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平成17年8月2日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(ワ)第23577号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成17年7月19日
判決
   
       原       告   株式会社リバティーピープル
       同訴訟代理人弁護士   笹   原   桂   輔
       同           笹   原   信   輔
       同           富   田   寛   之
       同           栢   割   秀   和
       同           十   亀   正   嗣
   
被       告   株式会社朝日ピープル
   
       被       告   有限会社ドリームワールド
       上記両名訴訟代理人弁護士 佐   藤   誠   治
主文
      1 原告の請求をいずれも棄却する。
      2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 1 被告株式会社朝日ピープルは,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を付
した別紙物品目録記載の物品を用いて,レンタルビデオショップを営業してはなら
ない。
 2 被告有限会社ドリームワールドは,別紙被告標章目録3及び4記載の各標章
を付した別紙物品目録記載の物品を用いて,レンタルビデオショップを営業しては
ならない。
3 被告株式会社朝日ピープルは,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章を付
した別紙物品目録記載の物品を廃棄せよ。
 4 被告有限会社ドリームワールドは,別紙被告標章目録3及び4記載の各標章
を付した別紙物品目録記載の物品を廃棄せよ。
5 被告株式会社朝日ピープルは,原告に対し,金1000万円及びこれに対す
る平成16年1月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合に
よる金員を支払え。
 6 被告有限会社ドリームワールドは,原告に対し,金1000万円及びこれに
対する平成16年1月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割
合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 1 争いのない事実
  (1)当事者
   ア 原告は,書籍,コンパクトディスク,ビデオソフト及びその関連用品の
販売並びに賃貸等を業とする株式会社である。
   イ 被告株式会社朝日ピープル(以下「被告ピープル」という。)は,ビデ
オソフト,書籍及びコンパクトディスクの賃貸,販売並びに輸出入等を業とする株
式会社である。
   ウ 被告有限会社ドリームワールド(旧商号は有限会社ドリームワークスで
ある。以下「被告ドリーム」という。)は,ビデオソフト,書籍,コンパクトディ
スク及びその関連用品の賃貸,販売並びに輸出入等を業とする有限会社である。
   エ 原告の取締役であるA,被告ピープルの代表取締役であるB及び被告ド
リームの代表取締役であるCは,原告及び被告ピープルの取締役であるDを父親と
する異母兄弟である。
  (2) 原告の商標権
ア 原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本
件商標」という。)を有している。
出願年月日   平成15年1月21日
登録年月日平成15年9月12日
登録番号    第4709678号
役務の区分   商標法施行規則別表第41類
指定役務    図書の貸与,録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁
気テープの貸与,録音済み磁気ディスクの貸与,録画済み磁気ディスクの貸与,録
音済み光ディスクの貸与,録画済み光ディスクの貸与
登録商標    別紙商標目録記載のとおり
   イ 原告は,レンタルビデオショップである中野坂上店(東京都中野区(以
下略)所在),鷺宮店(東京都中野区(以下略)所在),東中野店(東京都中野区
(以下略)所在),中野新橋店(東京都中野区(以下略)所在)及び西新宿店(東
京都新宿区(以下略)所在)の各店舗を経営し,これらの店舗において,本件商標
を使用している。
  (3) 被告らの行為
   ア 被告ピープルは,レンタルビデオショップである中板橋店(東京都板橋
区(以下略)所在)及び戸越銀座店(東京都品川区(以下略)所在)の各店舗をそ
れぞれ経営し,これらの店舗において,別紙被告標章目録1及び2記載の各標章
(以下「被告ピープル標章1」,「被告ピープル標章2」という。)を別紙物品目
録記載の物品に付して使用している。
   イ 被告ドリームは,レンタルビデオショップである千歳烏山店(東京都世
田谷区(以下略)所在)及び千歳烏山2号店(東京都世田谷区(以下略)所在)の
各店舗をそれぞれ経営し,これらの店舗において,別紙被告標章目録3及び4記載
の各標章(以下「被告ドリーム標章3」,「被告ドリーム標章4」といい,被告ピ
ープル標章1及び2と併せて「被告標章」という。)を別紙物品目録記載の物品に
付して使用している。
  (4) 本件訴えに至る経緯
 ア 原告は,平成元年4月10日,Aを代表取締役として設立された。その
ころ,原告は,屋号を「ピープル」として,レンタルビデオショップである中野坂
上店を開店し,その後,上記(2)イ記載の鷺宮店,東中野店,中野新橋店及び西新宿
店をそれぞれ開店した。なお,原告の現在の代表取締役は,Eであるが,実質的な
経営者は,Aである。
イ 被告ピープルは,平成4年7月6日,Bを代表取締役,Aを取締役とし
て,設立された。そして,被告ピープルは,上記(3)ア記載の中板橋店,平成8年1
2月に同記載の戸越銀座店をそれぞれ開店した。この際,Aは,Bに対し,店舗名
を「ピープル」とするように求めたことから,Bはこれを了承し,これらの店舗の
屋号を「ピープル」とした。
ウ 被告ドリームは,平成10年9月16日,Cを代表取締役として設立さ
れた。被告ドリームは,屋号を「ピープル」として,同年11月に上記(3)イ記載の
千歳烏山店を,平成15年4月に同記載の千歳烏山2号店をそれぞれ開店した。
エ 被告らは,原告及びAの承認の下に,屋号を「ピープル」とする上記レ
ンタルビデオショップを経営してきた。そして,被告らは,本件訴えが提起される
までは,原告及びAから被告標章の使用の中止を求められたことはない。
オ 原告及びAは,①平成15年9月26日から数回にわたり,被告らの顧
問税理士であるF及び被告らの主要な仕入先である株式会社アイ信に対し,被告ピ
ープルの元社員が覚せい剤の売買及び中毒で逮捕され服役した等の事実を申し向
け,②平成15年10月14日,被告らの取引先10社に対し,同様の事実が記載
された「ご注意を!」と題する書面及び本件訴えに係る訴状と題する書面をファッ
クスでそれぞれ送信した。そこで,被告らは,これらの原告及びAの行為が被告ら
の名誉及び信用を毀損したと主張して,平成16年3月23日,原告及びAに対し
て損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(平成16年(ワ)第6468
号)。
 2 事案の概要
   本件は,原告が,上記1(3)記載の被告らの行為が本件商標権を侵害すると主
張して,被告らに対し,商標法36条に基づき,被告標章を付した物品を用いた営
業の差止め及び当該物品の廃棄を請求するとともに,民法709条に基づき損害賠
償を請求する事案である。
 3 本件の争点
  (1) 本件商標と被告標章との類似性の有無
  (2) 本件商標に係る原告の使用許諾の有無
  (3) 先使用の抗弁の成否
  (4) 継続的使用の抗弁の成否
  (5) 本件商標権に基づく請求は権利濫用かどうか。
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(類似性)について
 〔原告の主張〕
  (1) 被告ピープル標章1について
   ア 外観
     被告ピープル標章1には,「PeopLe」と「VIDEO」の文字が
用いられている。「PeopLe」のうち,「P」と「L」が大文字であり,その
他の文字が小文字である点において本件商標と一致する。「VIDEO」は,いず
れも大文字である点において本件商標と一致する。
   イ 称呼
     被告ピープル標章1の文字部分の称呼は,「ピープル」及び「ビデオ」
であり,本件商標と一致する。
   ウ 観念
     需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという
名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
   エ 結論
     したがって,被告ピープル標章1は,本件商標と出所混同を生じさせる
ものであるから,本件商標と類似している。
  (2) 被告ピープル標章2について
   ア 外観
     被告ピープル標章2は「VIDEO」の文字が大文字であり,この点に
おいて本件商標と一致する。
   イ 称呼
     被告ピープル標章2の文字部分の称呼は,「ピープル」及び「ビデオ」
であり,本件商標と一致する。
   ウ 観念
     需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという
名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
   エ 結論
     したがって,被告ピープル標章2は,本件商標と出所混同を生じさせる
ものであるから,本件商標と類似している。
  (3) 被告ドリーム標章3及び4について
   ア 外観
     被告ドリーム標章3及び4には,「PEOPLE」と「VIDEO」の
文字が用いられており,「VIDEO」は,いずれも大文字である点にお
いて本件商標と一致する。
   イ 称呼
     被告ドリーム標章3及び4の文字部分の称呼は,「ピープル」と「ビデ
オ」であり,いずれも本件商標と一致する。
   ウ 観念
     需要者又は取引者が思い浮かべる意味内容は,いずれもピープルという
名前のレンタルビデオ店であり,同一である。
   エ 結論
     したがって,被告ドリーム標章3及び4は,本件商標と出所混同を生じ
させるものであるから,本件商標と類似している。
 〔被告らの主張〕
本件商標は,アルファベットを図案化したデザインの下に,「PeopLe
VIDEO」の文字を配したものである。このうち,「PeopLe」は人々を示
す一般名詞であり,「VIDEO」は役務としてレンタルする商品を示すものにす
ぎない。そうすると,原告商標の識別力は,図案化されたデザインの部分にある。
このような観点から類似性をみると,被告ピープル標章1及び被告ドリーム
標章3に付されたデザインは,本件商標とは外観を異にする。しかも,本件商標と
被告ピープル標章1及び被告ドリーム標章3は,称呼を異にするから,類似しな
い。 
また,被告ピープル標章2及び被告ドリーム標章4は,本件商標と称呼を異
にするから,類似しない。
 2 争点(2)(使用許諾)について
 〔被告らの主張〕
   原告は,被告らに対し,被告らの経営するレンタルビデオショップを開店す
る際に,本件商標(ただし,当時にあっては登録されていない同一の標章をい
う。)を使用するように求めたことから,被告ピープルにあっては当初から本件商
標を使用し,被告ドリームにあっては被告ドリーム標章3及び4を使用してきた。
したがって,原告は,被告らが本件商標又は被告ドリーム標章3及び4を使用して
いることを認識していた。
   また,被告ピープルは,その後,本件商標に代えて,被告ピープル標章1及
び2を使用してきたが,原告はこのことも認識していた。
   したがって,原告は,被告標章の使用を許諾していたことが認められる。
 〔原告の主張〕
原告は,被告らがレンタルビデオショップを開設する際に被告標章を使用す
ることを黙認していた。しかし,原告は,被告標章を認識していなかったから,そ
の使用を許諾していたとはいえない。なお,原告は,本件商標が登録された後は,
被告標章の使用を許諾していない。
また,原告は,被告らとの間で,被告らの事業が軌道に乗れば,フランチャ
イズ契約を締結し,そのフランチャイズ料を支払うという合意をした上で,被告ら
は,レンタルビデオショップを開設し,被告標章を使用した。しかし,被告らは,
現在に至るまでフランチャイズ契約を締結していないから,その使用許諾の合意に
違反する。したがって,その使用許諾は無効である。
 3 争点(3)(先使用の抗弁)について
 〔被告らの主張〕
被告らは,原告の商標登録出願前から日本国内において不正競争の目的でな
く被告標章を使用していた結果,当該出願の際には,被告標章が被告らのレンタル
ビデオショップの業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く
認識されていた。すなわち,原告が本件商標を出願した平成15年1月ころにおけ
る被告らの各店舗の会員数は,被告ピープルの中板橋店にあっては2万7000
人,同戸越銀座店にあっては2万人,被告ドリームの千歳烏山店にあっては1万8
000人にそれぞれ達していた。したがって,被告らは,被告標章を使用する
権利を有する。
 〔原告の主張〕
   被告標章によって需要者の間に広く認識されているのは,原告のレンタルビ
デオショップであって,被告らではない。したがって,被告標章が被告らのレンタ
ルビデオショップの業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広
く認識されているものではない。
 4 争点(4)(継続的使用の抗弁)について
 〔被告らの主張〕
被告ピープルは,不正競争の目的でなく,中板橋店において,平成4年7月
23日から現在まで継続してその役務について被告ピープル標章1及び2を使用し
ているから,被告ピープルは,中板橋店において,これらの標章を使用する権利を
有する(平成3年法律第65号附則3条1項)。
 〔原告の主張〕
 被告ピープルが被告ピープル標章1及び2の使用を始めたのは,平成5年9月
からである。すなわち,被告ピープルは,平成4年7月に設立されたが,原告が,
被告ピープルに対し,原告の中野坂上店の店舗の立退補償金のうち3000万円を
提供したことから,被告ピープルのレンタルビデオショップは開設された。そうす
ると,その補償金は平成5年9月ころに支払われているから,被告ピープル標章1
及び2の使用開始時期は,早くとも平成5年9月である。よって,被告ピープル
は,これらの標章を使用する権利を有さない。
 5 争点(5)(権利濫用)について
 〔被告らの主張〕
原告は,被告らに対し,被告標章の使用を認めていたにもかかわらず,兄弟
であるB及びCとの間の私的なトラブルがあったことを契機として,あえて本件商
標の登録をして,被告標章の使用の差止めを求める訴えを提起したのであるから,
本件商標権の行使は,権利の濫用である。
 〔原告の主張〕
   被告らは,被告標章の使用許諾の条件であるフランチャイズ契約を締結して
いない。加えて,被告らは社会的な問題行動を起こしており,原告は被告らと混同
されないために,本件訴えを提起している。したがって,本件商標権の行使は,権
利の濫用ではない。
第4 当裁判所の判断
 1 争点(2)(使用許諾)について
  (1) 前記争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
   ア 本件商標について
     原告は,平成元年4月10日,Aを代表取締役として設立され,設立当
初から,本件商標と同一の標章を使用していた(争いのない事実(4)ア,甲9〔1
頁〕)。
   イ 被告ピープル標章1及び2について
    (ア) 被告ピープルは,平成4年7月6日,Bを代表取締役,原告の当時
の代表取締役であるAを取締役として設立された(争いのない事実(4)イ)。
    (イ) 被告ピープルは,平成4年7月に中板橋店,平成8年12月に戸越
銀座店をそれぞれ開店した(争いのない事実(4)イ,乙5〔1頁〕,乙7)。その際
に,原告の当時の代表取締役であるAは,被告ピープルの代表取締役であるBに対
し,店舗名を「ピープル」とするよう求めた(争いのない事実(4)イ)。
    (ウ) そこで,被告ピープルは,設立当初においては本件商標と同一の標
章を使用し,その後,これに代えて,被告ピープル標章1及び2を使用している
(争いのない事実(4)イ,乙5〔2頁〕)。
    (エ) Aは,被告ピープルが被告ピープル標章1及び2を使用することを
少なくとも黙認していたのであって(甲9〔2頁〕),被告ピープルは,本件訴え
が提起されるまで,被告ピープル標章1及び2の使用を継続していたが,原告及び
Aから,これらの標章を使用しないように求められたことはない(争いのない事
実(4)エ)。 
  (オ) 被告ピープルの中板橋店及び戸越銀座店は,広告又は電話帳に,P
eopLegroupnetwork等として,原告の店舗と同一のグループで
ある旨の記載がある(乙2ないし4)。
   ウ 被告ドリーム標章3及び4について
    (ア) 被告ドリームは,平成10年9月16日,Cを代表取締役として設
立された(争いのない事実(4)ウ)。
    (イ) 被告ドリームは,平成10年11月に千歳烏山店,平成15年4月
に千歳烏山2号店をそれぞれ開店した(争いのない事実(4)ウ)。その際に,原告の
当時の代表取締役であるAは,被告ドリームの代表取締役であるCに対し,店舗名
を「ピープル」とするよう求めた(乙6〔2頁〕)。
    (ウ) そこで,被告ドリームは,設立当初から,被告ドリーム標章3及び
4を使用している(争いのない事実(4)ウ,乙6〔2頁〕)。
    (エ) Aは,被告ドリームが被告ドリーム標章3及び4を使用することを
少なくとも黙認していたのであって(甲9〔2頁〕),被告ドリームは,本件訴え
が提起されるまで,被告ドリーム標章3及び4の使用を継続していたが,原告及び
Aから,これらの標章を使用しないように求められたことはない(争いのない事
実(4)エ)。
    (オ) 被告ドリームの千歳烏山店は,ピープルグループの電話帳に,原告
の店舗とともに記載されている(乙4)。
  (2) 上記(1)認定の被告らが被告標章を使用するに至った経緯及びその使用の
経過並びにこれらに対する原告の対応等によれば,原告は,被告らの店舗が原告と
同一グループの店舗であることを前提として,被告商標がピープルグループの一員
であることを示す標章であることを認識して,これらを被告らが使用することを許
諾していたことは明らかである。
  (3) もっとも,原告は,この使用許諾には,被告らの事業が軌道に乗れば,フ
ランチャイズ契約を締結し,被告らは原告に対しフランチャイズ料を支払うものと
する条件が付されていたにもかかわらず,被告らがこの条件を履行しないから,こ
の使用許諾は無効であると主張する。
    しかしながら,その主張自体が具体性に乏しい上,使用許諾に条件が付さ
れていた事実を認めるに足りる具体的な証拠はない。したがって,原告の上記主張
は理由がない。
  (4) 以上によれば,原告が被告らに対し被告標章の使用を許諾した事実が認め
られるから,原告の請求は理由がない。
 2 争点(5)(権利濫用)について
(1)念のため,本件商標権に基づく請求が権利濫用かどうかについて検討する
に,上記1(1)の事実に加えて,争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   ア 原告の実質的な経営者であるA,被告ピープルの代表取締役であるB及
び被告ドリームの代表取締役であるCは,異母兄弟である(争いのない事実(1),乙
1別紙①)。
   イ 原告は,平成15年1月,本件商標を出願し,同年9月にその登録を受
けた(甲1)。
   ウ 平成15年1月ころにおける被告らの各店舗の会員数は,被告ピープル
の中板橋店にあっては2万7000人,同戸越銀座店にあっては2万人,被告ドリ
ームの千歳烏山店にあっては1万8000人にそれぞれ達していた(乙5〔3
頁〕,乙6〔3頁〕)。
   エ Aは,平成15年6月ころ,被告ピープルの取締役を退任したが(甲9
〔5頁〕),同人は,無断で退任させられたのであり,この行為は被告ピープルの
裏切り行為であって,被告ピープルがピープルグループを離脱するつもりであると
受け止めた(甲9〔6頁〕,乙1別紙①)。
   オ 「ご注意を!」と題する書面の送付
    (ア) 原告の実質的な経営者であるAは,被告らの取引先10社に対し
て,平成15年10月14日,下記の内容等を記載した被告会社作成名義の「ご注
意を!」と題する書面及び本件訴えに係る訴状と題する書面をファックスでそれぞ
れ送信した(争いのない事実(4)オ,乙1)。
  a被告ピープルの元社員が覚せい剤の売買及び中毒で逮捕され,有罪
が確定して服役した。
  b被告ピープルの代表取締役であるBは,①フィリピンパブに毎日の
ように通い,自分はゴルフ三昧で部下に働かせ,フランチャイズ料を支払わない,
②腹違いの弟であるAを被告ピープルの取締役から無断で解任した,③遺産が欲し
いため,父親が早く死ねばいい旨公言した,④Aに対し,「おまえとは,一生戦争
してやる」と述べた,⑤酒酔い運転で新車を全損させた上で,そのまま逃げ,会社
に500万円相当の損害を与えた。
  c被告ドリームの代表取締役であるCは,①3人の子供がいるにもか
かわらず,浮気し放題で,キャバクラ遊びに精を出し,経営を真剣にやっていな
い,②新車を酒酔い運転で全損させ,免許取消処分を受けている。
 d被告ピープル及び被告ドリームの店舗は,上記記載の恥ずかしい行
為をする人間が経営するものであって,「ピープル」の信用を失墜させる店舗であ
るから注意すべきである。
 (イ) (ア)の行為について,Aは,被告ピープルの代表取締役であるB及
び被告ドリームの代表取締役であるCに係る悪評が取引先に知れるところとなった
ため,同一のピープルグループの一員として黙っているわけにはいかなかったと述
べている(甲9〔7頁〕)。
  (2) 上記1のとおり,原告は,被告らに対し,少なくとも被告標章を使用する
ことを黙認していたことが認められる。他方で,上記2(1)認定の事実によれば,被
告らは,被告標章を使用して営業を継続し,平成15年1月ころには,被告らの店
舗の会員数も相当数に達するまでに信用を築き上げてきたことが認められる。
    そうすると,本件訴訟における争いは,結局のところ原告の実質的な経営
者と被告らの代表取締役との間における兄弟喧嘩に端を発するものであって,原告
が,その兄弟喧嘩を契機として,自ら使用を黙認していた被告標章の差止め等を突
如として求めることは,客観的に公正な競争秩序を維持するという商標法の目的に
反するものと認められる。
    したがって,原告による本件商標権に基づく請求は,権利濫用として許さ
れない。   
3 結論
よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも
理由がないから,これを棄却することとする。
   東京地方裁判所民事第47部
       裁判長裁判官   高   部   眞 規 子
          裁判官   東 海 林       保
          裁判官   中   島   基   至・
(別紙)
被告標章目録1被告標章目録2被告標章目録3被告標章目録4物品目録商標目録

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