弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人Aを懲役八月に処する。
     但し被告人に対し本判決確定の日より三年間右刑の執行を猶予する。
     被告人から金一〇七万九四〇〇円を追徴する。
     第一審の訴訟費用中証人B、同C、同D、同E、同Fに支給した各旅費
日当は被告人と原審相被告人G、同H、同Iとの連帯負担とする。
         理    由
 弁護人龍宮慎一の上告趣意第一点について。
 原判決前文に「当裁判所は検事今井和夫関与の上左の通り審理判決する」旨の記
載あること所論のとおりであるが、その趣旨は原裁判所は右検察官の公判廷出席の
下に審理しこれに基いて主文のとおり判決するというにあつて、検察官関与の下に
合議した趣旨でないこと多言を要しない。記録によるも、所論の点に関する原審裁
判所の構成及び審判手続には違法はなく、違憲の所論は原判文を正解せざるにいで、
前提を欠き、採るに足らない。
 同第二点は事実誤認、理由不備を主張し、同第三点は原審で主張、判断を経てい
ない第一審の法令違反を主張し、同第四点は事実誤認を主張し、同第五点は事実誤
認、法令違反の主張をいでず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、職権によつて船舶J丸没収の点について調査するに、旧関税法(昭和二
三年法律一〇七号により改正された明治三二年法律六一号)八三条一項所定の関税
法違反行為の用に供した船舶でも、それが第三者の所有に属するときはその所有者
たる第三者において右船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじ
め知つており、その犯罪が行われた時から引きつづき右船舶を所有していた場合に
限り、右船舶を没収すべきものであるというのが同条同項の趣旨であり、右所有者
たる第三者の善意、悪意に関係なくその所有の右船舶を没収するが如きは必要の限
度を超脱しひいて憲法二九条違反たるを免れないものであることは当裁判所の判例
の趣旨とするところである(昭和二六年(あ)一八九七号同三二年一一月二七日大
法廷判決)。
 第一審判決及び量刑の点を除くほかこれを是認した原判決が挙示の証拠によつて
認定した事実によれば、押収の機帆船J丸はBの所有であるところ、Bは昭和二八
年三月二三日頃原審相被告人Iより同船の貸与方を申し込まれその際同人が通常賃
料の約三倍に当る三万円位の賃料を支払う旨申し出たのに対し奇異の感を懐きつつ
使途等について調査追求することなく漫然これを貸与したところ、Iは被告人A、
韓国入K某外三名と共謀の上右K某が密輸入すべくa港に海上輸送して来ていた判
示課税外国貨物銅インゴツトを不正方法で陸揚げ輸入し関税を免れようと企て、同
月二四日頃同港内において密かに右貨物をIが船長として占有中の右傭船J丸に積
み換えて出港し同月二四日小野田市b横土手沖に廻航し同月二六日頃右銅インゴツ
トのうち三頓六五〇瓩位を右横土手岸壁に陸揚げしたが税関に輸入申告をせず引き
取り輸入し同貨物に対する判示金額の関税を逋脱した、そして、船舶所有者BはI
の帰来後小野田市においてJ丸に密輸入品が積載されているのを発見しIを難詰し
その数日後同人より同船の返還と賃料三万円の支払を受けた、というにある。(原
判決の以上の判断は相当である。)
 右によれば、Bは本件関税法違反行為前から本件犯行後現在にいたるまで引きつ
づき右船舶J丸を所有している者であるが、同人が同船をIに貸与するに際しこれ
が右関税法違反行為の用に供せられることをあらかじめ知つていた事実は第一、二
審判決において認定せず、むしろBに悪意の認むべきものがないとしてその善意な
ることについての過失の点を判示したに過ぎないと解すべきであるから、それが判
示のように本件犯行の用に供せられたからといつてこれを没収することは許されな
いこと、右判例の趣旨に照らして明らかである。また、右認定のように本件犯行後
右船舶の占有がIからの返還により所有者Bに戻つたことは原判決が本件に適用し
た右関税法八三条二項にいわゆる「犯人以外ノ者前項ノ物ヲ取得シタル場合」に当
らない。けだし同条項にいう「取得」とは所有権の取得をいい、占有権の取得を意
味しないと解すべきものであるから、従つて同条項によつても右J丸を没収するこ
とも許されないものといわねばならない。
 してみれば、押収のJ丸を没収する旨を言い渡した原判決は前記関税法八三条一
項、二項の解釈を誤まつた違法あるもので、この点において原判決を破棄しなけれ
ば著しく正義に反するものというのほかない。
 よつて刑訴四一一条一号により原判決を破棄し、原審が確定した罪となるべき事
実に法令を適用すると被告人の所為は昭和二九年法律第六一号による改正関税法附
則一三項旧関税法七五条一項刑法六〇条に該当するので懲役を選択し所定刑期範囲
内で被告人を主文第二項の通りの刑に処し情状酌量すべきものがあるので刑法二五
条により三年間右刑の執行を猶予し、本件関税逋脱貨物銅インゴツトを没収できな
いのでその原価の追徴につき前記関税法八三条三項を適用して主文第四項の通りそ
の言渡をなすべきものとし、刑訴四一三条但書、一八一条、一八二条により裁判官
全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検事 安平政吉出席
  昭和三三年四月一五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三

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