弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人木村篤太郎、同小林蝶一、同信部高雄の上告趣意第一点につい
て。
 訴訟手続に関する法規が改正された場合に新法を如何なる時から如何なる事件に
適用するかは、経過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題であ
つて、法律に一任されているのである(昭和二三年(れ)第一五七七号同二四年五
月一八日当裁判所大法廷判決参照)。そして、訴訟法は訴訟手続に関する法規であ
つて犯罪行為に適用すべき実体法規ではないから、訴訟法上の行為たる上告の理由
についても、上告手続をなすべき時に着目して規定を設けるのも正当であつて、必
ずしも犯罪行為時の如何により区別を設けねばならぬ理由は全然ない。しかも、刑
訴応急措置法第一三条第二項は、上告に際し人種、信条、性別、社会的身分又は門
地の如何を問わず、何人に対しても等しく適用されるものであるから憲法第一四条
に違反するところはなく、又憲法第三二条にも違反しないことについては、当裁判
所大法廷がすでに判例として示すところである(昭和二三年(れ)第一二二一号同
二四年三月二三日判決)。さらに又、刑訴応急措置法附則第四項は、上告の理由に
ついて旧刑訴法によるか、右措置法によるかを弁論終結の時を標準として区別した
もので、同種の一群の事件は一団として法律上平等に取扱われており、これ亦、人
種、信条、性別、社会的身分又は門地により区別したものではないから、右附則第
四項も亦憲法第一四条に違反するものでないことも当裁判所の判例とするところで
ある(昭和二三年(れ)第一一三九号同二四年四月一六日当裁判所判決)。なお、
右措置法第一三条第二項が憲法第三七条にも違反しないことについても当裁判所大
法廷判決の示すところである(昭和二二年(れ)第二九〇号同二三年六月三〇日当
裁判所判決)。されば、これら当裁判所の判例と異なる見地に立つ論旨はいずれも
採用することができない。
 同第二点について。
 憲法第三七条第一項の「公平な裁判所の裁判」が偏頗や不公平のおそれのない組
織と構成をもつた裁判所による裁判を意味するものであつて、個々の事件につき、
その内容実質が具体的に公正妥当なる裁判を指すものではないことについては、当
裁判所大法廷判決の示すところである(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二
六日判決)。されば、原審の刑の量定が甚だしく不当であつて憲法第三七条第一項
の保障する公平な裁判所の裁判ではないとの論旨は理由がない。
 同第三点について。
 被告人Aの弁護人小林蝶一が原審の所論公判期日に出頭せず、被告人においても
同弁護人の弁論を拠棄しなかつたのに、原審が同弁護人の弁論を聴かないで結審し
たことは所論の通りである。しかし、小林弁護人に対しては右公判期日の通知があ
つたに拘らず同弁護人が出頭しなかつたことは記録上明らかである。このように、
適法な手続によつて召喚を受けながら公判期日に出頭しなかつた弁護人は自ら期日
を懈怠したものであつて、本件のように弁護人を要しない事件の審理については出
廷した弁護人に弁論をする機会を与えれば足りるのであり、不出廷の弁護人の弁論
を聴かないで弁論を終結しても不法に弁護権の行使を制限したものでないから論旨
は理由がない。
 同第四点について。
 旧刑訴法第三六〇条第一項によつて、有罪判決に示さなければならない「法令ノ
適用」というのは、認定された犯罪事実に対する実体法の適用を意味するのであつ
て、その適用された実体法が如何なる法律上の根拠によつて効力を有するかを示す
法令の適用までをも含むものではない。当裁判所大法廷においてもすでに「有罪判
決において、罪となるべき事実の認定に法令の適用を示すには、その事実に対し現
に効力を有する法規の適用を示せば足りるのであつて、その法規が現に効力を有す
る事由に関する法規にまで遡つてこれを示す必要はない」ことを判示している(昭
和二三年(れ)第一一二号同年七月一四日判決)。されば、原判決において刑法第
五五条の適用を明らかにした以上、所論法律附則第四項の適用を明示しなかつたと
しても違法ではないから、論旨は理由がない。
 被告人Bの弁護人林頼三郎、同大塚喜一郎、被告人Cの弁護人大塚喜一郎同設楽
敏男の上告趣意
 第一点について。
 論旨は、被告人Aの各弁護人の上告趣意第四点と同一であつて、その理由のない
ことは、前記第四点について説明した通りである。
 同第二点について。
 新刑訴法第四一一条は、日本国憲法に規定されているものを同条に再現して規定
したものではなく、新刑訴法の立案に際して始めて創定した新規定である。それ故
新刑訴法の制定される遥か以前に制定された刑訴応急措置法第一三条第二項に前記
新刑訴法第四一一条の規定が含まれていないことは言うまでもないことである。さ
れば、刑訴施行法第二条によつて旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用されて新刑訴
法の適用されない本件について、新刑訴法第四一一条が刑訴応急措置法第一三条第
二項に含まれているものとして、当裁判所の職権による原判決の破毀を促す論旨は
採用することができない。なお、刑訴応急措置法第一三条第二項が憲法第三二条に
違反するものでないことについては被告人Aの各弁護人の上告趣意第一点に対して
証明した通りである。
 同第三点について。
 論旨は、被告人Aの各弁護人の上告趣意第一点と同一であつて、その理由のない
ことは、前記第一点について説明した通りである。
 同第四点について。
 事実審たる裁判所が、被告人側の請求にかかる証人訊問をどの範囲において許容
するかの限度を決めることは、公判廷で行われた被告人の供述及び取調べられた書
証その他の物的証拠によつてすでに明らかにされた事件の内容を考慮して事件毎に
判断することを要する問題であるから、事実審の自由裁量に委ねられているのであ
る。されば、原審が所論の証人訊問の請求を却下したのは、その裁量権の範囲に属
するものと認むべきであつて、これを目して直ちに違法であると言うことはできな
い。そして、原審には所論のように審理不尽の違法があることも認められないから
論旨は理由がない。
 同第五点について。
 公判の調書に公開禁止の記載がなければ公判の公開されたことはおのずから調書
上明らかであるので、旧刑訴法第六〇条は単に「公開ヲ禁ジタルトキハ其ノ旨及理
由」を公判調書に記載すべきこととしたこと、審判を公開したことを特に公判調書
に明記しなければならないことは新憲法の条規にも規定されていないのであるから、
新憲法の施行後においても、特に公開したことを調書に明記しなくとも憲法の違反
とはならないことについては、すでに当裁判所大法廷が詳細にわたつて判示したと
ころである(昭和二二年(れ)第二一九号同二三年六月一四日当裁判所判決)。さ
れば、これと異なる見地に立つ論旨は理由がない。
 同第六点について。
 上告趣意書は、各上告人が上告の理由を明示してこれを提出すべきものである(
旧刑訴法第四二五条第一項)、ただ趣意書に上告の理由を具体的に掲げないで、す
でに提出されている相被告弁護人の論旨を援用することは差つかえないとしても、
いまだ提出されていない将来の論旨を採用することは上告の理由を明示するもので
はないから許されないものと言わなければならない。本論旨は、相被告人並びに相
弁護人提出の上告趣意書は上告人等の利益においてすべてこれを援用するというの
であるが、被告人Aの各弁護人の上告趣意書は、この趣意書より遅れて後日に提出
されたものであるから、この分の援用は許されない。この趣意書と同日に提出され
た被告人Dの弁護人伊東喜八の上告趣意の理由ないことは、同弁護人の上告趣意に
ついて説明する通りである。
 被告人Dの弁護人伊東喜八の上告趣意について。
 原審は、所論物件が塩酸ヂアセチルモルヒネであることを被告人等の原審公判廷
におけるその旨の供述によつて認めたのである。そして、被告人等のうちには薬品
に関する専門の智識を有する者もあるのであつて、これらの者が認めて争わなかつ
た供述によつてその事実を認定したのであるから、虚無の証拠による認定ではない。
又、原審には所論のように審理不尽と認むべき点もない。なお、量刑の不当を上告
の理由とすることは、刑訴応急措置法第一三条第二項によつて許されないのである
から、論旨末段の主張も採用することができない。
 よつて最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項旧刑訴法第四四六条に従い主文
の通り判決する。
 以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二四年八月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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