弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人遊田多聞、同松本正雄の上告趣意について。
 しかし原審は被告人等の昭和二三年七月二二日、同年八月七日及び同月一二日は
断水日であつたからサイダーは製造できなかつたとの主張を容れた結果、東京財務
局収税官吏国税調査査察官A作成の昭和二三年一一月一三日付質問顛末書添付のサ
イダー製造出庫一覧表に示された昭和二三年七月分及び同年八月分出庫数量より前
記三日間におけるサイダー製造量分をすべて控除して出庫量を認定したのである。
 よつて製造されたサイダーのうちには出庫されないものもあつて製造量と出庫量
とは必ずしも一致しないことが考えられるが、原審において右三日間に製造された
サイダーは全部出庫したものとしてその月分の出庫量よりすべて控除算定したのは
本件のごとく製造場外に移出せられたものの石数に応じて課税する清凉飲料税の違
反事件の数量認定については被告人等にとつて、もつとも有利な認定といえるから、
右の算出方法について異議を述べるのは被告人等の不利益になることを主張するも
のであるから、上告理由となし難い。
 次に論旨の通り原判決は「証二三号中判示会社の清凉飲料の製造出庫高につき判
示同旨の記録」を証拠の末項として掲げているが、所論の通りこれの出庫量と判示
事実に示された製造出庫量とは額において一致しないけれども原判決は右の証二三
号のほかに、これを基本として国税調査査察官が作成し、判示の製造出庫量と一致
する質問顛末書(添付のサイダー製造出庫一覧表を含む)を挙示しているのであつ
て、これら相互に矛盾せざる証拠を綜合するとき、おのずから判示事実が認定され
るのであるから、右の証拠説明の方法は違法でなく、論旨は理由がない。
 弁護人内水主一の上告趣意第一点及び第二点について。
 原審が昭和二三年八月一日から同月三一日までの間に判示の会社が製造出庫した
サイダー及びプレンソーダ水を合計三九石七斗九升四合に達すると認定したが、そ
の出庫数量が一致するとして証拠に挙示した質問顛末書(添付のサイダー製造出庫
一覧表を含む)に示された出庫量は三九石三斗七升八合であつて、数量が一致しな
いことは所論の通りである。これは蓋し、右質問顛末書添付のプレンソーダ水製造
出荷一覧表を掲げてないことに基くのであるが、原判決の挙示する証二三号のノー
トには「プレンの部、八月三一日製造二〇八本、出庫二〇八本、残高〇本」と記載
されていて、八月分のプレンソーダ水の出庫量は二〇八本即ち四斗一升六合である
ことが示されているから、以上の一覧表と証二三号の記載とを綜合することによつ
て昭和二三年八月分のサイダー及びプレンソーダ水の出庫量は判示の通り三九石七
斗九升四合であることを認定できるのであつて、証拠説明の方法は違法といえない。
 なお、論旨は原判決挙示の証二三号に示された製造出庫量と判示事実に示された
それと一致しないと論するが、弁護人遊田多聞、同松本正雄の上告趣意について前
記のように判断したところによつて論旨の理由なきことは明白である。
 その他論旨は原判決が挙示した前掲質問顛末書(添付のサイダー製造出庫一覧表
を含む)乃至証二三号の証明力についていずれも縷々として述べているが、これは
結局原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰するのであつ
て、上告の適法な理由とすることはできない。
 よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官三堀博関与
  昭和二六年三月一六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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