弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意について。
 論旨は被告人が本件には全然関係のないことを詳細に述べているのであるが原判
決挙示の証拠によつて判示事実を認定することができるのであるから結局事実誤認
の主張に帰し上告適法の理由とならない。
 被告人Aの弁護人鍛治利一、小玉治行の上告趣意第一点及び弁護人小玉治行の上
告趣意第一点について。
 明治二二年法律第三四号決闘に関する件第一条には「決闘ヲ挑ミタル者又ハ其挑
ニ応ジタル者」と規定しているから決闘応挑罪が成立するには応挑の意思表示が挑
発者の認識に到達することを必要とすることは明かである。ところで、原判示第二
の事実は相被上告人Bは前項掲記のとおり(即ち判示第一に記載するとおり)昭和
二二年二月一〇午後七時頃前記C方二階の一室で被告人D及びC側から被告人A及
びその輩下の者を相手として同日午後九時を期し別府市aで決闘を実行しようとの
申出を受け決闘を挑まれるやただちにこれを諒承した事実を確定しているのである。
そして判示第一事実によると二月一〇日午後七時頃被告人Bが被告人A側を代表し
てC方に来て同家二階の一室で被告人D同B及びCの三名が火鉢を囲んで対坐する
に及び被告人DはCと共に被告人A及びその輩下の者を相手として決闘しようと決
意し被告人Bが喧嘩をせず何とかならぬかと申出でたのにかかわらずもう既におそ
いと申し向け、被告人Bの右申出を言下に一蹴し被告人A側を代表する被告人Bに
対しCと共に果し合いの場所は別府市a、時刻は同日午後九時、使用すべき武器は
双方共随意としようとの旨申し向けた事実が確定されているのであるから前記判示
第二において、Bが決闘を挑まれるやただちにこれを諒承したというのはBがA側
を代表して決闘を応諾した趣旨であることは明らかである。そして原判決の挙示す
る証拠中被告人Dに対する検察補佐官の聴取書に同被告人の供述として判示の日午
後七頃Bが参りC方の二階の一室で火鉢を囲み私やCと対坐して「喧嘩の場所を何
処にするか」といい、私と二、三回押問答をしているうちCがBに一寸待て、お前
それでよいのかというとBはもう詮方がないと申した、Cが私にDお前から場所を
決めよと申すので私がb公園に来いというとBが明るいところは悪い、暗い所にき
めてくれというのでCが横から暗い所ならaがよかろうといい出し私もBも場所は
aときめた、するとBは時間は何時にするかというので私が十二時でも一時でも好
いというとCが十二時は遅い九時がよかろうというので双方共九時ときめた、それ
からBが道具(兇器)は何にするかというので私が道具は随意にしようというとB
も承知して午後九時aでA側対私共と果し合いをすることにきめたとの記載がある
のであつてBがDC等の決闘申出でに対してこれを応諾し決闘の時間場所武器を協
定したものであることは証拠上明らかなところであるのみならずBがA側を代表す
る権限のあつたことも原判決挙示の証拠によつてこれを認めることができるのであ
る。次に原判示によると右の如くA側を代表して決闘の応諾をしたBはA及びその
輩下の者にその旨を報告し被告人Aは先方がやるというならやるより仕方があるま
いと言明し決闘に赴くべき者を決定し(続いて判示第三事実のとおり諸般の準備を
しているのである)たというのであつて被告人A及びその輩下の者はA側を代表し
て決闘応諾の意思表示をしたBの行為を確認して決闘の決意をしその準備をしたこ
とが認められるのであるからかかる場合にはBの意思表示によつて決闘応諾の意思
表示が挑発者たる被告人DC側に為されたものと解すべきである。然らば原判決が
判示第二の事実を決闘応挑罪として問擬したことは正当であつて論旨はいずれも理
由がない。
 弁護人鍛治利一、小玉治行の上告趣意第二点第三点及び弁護人小玉治行の上告趣
意第二点について。
 決闘とは当事者間の合意により相互に身体又は生命を害すべき暴行をもつて争闘
する行為を汎称するのであつて必ずしも殺人の意思をもつて争闘することを要する
ものではない。しかし決闘にも殺人の意思をもつて為されるものもあり得るのであ
るからその場合には決闘の罪の外殺人の罪の成立することは前記決闘に関する法律
第三条に「決闘ニ依テ人ヲ殺傷シタル者ハ刑法ノ各本条ニ照シテ処断ス」とあるに
よつても明らかである。それゆえ殺人の意思をもつて決闘の準備をした場合には殺
人予備罪が成立するものといわなければならない、原判決が判示第三の事実を殺人
予備罪としたのは決闘をもつて直ちに殺し合いと即断したからではなく証拠によつ
て本件決闘については殺人の意思であつたと認定した結果である。そして原判決の
挙示する証拠によつて右の事実認定をすることができるのであるから原判決には所
論のような違法なく論旨はいずれも理由がない。
 弁護人鍛治利一、小玉治行の上告趣意第四点について。
 しかし原判決が被告人Aに対して処断した犯罪は判示第二の決闘応挑罪と判示第
三の殺人予備罪であつて、それはいずれもC等の殴り込み即ち判示第四の乱闘以前
のことであり判示第三の決闘の準備行為と判示第四の乱闘とは法律上関連のない行
為であるから判示第四の事実を引用して判示第三の行為が正当防衛であり防衛行為
であるとの主張は全く理由がない。
 被告人Dの弁護人堤牧太の上告趣意第一点について。
 しかし所論は原審の適法にした証拠の判断及び事実の認定を非難するに帰し、上
告適法の理由とならない。
 同第二点いについて。
 しかし原判決挙示の証拠を綜合すれば原判示の事実を認定できるのであるから所
論は証拠の判断及び事実の認定を非難するに帰し、上告適法の理由にならない。
 同第三点について。
 しかし原判決挙示の証拠を綜合すると原判示の如く被告人がA側を代表するBに
対し本件決闘を挑む意思を表示しBをして被告人A及びその輩下に伝達させた事実
を認定できるのであるから論旨は採用できない。
 同第四点について。
 しかし原判決挙示の証拠によつて判示事実は十分認定し得るのであるから論旨は
採るを得ない。
  同第五点について。
  しかしBに対する司法警察官の聴取書の供述記載を採るか公判廷における供述
を採るかは原審の裁量に委されているところであるから所論は原審の裁量に属する
証拠の採否事実の認定を非難するに帰し上告適法の理田にならない。
  同第六点について。
  しかし所論の公判供述は原審の採用しないものであるから所論は結局事実誤認
の主張に帰し上告適法の理由にならない。
  同第七点について。
  しかし原判決拠示の証拠中証人Eの供述によつて本件決闘の場所が特定してい
ることが認められるのであるから論旨は理由がない。
  よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。
  この判決は裁判官全員一致の意見である。
  検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二六年三月一六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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