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平成24年9月28日宣告裁判所書記官
平成24年第557号窃盗被告事件
判決
主文
被告人を懲役1年4月に処する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第1平成23年11月4日,神戸市区通丁目番号所在の株
式会社BC店において,同店店長Dが管理し,店内に陳列していた粘
着カーペットクリーナー1本(販売価格178円)を窃取し
第2平成24年3月6日,神戸市区通丁目番号所在のE薬局
において,同店店長Fが管理し,店内に陳列していたシャンプーセッ
ト2点(販売価格合計1596円)を窃取し
たものである。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
判示第1の事実について,弁護人は,被告人には万引きをする意思はな
かったのであり,窃盗の故意がなかった旨主張する。そこで,同事実につ
いて窃盗の故意を認めた理由を説明する。
まず,当事者間に争いのない事実として,被告人が,被害店舗内で陳列
されていた粘着カーペットクリーナー(以下この項において「被害品」と
いう。)を手に取った後,その代金を支払わないで被害店舗を出て,外に駐
輪していた自転車の前かごに持っていたリュックサックを置いたころ,警
備員のGに声をかけられたこと,被告人はGと共に再び被害店舗内に入り,
リュックサックから被害品を取り出してGに手渡したことが認められる。
そして,Gは,捜査段階で以下の趣旨の供述をしている。すなわち,G
は,被告人が被害店舗に入るころから被告人の行動を注視していたところ,
被告人が,被害品を右手で取った後,店内を移動し,周りを見回してから,
左手に持っていたリュックサックの中に被害品を入れ,ファスナーを右手
で閉めたのをはっきり見たというのである。
このGの供述は,被害品がリュックサックに入っていたことを自然に説
明するものであり,具体的で,内容に不合理な点がない。Gの供述は常識
的に考えて十分信用できるものであり,その供述内容に沿う事実が認めら
れる(なお,被告人は,自分がしたのは,右手に持っていた被害品を,リ
ュックサックを持っていた左手に持ち替えただけであり,それがGの言う
ような動作に見えたのではないか,という趣旨の供述をしている。しかし,
Gは警備員として被告人が万引きをするかどうかを注視していたのであり,
単に左手に被害品とリュックサックを一緒に持つことと,リュックサック
の中に被害品を入れてファスナーを閉めることを見間違えるとは考えられ
ない。)。
そうすると,被告人は,被害店舗内で被害品をリュックサックに入れて
チャックを閉め,代金を支払わずに同店舗を出たということになるから,
このとき被告人が窃盗行為をしている認識を持っていたことは明らかであ
り,そのように認められる。
この点に関する被告人の供述は,以下のような趣旨のものである。すな
わち,被告人は,自転車のかぎをかけわすれていたことを思い出したから
被害店舗を出ただけで,すぐかぎを締めて,すぐ戻って代金を支払えばい
いかなと思っていたのであり,被害品がリュックサックに入ったとしたら,
左手に持っていた被害品とリュックサックを一緒に自転車の前かごに置い
たとき,リュックサックの口が開いた状態だったので入ったことぐらいし
か考えられないが,明確な記憶があるわけではない,というのである。
しかし,被告人の供述は,あいまいな部分もある上,その内容自体,自
転車のかぎをかけるためとはいえ商品を持ったまま被害店舗を出ることに
抵抗を感じていなかったという部分はやや不自然であるし,被告人がファ
スナーを開けたままリュックサックを持ち歩いており,それと一緒に持っ
ていた被害品が,前かごに置いた際に偶然中に入ってしまう,という部分
は,余りに不自然であって,被害品がリュックサックに入っていたことを
説明できているとはいえない。この点に関する被告人の供述は常識的に考
えて信用できない。
その他,弁護人の主張や被告人の供述を検討しても,先に述べた判断を
左右するものはない。
(累犯前科)
省略
(法令の適用)
罰条判示第1及び判示第2につきいずれも刑法235条
刑種の選択いずれも懲役刑を選択
累犯加重刑法56条1項,57条(判示第1及び判示第2のい
ずれの事実も,累犯前科1及び2の双方との関係で再
犯なので,それぞれ再犯の加重)
併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判
示第2の罪の刑に法定加重)
訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
被告人は,前記累犯前科1及び2を有しているほか,平成13年6月に
も窃盗,窃盗未遂,恐喝の各罪で懲役3年,執行猶予4年に処せられたこ
とがあり,窃盗罪ないしこれを含む罪により3度も懲役刑の判決を受けて
いる。そうであるのに,被告人は,最終刑の執行終了から約1年6か月余
りで判示第1の万引きの犯行に及び,これが発覚したにもかかわらず,更
にその約4か月後に判示第2の万引きの犯行に及んでいる。被告人の規範
意識には大きな問題があり,窃盗行為に対する常習性も認められる。
被告人は所持金を使うのが惜しくて判示第2の犯行に及んだことを認め
ており,判示第1の犯行の動機も同様のものと推認されるところである。
本件各犯行の動機は自己中心的なものであるといわざるを得ず,被告人が
余裕のない経済状況に置かれていたことを踏まえても,特別に有利な事情
があるとまでいうことはできない。
一方で,被告人は,判示第2の犯行については犯罪事実を認めている。
しかし,この点を被告人の反省の姿勢の現れととらえて有利に考慮すると
しても,同人が判示第1の事実について前記のような不自然な弁解に終始
していることにも照らすと,その程度には限界がある。
そうすると,各被害品は高額とはいえず,後に被告人によって買い取ら
れていること,被告人は体に病気を抱えていることなど被告人のために酌
むべき事情を考慮しても,主文の程度の刑はやむを得ない。
(検察官:原島一郎,国選弁護人:氏家都子各公判出席)
(求刑懲役1年6月)
平成24年9月28日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判官三上潤

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