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○ 主文
一 原判決主文第二項を次のとおり変更する。
1 控訴人A、同Bの、被控訴人が昭和五七年三月二三日付で訴外C、同Dに対し
てなした原判決別表四記載の換地処分の取消しを求める訴えを却下する。
2 被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人A、同Eに対してなした原判決
別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取り消す。
3 控訴人らのその余の主位的請求並びに控訴人Aのその余の予備的請求及び控訴
人Bの予備的請求をいずれも棄却する。
二 その余の本件控訴をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、第一、第二審とも控訴人らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求める裁判
一 控訴人ら
1 原判決を取り消す。
2 主位的請求
(一) 控訴人A、同B
(1) 被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人A、同Bに対してなした原
判決別紙物件目録三ないし五記載の土地についての各換地処分を取り消す。
(2) 被控訴人が同日付けでした原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設
定)のうち原判決別紙図面三のイ、ロ、ハ、、イの各点を順次直線で結んだ部分の
換地処分(保留地の設定)及び原判決別表三2記載の換地処分(保留地の設定)を
取り消す。
(3) 被控訴人が同日付けで訴外C、同D(以下「訴外C,D両名」という。)
に対してなした原判決別表四記載の換地処分を取り消す。
(二) 控訴人A、同E
被控訴人が同日付けで控訴人A、同Eに対してなした原判決別紙物件目録一及び二
記載の各土地についての各換地処分を取り消す。
2 予備的請求
(一) 控訴人A、控訴人B
被控訴人が昭和五七年三月二三日付けで控訴人A、同Bに対してなした原判決別表
二記載の換地処分のうち清算金処分の部分を取り消す。
(二) 控訴人A、控訴人E
被控訴人が同日付けで控訴人A、同Eに対してなした原判決別表一記載の換地処分
のうち清算金処分の部分を取り消す。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 控訴人らの請求原因
1 控訴人Aと同Eとは原判決別紙物件目録一及び二記載の土地(以下「従前地<
地名略>、<地名略>」という。)を、控訴人Aと同Bとは同目録三ないし五記載
の土地(以下「従前地<地名略>、<地名略>、<地名略>」という。)を所有し
ている。
その位置、形状のおおよそは原判決別紙図面一のとおりである。
2 被控訴人は、昭和五七年三月二三日付けで次の換地処分をした。
(一) 控訴人A、同Eに対し原判決別表一の換地処分
(二) 控訴人A、同Bに対し同別表二の換地処分
(三) 被控訴人に対し同別表三の換地処分(保留地の設定)
(四) 訴外C,D両名に対し、同別表四の換地処分
これらの換地の位置、形状のおおよそは同別紙図面二のとおりである。
3 原判決別表一、二記載の換地処分は、以下の点で違法であり、取り消されるべ
きである。
(一) 土地区画整理法(以下「法」という。)八九条の照応原則違反について
(1) 従前地<地名略>に対し君津市<地名略>(以下「換地<地名略>」とい
う。)を換地とする換地処分について
(1) 原判決別紙図面五の<地名略>街区(道路で囲まれた一団の土地・以下
「<地名略>街区」という。)は、各人の所有でありながら極めて広すぎるため、
通行、利用の不自由を来すものであり、かかる設計は、そもそも違法である。この
ように広すぎる街区を設けることは、控訴人らに私道を設ける負担を強いるほか、
将来における盲地・袋地発生の危険、防災上の危険等の様々のマイナスを社会に与
えるのであって、かかる換地の違法性は明らかである。
(2) 従前地<地名略>は間口が広かったが、換地<地名略>は狭くなった。こ
の点については、従前地<地名略>と従前地<地名略>とを一体としてとらえる必
要があり、現に控訴人らは、これを一体として使用して来た。そうすると、右一体
としてとらえた間口は三二・六六メートルであるに対し、換地<地名略>のそれは
二三・六六メートルであるから、照応していないことが明らかである。
(3) 換地を割り込むには、道路に直角の線を背割りまで引いて換地の筆界とす
ることになっている(被控訴人の換地細則(以下「換地細則」という。)一六条二
項)が、換地<地名略>はそのようになっておらず、違法である。
東側の背割線はカギ型(一部突き出る形)となっており、不整形である。
(4) 控訴人らの従前地<地名略>のうち二四三平方メートルは、埋め立て済み
の宅地であるにもかかわらず、被控訴人は、これを認めず、田として評価し、整理
前の画地評価を不当に低下させて減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。
(5) 従前地<地名略>、従前地<地名略>の実質地先負担地積は八三・〇一平
方メートルであるから、別表1記載のとおり、実質公共減歩地積は、理論的な計算
によって五九・七九平方メートルの増換地とならねばならない。計算式は次のとお
りである。
地先負担基準地積=台帳地積+加算地積
権利地積=地先負担基準地積-地先負担地積
減歩地積=台帳地積-権利地積
また、換地一番二〇及び君津市<地名略>(以下「換地<地名略>」という。)
は、既成宅地であり、工事は何ら行われておらず、工事費用を負担する保留地減歩
の面から見ても宅地の利用増進は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である。
結局、換地<地名略>及び換地<地名略>においては、実質減歩地積二〇三・八六
平方メートルに増換地五九・七九平方メートルを加えた二六三・六五平方メートル
が地積において照応していない。
(6) 従前地<地名略>上には、五軒の建物があったのに、換地<地名略>には
そのうち一軒半しか乗っていない。
被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張する
が、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことはない。被控訴人は、本
件建物移転に関して法七七条の照会通知をしていないのであるから、移転の権限は
生じていないのであり、移転の権限を持たない被控訴人がその建物移転の申入れを
すること自体不可能である。そこで、控訴人らは、乙第五号証の建物移転計画は法
七七条の移転とは全く無関係の移転であると理解し、乙第七号証においてそのよう
な建物移転には応じられない旨述べたにすぎない。控訴人らは、右移転計画の根拠
について被控訴人に再三質問したが、その回答は、単に「高度に土地利用のできる
よう組合で考えております。」というだけで、法七七条の規定によって移転を行う
との回答はついになかった。
(2) 従前地<地名略>に対し換地<地名略>を換地とする換地処分について
従前地<地名略>は間口の長さの方が奥行の長さより長かった(なお、従前地<地
名略>と従前地<地名略>を一体としてとらえる必要があることについては、前記
(1)、(2)のとおりである。)。
換地<地名略>は間口を極めて小さくし、奥行を間口の十何倍の長さにしている。
(3) 従前地<地名略>に対し君津市<地名略>(以下「換地<地名略>」とい
う。)を換地とする換地処分について
(1) 従前地<地名略>は東側及び東北側、西側が道路に面し、出入りがしやす
い土地であった。そして、その間口は二〇メートル(少なくとも一七・二五メート
ル)あるのに、換地<地名略>の方は一五・五メートルに減少している。
(2) 従前地<地名略>に建物が六軒あった(原判決別紙図面四)が、このうち
三軒が換地<地名略>に乗っているのみで、あと三軒が換地に乗っていない。被控
訴人の建物の移転計画(乙第五号証)によれば、各戸用の進入路は建築基準法の定
める制限ぎりぎりの四メートルであるのに対し、従前地においては、実質上それ以
上の広さの私道が進入路として設けられていた上、右計画に従うと、出入口の前面
が隣地との境界線に接する建物が出てくるため、これらの建物は換地<地名略>の
保留地を通らないと出入りできなくなる。
被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張する
が、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことのないことについては、
前記(1)、(6)のとおりである。
(4) 従前地<地名略>、<地名略>に対し君津市<地名略>(以下「換地<地
名略>」という。)を換地とする換地処分について
(1) 従前地<地名略>、<地名略>は更地で控訴八A、同Bの所有である。
換地<地名略>には控訴人A所有の建物が建っている。
これは全く利用状況を無視した換地処分である。
このため、控訴人らは、建物の建っている二か所の土地と更地一か所を持っていた
が、本件の土地区画整理のため、将来の価値が最も高い更地一か所(建物を一〇軒
建てようとしていた所)を無償収用されると同じこととなってしまったのである。
被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張する
が、控訴人らが法七七条に基づく建物移転を拒絶したことのないことについては、
前記(1)、(6)のとおりである。
(2) 換地の画地は、道路に直角の線を背割線まで引いてするものである(換地
細則一六条二項)のに、本件換地はそのように設計していないので違法である。
(3) 従前地<地名略>、<地名略>の実質地先負担地積は、一五二・八九平方
メートルであるから、実質公共減歩地積は、理論的な計算によって三〇・五六平方
メートルの増換地とならなければならない。
計算式は、前記3(一)(1)(5)に記載したとおりである。
また、従前地<地名略>、<地名略>は、既成宅地であり、工事は何ら行われてお
らず、工事費用を負担する保留地減歩の面から見ても、宅地の利用増進は皆無であ
るから、保留地減歩は一切不要である。結局、換地<地名略>においては、実質減
歩地積二七八・八九平方メートルに増換地地積三〇・五六平方メートルを加えた三
〇九・四五平方メートルが地積において照応していない。
(5) 控訴人らに対する前記各換地処分について
(1) 本件従前地の位置は、原判決別紙図面一のとおりであり、これを簡略化す
ると、別紙図面一のとおりであって、県道の西側に控訴人A・同B所有の一〇九九
平方メートルもの更地Aが、東側に控訴人A・同E所有の九九三・五二平方メート
ルの建付地Bと、控訴人A・同B所有の七三三・八七平方メートルの建付地Cが存
在していた。
ところが、本件換地処分により、換地は全部県道より東側になり、更地は消滅し、
二二〇七・五七平方メートルという大面積の土地が中央部に道路もなく出現したも
のである。これは、明らかに、利用状況、位置、地積において照応しないというべ
きである。
(2) 被控訴人は、次のとおり合理的理由もないのに控訴人らに対し故意に不利
益な処分をしたが、これは平等原則に違反している。
イ 被控訴人は、次のとおり換地細則に違反し、従前地の評価を不当に低めて減歩
を増大させ、控訴人らに不利益を与えた。
(ア) 従前地<地名略>は長大であり、換地細則二九条により、正背地として別
紙図面二のとおりA部分とB部分に区分し、A部分については路線価八六〇により
評価計算し、B部分については従前地<地名略>と接続した同一所有者のものであ
るので、換地細則二三条ただし書に基づいて換地細則二八条の正面路線価(九六
〇)の袋地計算するのが正当である。
しかるに、被控訴人は、これを誤り、B部分について路線価の低い街路番号18-
Bの路線価(七三〇)を採用して、控訴人らに多大な不利益を与えている(なお、
被控訴人は、後記のとおり、従前地<地名略>の土地の一部を私道として利用し県
道に接続していたとして評価計算しているが、私道として利用した事実はないのみ
ならず、従前地<地名略>のB部分は、換地細則二九条、二三条ただし書により、
正面道路に沿接する従前地七四一番一と合筆計算するものであるから、私道に沿接
する宅地の評価を規定した換地細則三一条を適用することは誤りである上、そもそ
も、従前地七四四番一は、道路に沿接する普通宅地であって、私道を設けなければ
ならない無道路地ではないから、換地細則三一条の対象外の宅地であるので、被控
訴人の右評価計算は誤っている。)。
(イ) 控訴人ら以外の者に対する次の整理前評価は、故意に控訴人らを不公平に
取り扱うものであり、違法である。
(ア) Fは従前地(君津市<地名略>)を所有しているが、この従前地は換地細
則二四条により奥行修正すべきなのに、これをしていない。
ところが、控訴人らの従前地<地名略>及び<地名略>、<地名略>については奥
行修正している。
(イ) G所有の従前地(君津市<地名略>)及びH所有の従前地(<地名略>)
は、換地細則二六条により三角地修正をすべきなのに、これをしていない。
(ウ) 右G所有の従前地(<地名略>、<地名略>)、右H所有の右従前地、右
F所有の従前地(<地名略>、<地名略>)、Iの従前地(<地名略>、以下「従
前地<地名略>」という。)、Jの従前地(<地名略>、<地名略>)、Kの従前
地(<地名略>)及びLの従前地(<地名略>)は、それぞれ、換地細則三四条に
より高低差修正をすべきなのに、これをしていない。
(ウ) 従前地<地名略>の画地評価の不正について
従前地<地名略>のうち二四三平方メートルは埋め立て整地済みの宅地であるにも
かかわらず、被控訴人は、これを田として評価し、整理前の画地評価を不当に低下
させ、減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。
(エ) 従前地<地名略>の画地評価の不正について
従前地<地名略>の二〇平方メートルについても埋め立て整地済みの宅地であるに
もかかわらず、被控訴人は、これを田として評価し、整理前の画地評価を不当に低
下させ、減歩の増大を図り、控訴人らに損害を与えた。
被控訴人は、後記のとおり、控訴人らに土地の譲与を申入れているが、その土地は
換地<地名略>の一部であるから、従前地<地名略>の換地<地名略>の面積増加
訂正とは全く関係がない問題であり、位置、利用状況等からみても、照応原則に違
反するものというべきである。したがって、右土地の譲与の申入れは、右土地評価
の違法を治癒するものではない。
ロ 被控訴人は、暫定換地について次のとおり換地細則に違反している。
(ア) 従前地<地名略>は長大であり、換地細則九条により暫定換地の位置は、
別紙図面三のとおりA部分はAの位置に、B部分はBの位置に、いわゆる原位置換
地しなければならない。
しかるに、被控訴人は、換地細則九条から一五条までの暫定換地を誤り、A部分
(路線価一六〇〇)及びB部分(路線価二〇七〇)をB部分より評価の低いA部分
の位置に一括暫定換地して、権利評価指数を算出したので、減歩率の負担が増大
し、換地地積は不当に減少した。
(イ) 暫定換地は換地細則九条により原位置で行うものであるから、被控訴人
は、従前地<地名略>及び<地名略>について、原位置の角地(別紙図面三の赤線
で囲まれた部分、路線価二一〇〇と二〇七〇)に暫定換地すべきなのに、そうしな
いで、原位置より評価の低い同図面の黒点線で囲まれた部分(路線価二〇七〇と二
〇五〇)に暫定換地し、権利評価指数を算出したので、控訴人らの減歩率が増大し
た。
(なお、被控訴人は、後記のとおり、控訴人らが主張する原位置で暫定換地を組ん
だ場合には、かえって配当地積が減少すると主張するが、これは、被控訴人が暫定
換地率の数値を誤ったことによるものであり、正しく計算すれば、配当地積は一
四・〇六六平方メートルの増加となる(正面道路の適正奥行は二四メートルである
から、適用すべき暫定換地率は道路幅員一四メートル、奥行二四メートルの〇・八
二〇であるのに、被控訴人はこれを奥行二〇メートルの〇・七九一としている。ま
た、被控訴人は、前記暫定換地計算の際には奥行を二二メートルとして計算してい
るのであるから、控訴人が主張する原位置で暫定換地を組む場合にも奥行を二二メ
ートルとして計算すべきであり、そうすれば、配当地積は四・三平方メートル増加
するのである。))。
(ウ) 原判決別紙物件目録六、七記載の土地(以下「従前地<地名略>、<地名
略>」という。)は訴外C,D両名の所有であるが、被控訴人は、これを原位置
(別紙図面四の赤線で囲まれた部分、路線価一五四〇と二〇七〇)に暫定換地すべ
きなのに、これより評価の高い角地(同図面の赤斜線の部分、路線価二一〇〇と二
〇七〇)に暫定換地して権利評価指数を算出したため、減歩の負担が減少してい
る。かかる行為は、換地細則九条、一〇条及び四条二項に違反し、控訴人らに対し
著しい不利益な取扱いをするものであり、違法である(なお、被控訴人は、後記の
とおり、控訴人らの主張する位置で暫定換地を組んだ場合、配当地積が二三・六五
平方メートル増加すると主張するが、控訴人はその計算に当たり奥行を二〇メート
ルと仮定しているところ、被控訴人は、前記暫定換地計算の際には奥行を一五メー
トルとして計算しているのであるから、右場合にも一五メートルで計算すべきであ
る。奥行一五メートルで計算した場合、配当地積は一〇・八九平方メートル減少す
るし、また、これを二〇メートルで計算しても、配当地積はわずかに二・〇七平方
メートル増えるにすぎない。)。
ハ 被控訴人は、整理後の画地評価を誤り、次のとおり他の地権者の減歩を不当に
軽減しているのに対し、控訴人らに不利益な処分をしている。
(ア) Iは、従前地<地名略>を所有し、整理後は君津市<地名略>の土地(以
下「換地<地名略>」という。)に換地され、Mは、従前地(君津市<地名略>)
を所有し、整理後は君津市<地名略>の土地(以下「換地<地名略>」という。)
に換地されたが、被控訴人は、右Iの換地<地名略>について、正背路線地である
にかかわらず、画地全部を正面路線価で計算せず、画地を二等分し、正面路線価二
一〇〇及び背面路線価一五九〇により計算している(なお、被控訴人は、後記のと
おり、控訴人らの主張するような方法により計算すれば、配当地積が七・八五平方
メートル増加すると主張するが、被控訴人は、右計算に当たり、従前地<地名略>
の奥行を三〇メートルと仮定しているところ、被控訴人は、前記換地計算の際には
右奥行を一五メートルとして計算しているのであるから、右計算の際にも奥行を一
五メートルとして計算すべきである。そうすれば、配当地積は三二・七三平方メー
トル減少する。また、被控訴人は、従前地<地名略>、<地名略>の奥行を二〇メ
ートルと仮定して計算しているので、これらの従前地と隣接する従前地<地名略>
の奥行も二〇メートルで計算すべきであり、そうすれば、配当地積は八・五五平方
メートル減少する。)。
また、右Mの換地<地名略>についても同様に画地全部を正面路線価で計算せず、
正面路線価二一一〇とこれより低い背面路線価一六〇〇に分けて計算している。こ
のため、右I、右Mのそれぞれの整理後の平方メートル当たりの画地評価指数はそ
れぞれ一八五〇、一八七六と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。
(イ) これに対し控訴人らの換地一番二〇は、正面路線価二〇七〇、背面路線、
側面路線ともになく、奥行は、適正奥行二四メートルを超える三三メートルで、か
つ不整形であるにもかかわらず、整理後の平方メートル当たりの画地評価指数は、
右I、右Mを上回る一九六四である。
(ウ) Jは、従前地(君津市<地名略>、<地名略>、以下、それぞれ「従前地
<地名略>」、「従前地<地名略>」という。)を所有し、整理後は従前地<地名
略>については君津市<地名略>の土地(以下「換地<地名略>」という。)に、
従前地<地名略>については同市<地名略>(以下「換地<地名略>」という。)
にそれぞれ換地されたが、被控訴人は、換地<地名略>について、換地細則二三条
一項ただし書によって換地<地名略>と合筆計算し正面路線価二〇七〇で評価しな
ければならないのに、側面路線価一五九〇で評価計算しているため、平方メートル
当たりの画地評価指数が一六二〇と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。
(エ) Kは、従前地(君津市<地名略>(以下「従前地<地名略>」という。)
等)を所有し、整理後は君津市<地名略>の土地(以下「換地<地名略>」とい
う。)、<地名略>の土地(以下「換地<地名略>」という。)に換地されたが、
被控訴人は、換地<地名略>について、換地細則二三条一項ただし書によって換地
<地名略>と合筆計算し路線価二〇七〇で評価しなければならないのに、側面路線
価一五九〇で評価計算しているため、平方メートル当たりの画地評価指数は一六一
七と違法に低く、減歩が不当に軽減されている。
(オ) 控訴人らの従前地<地名略>は鉄道への接近を理由にして評価を低く修正
しているが、これに対する換地<地名略>はいつそう鉄道に近づいたのであるか
ら、被控訴人は、当然評価を低く修正しなければならないのに、これをしていな
い。
(3) 控訴人らの従前地<地名略>、<地名略>及び従前地<地名略>、<地名
略>は、既成宅地であって、何ら工事は行われていないのであるから、工事費用を
負担するいわれはなく保留地減歩をする必要がないにもかかわらず、その保留地減
歩率は、被控訴人平均が一四・四六四パーセントであるに対し、従前地<地名略
>、<地名略>の合計が二〇・四九パーセント、従前地<地名略>、<地名略>の
合計が一八・五七パーセントと過重であり、違法である。
(二) 工事未了の違法について
(1) 換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事
が完了した後においてすることができる(法一〇三条二項本文)。
ここで工事とは、公共施設の新設又は変更の工事、宅地の区画形質変更の工事、法
七六条違反工作物の移転除却工事、法七七条の建築物の移転除却工事のことであ
る。
ただし、定款に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部につ
いて工事が完了する以前においても換地処分をすることができる(法一〇三条二項
ただし書)。
被控訴人の定款六九条は「この組合の換地処分は、法七七条の規定による建築物等
の移転又は除却が完了した場合においては、その他の工事が完了しない以前におい
ても、法一〇三条二項の規定により行うことができる」としている。
(2) 右の法七七条の規定による建築物の移転又は除却とは、本件に即していえ
ば、従前地<地名略>に存した建築物を換地<地名略>に、従前地<地名略>に存
した建築物を換地<地名略>に移転することである。
しかるに、被控訴人は、建築物を移転又は除却すべき義務を履行せず、法七七条二
項の通知を怠り、自ら建物移転工事の未了を招いたので、原判決別表一、二記載の
換地処分は、法一〇三条二項、定款六九条に違反した違法なものである。
被控訴人は、控訴人らに建物移転を拒絶されたので移転ができなかった旨主張する
が、被控訴人は法七七条の照会通知を全くしていないのであるから、被控訴人に移
転通知の権限が生じるはずなく、その被控訴人が建物移転の申入れを行うことは不
可能であり、したがって、控訴人らがこれを拒絶することもあり得ず、また、その
事実もない。
(三) 土地評価の違法について
土地の評価は換地設計及び換地清算のために行われるが、被控訴人は、以下のとお
り控訴人らの宅地の評価を誤ったので、換地設計を誤り、控訴人らに違法な換地を
指定した。
(1) 整理前画地評価の誤りについて
(1) 従前地七四四番一の画地評価の誤り
前記(一)、(5)、(2)、イ、(ア)のとおりである。
(2) 奥行修正の適用違反
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(ア)のとおりである。
(3) 三角地修正の適用違反
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(イ)のとおりである。
(4) 高低差修正の適用違反
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(ウ)のとおりである。
(5) 従前地<地名略>の画地評価の不正
前記(一)、(5)、(2)、イ、(ウ)のとおりである。
(6) 従前地<地名略>の画地評価の誤り
従前地<地名略>は、整理前において二方公道に接していたのに、画地評価計算に
おいては、これを盲地(無道路地)としているため、評価指数が違法に低くされて
いる。
(7) 従前地<地名略>の画地評価の誤り
前記(一)、(5)、(2)、イ、、(エ)のとおりである。
(2) 暫定換地の誤り
(1) 従前地<地名略>の暫定換地
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(ア)のとおりである。
(2) 従前地<地名略>、<地名略>の暫定換地
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(イ)のとおりである。
(3) 訴外C,D両名の従前地<地名略>、<地名略>の暫定換地
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(ウ)のとおりである。
(3) 整理後の画地評価の誤り
(1) Iの換地<地名略>及びMの換地<地名略>
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(ア)、(イ)のとおりである。
(2) Jの換地<地名略>及びKの換地<地名略>
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(ウ)及び(エ)のとおりである。
(3) 鉄道修正の適用違反
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(オ)のとおりである。
なお、仮に換地<地名略>が接する区画整理道路についてマイナス○・一の鉄道接
近の減点をしているとしても、この道路に面しているものは換地<地名略>のみで
あるから、結局、換地<地名略>、換地<地名略>、換地<地名略>の三つの換地
のうち、鉄道接近による減額がされているのは、換地<地名略>のみということに
なる(換地<地名略>はいつそう鉄道に接近したにもかかわらずである。)が、換
地<地名略>に対応する従前地は従前地<地名略>の東側半分のみであるのに、従
前地では、従前地<地名略>と従前地<地名略>の双方の地積全部について右減額
がされているのであり、しかも、従前地<地名略>と換地<地名略>の減価の割合
をみると、換地<地名略>の減価割合は、従前地<地名略>のそれに比して不当に
低いといわざるを得ない。
(4) 路線価計算の誤り
換地<地名略>、換地<地名略>、換地<地名略>の西側の街路六-Eは整理前に
比較して二メートルの歩道が付けられたのみで、交通量の目安となる車道幅員の変
化はないのであるから、道路の交通上の性格、系統性、連続性はほとんど不変であ
り、土地の価値に及ぼす影響は極小である。しかるに、被控訴人は、その街路係数
を一・五から四・一に上げたが、これは到底許されない。
(5) 被控訴人は、右(1)ないし(4)のとおり控訴人らの宅地評価を誤った
ので、換地清算金を低額とした。
4 原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設定)のうち原判決別紙図面三の
イ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換地処分(保留地の設定)及
び同別表三2記載の換地処分(保留地の設定)は、以下の点で違法であり、かつ、
控訴人A、同Bの原判決別紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、
取り消されるべきである。
(一) 原判決別表三1記載の保留地の設定について
(1) 法違反ないし必要性のないこと
(1) 広大な保留地を設けるものであって、違法である。
(2) 組合施行の保留地の設定は、土地区画整理事業の施行の費用に充てるた
め、又は定款で定める目的のためにすることができる(法九六条一項)。
ところが、費用に充てるためには、右のような広大な保留地を定める必要はなく、
また、この保留地について、定款では定めていない。
(2) 同別表三1記載の保留地の設定についての手続違反
(1) 同別表三1記載の君津市<地名略>宅地九六六八・八〇平方メートル(保
留地)は、当初の事業計画には予定されていなかったのに、右保留地が設定され
た。
(2) 右保留地の設定に当たって、法定の事業計画の変更手続(法三九条)及び
換地計画の変更手続がなされなければならない。右変更手続には、総代会の議決を
経なければならない(法三六条三項、三一条二号、七号)のに、かかる事実はな
い。
(二) 同別表三2記載の保留地の設定について
この保留地は付け保留地と称されるべきもので、単独では何の利用価値のない間口
最狭小、奥行超長大である。
これは、控訴人A、同Bの従前地<地名略>、その換地<地名略>を削るためにの
み設定されたもので違法である。
5 訴外C,D両名に対する換地処分について
控訴人の訴外C,D両名に対する原判決別表四記載の換地処分は、旧国鉄内房線の
南側にあった従前地<地名略>と同線の北にあった従前地<地名略>とを集合換地
した上、飛換地としたものであるが、これは照応の原則に違反し、この換地処分の
違法が同別表一、二記載の違法な換地処分を招来させ、控訴人A、同Bの原判決別
紙物件目録記載の各土地の所有権を侵害しているので、取り消されるべきである。
よって、控訴人A、同Bは、主位的に従前地<地名略>、<地名略>、<地名略>
の各土地についての各換地処分、原判決別表三1記載の換地処分(保留地の設定)
のうち原判決別紙図面三のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ部分の換
地処分(保留地の設定)及び同別表三2記載の換地処分(保留地の設定)並びに従
前地<地名略>、<地名略>の各土地についての各換地処分の各取消しを、予備的
に同別表二記載の各換地処分のうち清算金処分の部分の取消しをそれぞれ求め、控
訴人A、同Eは、主位的に従前地<地名略>、同<地名略>の各土地についての各
換地処分の取消しを、予備的に同別表一記載の各換地処分のうち清算金処分の部分
の取消しをそれぞれ求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1及び2の事実は、認める。
2 同3ないし5は、いずれも争う。
三 本案前の主張
1 被控訴人の本案前の主張
(一) 主位的請求の趣旨(一)(2)の換地処分(保留地の設定)の取消しの訴
えについて
(1) 控訴人A、同Bは、土地区画整理法(以下「法」という。)九六条の規定
による保留地の設定行為(換地処分)が抗告訴訟の対象となる行政処分であるとし
て、原判決別表三1記載の保留地の設定のうち、控訴人A、同Bの従前の土地部分
及び同2記載の保留地の設定について、その取消しを訴求している。
(2) しかし、保留地の設定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分ということ
はできない。すなわち、抗告訴訟の対象となる行政処分というためには、行政庁の
公権力の行使により直接国民の権利義務に変動を生ぜしめるようなものでなければ
ならないところ、被控訴人が法所定の手続により換地計画において保留地を定め、
千葉県知事の認可を受けて、法一〇四条九項の規定(ただし、昭和六三年法律第六
三号による改正前のもの、以下同じ。)により換地処分の公告の日である昭和五七
年六月二五日の翌日保留地の所有権を取得したとしても、この保留地の設定自体に
より、直接、控訴人A、同Bが共有していた従前地の所有権が侵害されたというこ
とはできない。仮に行政処分性があるとしても、控訴人A、同Bが従前地の所有権
を失ったのは次項のとおり換地処分によるものであるから、保留地の設定の取消し
を求める利益を有しない。したがって、これらの保留地の設定の取消しを求める訴
えは不適法である。
(3) 原判決別表三1記載の保留地の設定について
控訴人A、同Bが従前地<地名略>、<地名略>の土地の所有権を失ったのは、被
控訴人が換地計画において控訴人A、同Bが共有する右従前地に対して原判決別表
三1記載の保留地を設定したことによるものではなく、被控訴人が右従前地に対応
する換地処分を行ったことによるものである。
このことは、仮に右保留地の設定が取り消されたとしても、控訴人A、同Bに対す
る換地処分が取り消されない限り、控訴人A、同Bが右従前地の所有権を回復する
ことがないことに照らして明らかである。
そして、控訴人A、同Bは、本訴において、右従前地に対応する換地処分の取消し
を訴求しており、当該換地処分につき取消判決が確定した場合には、控訴人A、同
Bは、従前地<地名略>、<地名略>の土地所有権を回復することができるし、ま
た、被控訴人は、この取消判決に拘束される(行政事件訴訟法三二条、三三条)の
で、右従前地になされた保留地の設定を取り消した上、改めて、控訴人A、同Bの
従前地に対応する換地処分をしなければならないからである。
したがって、控訴人A、同Bが保留地の設定行為の取消しを併せて求めておかなけ
れば、従前地の所有権を回復することが不能になるということはないものと考えら
れる。
よって、右保留地の設定の取消訴訟は不適法である。
(4) 原判決別表三2記載の保留地の設定について
保留地の設定行為が抗告訴訟の対象になる行政処分であるとしても、控訴人A、同
Bは、原判決別表三2記載の保留地の従前地の所有者ではないので、この保留地の
設定により何らの権利、利益を害されていないから、当該保留地の設定の取消しを
訴求する利益(原告適格)を有しない。
(二) 主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外C,D両名に対する換地処分取消し
の訴えについて
控訴人A、同Bは、被控訴人が控訴人A、同Bの従前地を訴外C,D両名に換地処
分したことにより、従前地の所有権を侵害されたので、当該換地処分の取消しを訴
求する利益があると主張している。しかし、既に述べたとおり、控訴人A、同Bが
従前地の所有権を失ったのは、被控訴人が控訴人A、同Bの従前地に対応する換地
処分を行ったことによるものであり、訴外C,D両名に対する換地処分に基づくも
のではない。
仮に訴外C,D両名に対する換地処分が取り消されたとしても、控訴人A、同Bの
換地処分が取り消されない限り、控訴八A、同Bが従前地の所有権を回復するとい
うことはあり得ない。よって、控訴人A、同Bは訴外C,D両名に対する換地処分
の取消しを訴求する利益を欠くので、右訴えも不適法である。
2 被控訴人の本案前の主張に対する控訴人らの反論
(一) 保留地の設定について
(1) 保留地の設定は、従前地が全く存在しないのに、この処分により新たに土
地が被控訴人のために創設されるものであるから、最も典型的な行政処分といえ
る。抗告訴訟の対象となる処分性は十分である。なお、保留地の設定は、保留地を
設定された従前地の所有者からその所有権を奪うものであるから、保留地の設定の
通知がなくても行政処分性は失われないというべきであり、換地処分の公告の日を
もって行政処分が行われたと解すべきである。
(2) 原判決別表三12の保留地は、控訴人A、同Bの従前地の所在地であり、
控訴人A、同Bに対する換地処分が取り消されれば、控訴人A、同Bに換地として
交付されるべき土地である。
控訴人A、同Bに対する換地処分は右保留地の所在地である控訴人A、同Bの従前
地を奪うことにある。換言すれば、控訴人A、同Bに対する原判決別表二記載の換
地処分と同別表三1記載の保留地の設定とは表裏の関係にある。
そうすると、控訴人A、同Bに対する換地処分の取消しと保留地の設定の取消しと
を同時に求めなければ、控訴人らは、本件取消訴訟の目的を達し得ないのである。
(3) 被控訴人は、その結論の理由として「取消判決の効力は第三者にも及ぶ
し、また、被控訴人はこの取消判決に拘束される」とする。被控訴人が取消判決に
拘束されることは認めるが、取消判決がなされるころには、保留地を譲り受けた第
三者が建物(それも高層に近い)を建て終わっていよう。その場合にその第三者が
控訴人A、同Bに対する換地処分の取消判決の効力を受けるとは考えられないし、
被控訴人が現実に保留地の設定及びその譲渡処分を取り消すことは不可能である。
(4) よって、現時点において、控訴人A、同Bに対する換地処分の取消しを求
めると同時に保留地の設定の取消しを求めておく利益があり、控訴人A、同Bには
原告適格がある。
(二) 訴外C,D両名に対する換地処分の取消しについて
(1) 原判決別表四の換地処分の換地は、控訴人A、同B所有の従前地<地名略
>の所在地であり、控訴人A、同Bに対する換地処分が取り消されれば、控訴人
A、同Bに換地として交付されるべき土地である。
(2) 控訴人A、同Bに対する換地処分は訴外C,D両名に対する換地処分の換
地の所在地である控訴人A、同Bの従前地を奪うことにある。換言すれば、控訴人
A、同Bに対する従前地<地名略>についての換地と原判決別表四記載の訴外C,
D両名に対する換地処分とは表裏の関係にある。
(3) したがって、控訴人A、同Bに対する換地処分の取消しと訴外C,D両名
に対する換地処分の取消しとを同時に求めなければ、控訴人A、同Bは本件取消訴
訟の目的を達し得ないのである。よって、控訴人A、同Bには優に原告適格があ
る。
四 被控訴人の主張
1 請求原因3の原判決別表一、二の換地処分について
(一) (一)の法八九条の照応原則違反について
(1) (1)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
(1) (1)について
<地名略>街区は北を旧国鉄内房線、西を県道君津・大貫線(以下「本件県道」と
いう。)によって画されているという特殊性があり、また、もし原判決別紙図面五
記載の<地名略>街区と<地名略>街区の間の区画整理道路を<地名略>街区の間
に設置するとすると、その道路用地として四〇〇平方メートル以上の土地を確保す
る必要があり、その土地は控訴人ら施行地区内の関係者全員が負担することとな
り、さらに同街区内の控訴人ら以外の画地かしわ寄せを受けて他の街区に飛換地さ
せられて控訴人ら以外の権利者にとって照応原則に反することになるおそれがあ
る。加えて、<地名略>街区をこのまま維持しても、控訴人ら所有の各従前地とそ
れに対する各換地を比較した場合その利用状況が悪くなったことは認められないの
で、<地名略>街区の換地設計は適法である。
(2) (2)について
従前地<地名略>の土地は、西側の全部が直接本件県道に接続していたわけではな
く、その一部分は幅一・二メートルのいわゆる里道に接していたものであり、この
里道と本件県道との間には従前地<地名略>(田二〇平方メートル)が介在してい
た。したがって、従前地<地名略>の西側のうち本件県道に接する部分は二か所に
分かれており、その間口は一三メートルと四メートルであったところ、換地<地名
略>は、本件県道に接する間口が二三・六六八メートルとなったのであるから、道
路法の適用がある公道に接する間口の長さの比較においては、換地<地名略>の方
が長いのでこれにより利用価値が増している。よって、控訴人らの主張は理由がな
い。
(3) (3)について
換地細則一六条は換地を割り込も場合の基本原則を定めたものであって、既設の県
道、都市計画道路等に面して換地を割り込まざるを得ないような特段の事情がある
場合には、この規定を適用することができない。このような事情がある場合には、
これらの道路に接する当該街区の各換地ができるだけ不整形にならないように配慮
して換地の割り込みを行って関係権利者間の土地利用の公平を図る必要がある。本
件では、換地<地名略>が接する本件県道は北方が旧国鉄内房線を横断し、君津市
<地名略>を経て国道一六号線に、また、南方が都市計画道路三・三・四号線に達
する連続性がある道路であるから、本件県道を<地名略>街区と直角に交わるよう
に変更することは極めて困難であり、また、仮に換地<地名略>と直角になるよう
に割り込みをすれば、控訴人ら以外の権利者の換地が全て不整形な画地となり、利
用価値が減少することになるのであるから、換地細則一六条二項の規定によらなか
ったとしても、違法ではないというべきである。
次に、東側の背割線がカギ型になっていて不整形との点については、確かに換地<
地名略>の東側の背割線がカギ型になっているが、換地<地名略>に隣接する東側
及び南側の各換地は、
いずれも控訴人らの換地であり、控訴人らはこれらの換地を一体に利用できるの
で、右カギ型になったことにより利用価値が低くなったということはできないか
ら、照応原則違反にはならない(なお、控訴人Aは、土地区画整理事業の工事概成
後に従前地<地名略>の土地の持分を控訴人Eに贈与しているが、工事概成後にな
された権利の変動は照応の原則上配慮する必要がない。)。
(4) (4)について
従前地<地名略>は、かって地目が田であり、昭和四三年頃控訴人Aがその一部を
埋め立て建物を建てたのであるが、建物を建てる部分以外の土地(二四三平方メー
トル)は埋め立ても整地もしていなかったので、換地細則三三条により右二四三平
方メートルを除いたその余の宅地について評価の一〇パーセント増しをしたもので
あり、適法である。
仮に右主張が認められないとしても、被控訴人は、平成四年四月一四日到達の書面
をもって控訴人A、同Eに対し、従前地七四一番一と従前地<地名略>の未整地部
分が整地されていた場合の配当地積の増加分である合計五・六七平方メートル(従
前地七四一番一の増加分は五・二四平方メートル)に見合うものとして、自己所有
の付け保留地七・五三平方メートルを無償譲与する旨申し入れた。
ところが、同人らにおいて右申入れに応じなかったので、被控訴人は、法九四条及
び定款七〇条に定められている清算金規定に準拠して、乙第四九号証の一記載の
「清算金の計算書」記載のとおりに計算した清算金を追加して支払う旨の行政処分
を行い、平成四年四月二八日に行われた当審第三〇回口頭弁論期日においてこれを
控訴人A、同Eに対し通知した。
よって、右瑕疵は治癒されたというべきであり、仮に右行政処分が無効であるとし
ても、右無償譲与は維持するので、右瑕疵は治癒された。仮に右主張がいずれも認
められないとしても、控訴人A、同Eは、右無償譲与あるいは右行政処分(あるい
は清算金追加相当額の贈与の申入れ)に応じることにより利益を受けることはあっ
ても何らの不利益を受けることはないのであるから、これに応じないで瑕疵の主張
をするのは権利濫用ないし信義則違反に当たり許されない。
(5) (5)について
控訴人らは、従前地<地名略>、従前地<地名略>の実質地先負担地積は八三・〇
一平方メートルであるから、別表1記載のとおり、
実質公共減歩地積は五九・七九平方メートルの増換地とならねばならないと主張す
るが、控訴人らの地先負担地積(公共減歩地積)の計算方法は誤っており、正しく
計算すれば、別表2記載のとおりであるから、右主張は失当である。また、控訴人
らは、換地<地名略>及び換地<地名略>は既成宅地であり、宅地の利用増進は皆
無であるから、保留地減歩は一切不要であると主張するが、里道がなくなり、土地
の区画形質が整形化され、周辺の道路が整備されて、宅地の利用増進が図られたこ
とは明らかであるから、右主張も理由がない。
(6) (6)について
原判決別紙図面四記載のとおり、従前地<地名略>と従前地<地名略>上には、控
訴八A所有の建物が合計一二棟あり、そのうち五棟が従前地<地名略>上に、六棟
が従前地<地名略>上に、一棟が両土地の境界線上に建っていた。
被控訴人は、従前地<地名略>、<地名略>については、従前地<地名略>及び従
前地<地名略>が存在していた位置に換地することになったので、昭和四九年六月
仮換地の変更指定をしたとき、右一二棟の建物のうち七棟を乙第五号証のとおり換
地<地名略>及び換地<地名略>上に被控訴人の費用で移転することを計画し、控
訴人Aに対し、再三にわたり建物移転のための家屋立ち入り調査の協力を申し入れ
たが、同人はこれに応じず、建物の移転を拒絶したため、右建物移転計画は取り止
めざるを得なかった。
右移転計画を実行しておれば、従前地<地名略>上の建物については、従前と同様
に貸家として利用できたのであるから、換地<地名略>の一棟半しか乗らなくても
照応原則に違反しない(なお、控訴人Aは、被控訴人から右申し入れを受けた後で
ある昭和五四年八月三日、従前地<地名略>及び従前地<地名略>の共有持分の五
五分の一を控訴人Eに、また、同日、従前地<地名略>、<地名略>の共有持分一
〇〇分の一を控訴人Bに、さらに、昭和五四年五月三〇日、従前地<地名略>の共
用持分六〇分の一を控訴人Bに、それぞれ贈与をしているが、このような場合に
は、照応原則の適用上は、控訴人らの従前地が同一人の所有に属するものと同視す
べきであるし、また照応原則の基準時は土地区画整理事業の認可時(事業開始時)
であることからいっても、右共有持分の変動を考慮しなくても違法ではない。)。
(2) (2)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
前記のとおり、
従前地<地名略>は、里道と県道に挟まれた二〇平方メートルの土地である。そこ
で、被控訴人は、従前地<地名略>を従前地<地名略>と一体として利用してきた
ものとして従前地の評価計算をし、かつ、換地<地名略>と換地<地名略>が一体
として利用され利用増進が図られるものとして換地処分を行っているものであるか
ら、換地<地名略>の奥行が長いからといって照応原則に違反することはない。
(3) (3)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
(1) (1)について
従前地<地名略>の東側及び西側の道路というのは、いわゆる里道であり、その幅
員は一・二メートルにすぎなかった上、東北側の間口一三・五メートルが幅員六メ
ートルの市道に面していたにすぎない。ところが、換地一番人は、東側一五・五二
メートルが区画整理道路に面することとなり、また、形状も整形化されたので、利
用増進が図られている。したがって、土地区画整理前後の間口を比較して、照応原
則に違反しているということはできない。
(2) (2)について
前記のとおり、控訴八Aは建物の移転を拒絶したため、これができなかったもので
あり、乙第五号証記載のとおり、建物を移転すれば、従前地と換地の利用価値に差
がないから、換地一番人上に六棟のうち三棟が乗らなかったとしても、照応原則に
違反しない。
なお、控訴人らは、乙第五号証の移転計画では、出入口の前面が隣地との境界線に
接する建物が生じるため、これらの建物は換地一番九の保留地を通らないと出入り
ができなくなると主張する。
しかし、この保留地は、付け保留地といわれるものであり、建物の移転又は除却を
することなく、従来と同様に建物を利用できるようにすることを目的として設けら
れたものであって、控訴人らはこれを買い受けることにより右目的を達成すること
ができ、右買い受けの際には右保留地の売買代金から建物の移転又は除却に要する
費用相当額が差し引かれるので、控訴人らはこれを買い受けることによって利益に
なっても不利益になることはない。したがって、控訴人らの右主張も理由がない。
(4) (4)の従前地<地名略>、<地名略>、換地<地名略>について
(1) (1)について
前記のとおり、従前地<地名略>及び従前地<地名略>の各土地が存在していた位
置に従前地<地名略>、<地名略>の換地を定めたので、被控訴人は、
従前地<地名略>及び従前地<地名略>上の建物を移転する計画を立て、その旨控
訴人Aに申し入れたが、同人がこれを拒絶したため、従前地<地名略>、<地名略
>の換地である換地<地名略>を更地にすることができなかったものであるから、
照応原則に違反することはない。
また、控訴人Bは、前記のとおり、従前地<地名略>、<地名略>の共有持分一〇
〇分の一の贈与を受けその旨の所有権移転登記をしているが、これは、被控訴人の
建物の移転を困難にする意図でなされたものと窺われるので、換地<地名略>上に
建物が存在することを違法事由として主張するのは権利濫用である。
さらに、照応原則の基準時後の右権利変動を考慮しなくても照応原則に違反しな
い。
(2) (2)について
換地<地名略>の割り込みが本件県道に対し直角になっていないとしても、前記の
とおり、照応原則に違反しない。
(3) (3)について
土地区画整理事業において公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、
土地区画整理事業の施行地区内の土地は、事業施行によってもたらされる利用増進
の度合いに応じて減歩を負担すべきところ、控訴人らの従前地についても、土地の
区画形質の変更が行われ、従前存在していた里道がなくなり、周辺の道路が整備さ
れたことによって、土地の利用価値が著しく増進しているのであるし、また、控訴
人らの従前地<地名略>、<地名略>の減歩率二五・三七パーセント(公共減歩率
一三・九一パーセント、保留地減歩率一一・四六パーセント)は被控訴人の平均減
歩率二九・九四パーセントと対比して特に高いということはできないから、照応原
則に違反しない。
(5) (5)の各換地が従前地と照応していない旨の主張について
(1) (1)について
従前地<地名略>、<地名略>が換地<地名略>に飛換地されたのは、換地細則四
条一項(3)(同一所有者の換地をまとめて交付するときには移動換地することが
できる。)によったものであり、飛換地になったとしても、他の換地と一体利用が
できるようになり、利用の増進が図られているものであるし、また、換地<地名略
>が更地にならなかったのは、前記のとおり、控訴人Aが建物の移転を拒絶したこ
とによるものであるから、照応原則に違反しない。
さらに、控訴人らの各従前地と各換地は、総合的に勘案した場合、大体同一条件に
あるので照応原則に違反しない。
(2) (2)の平等原則違反(故意に不利益な処分をした旨の主張)について
イ イの控訴人らの従前地の評価を不当に低めて減歩率を増大した旨の主張につい

(ア) (ア)の従前地<地名略>について
(ア) 従前地<地名略>をA部分とB部分に区分し、B部分は従前地<地名略>
と接続した同一所有者のものとして評価計算すべきであるとの点については、本件
土地区画整理事業の施行地区は新開発地区であり、大部分の土地が農地であり、耕
地整理がされていなかったため、いわゆる法定外公共道路に面する不整形の土地が
多かったので、被控訴人は、整理前の土地の評価をするに当なり、不整形による修
正を行わなかったことから、合筆計算も行わなかったものであり、そこで、従前地
<地名略>、従前地<地名略>、従前地<地名略>を一体とみた場合不整形の土地
となるけれども、他の土地の評価との均衡上、換地細則三七条により合筆計算しな
かったものである。
(イ) B部分について路線価の低い街路番号一八-Bの路線価七三〇を採用した
との点については、そのような事実はない。路線価七三〇の街路というのは、従前
地<地名略>の背面道路のことであり、控訴人らに対し、他の権利者と比較して不
利益を与えていることはない。
(ウ) 従前地<地名略>をA部分とB部分に分けて、B部分は路線価九六〇によ
り評価し、袋地計算すべきであるとの点については、仮に右のような計算をするの
であれば、B部分は従前地<地名略>の一部を私有道路として利用して県道に接続
しているものとみるべきであるから、その部分約八〇平方メートルは、私有道路と
して路線価を設定し評価すべきことになるところ、換地細則三一条により、私有道
路については、その私有道路に付した路線価の三〇パーセントの指数で評価するこ
とになっているので、従前地<地名略>の権利評価指数、配当地積がそれだけ減少
することになる。したがって、仮に右のような計算をしても、控訴人らの従前地の
権利評価指数、配当地積にほとんど差異は生じないのである(乙第五一号証別紙A
参照、なお、換地細則には角地の評価規定を欠いていたが、被控訴人は、角地の評
価については、一般に折衷式換地計算法で採用されている計算方法、すなわち、
「角地の評価は、普通地として評価した画地の評価指数に側方加算指数を加えて評
価するものとする。側方加算指数は、
側方道路の加算地積及び負担地積に側方路線価指数を乗じた積とする。」という計
算式により算定したものである。もとより、右評価については、総代会の承認を得
た適法なものである。)。
(イ) (イ)の控訴人ら以外の者に対する整理前評価は故意に不公平に取り扱う
ものである旨の主張について
(ア) (ア)の奥行修正の誤りについて
前記Fの従前地<地名略>につき誤って奥行修正していないこと、従前地<地名略
>及び<地名略>、<地名略>につき奥行修正していることは事実であるが、これ
らの従前地の奥行修正は適正になされているので、右Fについての評価計算の誤り
はこれらの従前地についての換地処分を取り消さなければならない程の瑕疵という
ことはできない。
(イ) (イ)の三角地修正の誤りについて
前記のとおり、被控訴人は、整理前の各土地について不整形修正をしなかったこと
から、それとの均衡上、三角地についても評価の修正をしなかったものである(換
地細則三七条)。そして、三角地修正は、換地にのみ行い、整理前の現況が宅地で
あったものについては、一〇パーセント増しの評価をしたものである。したがっ
て、施行地区内の整理前の土地全部について三角地修正をしなかったのであるか
ら、不公平が生じることはない。
(ウ) (ウ)の高低差修正の誤りについて
前記F、G、H、I、J、K、Lの各従前地について高低差修正していないことは
認めるが、これらの者の土地については、整理前ではなく、整理後の換地計算の際
に、配当を受けるべき換地の評価指数に高低差修正をしているのであって、被控訴
人がこのような方法を採用したからといって、控訴人らと他の権利者との間に著し
い不公平が生じたということはできない。
(ウ) (ウ)の従前地<地名略>の画地評価の不正について
前記(一)、(1)、(4)のとおりである。
(エ) (エ)の従前地<地名略>の画地評価の不正について
従前地<地名略>は、事業開始時には未整地であったので、右主張は当たらない。
仮に右上地が宅地であったとして評価計算をしても、配当地積が○・四三平方メー
トル増えるにすぎず(乙第五一号証別紙B参照)、前記(一)、(1)、(4)に
主張のとおり、瑕疵は治癒されたか、そうでないとしても、控訴人らは、瑕疵の主
張をすることができない。
ロ ロの暫定換地についての換地細則違反の主張について
(ア) (ア)の従前地<地名略>の暫定換地について
控訴人らは、別紙図面三記載のとおり、A部分はAの位置に、B部分はBの位置に
原位置換地すべきであると主張するが、その理由が不明であるのみならず、A部分
とB部分の中間の土地はどこに換地するのか明らかではないし、また、B部分のう
ち県道に面している土地にはHの従前地<地名略>(田一二〇平方メートル)が存
在しているのであるから、二重に暫定換地をすることになって不合理であるなど、
右主張は理由がない。
(イ) (イ)の従前地<地名略>、<地名略>の暫定換地について
被控訴人は、従前地<地名略>、<地名略>が存在していた原判決別紙図面二記載
の<地名略>街区に集合保留地を設けたため、この集合保留地内にあった整理前の
土地については、飛換地せざるを得なくなり、また、原位置には土地区画整理事業
で新設される道路が全く存在しないため、原位置又はその付近では適正な暫定換地
を算定することができない状況であったので、換地細則三七条により、実際に換地
を交付する位置において暫定換地を計算したものであり(したがって、暫定換地の
計算は、施行地区内の土地全てについて実際に換地を交付する位置において行って
いる。)、何ら違法はない。
また、従前地<地名略>、<地名略>につき、控訴人ら主張の原位置において暫定
換地を計算しても、配当地積は、かえって六・二一平方メートル減少するのである
から(乙第五一号証別紙C-(1)参照)、減歩率が増大したという非難は失当で
ある(なお、控訴人らは、暫定換地を原位置にする場合と換地にする場合とで配当
地積に差があるというのであれば、奥行を一定にして計算すべきであると主張する
ようであるが、原位置で計算する場合には、換地設計上道路を設置する予定になっ
ていないので、道路が存在するものとして、仮定の奥行、道路幅員を想定しなけれ
ばならないことは当然であり、右主張は理由がない。)。
(ウ) (ウ)の訴外C,D両名の従前<地名略>、<地名略>の暫定換地につい

控訴人らの主張する位置において暫定換地を計算した場合、訴外C,D両名の配当
地積は、かえって、二三・六五平方メートル増加するのであるから(乙第五一号証
別紙C-(2)参照)、減歩率が減少したという非難は失当である。
ハ ハの整理後の画地評価の誤りの主張について
(ア) (ア)のI、Mの従前地に対する各換地の画地評価について
右I、Mの各換地については、正背道路間の奥行が適正奥行二四メートルを超えて
いたところ、換地細則二九条は「正背道路間が適正奥行以上の場合は、三宅地とみ
なしそれぞれ評価する。」と規定しているところから、利用範囲を想定して、正面
路線から評価する領域と背面路線から評価する領域に分割して評価したものであ
り、何ら違法はない。
また、仮に控訴人らが主張するような方法により計算すると、配当地積は、右Iに
ついては七・八五平方メートル、右Mについては一一・一四平方メートルそれぞれ
増加することになるから(乙第五一号証別紙D-(1)(2)参照)、同人らの減
歩が不当に軽減されているということはない。
(イ) (イ)の換地<地名略>について
控訴人らは、換地<地名略>の平方メートル当たり指数を右I、Mの各換地の平方
メートル当たり指数と比較して不利益であると主張するが、従前地の権利評価指数
の低い土地につき、換地の評価指数がこれよりも高いところに換地されるとすれ
ば、減歩率が高くなるし、その逆の場合には、減歩率が低くなるのであって、換地
の平方メートル当たりの評価指数だけを比較して不公平かどうかを判断することは
できないところ、右I、Mの減歩率は、それぞれ三九・八三パーセント、三〇・四
二パーセントであるに対し、控訴人らの減歩率は、換地<地名略>が一八・五五パ
ーセント、換地<地名略>及び<地名略>が二〇・五二パーセント、換地<地名略
>が二五・三七パーセントであるから、右I、Mの減歩率が不当に軽減されている
ことはない。
(ウ) (ウ)のJの換地について
右Jの従前地(<地名略>及び<地名略>、以下それぞれ「従前地<地名略>、従
前地<地名略>」という。)は、いずれも原判決別紙図面二記載の<地名略>街区
の集合保留地内にあったため飛換地をせざるを得なかったので、従前地<地名略>
を換地<地名略>に、従前地<地名略>を換地<地名略>にそれぞれ換地の割り込
みをしたものである。
元来、換地は一筆ごとに一画地を交付するのが原則であるから、これらの従前地に
ついて、既に正面路線価により街区評価がしてあった街区の中にそれぞれの換地を
割り込んだのであり、一括換地をしたものではなく、
このような場合には、右二筆の換地を合筆計算しなくても、控訴人らの換地と比較
して著しく不公平であるということはできない。
(エ) (エ)のKの換地について
Kは、従前地として、従前地<地名略>、従前地<地名略>ほか一筆を前記<地名
略>街区の集合保留地内に所有していたため、飛換地をせざるを得ず、従前地<地
名略>については、三か所に分割して換地を指定しなければならなくなり、その一
部が換地<地名略>に換地され、その余の換地はほかの街区に指定されている。そ
して、従前地<地名略>の換地が換地一二番五に指定されたものである。このよう
に特別の事情があるときは、換地<地名略>、<地名略>を一括換地と同様に一体
評価しなかったとしても、控訴人らの換地と比較して著しく不公平であるというこ
とはできない。
なお、右Kは、換地<地名略>について滅歩率が四五・七パーセント、換地<地名
略>について減歩率が三四・五パーセントとなっており、平均減歩率二九・九四パ
ーセントより減歩率が高くなっている。
(オ) (オ)の鉄道接近修正の主張について
換地<地名略>の正面路線6-Eの路線価指数に鉄道接近係数の修正が行われてい
ないが、これは右路線の中間点から鉄道沿線までの距離が右修正を要するとされて
いる五〇メートルを超えていたためである。
これに対し、従前地<地名略>について右修正をしたのは、一般に接近係数は路線
の中間点から対象施設までの距離により計算されるところ、従前地の大部分が延長
距離の長い里道に面していたため、その中間点から鉄道沿線までの距離が右五〇メ
ートルを超えることになり、適正な鉄道接近係数を算定することができなかったの
で、従前地については、各従前地の中心点から鉄道沿線までの影響距離により右係
数を算定することにしたことによるものである(整理後の場合には、道路の新設、
変更がなされ、街区(画地)に接する道路ごとに路線価を付すこととなるので、前
記一般に行われているような路線の中間点から鉄道沿線までの影響距離により接近
係数を算定し路線価に反映することができるのである。)。
なお、前記のとおり、従前地<地名略>が全部整地されていたものとして計算する
に当たり、鉄道修正を行わなかったので(乙第五一号証別紙B(1)(2)参
照)、この点も問題がなくなっている。
(3) (3)の控訴人らの従前地について保留地減歩をする必要がない旨の主張
について
前記のとおり、土地区画整理事業の施行地区内の土地は、事業施行によってもたら
される宅地の利用増進の度合いに応じて減歩を負担すべきところ、控訴人らの従前
地についても、里道がなくなり、土地の区画形質が整形化され、周辺道路が整備さ
れたことにより、利用増進が著しく図られているから、控訴人らが保留地減歩を負
担するのは当然である。なお、従前地<地名略>、従前地<地名略>の保留地減歩
率は一二・一六パーセント、従前地<地名略>、<地名略>の保留地減歩率は一
一・四六パーセントであり、平均保留地減歩率一四・四六パーセントと比較して過
重ではない。
(二) 工事未了の違法について
前記のとおり、控訴人Aは、被控訴人に対し、従前地に存在する建物を移転するこ
とを拒絶しており、しかも、右建物を移転しなくても、土地区画整理事業に支障が
なかったので、被控訴人としては、法七七条一項所定の手続をとらなかったもので
あり、このような場合には、法一〇三条二項及び定款六九条に違反するものではな
い。
(三) (三)の土地評価の違法について
(1) (1)の整理前の画地評価の誤りについて
(1) (1)の従前地<地名略>の画地評価の誤りについて
前記(一)、(5)、(2)、イ、(ア)のとおり。
(2) (2)の奥行修正の適用違反について
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(ア)のとおり。
(3) (3)の三角地修正の適用違反について
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(イ)のとおり。
(4) (4)の高低差修正の適用違反について
前記(一)、(5)、(2)、イ、(イ)、(ウ)のとおり。
(5) (5)の従前地<地名略>の画地評価の不正について
前記(一)、(5)、(2)、イ、(ウ)のとおり。
(6) (6)の従前地<地名略>の画地評価の誤りについて
控訴人らは、右土地を全て盲地として評価していると主張しているが、そのような
事実はない。
すなわち、乙第二一号証のとおり、正面道路から適正奥行とされている二四メート
ルまでは正面道路の路線価により計算し、これを超える部分は、換地細則二四条二
項により盲地逓減率を乗じて修正しているものである。
(7) (7)の従前地<地名略>の画地評価の誤りについて
前記、(一)、(5)、(2)、イ、
(エ)のとおり。
(2) (2)の暫定換地の誤りについて
(1) (1)の従前地<地名略>の暫定換地について
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(ア)のとおり。
(2) (2)の従前地<地名略>、<地名略>の暫定換地について
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(イ)のとおり。
(3) (3)の訴外C,D両名の従前地<地名略>、<地名略>の暫定換地につ
いて
前記(一)、(5)、(2)、ロ、(ウ)のとおり。
(3) (3)の整理後の画地評価の誤りについて
(1) (1)のI、Mの換地について
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(ア)及び同(イ)のとおり。
(2) (2)のJ、Kの換地について
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(ウ)及び同(エ)のとおり。
(3) (3)の鉄道修正の適用違反について
前記(一)、(5)、(2)、ハ、(オ)のとおり。
なお、控訴人らは、従前地<地名略>と換地<地名略>の減価割合をみると、換地
<地名略>の減価割合は従前地<地名略>のそれに比して不当に低いと主張する
が、従前地七四四番一の鉄道修正はマイナス二二であるに対し、換地<地名略>の
それは二四である(換地<地名略>の正面路線一八-Cの路線価の算出に当たり鉄
道修正係数マイナス〇・一の減点をしているが、これはマイナス二四の鉄道修正に
相当するものである。)から、右主張は失当である。
(4) (4)の路線価計算の誤りについて
控訴人らは、6-E街路は歩道二メートルがつけられたのみであると主張している
が、右街路は両側に二メートルの歩道が設けられて一三メートルの幅員になったも
のであるから、右主張は失当である。
また、土地区画整理事業の施行によって、右街路は、北方面が旧国鉄内房線を横断
し、君津市坂田を経て国道一六号に接続し、南方面が幅員二三メートルないし二五
メートルに拡幅され、施行地区内の主要幹線道路になった街路番号1-A、同1-
Bの都市計画道路に接続することとなったため、施行地区内の幹線道路としての性
格が一層高まったとともに、施行地区内の道路の新設、変更により、街路としての
系統性、連続性も向上したものである。よって、被控訴人が換地細則の路線価算定
基準第一二号表に基づいて、右街路につき、tの値を四・一としたことは適法であ
る。
(5) (5)の換地清算金の誤りについて
被控訴人が控訴人らの従前地、換地について行った土地評価は前記のとおり適法で
あるから、清算金の算定も適法である。
なお、仮に従前地<地名略>、従前地<地名略>の評価計算に当たり、合計二六三
平方メートルの地積につき未整地として評価したことが違法であるとしても、前記
(一)、(1)、(4)において主張のとおり、清算金の追加支払処分をしたの
で、従前地<地名略>、従前地<地名略>についての従前の清算金処分は変更さ
れ、右違法は存在しなくなった。
2 請求原因4の保留地の設定について
(一) (一)の原判決別表三1記載の保留地の設定について
(1) (1)の法違反ないし必要性がない旨の主張について
被控訴人がこの保留地を一街区にとったのは、地域発展の中心的な商店街となるべ
き商業保留地を設けるべきであるという総代会の総意によるものであり、もとよ
り、法九六条一項及び定款七条に基づいなものである。この保留地を設けたことに
より、一括売却が可能となり、売却に要する経費の節減及び事業資金の資金繰りの
円滑化を図ることができ、有意義であったものである。
(2) (2)の同保留地の設定に手続違反がある旨の主張について
この保留地の設定に当たっては、昭和四七年一二月六日事業計画変更に関する総代
会の議決を経て、昭和四八年二月一二日千葉県知事から右変更の認可を受けるとと
もに、同年三月三〇日保留地設定について総代会の議決を受けているので、何ら違
法な点はない。
(二) (二)の原判決別表三2記載の保留地の設定について
被控訴人が右付け保留地を設けたのは次の理由によるものである。すなわち、被控
訴人は、昭和四九年六月二〇日控訴人Aに対する仮換地指定の変更処分をしたが、
これと同時に前記のとおり、同人所有の建物一二棟のうち七棟の移転計画を立てる
とともに、右建物の移転に当たり、従前の建物と建物の間隔(約二メートル)を確
保して建物が移転できるようにするためには、換地<地名略>、<地名略>及び<
地名略>の広さでは地積が不足すると考えられたので、控訴人らのために右付け保
留地を設定したものである。この付け保留地が控訴人らにとって利益になっても不
利益にならないことは、前記1、(一)、(3)、(2)のとおりである。
3 請求原因5の訴外C,D両名に対する換地処分について
訴外C,D両名の従前地<地名略>は、三八平方メートルの過少宅地であって、も
し、これを従前地<地名略>と集合することなく換地することになると、これに対
する換地が画地としての基準に達しないことになるので、右集合の上、換地したも
のである。
また、前記のとおり、集合保留地を設けたために、右換地を原位置又はその付近に
することができず、右集合保留地の南側に目白押しに飛換地せざるを得なかったも
のであるから、照応原則に違反することはない。
五 被控訴人の主張に対する認否
いずれも争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
第一 被控訴人の本案前の主張について
一 主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しの訴えについて
控訴人らは、法一〇三条一項所定の関係権利者に換地計画において定められた関係
事項を通知してする換地処分と同等のものとして、保留地の設定という行政処分が
存在する(同条四項所定の公告の日にされたと解すべきであると主張する。)とし
た上で、主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しを求めているもの
と解される。
土地区画整理組合施行の土地区画整理事業においては、施行者は、施行地区内の宅
地について換地処分を行うため、換地計画を定め、都道府県知事の認可を受けなけ
ればならないとされており(法八六条一項)、換地計画においては、換地、清算
金、保留地等に関する事項を定めることとされ(同八七条)、保留地については、
土地区画整理事業の費用に充てること等の目的のためこれを定めることができるも
のとされている(同九六条一項)。そして、換地処分は、関係権利者に換地計画に
おいて定められた関係事項を通知してするものとされているが(同一〇三条一
項)、右による通知は、個々の権利者に対し当該権利者に関する換地(狭義の)及
び清算金の明細について行われるものであり、保留地の設定については、施行地区
内の全土地所有者の減歩によりされるものであるから、特定の者に対する通知は予
定されていないものと解され、施行者による特段の行為がなくとも、法一〇三条四
項所定の公告があると、その効果として、法一〇四条九項の規定により、公告のあ
った日の翌日において施行者が換地計画において定められた保留地を取得するもの
とされているのである。
以上にみたとおり、保留地の設定については、換地(狭義の)及び清算金について
の処分と異なり、換地計画の決定及びその認可と別個に行政庁(施行者)の公権力
の行使に当たる行為が存在するわけではなく、法一〇三条四項所定の公告があった
ことにより施行者が保留地を取得する法律効果が生じるとしても、それは法の規定
によるものであって、そのことから前記通知によってされる換地処分(狭義の換地
処分及び清算金についての処分)と同等の意味での保留地の設定という行政処分が
存在するものということはできない。
したがって、控訴人らの主位的請求の趣旨(一)(2)の保留地の設定の取消しを
求める訴えは、その対象を欠く不適法なものであり、却下を免れない。
二 主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外C,D両名に対する換地処分の取消しの
訴えについて
控訴人A、同Bは、訴外C,D両名に対する換地処分の換地は、控訴人A、同B所
有の従前地<地名略>の所在地であり、右従前地についての換地処分が取り消され
れば、同人らに換地として交付されるべき土地であるから、訴外C,D両名に対す
る換地処分の取消しを求める原告適格を有する旨主張する。
しかしながら、仮に訴外C,D両名に対する換地処分の取消しの訴えにおいて右換
地処分が取り消されたとしても、被控訴人としては、訴外C,D両名に対する換地
処分を改めて行うべき義務が発生することになるにすぎず、控訴人A、同Bに対す
る換地処分を取り消して新たに換地処分をすべき義務が発生することになるわけで
はなく、当然に右控訴人らが従前地<地名略>の土地を換地として交付を受けられ
ることになるものでもないから、本来、控訴人らには、訴外C,D両名に対する換
地処分の取消しを求める訴えだけを提起する利益はないというべきである。
また、控訴人A、同Bの従前地<地名略>についての換地処分の取消しの訴えにお
いて、同換地処分が取り消されれば、控訴人A、同Bは右従前地に対する所有権を
回復することになり、右従前地について重複して所有権が存立することができない
結果、右従前地を換地とする訴外C,D両名に対する換地処分も連鎖的に当然無効
になるものと解されるから、控訴人A、同Bの右従前地についての取消しの訴えに
併合して訴外C,D両名に対する右従前地を換地とする換地処分の取消しの訴えを
提起する必要もないものというべきである。
したがって、控訴人A、同Bには、訴外C,D両名に対する換地処分の取消しを求
める訴えの利益はなく、控訴人A、同Bの主位的請求の趣旨(一)(3)の訴外
C,D両名に対する換地処分の取消しの訴えは、不適法であるから却下を免れな
い。
第二 本案の主張について
一 請求原因1、2の事実は、当事者間に争いがない。
二 同3の換地処分の違法性について判断する。
1 同3、(一)の法第八九条の照応原則違反について
(一) 法八九条は、換地を指定する基準として「換地及び従前の土地の位置、地
積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない」旨規
定しているところ、土地区画整理においては、その本質上、土地の区画、形質に変
更を生じるものであるし、また道路、公園等公共施設の新設を伴うことか通常であ
るため、全ての条件が従前の土地に照応するように換地を定めることは、技術的に
もほとんど不可能であるから、右規定は、各換地がおおむね公平に定められるべき
ことを規定したものと解するのが相当である。したがって、前記諸要素を総合的に
勘案してもなお従前の土地と著しく条件が異なり、かつ近隣の土地所有者に比較し
て著しく不利益な処分をしたものであって、そのことにつき合理的な理由がない場
合でない限り、当該換地処分は違法とならないものと解すべきである。
そこで、右見地から控訴人らの照応原則違反の主張について判断することにする。
(二) 同3、(一)、(1)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
(1) (1)について
証拠(乙一の2、三)によれば、<地名略>街区は、長辺約七五メートル、短辺約
三五メートル、奥行約七五メートルの台形状の土地であって、被控訴人の施行区域
内の標準的な街区に比較して奥行が長いことが認められる。
しかしながら、証拠(甲四三、乙一の2、三、四、六、二四、四三、原審証人N)
及び弁論の全趣旨によれば、<地名略>街区は、北を国鉄内房線、西を本件県道に
よって画されているという特殊性があり、また仮に原判決別紙図面五の<地名略>
街区と<地名略>街区との間の区画整理道路をそのまま延長して<地名略>街区の
間に設けたとするなら、道路用地として四〇〇平方メートル以上の土地が必要とな
り、右の増加は被控訴人が評価式換地設計法と地積式換地設計法の折衷式ないし暫
定換地方式を採用しているので、地先の土地所有者である控訴人らのみが負担する
のではなく、
施行地区内の関係者全員の負担となることが認められる。さらに、右道路を<地名
略>街区に設けると、街区内の画地のしわ寄せを受けて、控訴人らの画地以外の面
積の少ない画地を他の街区に飛換地せざるを得ないことにもなり、控訴人ら以外の
画地の権利者にとって、照応原則に反する結果となるおそれがある。
したがって、右のような事情のある<地名略>街区においては、奥行の長い設計を
したとしても、そのこと自体が照応原則に反して違法と評価すべきではなく、ま
た、<地名略>街区の右のような大きさを維持したことによって、控訴人らの各従
前地とそれに対する各換地を比較して特段土地の利用状況が悪化するものとはいえ
ないので、<地名略>街区の換地設計は適法である。
(2) (2)について
証拠(乙一の1、2、二)によれば、従前地<地名略>の土地は、西側の全部が直
接本件県道に接続していたわけではなく、その一部は幅一・二メートルのいわゆる
里道に接していたこと、この里道と本件県道との間には従前地<地名略>(田二〇
平方メートル)が介在していたこと、したがって、従前地<地名略>の西側のうち
本件県道に接する部分は二か所に分かれており、その間口は一三メートルと四メー
トルであったこと、換地<地名略>は、本件県道に接する間口が二三・六六八メー
トルであること、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、道路法の適用がある公道に接する長さの比較においては、換
地一番二〇の方が長いことになるので利用価値が増進しているというべきであり、
また、証拠(乙六、二一、原審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、従前地<地名
略>が接していた里道に関して角地計算がなされ(換地細則には角地の評価規定を
欠いているが、乙二一及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、角地の評価につい
ては、一般に折衷式で採用されている計算法を採用して総代会の承認を得たことが
認められる。)従前地の評価が高くなっていることが認められるので、里道に接し
ていることも換地<地名略>の地積に反映されているということができ、この点か
らいっても、間口の比較の点において照応原則違反はないと解される。
(3) (3)について
まず、換地の割り込みの点について判断する。
乙六によれば、換地細則一六条二項には、換地を割り込むには道路に直角の線を背
割まで引いて換地の筆界とする旨規定していることが認められる。しかし、
右条項は、換地の割り込みに当たっての基本原則を定めたものであり、換地細則三
七条によれば、特別の事情が存する場合には換地細則一六条二項に従わないことも
できると解される。
そこで、右事情の存否につき検討するに、証拠(乙二ないし四、原審証人N)によ
れば、本件県道は、本件土地区画整理事業以前から同じ位置にあった県道の幅員を
拡げたものであって、北方が国鉄内房線を横断し君津市内を経て国道一六号線に達
し、また南方は都市計画道路三・三・四号線に達する連続性のある道路であること
が認められ、このような既設の県道を<地名略>街区に直角の交わるように変更す
ることは極めて困難であり、法六条四項の「事業計画は公共施設その他の施設又は
土地区画整理事業に関する都市計画が定められている場合においては、その都市計
画に適合して定めなければならない」との規定にも反することになる。
そして、乙三によれば、本件県道に沿う街区については、<地名略>街区の北側に
ある<地名略>街区を除いては、いずれの街区も本件県道に対し換地の割り込みが
直角になっていないこと、<地名略>街区は面積も小さく東側に県道と並行の道路
が作られたので直角の割り込みが可能であったが、<地名略>街区は面積及び形状
からみて直角の割り込みは極めて困難であることが認められるので、換地<地名略
>の換地の割り込みが本件県道に直交していないとしても、換地細則に反せず、照
応原則に違反しないというべきである。
次に、背割線の点について判断する。
証拠(乙一の2、二、原審における控訴人B)によれば、換地<地名略>の背割線
が原判決別紙図面五のとおりカギ型になっていること、仮換地指定の際には右背割
線は真つ直ぐになっていたこと、換地の背割線は権利者の利用の便宜から直線にす
るのが原則であること、以上の事実が認められる。
しかし、証拠(原審証人N)によれば、仮換地のときに真つ直ぐであった背割線が
カギ型になった理由は、確定測量の際に仮換地指定における面積の測量誤差が発見
され、換地<地名略>の面積が増え換地<地名略>の面積が減ったために換地<地
名略>の西側が換地<地名略>の一部に食い込むような形になったものであること
が認められる。
そして、後記(6)のとおり、従前地<地名略>(換地<地名略>)は控訴人Aと
同Eの、従前地<地名略>(換地<地名略>)は控訴人Aと同Bの各共有となって
いるが、右各土地は、
照応原則の適用に当たっては、同一人の所有に属するものと同視して取り扱うこと
ができるというべきであるから、控訴人らとしては右両換地を一体的に利用するこ
とができ利用状況が悪化することにはならないので、背割線をカギ型にせざるを得
なかったことは照応原則に違反しないと解される。
(4) (4)について
証拠(甲三八、四五、乙九の2、二一、四六、四七の1、2、四八の1ないし3、
四九の1、2、五〇の1、2、原審及び当審における控訴人B)及び弁論の全趣旨
によれば、控訴人らの従前地<地名略>(九七三・五二平方メートル)のうち七三
〇・五二平方メートルについては整地済みとして一〇パーセントの加算がなされて
いるが、その余の二四三平方メートル及び従前地<地名略>の二〇平方メートルに
ついては未整地とされ右加算がなされていないこと、しかし、右二四三平方メート
ル及び二〇平方メートルは、昭和四五年三月当時埋め立てられ整地済みであったこ
とが認められ、右認定に反する証拠(乙丸の1、二八、原審及び当審証人N)は採
用できない。
しかし、前記一の争いのない事実及び証拠(乙四四、四七の1、2、四八の1ない
し3、四九の1、2、五〇の1、2、五一、当審証人N)によれば、右二四三平方
メートル及び二〇平方メートルが整地されていたとして換地計算した場合の配当地
積増加分は五・六七平方メートル(従前地<地名略>については、換地地積七七
四・〇七平方メートルに対し、増加分は五・二四平方メートル、従前地<地名略>
については、換地地積一五・五九平方メートルに対し、増加分は〇・四三平方メー
トル)であることが認められるところ、本件土地区画整理事業における平均の実質
減歩率(減歩地積の従前地の台帳地積に対する割合)が二九・九四パーセントであ
る(当審証人N)のに対し、従前地<地名略>、従前地<地名略>の換地<地名略
>の換地地積は七八九・六六平方メートルで実質減歩率は二〇・五二パーセントで
あることを考慮すると、右二四三平方メートル及び二〇平方メートルについて右加
算がなされなかったことは、照応原則に違反する不均衡とまではいえず、清算金の
調整によって賄われるべきことにすぎないと解される(本件土地区画整理事業にお
いては、換地処分が終了し、被控訴人は清算段階にあるので、換地処分のうちの清
算金処分の違法性が問題になるが、この点については、後記3、
(五)のとおりである。)。
そうすると、控訴人らの主張は理由がない。
(5) (5)について
控訴人らは、権利地積は地先負担基準地積から地先負担地積を控除したものである
ことを根拠にして、従前地<地名略>、従前地<地名略>の実質公共減歩地積は、
別表1記載のとおり、五九・七九平方メートルの増換地とならねばならない旨主張
するので、検討する。
証拠(甲四三、乙六、二二の1ないし3、二四、四三、原審及び当審証人N)及び
弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
本件土地区画整理事業においては、換地設計法としていわゆる折衷式(地積式換地
設計法と評価式換地設計法を結合させた換地設計法という意味)ないし暫定換地方
式を採用しており、これに従い従前地<地名略>、従前地<地名略>等について権
利地積(別表1、2記載の地先負担基準地積のことで台帳地積に加算地積を加えた
もの)、公共減歩地積(地先負担地積〔沿道負担地積ともいう。〕と共通負担地
積。ただし、本件土地区画整理事業においては共通負担地積を負担させていないの
で、地先負担地積がこれに当たる。)、保留地減歩地積等の関係を具体的に示せ
ば、別表2記載のとおりである。
以上の事実が認められ、右認定に反する証拠(甲三五、四〇、当審証人O)は採用
できない。
右認定事実によれば、従前地<地名略>、従前地<地名略>の実質公共減歩地積は
八三・〇一平方メートルとなるから、控訴人らの右主張は理由がない。
また、控訴人らは、換地<地名略>及び換地<地名略>については宅地の利用増進
は皆無であるから、保留地減歩は一切不要である旨主張するが、土地区画整理事業
においては、公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、施行地区内の
土地は事業施行によってもたらされる利用増進の度合いに応じてこれらの減歩を負
担すべきであり、換地<地名略>、換地<地名略>についても、証拠(乙一の1、
2、二、三、原審証人N)によれば、右換地が面する本件県道は一三メートルに拡
幅され、里道がなくなり、土地が整形化され、周辺の道路が整備されたことなどに
より土地の利用増進が認められるのであるから、控訴人らの右主張も理由がないと
いうべきである。
(6) (6)について
証拠(乙二、五、原審における控訴人B)によれば、従前地<地名略>と従前地<
地名略>上には原判決別紙図面四のとおり控訴人A所有の建物が合計一二棟あり、
そのうち五棟が従前地<地名略>上に、六棟が従前地<地名略>上に、一棟が両土
地の境界線上に建っていたが、従前地<地名略>の東側に建っていた五棟の建物の
うち一棟半しか右従前地の換地<地名略>の上には乗っていない(なお、従前地<
地名略>上の六棟の建物についてはそのうち三棟半しか右従前地の換地<地名略>
の上には乗っていない。)ことが認められる。
確かに、照応原則上からは、従前地上の既存の建物を移転しないように換地を指定
するのが理想であるが、土地区画整理においては全ての土地について建物の移転を
しないですますことはできず、証拠(乙五、七の1、2、八、原審証人N、原審に
おける被控訴人代表者P)によれば、被控訴人は、控訴人A所有の右一二棟の建物
のうち七棟を被控訴人の費用で乙五(建物移転計画図)のとおりに移転する計画を
立て、昭和四九年から昭和五四年まで被控訴人のQ副理事長とG副理事長が控訴人
Aと右計画に基づく建物移転の交渉をしていたが、控訴人Aの同意を得られなかっ
たこと、昭和五四年四月二四日以降は文書で建物移転調査立ち入り通知を数回出し
なが、控訴人Aが同年六月四日付け内容証明郵便による文書をもって移転を拒絶し
たため、被控訴人は建物移転計画を取り止めたものの、被控訴人はその後も控訴人
らの承諾があれば右移転計画を実行に移す用意があったことが認められ、右事情の
下では従前地と換地が照応しているか否かの判定に当たっては、乙五のとおりに建
物が移転されているものとして判断するのが相当である。
右計画によれば、従前地<地名略>と従前地<地名略>上における右一二棟の建物
の利用と、換地<地名略>と換地<地名略>上での移転後の建物の利用とで利用価
値の点で著しい差異は認められない。そして、このような換地<地名略>と換地<
地名略>を一体として利用することを前提とした建物移転計画は、従前地<地名略
>と従前地<地名略>との境界線上に建物が一棟建っていたというように両従前地
が一体として利用されていた点からも是認できるものである。
さらに、従前地<地名略>と従前地<地名略>の所有関係についてみるに、証拠
(乙九の1、3、三五、原審証人N)によれば、従前地<地名略>の持分五五分の
一が控訴人E(控訴人Aの子)の、従前地<地名略>の持分六〇分の一が控訴人B
(控訴人Aの妻)のそれぞれ所有に属しているが、右持分は、いずれも仮換地指定
処分後の昭和五四年八月一日(従前地<地名略>)と同年四月一五日(従前地<地
名略>)に控訴人Aから贈与されたものであることが認められる。このような場合
には、照応原則の適用上は、右両従前地が同一人の所有に属するものと同視できる
ものというべきである。
したがって、従前地<地名略>上の五棟の建物が換地<地名略>上には一棟半しか
乗らなくても照応原則に違反しないというべきである。
(三) 同3、(一)、(2)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
証拠(乙一の1、2、二、九の2)によれば、従前地<地名略>は、本件県道と里
道に挟まれた二〇平方メートルの土地であり、それのみでは利用することができな
かったが、換地<地名略>は間口が約〇・五六メートル、奥行が約二九メートルと
間口に比べ奥行が長いものの、換地<地名略>、換地<地名略>と一体的に利用す
ることができることが認められる。
右認定事実によれば、本件土地区画整理事業の前後で土地の利用価値に差異はない
ので、換地の奥行が長いことが照応原則に違反するものではない。
(四) 同3、(一)、(3)の従前地<地名略>、換地<地名略>について
(1) (1)について
証拠(乙一の1、2、二、当審証人N)によれば、原判決別紙図面一のとおり、従
前地<地名略>の東側及び西側の道路はいわゆる里道であり、その幅員は一・二メ
ートルにすぎなかったこと、同土地の東北側一三・五メートルが幅員六メートルの
市道に面していたにすぎないこと、換地一番人は、東側一五・五五メートルが区画
整理道路に面することになり、また形状も整形化し利用条件が従前地よりも増進し
ていること、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、公道に接する長さでは換地<地名略>の方が長いので利用価
値が増進したと考えられ、また、証拠(乙六、二一、原審証人N)によれば、里道
に関し角地計算がなされることにより換地の地積が加算されていることが認められ
るので、本件土地区画整理事業前後の間口の比較の点において照応原則違反は認め
られない。
(2) (2)について
まず、換地<地名略>上には建物が三棟しか乗っていないとの点であるが、乙二に
よれば、
従前地<地名略>上には控訴人A所有の建物が六棟あったが、換地<地名略>上に
は三棟半しか乗っていないことが認められる。しかし、前記(二)、(6)のとお
り、土地区画整理においては建物を全く移動せずに換地を行うことは技術的に困難
であり、また、前記のとおり、従前地と換地が照応しているか否かの判定に当たっ
ては、乙五のとおりに建物が移転されているものとして判断するのが相当であり、
これによれば従前地と換地の利用価値にはそれほど違いはないので、換地<地名略
>に建物が三棟半しか乗っていないことをもって照応原則に違反するとはいえな
い。
次に、乙五のとおりに建物を移転すると、出入口の前面が隣地との境界線に接する
建物ができ、これらの建物は換地<地名略>の保留地を通らないと出入りができな
くなるとの点であるが、証拠(乙一八、二四、五三、五四の1、2、五五、原審証
人N)及び弁論の全趣旨を総合すると、右保留地はいわゆる付け保留地といわれる
ものであって、被控訴人の定款により、建物の移転又は除却をすることなく、従来
同様に建物を利用できるようにすることを目的として設けられたものであり、控訴
人らは右保留地を買い受けることによって右目的を達成することができ、控訴人ら
はこれを買い受けることによって利益になっても不利益になることはないことが認
められる。
照応原則の適用に当たっては、土地所有者が付け保留地を買い受けることを前提に
することが許されるものというべきであるところ、右にみたところによれば、この
点も照応原則に違反することはないと解される。
(五) 同3、(一)、(4)の従前地<地名略>、<地名略>、換地<地名略>
について
(1) (1)について
乙二によれば、従前地<地名略>、<地名略>は更地であったが、換地<地名略>
上には控訴人A所有の建物が建っていることが認められる。
しかし、前記(二)、(6)のとおり、従前地と換地が照応しているか否かの判定
に当たっては乙五(建物移転計画図)のとおりに建物が移転されている(すなわ
ち、換地<地名略>は更地になっている。)ものとして判断するのが相当であり、
また乙九の四によれば、従前地<地名略>、<地名略>の持分各一〇〇分の一が控
訴人Bの所有に属しているが、その余は控訴人Aが所有していることが認められる
ので、換地<地名略>上に控訴人A所有の建物が建っているままでも、
右換地の利用に支障があるわけではないから、照応原則に違反しないというべきで
ある。
(2) (2)について
換地<地名略>の割り込みが本件県道に対し直角になっていないとしても、前記
(二)、(3)のとおり、そのことによって照応原則に違反することにはならな
い。
(3) (3)について
控訴人らは、従前地<地名略>、<地名略>の実質公共減歩地積は、三〇・五六平
方メートルの増換地にならねばならない旨主張するが、前記(二)、(5)の認定
のとおり、本件区画整理事業においては、実質公共減歩地積は実質地先負担地積
(右従前地については一五二・八九平方メートル)となるから、控訴人らの主張は
理由がない。
また、控訴人らは、従前地<地名略>、<地名略>は宅地の利用増進は皆無である
から、保留地減歩は一切不要である旨主張するが、土地区画整理事業においては、
公共減歩及び保留地減歩は避けられないことであって、施行地区内の土地は事業施
行によってもたらされる利用増進の度合いに応じてこれらの減歩を負担すべきであ
り、従前地<地名略>、<地名略>についても、証拠(乙一の1、2、二、三、原
審証人N)によれば、右従前地が面する本件県道は一三メートルに拡幅され、周辺
の道路が整備されたことなどにより土地の利用増進が認められるのであるから、控
訴人らの右主張も理由がないというべきである。
(六) 同3、(一)、(5)の控訴人らに対する各換地処分について
(1) (1)について
控訴人らの従前地の位置、形状のおおよそが原判決別紙図面一のとおりであって、
これを簡略化すると、別紙図面一のとおりであること、控訴人らの換地の位置、形
状のおおよそが原判決別紙図面二のとおりであることは、被控訴人において明らか
に争わないところである。
控訴人らは、本件換地処分により、換地は全部県道より東側になり、更地は消滅
し、二二〇七・五七平方メートルという大面積の土地が中央部に道路もなく出現し
たものであるから、利用状況、位置、地積において照応しない旨主張するので、検
討する。
まず、利用状況、位置については、右争いのない事実、乙六によれば、従前地<地
名略>、<地名略>を換地<地名略>に飛換地したことについては、換地細則四条
一項(3)という根拠があり、飛換地になったとしても、他の換地と一体的に利用
することができること、換地<地名略>が更地にならなかったのは、前記(二)、
(6)のとおり、控訴人Aが建物の移転を拒絶したことによるものであることが認
められるので、照応原則に違反しないというべきである。
次に、地積については、証拠(乙五二、当審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、
控訴人らの従前地の実質減歩率は、従前地<地名略>及び従前地<地名略>が二
〇・五二パーセント、従前地七四四番一が一八・五五パーセント、従前地<地名略
>、<地名略>が二五・三七パーセントであり、本件土地区画整理事業における平
均実質減歩率は二九・九四パーセントであることが認められるので、この点も照応
原則に違反しないというべきである。
(2) (2)について
(1) イ、(ア)について
控訴人らは、従前地<地名略>を別紙図面二のとおりA部分とB部分に区分し、B
部分は従前地<地名略>と同一所有者のものとして正面路線価(九六〇)により合
筆計算すべきである旨主張し、これにそう証拠(当審証人O)が存在する。
証拠(乙二一、二二の1、当審証人O)によれば、従前地<地名略>(七三三・八
七平方メートル)を三六七・〇〇平方メートルの土地と三六六・八七平方メートル
の土地に区分し、前者につき路線価八六〇を、後者につき路線価七三〇をそれぞれ
採用し、B部分につき控訴人ら主張のように正面路線価(九六〇)により合筆計算
していないことが認められる。
ところで、控訴人らの右主張の根拠は、従前地<地名略>は正背地なので、換地細
則二九条本文により、二宅地とみなしてA部分、B部分に区分し、その上でB部分
のみにつき換地細則二三条一項ただし書を適用して従前地<地名略>と合筆計算す
べきであるというものである。
しかし、合筆計算するのであれば、従前地<地名略>は一筆の土地であるから、B
部分だけではなく、従前地<地名略>全体と従前地<地名略>とを一体として評価
すべきであるところ、証拠(乙一の1、2、二一、二二の1、2、二四、二五の
2、当審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業の施行地区は
新開発地区であって、従前の土地の大部分は、農地で耕地整理がされていなかった
ため、いわゆる法定外公共道路(里道)に面する不整形の土地であったこと、そこ
で、被控訴人は、整理前の土地評価に当たり、全ての土地につき、不整形による修
正を行わなかったことから合筆計算も行わなかったもので、従前地<地名略>、
従前地<地名略>を一体と見た場合には不整形の土地となるけれども、他の土地の
評価の均衡上、換地細則三七条(特別の事情があるもの又は換地細則によりがたい
ものについては、理事会の意見を聞いて理事長が適宜にこれを決定するものとす
る。)により合筆計算しなかったこと、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、被控訴人が右合筆計算をせず、したがって、B部分につき路
線価九六〇により評価計算しなかったことに平等原則違反は認められない。
(2) イ、(イ)について
まず、(ア)についてであるが、Fの従前地(<地名略>)につき奥行修正をすべ
きなのにこれをしていないこと、控訴人らの従前地<地名略>及び従前地<地名略
>、<地名略>については奥行修正をしていることは、当事者間に争いがない。
控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると
主張するが、これを認めるに足りる証拠はないのみならず、証拠(乙六、二一)及
び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの右従前地について適正に奥行修正がなされて
いることが認められるので、控訴人らの主張は理由がないというべきである。
次に、(イ)についてであるが、Gの従前地(<地名略>)及びHの従前地(<地
名略>)につき三角地修正すべきなのにこれをしていないことは、当事者間に争い
がない。
控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると
主張するが、証拠(当審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人は、整理前
の各土地について不整形修正をしなかったことから、それとの均衡上、本件土地区
画整理事業施行地区内の整理前の土地全部につき三角地修正をしなかったことが認
められるので、被控訴人の右行為に平等原則違反は認められない。
次に、(ウ)についてであるが、Fの従前地(<地名略>、<地名略>)、Gの従
前地(<地名略>、<地名略>)、Hの従前地(<地名略>)、Iの従前地<地名
略>、Jの従前地(<地名略>、<地名略>)、Kの従前地(<地名略>)、Lの
従前地(<地名略>)につき高低差修正をしていないことは、当事者間に争いがな
い。
控訴人らは、被控訴人の右行為は故意に控訴人らを不利益に取り扱うものであると
主張するが、証拠(当審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、右各従前地について
は、
整理後の換地計算の際に、配当を受けるべき換地の評価指数に高低差修正をしてい
ることが認められるので、被控訴人の右行為に平等原則違反は認められない。
(3) イ、(ウ)について
前記(二)、(4)の認定のとおり、被控訴人が整地ずみである従前地<地名略>
のうち二四三平方メートルを未整地と評価したことが認められるが、しかし、同所
において判断したとおり、右評価の誤りによって生じる不均衡は照応原則に違反す
るものではないから、控訴人らの主張は理由がない。
(4) イ、(エ)について
前記(二)、(4)の認定のとおり、被控訴人が整地ずみである従前地<地名略>
(二〇平方メートル)を未整地と評価したことが認められるが、しかし、同所にお
いて判断したとおり、右評価の誤りによって生じる不均衡は照応原則に違反するも
のではないから、控訴人らの主張は理由がない。
(5) ロ、(ア)について
控訴人らは、従前地<地名略>については、別紙図面三のようにA部分とB部分に
分けて暫定換地をすべきであると主張し、これにそう証拠(甲三二、三三、当審証
人O)が存在する。
被控訴人が、従前地<地名略>について、右の控訴人ら主張のような暫定換地をし
ていないことは、当事者間に争いがない。
しかし、(7)暫定換地について規定する換地細則九条は、暫定換地は原位置にお
いて権利地積より地先負担地積を控除した残地積を暫定的に算出した地積とする旨
規定するにとどまること(乙六)、(イ)一筆の土地につき何故にA部分とB部分
に分けて暫定換地をするのか疑問があるのみならず、控訴人らの主張によると、A
部分とB部分の中間の土地の暫定換地はどこの位置に組むのか不明であること、
(ウ)B部分のうち、本件県道に面している土地にはHの従前地(<地名略>・田
一二〇平方メートル、従前地<地名略>の換地<地名略>の一部となる。)が存在
しており、同所で暫定換地を組もとすれば、二重に暫定換地を組むことになる結
果、二重に沿道地先負担をさせることになり不合理であること(甲二二の3、乙
二、当審証人N)、以上の点を考慮すると、控訴人らの主張は理由がないというべ
きである。
(6) ロ、(イ)について
控訴人らは、換地細則九条を根拠にして、従前地<地名略>、<地名略>について
は、原位置の角地(別紙図面三の赤線で囲まれた部分)に暫定換地すべきである旨
主張し、
これにそう証拠(甲三三、当審証人O)が存在する。
しかし、証拠(乙六、二二の3、四三、当審証人N)及び弁論の全趣旨によれば、
本件土地区画整理事業においては、従前地<地名略>、<地名略>が存在していた
原判決別紙図面二記載の<地名略>街区に広大な面積の集合保留地(約九六〇〇平
方メートル)を設けたため、右集合保留地内にあった従前地については飛換地せざ
るを得なかったこと、右集合保留地内にあった従前地については、右集合保留地内
には本件土地区画整理事業で新設される道路が全く存在しなかったため、右集合保
留地内の従前地の位置又はその付近に仮定の区画整理道路を想定して暫定換地を組
むことは相当ではなかったことから、換地細則三七条(特別の事情があるもの又は
換地細則によりがたいものについては、理事会の意見を聞いて理事長が適宜にこれ
を決定するものとする。)により、実際に換地を交付する位置において暫定換地を
計算したこと(そこで、本件土地区画整理事業においては、暫定換地の計算は、施
行地区内の土地全てにつき実際に換地を交付する位置において行ったこと)、した
がって、従前地<地名略>、<地名略>については換地<地名略>の位置において
暫定換地を計算したこと、このような計算方法は、換地設計の一つの手法として容
認されていること、以上の事実が認められ、右認定事実によれば、被控訴人が従前
地<地名略>、<地名略>につき換地<地名略>の位置において暫定換地を計算し
たことは相当であり、控訴人らの主張は理由がないというべきである。
(7) ロ、(ウ)について
控訴人らは、訴外C,D両名の従前地<地名略>、<地名略>についての暫定換地
の計算は換地細則四条二項、九条、一〇条に違反し、控訴人らに対し著しい不利益
な取扱いをしている旨主張する。
しかし、証拠(甲三四、乙三〇、当審証人O、同N)によれば、訴外C,D両名の
右従前地の暫定換地の計算はその換地を交付する位置で行っていること(飛換地を
せざるを得なかったことについては後記四のとおりである。)が認められるとこ
ろ、右のような暫定換地の計算方法が換地細則に違反しないことについては、右
(6)に説示したとおりであるから、控訴人らの主張は理由がない。
(8) ハ、(7)について
控訴人らは、被控訴人がIの換地<地名略>、Mの換地<地名略>の画地評価を誤
った結果、右各換地の平方メートル当たり画地評価指数が違法に低くなり、減歩が
不当に軽減されている旨主張し、これにそう証拠(甲三九、当審証人O)が存在す
る。
しかし、証拠(甲二一、二三の8、二四の2、乙六、当審証人N)及び弁論の全趣
旨によれば、本件土地区画整理事業においては君津市の他の土地区画整理組合と同
様に、画地の適正奥行を二四メートルと定めたこと(換地細則第八号表参照)、そ
れで、右I、Mの各換地については、正背道路間の奥行が三〇メートルで適正奥行
である二四メートルを超えていたので、被控訴人は、換地細則二九条本文(正背道
路間が適正奥行以上の場合は、二宅地とみなしてそれぞれ評価する。)に基づき、
正面路線から評価する領域と背面路線から評価する領域に分割して評価したこと、
以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、被控訴人の右評価方法は相当であり、控訴人らの主張は理由
がないというべきである。
(9) ハ、(イ)について
控訴人らは、換地<地名略>の平方メートル当たり画地評価指数は右I、Mの各換
地の平方メートル当たり画地評価指数と比較して不当に高いため減歩率が高くな
り、不利益である旨主張する。
しかし、右I、Mの各換地の画地評価が相当であることは右(8)に説示したとお
りであること、証拠(甲二三の8、二四の2、乙二三の2)によれば、右I、Mの
各換地の実質減歩率は、それぞれ三九・八三パーセント、三〇・四二パーセントで
あるに対し、控訴人らの換地<地名略>及び換地<地名略>の実質減歩率は二〇・
五二パーセントであることからすると、控訴人らの主張は理由がないというべきで
ある。
(10) ハ、(ウ)について
控訴人らは、Jの換地<地名略>、換地<地名略>は換地細則二三条一項ただし書
(接続した同一所有者の宅地は合筆計算する。)により合筆計算しなければならな
いのにそうしないで平方メートル当たり画地評価指数を低くし減歩を不当に軽減し
た旨主張する。
しかし、証拠(甲二一、二三の4、二六の1、2、二八、乙六、当審証人N)及び
弁論の全趣旨によれば、右Jの従前地<地名略>、従前地<地名略>はいずれも原
判決別紙図面二記載の<地名略>街区の集合保留地内にあったため飛換地をせざる
を得なかったこと、元来換地は一筆ごとに一画地を交付するのが原則であること、
そこで、被控訴人は、従前地<地名略>を換地<地名略>に、従前地<地名略>を
換地<地名略>にそれぞれ換地の割り込みをした(この割り込みをした街区は既に
正面路線価により街区評価がしてあった。)結果、たまたま右各換地は接続するこ
とになったが、従前地<地名略>は本件県道に面していた土地であり、従前地<地
名略>は盲地であったため、換地についても前記の換地細則二三条ただし書を適用
しなかったこと、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、被控訴人が、右Jの各換地につき換地細則二三条ただし書を
適用しなかったことには相当な理由があるというべきであるから、控訴人らの主張
は理由がない。
(11) ハ、(エ)について
控訴人らは、Kの換地<地名略>、換地<地名略>は換地細則二三条一項ただし書
(接続した同一所有者の宅地は合筆計算する。)により合筆計算しなければならな
いのにそうしないで平方メートル当たり画地評価指数を低くし減歩を不当に軽減し
ている旨主張し、これにそう証拠(当審証人O)が存在する。
しかし、証拠(甲二一、二三の6、二七の1、2、二八、乙六、当審証人N)及び
弁論の全趣旨によれば、右Kの従前地<地名略>、従前地<地名略>外一筆はいず
れも原判決別紙図面二記載の<地名略>街区の集合保留地内にあったため飛換地を
せざるを得なかったこと、そこで、従前地<地名略>の換地が換地<地名略>に指
定されたこと、そして、従前地<地名略>については三か所に分割換地しなければ
ならなくなり、たまたまその一部が換地<地名略>に換地され、その余の換地は他
の街区に指定されたこと、そのため、前記の換地細則二三条ただし書は適用されな
かったこと、実質減歩率は換地<地名略>が四五・七パーセント、換地<地名略>
が三四・五パーセントであって、平均実質減歩率二九・九四パーセントを超えてい
ること、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、被控訴人が、右Kの各換地につき換地細則二三条ただし書を
適用しなかったことには相当な理由があるというべきであり、また減歩を不当に軽
減したということもできないから、控訴人らの主張は理由がない。
(12) ハ、(オ)について
控訴人らは、被控訴人が従前地<地名略>につき鉄道修正をしているのに、換地<
地名略>については鉄道修正していないのは違法である旨主張し、これにそう証拠
(当審証人O)が存在する。
しかし、証拠(乙六、二一、二五の1、2、二六の1、2、当審証人N)及び弁論
の全趣旨によれば、本件土地区画整理事業では、換地については鉄道接近係数を織
り込んだ路線価に基づいて評価計算をしたこと、一般に接近係数は路線の中間点か
ら対象施設までの距離により計算されること、換地<地名略>の正面路線6-Eの
路線価指数については鉄道接近係数の修正が行われていないが、これは右路線の中
間点から鉄道沿線までの距離が右修正を要するとされている五〇メートル(換地細
則第一二号表)を超えていたことによること、一方、従前地については、その大部
分が延長距離の長い里道に面し、かつ、区画の形質が非常に異なるため、これに鉄
道接近係数を織り込んで評価計算をするとバランスを失し適正な鉄道接近係数を算
定することができなかったため、各従前地の中心点から鉄道沿線までの距離により
右係数を算定したこと、従前地<地名略>については、右五〇メートル以内であっ
たことから鉄道接近係数の修正を行っていること、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、被控訴人の前記取扱いは相当であり、控訴人らに主張は理由
がない。
(3) (3)について
控訴人らは、控訴人らの従前地<地名略>、従前地<地名略>及び従前地<地名略
>、<地名略>については保留地減歩をする必要がないのに、平均保留地減歩率一
四・四六四パーセントを超える保留地減歩をしており違法である旨主張する。
しかし、証拠(乙一の1、2、二、三、五二、当審証人N)及び弁論の全趣旨によ
れば、控訴人らの従前地についても、原判決別紙図面二のとおり、里道がなくな
り、周辺道路が整備・拡幅され(本件県道の幅員が一三メートルに、換地<地名略
>の東側の道路の幅員が八メートルに、換地<地名略>の南側の道路の幅員が一二
メートルに拡幅された。)、土地の区画形質が整形化されたことにより、土地の利
用増進が図られていること、平均保留地減歩率は一四・四六四パーセントであるに
対し、従前地<地名略>、従前地<地名略>の保留地減歩率は一二・一六パーセン
ト、従前地<地名略>、<地名略>の保留地減歩率は一一・四六パーセントである
こと、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、控訴人らの主張は理由がないというべきである。
2 同3、(二)の工事未了の違法について
法一〇三条二項は、土地区画整理事業の工事が完了していないのに換地処分がなさ
れると従前の土地に照応した換地を確定することができず、また仮に換地自体確定
し得るものであっても工事未了のために使用できないといった事態を避けるため
に、換地処分は原則として工事が完了した後でなければなし得ないとしたものであ
る。
そして、法一〇三条二項ただし書は、組合の定款に特別の定めがある場合には工事
完了以前においても換地処分ができる旨規定し、被控訴人の定款六九条(乙一八)
は、法七七条の規定による建築物等の移転又は除却が完了した場合においては、そ
の他の工事が完了していない以前でも換地処分ができる旨規定していることが認め
られる。
法七七条の規定は、仮換地上に第三者の建物がある場合には当該仮換地の指定を受
けた者が使用収益することができないので、土地区画整理事業の目的達成のため施
行者に建物の移転除却の直接施行を認めた規定であると解されるところ、従前地<
地名略>及び従前地<地名略>上の各建物は控訴人Aの所有に属し、従前地<地名
略>、従前地<地名略>の持分各五五分の一、従前地<地名略>の持分六〇分の
一、従前地<地名略>、<地名略>の持分各一〇〇分の一は控訴人Aが仮換地指定
処分後に贈与したものであって、その余の持分は全て控訴人Aが所有しており(乙
丸の1ないし4、三五)、その上、前記1、(二)、(6)のとおり、控訴人Aは
被控訴人からの建物移転の申し入れを拒否しているのであるから、右各建物は法七
七条による移転が必要な建築物に該当しないというべきである。
そして、換地<地名略>、換地<地名略>、換地<地名略>、換地<地名略>上の
各建物が現状のままでも控訴人らの各換地の利用に支障はないので、控訴人A所有
の建物が移転されないことが、法一〇三条二項、定款六九条に違反することはない
と解される。
3 同3、(三)の土地評価の違法について
(一) 同3、(三)、(1)について
(1) (1)について
前記1、(六)、(2)、(1)のとおりである。
(2) (2)について
前記1、(六)、(2)、(2)のとおりである。
(3) (3)について
前記1、(六)、(2)、(2)のとおりである。
(4) (4)について
前記1、(六)、(2)、(2)のとおりである。
(5) (5)について
前記1、(二)、(4)の認定判断とおりであり、換地指定処分を取り消すほどの
違法性はなく、清算金処分の違法性の問題というべきである。
(6) (6)について
証拠(乙六、二一、原審証人N)によれば、被控訴人は、従前地<地名略>につい
ては、換地細則二三条一項ただし書(接続した同一所有者の宅地は合筆計算す
る。)に基づき従前地<地名略>と合筆評価し、正面道路(本件県道)から適正奥
行とされる二四メートルまでは正面道路の路線価により計算し、これを超える部分
は、換地細則二四条二項、二七条二項により盲地逓減率〇・九を乗じて奥行修正を
していることが認められる。
そうすると、従前地<地名略>につき奥行修正することに違法はなく、控訴人らの
主張は理由がない。
(7) (7)について
前記1、(二)、(4)の認定判断とおりであり、換地指定処分を取り消すほどの
違法性はなく、清算金処分の問題というべきである。
(二) 同3、(三)、(2)について
(1) (1)について
前記1、(六)、(2)、(5)のとおりである。
(2) (2)について
前記1、(六)、(2)、(6)のとおりである。
(3) (3)について
前記1、(六)、(2)、(7)のとおりである。
(三) 同3、(三)、(3)について
(1) (1)について
前記1、(六)、(2)、(8)、(9)のとおりである。
(2) (2)について
前記1、(六)、(2)、(10)、(11)のとおりである。
(3) (3)について
前記1、(六)、(2)、(12)のとおりである。
なお、換地<地名略>に対応する従前地は従前地<地名略>であり、その東側半分
ではないこと、証拠(乙六、二一、二五の1、二六の1、2、当審証人N)及び弁
論の全趣旨によれば、換地<地名略>の正面路線一八-Cの路線価の算出に当た
り、鉄道修正係数マイナス〇・一の減点をしているところ、これは換地細則一二号
表(鉄道修正率表)のマイナス二四に当たること、これに対し、従前地<地名略>
については、同表のマイナス二二の鉄道修正をしていることが認められる。そうす
ると、換地<地名略>の減価割合は従前地<地名略>のそれに比して不当に低いこ
とはなく、控訴人らの主張は理由がない。
(四) 同3、(三)、(4)について
証拠(乙一の1、2、二、三、六、二五の2、二六の2、四二、原審及び当審証人
N)及び弁論の全趣旨によれば、6-E街路の街路係数は、整理前は換地細則第三
号表(街路係数)の「地区の準幹線的道路」として一・五とされ、整理後は「地区
内の幹線」で商業地として四・一とされたこと、本件土地区画整理事業によって、
6-E街路は、商業地にあって、街路の両側に二メートルの歩道が設置されて幅員
が一三メートルとなり、北方面が旧国鉄内房線を横断し、君津市<地名略>を経て
国道一六号線に接続し、また、南方面は主要幹線道路となった街路番号1-A、同
1-Bの都市計画道路(本件土地区画整理事業により輻員二三メートルないし二五
メートルに拡幅された。)に接続することになって施行地区内の幹線道路となり、
街路としての系統性、連続性が高まったこと、以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、6-E街路の街路係数を一・五から四・一に変更したことに
違法はなく、控訴人らの主張は理由がないというべきである。
(五) 同3、(三)、(5)の予備的主張について
(1) 前記3、(一)、(5)、(7)を除き、控訴人らの土地評価の違法につ
いての主張は理由がない。したがって、控訴人A、同Bの原判決別表二の清算金処
分が違法である旨の予備的主張は理由がない。
(2) そこで、控訴人A、同Eの予備的主張(すなわち、従前地<地名略>のう
ち二四三平方メートル及び従前地<地名略>の二〇平方メートルを田と評価したこ
とにより清算金処分が違法になった旨の主張)について検討する。
この点については、前記1、(二)、(4)の認定判断とおり、換地指定処分を取
り消すほどの違法性はない。
しかし、右認定判断のとおり、右両従前地の全体を整地として評価した場合、配当
地積の増加分は、従前地<地名略>が五・二四平方メートル、従前地<地名略>が
〇・四三平方メートルであって、これにより清算金の増加分(利息を除く。)は、
従前地<地名略>が二二万七五二三円(従前は二一万七七七八円)、従前地<地名
略>が一万八六七〇円(従前は四五二六円)となることが認められる(乙四九の
1)から、原判決別表一記載の換地処分のうち清算金処分の部分は違法であり、取
消しを免れないというべきである。
(3) ところで、被控訴人は、(1)右両従前地が整地されていた場合の配当地
積の増加分(五・六七平方メートル)に見合うものとして自己所有地七・五三平方
メートルを無償譲与する旨控訴人らに申し入れたが、控訴人らがこれに応じないた
め、清算金追加支払処分をしたので瑕疵が治癒された、(2)仮に右清算金追加支
払処分が無効であるとしても、右無償譲与の申入れにより、瑕疵は治癒された、
(3)そうでないとしても、右無償譲与あるいは清算金追加支払の申入れ(右清算
金追加支払処分が無効であるとしても、贈与の申込みに当たると解される。)は控
訴人らの利益になっても不利益になることはないから、控訴人らがこれを承諾せず
瑕疵を主張することは、権利濫用ないし信義則違反に当たり許されない旨主張す
る。
これらの主張は、直接には控訴人らに対する換地指定処分の違法性についての主張
に対するものであるが、換地処分のうちの清算金処分についての主張とも解される
ので、検討する。
まず、(1)について判断する。
証拠(乙一八、四六、四七の1、2、四八の1ないし3、四九の1、2)及び弁論
の全趣旨によれば、被控訴人は、清算人の総意に基づき、控訴人A、同Eに対し、
平成四年四月一三日付け書面で、「従前地<地名略>及び従前地<地名略>の全体
を整地として評価した場合、配当地積の増加分は五・六七平方メートルなので、換
地一番九(保留地)のうち七・五三平方メートルを無償譲与する」旨申し入れたこ
と、ところが、同控訴人らがこれを承諾しなかったことから、同月二三日ころ、清
算人の総意に基づき、右無償譲与に代えて清算金の増加分を追加して支払う旨の清
算金追加支払処分を決定し、同日付け書面で、同控訴人らに対し、「清算金の追加
支払をするので、その支払方法を指示してほしい」旨を申し入れたが、同控訴人ら
がこれに応じなかったことが認められる。そして、被控訴人が、同月二八日に行わ
れた当審第三〇回口頭弁論期日において、同控訴人らに対し右清算金追加支払処分
の通知をしたことは本件記録上明らかである。
しかし、清算金処分は換地処分の一部分であるから、その内容は換地計画において
定めなければならない。そして、換地処分は、関係権利者に換地計画において定め
られた関係事項を通知してするものとされている(法一〇三条一項)ので、換地処
分の一部分である清算金処分を変更するためには、換地計画を変更しなければなら
ない。換地計画を変更する場合には法九七条所定の手続(その換地計画の変更に係
る部分を二週間公衆の縦覧に供し、利害関係人に意見の提出の機会を与え、意見が
提出された場合にはその内容を審査するなどし、都道府県知事の認可を受けなけれ
ばならない。)を経なければならないから、被控訴人主張の清算金追加支払処分
(清算金の変更処分と解される。)をするためには右の換地計画の変更についての
法的手続を経なければならないことが明らかである。しかるに、被控訴人は右法的
手続を経ていないことを自認していることからすると、被控訴人主張の清算金追加
支払処分なるものは、成立していないか、成立しているとしても、重大かつ明白な
手続違反により無効というべきである。
そうすると、被控訴人主張の清算金追加支払処分が存在するとしても、原判決別表
一記載の換地処分のうち清算金処分の部分は違法であるとの前記認定判断に影響を
及ぼさないものである(なお、被控訴人は、右清算金追加支払処分が有効であるこ
との理由の一つとして、清算金処分が取り消されたとしても、被控訴人は清算金
(変更)処分をすることなく、現実に清算金の不足額を支払えば足りることを挙げ
るが、清算金処分が取り消されたのち清算金(変更)処分をしなければ清算金を支
払う法律上の根拠がないことは明らかであるから、被控訴人の右主張は既にこの点
において失当であり、また被控訴人が現に清算段階にあるとしても、本件土地区画
整理事業は未だ完成しているわけではなく、被控訴人のいわば都合により清算手続
に入ったにすぎないから、被控訴人としては、清算金処分が違法であるとして取り
消されれば、行政事件訴訟法三三条の拘束力に従い、清算金(変更)処分を行わな
ければならないというべきである。したがって、被控訴人の右主張は理由がな
い。)。
次に、(2)及び(3)について判断する。
行政処分の瑕疵の治癒が認められるためには、行政処分の相手方の権利救済という
点、行政処分の公正な遂行の担保という点の双方を勘案してみても、行政処分を取
り消す意義が認められないことが必要であると解されるところ、本件においては、
少なくとも、後者の点からみて、前記清算金処分を取り消す意義が認められないと
いうことはできないから、瑕疵の治癒は認められないというべきであり、また控訴
人らは、前記無償譲与及び清算金追加支払の申入れに対し承諾しない自由を有して
いることからいっても、控訴人らが、前記無償譲与及び清算金追加支払の申入れを
承諾しないことが権利濫用ないし信義則違反に当たるということもできない。
三 同4の保留地の設定について判断する。
1 本案前の主張に対する判断において判示したとおり、「保留地の設定」という
行政処分は存在しないが、控訴人らの保留地に関する主張は、本件換地計画のうち
の当該保留地の定めに関する部分についての違法事由が控訴人らの従前地に対する
換地処分の取消事由になるとの主張とも考えられるので、換地計画のうちの保留地
の定めに関する部分に違法事由があるか否かについて検討する。
2 同4、(一)の保留地の設定について
(一) 同4、(一)、(1)について
証拠(乙一三の1、2、三二、三三、原審証人R)及び弁論の全趣旨によれば、次
の事実が認められる。
(1) 被控訴人の施行地区は国鉄君津駅に近接していたので、同駅を中心として
自然発生的に昔ながらの店舗が道路に沿って存在していたが、中心となるべき商店
街が存在しなかったので、被控訴人の当初の事業計画においては、既存の店舗、住
宅を避けて道路を新設、変更するという設計にすぎなかった。
(2) しかし、君津市は、新日本製鉄君津製鉄所の進出などにより急激に人口が
伸びて都市化が進み、昭和四五年九月、五か町村の合併により人口七万を数えるよ
うになり、翌昭和四六年九月一日市政が施行された。そして、国鉄君津駅も従来の
位置より約二〇〇メートル国鉄青堀駅の方向に移動することが確定的となり、この
新駅の北側を施行地区とする坂田土地区画整理組合では駅に近接して大型店舗を誘
致するための商業保留地の設定が行われることになった。
(3) ところで、被控訴人は国鉄君津駅と君津市役所とを結ぶ地域を施行地区と
しているところ、駅付近が都市計画法上の商業地域に指定されることが明らかとな
り、また、先に述べたとおり新日本製鉄君津製鉄所の進出などにより急速に人口が
伸びたにもかかわらず、君津市には中心となるべき商店街が存在しなかったため、
君津商工会の昭和四五年一〇月の調査によれば、君津市民の購買力の約四三パーセ
ントが木更津市の商業圏に吸収されているという状況にあった。そこで、控訴人ら
を除く被控訴人の土地所有者及び借地権者のほとんど全員に施行地区内の商業地域
に君津市民の購買力を吸引するような中心的な商店街となるべき商業保留地を設け
るべきであるという構想が盛り上がり、後記のとおり、法所定の事業計画変更の手
続を経て、原判決別表三1記載の保留地の設定がなされた。
(4) 被控訴人は、右保留地を設けたことにより、一括売却が可能となり、売却
に要する経費の節減及び事業資金の円滑化を図ることができな。そして、右保留地
の設定により、住宅、店舗の移転を伴ったが、この移転補償費に充てるため、君津
市から二億円の助成金の支出を受けているので、これにより組合員の負担が加重さ
れたということもない。
以上の事実が認められる。
右認定事実によれば、原判決別表三1記載の保留地の設定につき法九六条一項及び
定款七条に反する違法はないというべきである。
(二) 同4、(一)、(2)について
証拠(乙一三の1、2、一四、二七、二八、三二、三三、原審証人R、同N)によ
れば、原判決別表三1記載の保留地の設定に当たっては、昭和四七年一二月六日事
業計画変更に関する総代会の議決を経て、昭和四八年二月一二日千葉県知事から右
変更の認可を受けるとともに、同年三月三〇日右保留地設定について総代会の議決
を受けていることが認められ、右認定事実によれば、右保留地の設定に手続上の違
法はないというべきである。
3 同4、(二)の保留地の設定について
証拠(乙一の2、五、二四、三五、五三、五四の1、2、五五、原審証人N)によ
れば、被控訴人は昭和四九年六月二〇日控訴人Aの仮換地指定(当時は控訴人Aが
従前地を単独所有していた。)の変更処分をしたのであるが、これと同時に、前記
二、1、(二)、(6)のとおり、控訴人A所有の建物一二棟のうち七棟を移転す
る計画を立てたこと、被控訴人は右建物の移転に当たり、従前の建物と建物の間が
約二メートルあるので、同様の間隔で建物が移転できるようにするためには、換地
<地名略>、換地<地名略>、換地<地名略>では面積が不足するので、控訴人ら
の利益のために原判決別表三2記載の付け保留地を設けたこと、以上の事実が認め
られ、右認定事実によれば、右付け保留地の設定に違法はないというべきである。
四 同5の訴外C,D両名に対する換地処分については、前記のとおり、控訴人ら
には取消しを求める訴えの利益がないと解されるが、次のとおり、違法性も認めら
れない。
証拠(乙一の1、二九、三〇、原審証人N)によれば、国鉄内房線の北側にあった
従前地<地名略>は面積が三八平方メートルの過少土地なので、従前地のみで換地
することになれば画地基準に達しないため従前地<地名略>と集合して換地指定し
たこと、原判決別表三1記載の保留地が設定されたため従前地<地名略>に対し原
位置及びその付近に換地指定できなくなって、右保留地の南側に飛換地したこと、
以上の事実が認められ、右認定事実によれば、訴外C,D両名に対する原判決別表
四記載の換地処分に照応原則違反は認められないというべきである。
これに対し、控訴人Bは、原審において、従前地<地名略>、従前地<地名略>は
いずれも国鉄内房線の線路のすぐそばにあったのに、被控訴人がそれらに対し線路
から離れた角地である換地<地名略>を指定したのは訴外C,D両名を不当に有利
に扱うものであって、角地であった従前地<地名略>に対し角地を換地指定するの
であれば、原判決別紙図面五の一一の保留地あたりに換地指定すべきであった旨供
述する。しかし、乙二九によれば、従前地<地名略>、従前地<地名略>について
は、鉄道修正によって土地の評価が低くされていることが認められ、また右保留地
は換地<地名略>に比べるとはるかに面積が少ないので、右保留地付近に訴外C,
D両名に対する換地を設定すると、右保留地だけでは賄いきれずに、<地名略>街
区の画地がしわ寄せを受け、控訴人ら以外の面積の少ない画地を他の街区に飛換地
せざるを得ない結果となるのである。したがって、控訴人Bの右供述によって、原
判決別表四記載の換地指定処分が適法であるとの認定が左右されることはない。
第三 結論
一 そうすると、予備的請求(二)は理由があるのでこれを認容すべきであるが、
その余は不適法あるいは理由がないのでこれを却下又は棄却するのが相当である。
二 よって、これと異なる原判決主文第二項を主文第一項のとおり変更し、その余
の本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担に
ついて民事訴訟法九六条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 越山安久 大前和俊 武田正彦)
図面一~四、別表一、二(省略)

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