずしも陽性になるとは限らないため,サイトメガロウイルス感染症による消化
管潰瘍であることを否定できなかった。
そして,前記前提事実(3)(別紙医学的知見3(3))及び上記1(7)エのとおり,
PTLDは,腫瘍化リンパ球又は異形化リンパ球の異常増殖が生じたもので,
最終的には,問題となる組織の中にかかるリンパ球が存在することを証明で
きれば,PTLDを診断することができ,消化管潰瘍部の生検による組織学的
診断が診断の決め手となるが,同月16日に実施した上部消化管内視鏡生検
の結果,明らかな病原体を示唆する所見は見られなかった。
また,上記1(8)アのとおり,平成11年6月当時,腎移植後のEBウイルスに
よるPTLDの国内での症例報告は多くなく,腎移植後のEBウイルスによるGI
-PTLDについては,Dの症例についての報告(甲B1号証)がされるまでは,
国内において報告がなく,海外で肝移植後の症例報告があるのみであった。さ
らに,被告病院の医師は,Dの症例について,6月中旬以降,国内外の文献
を検索するとともに,国内の主要な移植施設であるN大学腎移植グループ,O
大学腎移植グループ,P大学肝移植グループ,Q病院腎移植グループ,R大
学腎移植グループ,S大学肝移植グループ等に直接連絡をして,類似症例の
有無や検査・治療方法について相談したが,参考になる意見はなかった。
ウ 上記イのような諸点に照らすと,DのEBウイルスの感染や臨床症状から
は,直ちにPTLDの発症を診断することはできず,他にこれを診断できたと認
めるだけの事情があったと認めるに足りる証拠はない。
(2) 検査義務違反について
上記1(8)イ(ア)のとおり,EBウイルスについてのISH及びPCR検査は,平成
11年6月ないし7月当時,被告病院を含め,一般の病院において実施されてい
る検査ではなかった。なお,被告病院の医師は,平成11年6月ないし7月当時,
ISHがPTLDの補助診断として有用であるという医師グループの報告があった
ため,大学病院,研究施設等にISHの検査依頼をしたが,これを実施できる施
設はなかったところでもある。
よって,6月19日時点において,被告にISHやPCR検査を実施すべき義務が
あったということはできない。
(3) なお,原告らの主張には,EBウイルスによるPTLDは予後が不良であるから,
その確定診断に至らなくとも,その可能性が高い場合,あるいは,ある程度ある
場合には,早期にタクロリムスの中止又は大幅な減量をすべきとの主張も含ま
れていると窺える。
 そこで,この点について検討すると,当時,Dについては,腎移植後約3か月の
時期であったから,タクロリムスの中止や大幅な減量は,免疫反応を引き起こ
し,腎臓を廃絶する危険があったこと,腎臓を廃絶した場合,一般的には,腹膜
透析や血液透析を施さなければ,腎不全によって死亡に至るところ,Dの年齢や
当時の体重からすると血液透析の実施は困難であったこと,腹膜透析を実施す
るには,既に腹膜透析カテーテルを抜去していたので,新たにその導入術を実
施する必要があったところ,6月19日当時,Dには高熱,腹痛,炎症反応の再熱
が認められ,同月22日には,IVHを挿入し,輸血も施されているなど,腹部所見
を含む重篤な症状が認められたのであって,腹膜透析カテーテルの導入術や腹
膜を利用しての腹膜透析が可能であったとは考えがたいことも考えると,EBウ
イルスによるPTLDの可能性が相当程度高くなければ,被告においてタクロリム
スの中止や大幅減量をすべき義務は認められないと解される。
 しかして,上記(1)で検討した各点に照らすと,被告病院において,当時,EBウ
イルスによるPTLDの可能性が相当程度高いと判断することはできなかったと解
すべきである。
5 6月24日時点における義務違反について
(1) 薬剤の調整義務違反について
この点に関する原告らの主張は,被告が,6月24日時点で,DがPTLDを発
症していることを診断できたことを前提とするものであるが,同日時点において,
そのような診断はできなかったというべきであり,その理由は,上記4(1)の理由
のほか,次のとおりである。
前記前提事実(2)イ(診療経過一覧表)のとおり,同月24日,Dについて,EB
ウイルスが陽性,サイトメガロウイルスが陰性との検査結果が判明した。
しかし,上記4(1)のとおり,EBウイルスの感染が直ちにPTLDの発症に繋が
るものではなく,サイトメガロウイルスが陰性であったとしてもその感染を完全に
否定することはできない。また,上記1(7)ウ,エのとおり,同月20日実施の腹部
長音波検査や同月21日実施のCT検査においても腹腔内腫瘤やリンパ節の腫
脹など一般的なPTLDに見られる所見はなく,同月22日実施の上部消化管内
視鏡生検及び大腸ファイバーにおいても,明らかなリンパ球浸潤やウイルス感
染は認められなかった。
このように,同月24日時点においても,DのEBウイルスの感染や臨床症状
からは,直ちにPTLDの発症を診断することはできず,他にこれを診断できたと
認めるだけの事情があったと認めるに足りる証拠はない。
(2) 検査義務違反について
原告らの主張するISHやPCR検査の実施義務が認められないことは,上記
4(2)と同様である。
(3) なお,上記4(3)で論じた点についても,6月24日当時のDの腹部や全身状態
が同月19日以上に重篤であることを考えると,同様となる。
6 説明義務違反について
(1) 腎移植について
医師は,患者の疾患の治療のために手術を実施するに当たっては,診療契
約ないし信義則に基づき,特別の事情がない限り,患者に対し,当該疾患の診
断(病名と病状),実施予定の手術の内容,手術に付随する危険性,他に選択
可能な治療方法があれば,その内容の利害得失,予後などについて説明すべ
き義務があるというべきである(最高裁判所平成13年11月27日第三小法廷判
決・民集55巻6号1154頁参照)。
また,医師は,患者が,子供である場合など,自己の疾患の内容やそれに対
する治療方法を的確に理解して治療方法の選択や同意をすることが期待できな
い場合には,緊急の場合でない限り,少なくとも,患者の家族に接触して,説明
が適当であると判断できたときには,その者に対し,患者に対する治療内容等を
説明して同意を得る義務を負うものというべきであり,逆に,かかる家族からの
同意があれば,患者本人から同意を得る必要は必ずしもないというべきである。
この点,Dは,平成2年1月21日生まれの者で,平成10年及び平成11年当時
は8,9歳の子供である一方,原告らは,Dの父母でDの受診の際に少なくともい
ずれかは付き添っていたと認められるから,Dの病状等について説明をする相
手方として相応しいと認められる。
したがって,被告は,原告らに対し,Dの病状,実施予定の腎移植手術の内
容,手術に付随する危険性,他に選択可能な治療方法があれば,その内容の
利害得失,予後などについて説明すべき義務があるというべきである。
この点,F及びGが原告らに対して説明した内容は,上記1(3),(4)のとおりで
あって,腎移植を受けるか否かを合理的に判断するために必要な説明が尽くさ
れ,上記説明義務の履行はされたものというべきである。
なお,原告らは,腎移植手術に関するマイナス面ないしリスク(免疫抑制療法
下での感染症等の合併症等)に触れられていたとしても,他方で,担当医が「大
丈夫」と述べれば,全体としてマイナス面についての説明義務違反があると主張
し,確かに,前記認定のとおり,Fは「大丈夫」とも述べたようであるが,現に,マ
イナス面ないしリスクについて具体的な説明をしている以上,抽象的に「大丈夫」
というような肯定的な表現をしたことによって説明義務違反があると解することは
できない。
(2) ドナーについて
H及びGは,2月22日,原告Bに対し,腎摘出手術等について,上記1(4)のと
おり説明したのであって,腎摘出手術を受けるか否かを合理的に判断するため
に必要な説明が尽くされたものというべきであり,この点についても説明義務違
反は認められない。
7 以上によれば,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく理由が
ないというべきであるから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法
61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第14部
     裁判長裁判官   貝 阿 彌  誠
          裁判官水野有子
          裁判官   堀内元城
別紙 医学的知見
1 慢性腎不全(乙B2,5,7,8)
(1) 慢性腎不全の治療には,透析療法と腎移植の2つの治療法があり,現在,腎移
植が一番優れた治療法であるとされている。
(2) 透析療法には,血液透析と腹膜透析がある。いずれも食事,水分制限等の自己
管理指導が重要となる。
ア 血液透析
腎臓で排除されるべき毒素と水分を人工腎臓により除去して,血液を浄化す
る対症療法である。1回3~5時間の透析を週に2,3回行う必要がある。
小児については,血液透析は困難とされている。
イ 腹膜透析(連続携行式腹膜灌流(CAPD))
腎臓で排除されるべき毒素と水分を腹腔内に注入した透析液により除去し
て,血液を浄化する対症療法である。腹膜透析は,カテーテルによって透析液の
注廃液を行う必要がある。
腹膜透析は血液透析よりも生理的であるが,これを長期的に使用すると,被
嚢性腹膜硬化症(びまん性に肥厚した腹膜の広範な癒着により持続的,間欠的
あるいは反復的にイレウス症状を呈する症候群)となり,腹膜の劣化のため,腹
膜肥厚,中皮細胞脱落,イレウス及び腸管癒着を引き起こす。皮嚢性腹膜硬化
症は,死亡率が高く,経口摂取ができず,長期的に経静脈栄養で管理しなけれ
ばならない重篤な合併症であり,発症前に腹膜透析を中止する必要がある。
小児末期腎不全患者では,現時点において,腹膜透析は5~10年しか治療
を行えない方法で,血液透析が困難なことから,乳幼児では特に早期腎移植が
望まれるとされる。
2 腎移植(甲B10,30,乙B1,2,4ないし7,11,12)
(1) 腎移植は,末期腎不全患者の廃絶した腎機能を腎提供者から移植した腎により
置換して代行させる治療法である。腎移植は,慢性腎不全に対する確立した根治
療法とされている。
腎移植には必ず腎を提供する第三者(ドナー)が必要であり,提供者が生存中
の家族である場合と死の直後である場合がある。
(2) 適応
腎移植は,末期腎不全患者のほとんどすべてに適応がある。ただし,現在のと
ころ,既存抗体の陽性例,活動性の感染症,消化管出血及び悪性腫瘍等の合併
症を有する者には禁忌である。
腎移植をするに当たって,ドナーと患者(レシピエント)間の組織適合性検査が重
要である。
小児慢性腎不全は,成長,身体的・精神的発育,就学の面から腎移植の絶対的
適応であり,成人後の予後や社会復帰という面から見ても,できるだけ早期に腎移
植を実施すべきであり,そのためには,生体腎移植に対する医療者側のpositiveな
考え方と献腎移植を普及させる努力が必要であるとする報告(乙B第4号証)もあ
る。
(3) 免疫抑制剤等
ア 腎移植後の免疫抑制剤としては,①シクロスポリン(T細胞活性化抑制,インタ
ーロイキンⅡ産生抑制),②タクロリムス(T細胞活性化抑制,インターロイキン
Ⅱ産生抑制),③アザチオプリン(代謝拮抗薬,リンパ球増殖抑制),④ミゾリビ
ン(代謝拮抗薬,リンパ球増殖抑制),⑤副腎皮質ホルモン(インターロイキンⅠ
産生抑制,抗炎症等)等が使用され,種々の組み合わせが行われるようになっ
ている。
このほかにも,拒絶反応の治療薬として,ステロイド,抗リンパ球グロブリン(A
LG),モノクローナル抗体等が用いられている。
イ タクロリムス
タクロリムス(商品名プログラフ)は,免疫抑制剤であり,腎移植等の臓器移植
における拒絶反応の抑制のために用いられている。
商品名プログラフ注射液5mgの腎移植における用法・用量は,通常,1回0.
1mg/kgを生理食塩液又はブドウ糖注射液で希釈し,24時間かけて点滴静注す
る。
商品名プログラフカプセル0.5mgの腎移植における用法・用量は,通常,移
植2日前から術後初期にかけて1回0.15mg/kgを1日2回経口投与し,以後,
徐々に減量し,維持量は1日量0.06mg/kgを1日2回経口投与することを標準
とするが,症状に応じて適宜増減する。タクロリムスを経口投与する場合,その
吸収は一定しておらず,患者によって個人差があるので,状況に応じて血中濃
度を測定して,その投与量を調節する。
なお,タクロリムスの血中濃度の目標値(ng/ml)については,次回投与直前
(すなわち,血中濃度の最も低い時点)における値であるトラフ値について,腎移
植後2週間が20~25,その後1か月が15~20,その後3か月が10~15,慢
性期は5~9とするアメリカのピッツバーグの医師グループの報告がある。
(4) 拒絶反応
移植特有の合併症で,発熱,尿量減少,腎機能低下及び移植腎腫大が主要症
状であり,次の①ないし③のタイプに分けられる。
① 超急性拒絶反応
レシピエント血中にドナーMHC抗原に対する既存抗体があるときに発症す
る。血流再開後48時間以内に移植腎は拒絶される。
② 急性拒絶反応
最も一般的な拒絶反応で,主としてTリンパ球による細胞性免疫反応である。
移植後1週間から3か月後くらいまでに頻発するが,その後も移植腎がある限り
いつでも発症し得る。間質血管周囲への単核円形細胞浸潤が特徴的で,移植
腎は大きく腫大する。尿量は減少し,血清クレアチニン値は0.3mg/dl/日以上
の上昇を示し,移植腎機能低下により透析療法が必要なこともある。ステロイド
パルス療法,ALG,モノクローナル抗体等による治療により多くは治癒回復させ
ることができる。
③ 慢性拒絶反応
移植後3か月以降に,慢性かつ進行性の移植腎機能低下を生じるもので,そ
の発症機序についてはまだ不明なことが多い。主としてドナーに対する液性抗
体が関与する免疫学的な要因と機能ネフロン数の減少によるhyperfiltration
mechanismなどの非免疫学的要因とが複雑に関与していると考えられている。
虚血や拒絶反応によるネフロン数の減少,あるいは加齢(高齢ドナー)などが移
植腎の長期予後に影響することが明らかになっている。
(5) 腎移植後の合併症
拒絶反応のほか,シクロスポリンやタクロリムスによる腎障害,肺炎等の感染
症,肝障害及び悪性腫瘍等は重要である。移植患者はすべて免疫抑制下にあり,
感染症,中でもサイトメガロウイルス(CMV)肺炎,カリニ肺炎や真菌症等はしばし
ば致命的となる。また,悪性腫瘍の発生率も高い(1~2%)ことが知られている。さ
らに移植患者には高血圧や高脂血症を合併することも多い。
(6) 腎移植の成績
日本移植学会による平成12年の腎移植臨床登録集計報告によれば,平成9年
12月31日までに日本で施行された過去約30年間の腎移植症例1万2381例(生
体腎移植8896例,死体腎移植3485例)のうち追跡調査ができた約1万例の成
績は,生体腎移植について見ると,生存率(移植患者が生存している率)が95%
(1年),89%(5年),82%(10年),76%(15年)で,生着率(移植腎が機能して
いる率)は,89%(1年),73%(5年),54%(10年),41%(15年)である(乙B
2,5)。
もっとも,腎移植成績は,シクロスポリンやタクロリムスといった免疫抑制剤や抗
ウイルス療法の進歩などにより,生存率,生着率ともに大きく向上している。
腎移植後は,社会復帰率も高く,透析療法に比較して高いqualityoflife(QOL)
が得られている。また,腎移植後に拒絶反応などによって移植腎が生着しなかった
場合でも,再び透析療法に戻ることで生命維持が可能となる。
3 腎移植後の感染症(甲B1,3ないし9,14,16,乙B10,証人F,同G)
(1) 腎移植後のウイルス感染症は最も重要な合併症の一つである。移植後の免疫
抑制に伴う宿主の抵抗力減弱がその原因であり,いわゆる日和見感染症として発
症しやすく,移植後3~6か月以内に発症することが多い。したがって,この期間は
厳重な経過観察が必要となる。
(2) サイトメガロウイルス(CMV)
サイトメガロウイルスは,ヘルペス属のウイルスである。サイトメガロウイルス感
染症は,腎移植後の免疫抑制に伴う日和見ウイルス感染症の代表例である。
サイトメガロウイルス感染症において,初期症状として最も多く見られるのは発
熱であり,更に症状が進むと臓器感染症の様相を呈する。主なCMV臓器感染症
は,肺炎,消化器潰瘍,肝炎,膵炎,網膜症である。
治療の基本は,抗ウイルス剤のガンシクロビル(商品名デノシン),ガンマグロブ
リン剤の投与である。
(3) EBウイルス(Epstein-Barrvirus)
EBウイルスは,ヘルペス属のウイルスである。感染症で問題となるのは,PTL
D(posttransplantlymphoproliferativedisorder。移植後リンパ球増殖性疾患)であ
る。
PTLDは,腫瘍化リンパ球又は異型化リンパ球の異常増殖が生じるもので,EB
ウイルス感染に関連する臓器移植後の重篤な合併症とされ,最終的には,問題と
なる組織の中にかかるリンパ球が存在することが証明されれば,これを診断するこ
とができる。
EBウイルスによるPTLDの予防に最も大切なことは,その早期診断であり,EB
ウイルスの増殖の段階で診断が付けば,早期の免疫抑制剤減量及び抗ウイルス
剤(ガンシクロビル,ガンマグロブリン等)投与によって対処する。移植後の臓器不
全を考慮して,免疫抑制剤の減量は慎重に行う必要がある。
PTLDのうち小腸等の消化管を主病変とするものは,gastrointestinalPTLD(GI-
PTLD)と呼ばれる。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛