弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
       原判決を破棄する。
       本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人本城孝一,同大井相石の上告受理申立て理由について
 1 本件は,出資金1000万円で設立された協業組合で,水道施設工事業等を
営む上告人が,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」とい
う。)3条に違反する上告人の行為について,被上告人から法7条の2第1項に基
づき同項所定の売上額に100分の6を乗じて得た額に相当する額の課徴金193
4万円を国庫に納付することを命ずる審決(以下「本件審決」という。)を受けた
ため,上告人は同条2項(平成11年法律第146号による改正前のもの。以下同
じ。)1号の事業者に当たるから,本件審決のうち上記売上額に同項柱書き所定の
100分の3を乗じて得た額に相当する967万円を超えて課徴金の納付を命ずる
部分は同項に違反し,法82条2号に当たるとして,本件審決中同部分の取消しを
求める事件である。
 2 法は,7条の2第1項において,事業者が商品等の対価に係るか又は実質的
に商品等の供給量を制限することによりその対価に影響のある不当な取引制限等(
以下「カルテル」という。)をしたときは,公正取引委員会は,当該事業者に対し
,その実行期間における当該商品等の政令に定める方法により算定した売上額に1
00分の6(以下「基本算定率」という。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金
を国庫に納付することを命じなければならない(ただし,小売業及び卸売業につい
ては別の算定率による。)旨規定するとともに,同条2項において,課徴金納付命
令の対象となる事業者が,同項各号に定める資本の額若しくは出資の総額が一定額
以下の会社又は常時使用する従業員数が一定数以下の会社若しくは個人(以下,同
項各号に定める事業規模に関する定めを「小規模要件」という。)であって,それ
に対応する同項各号に定める業種に属する事業を主たる事業として営むものに当た
るときは,上記売上額に乗ずる割合を100分の6から100分の3(以下「軽減
算定率」という。)に軽減する旨規定している。以上は,平成3年法律第42号(
以下「平成3年改正法」という。)により改正ないし新設されたものである。
 原審の確定した事実関係等によれば,平成3年改正法による法7条の2の改正の
趣旨等は,次のとおりであった。(1) 平成3年改正法による法の改正は,カルテ
ルに対する抑止力を強化することなどを趣旨とし,そのための具体的方策の一つと
して,課徴金の算定における算定率を原則的に引き上げるとするものである。(2)
 引上げ後の算定率は,規模の大きい企業によってカルテルが行われた場合に国民
経済に与える影響が特に広く,かつ,重大であることや,これまで課徴金の対象と
なった違反事件の実態などを踏まえて,一定規模以上の企業の利益率を用いるのが
適当とされ,資本金1億円を超える企業(小売業及び卸売業を除く。)の売上高営
業利益率の平均値を基に,小売業及び卸売業を除く事業者について100分の6と
された。(3) 他方,規模の小さい企業がカルテルを実行した場合,その経済的利
得も相対的に小さくなる傾向があり,また,一般に企業の規模に応じて営業利益率
にかなりの幅があることを踏まえて,規模の小さい企業に対する課徴金の額の算定
について適切な措置を講ずることが妥当であるとされた。
 3 原審は,次のとおり判断して,協業組合である上告人は,軽減算定率の適用
を受け得る法7条の2第2項1号にいう「会社」又は「個人」のいずれにも当たら
ないから,本件審決は適法であるとした。
 (1) 法7条の2第2項各号は,中小企業関係法令において一般的に用いられて
いる中小企業者の範囲を定める規定に依拠して定められたものであり,これを適用
する事業者を「会社」と「個人」に限定したものと解される。
 (2) 協業組合は,地域独占体を構成し,又は大規模事業者が加入しているもの
であっても,組合固有の出資の総額及び常時使用する従業員数が小規模要件を満た
す場合があるが,その組織実態としては,事業規模等において大規模事業者として
の実質を備え,それに匹敵する経済的活動を行うことが可能である。このような協
業組合の特質を考慮すると,協業組合については,組合固有の出資の総額及び従業
員数の基準のみによってその事業規模等を判定することは必ずしも適当ではなく,
課徴金の算定率を改正するに当たり,軽減算定率を適用すべき中小企業者の範囲か
ら除外し,基本算定率を適用することに合理性がある。
 (3) 法7条の2第2項は,同条1項の例外規定であるから厳格に解釈する必要
がある。「会社」とは,一般に,商法会社編の規定又は有限会社法によって設立さ
れるものをいい,法においてこれと異なる解釈をすべきものとする規定は見いだせ
ない。むしろ,法2条1項,7条の2第5項,10条,14条等の規定に照らすと
,法は,「会社」は「事業者」の一部を指すものとし,両者を同義に解釈する余地
を除いている。したがって,法7条の2第2項各号にいう「会社」には,協業組合
が含まれると解することはできない。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 前記事実関係等にかんがみれば,法7条の2第2項の趣旨は,事業規模の小さい
企業に対して軽減算定率を適用することにあるところ,前記同条の改正の経緯等に
よれば,同項の規定の適用対象となり得る「会社」又は「個人」と事業規模におい
てこれらと同等というべき事業者との間で軽減算定率の適用上取扱いを異にしなけ
ればならないとする理由は見いだすことができず,同項の適用対象が同項の規定す
る「会社」又は「個人」に厳格に限定されていると解するのは相当でないというべ
きである。
 原審の指摘するとおり,協業組合は,その固有の出資の総額及び従業員数をもっ
て事業の規模を判断するのは適当とはいえず,単純に「会社」又は「個人」と同列
に論ずることはできない。しかし,上告人の主張によれば,上告人の組合員は個人
事業者であるところ,協業組合が,各組合員が営んでいた事業を基盤としているも
のであることからすれば,【要旨】個人事業者を組合員とする協業組合にあっては
,当該組合固有のものに各組合員固有のものを合わせた常時使用する従業員の総数
が同項の規定する「会社」及び「個人」に関する従業員数の要件に該当するときは
,同項を類推して,当該組合には軽減算定率が適用されるものと解するのが相当で
ある。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反があり,上告理由について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。論旨
は,上記の趣旨をいう限度で理由がある。そして,上告人及びその組合員の常時使
用する従業員の総数は,原審の確定するところではないから,更に審理を尽くさせ
るため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)

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